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煉獄の恋

第9章 心の在り処(2)

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バイトが終わって、聖のマンションへと並んで歩く。
「今日は金曜のわりに客足がいまいちだったな」
話しかけても聖は上の空で、相槌だけ返す。
岸は小さくため息をついた。何を言っても聖から返ってくるのは「ああ」とか「うん」という言葉だけだ。
週末だというのに今日は待ちのお客も少なく、ゆったりとした日だったからよかったものの、聖は物思いに沈んでいて、ぼおっとしていることが多かった。何度か咎めたが、その時は我に返るものの、またやることが少なくなると考え事へと沈んでいく。
夕方にあの吉井とかいう男に会ってからだ。
いったい何があったのだろう。
岸は隣に並んで歩いている聖をちらりと見て、少し大きな声で名を呼んだ
「聖」
はっとしたような顔を振りむけた聖を怒っているように岸は睨んだ。
「何度も呼んでいるのに、どうしたんだ?」
「え、ああ。悪い。ちょっと考えごと」
「今日、ずっとだよな」
岸は怖いくらい真剣な瞳で聖を見つめ、腹の底を渦巻いている苛立ちが噴出してしまいそうになって、ふと目を逸らす。
岸が黙れば、聖もまた口をきかず、気づけば聖の住むマンションの前までたどり着いていた。
「じゃあ」
気まずくそうに聖が、別れの挨拶を口にする。だが、岸はここで聖を離してやる気はなかった。悩んでいるなら相談にのってやりたい。この間のように後悔したくなかった。ここで見送って、週明けにあんな思いをするのはもうたくさんだ。
「聖、おれさ。話があるんだ」
決した心がわかったのか、聖は振り返って、岸を見た。
「何?」
「込み入っているし、寒いからお前の部屋で話す」
外で話すはなしじゃなかった。冷静に話ができるかもわからない。だから、岸はそれだけ言い捨てると聖を見ずに先にマンションに足を踏み入れた。
「おい、岸。なんなんだよ」
聖がとめるのもきかずに、岸は押し切って聖の部屋へとあがった。
いつもの定位置になってしまったエアコンの下に立って、聖を手招きする。困った顔をした聖が仕方なさそうに岸の前に立つ。
「あいつに何言われたんだ」
ごまかされたくなくて、ついでに駆け引きをする余裕もなくて、岸は単刀直入に問うた。
聖は驚いた顔をして、口を開いて閉じて、それからうつむいた。
「神栖とかいうやつのことだろ。前に店に来ていた」
岸の口から神栖の名が出ると聖はぱっと顔を上げて、岸を驚いたようにみて、うろたえる。
「何を言われたんだ」
答えを待たずに問いかける。
「付き合っていたんだろう」
たぶん気付かれていないと思っているだろうと聖に、岸は知っているとはっきりとした言葉を突きつけた。
驚愕と怖れと恥じらいと様々な感情が聖の表を通り過ぎ、それから睨むように岸を凝視し、そしてそれにも耐えられなくなったのか瞳を伏せた。
「より戻せとでも言われた?」
ビクリと聖の背が震え、聖は身体の脇で拳を固く握り締めた。
「聖」
守ってやりたい。
沸き起こってきた衝動に岸は大切な名を呼んで聖を両の腕で抱き寄せた。
「岸……」
戸惑ったような聖の声を聞き、岸は抱きしめた腕に力を込めた。
驚きに目を瞠っている聖の顎を指で掬うと顔を近づけ、唇で唇を覆う。
顔の角度を変えて、さらに深く口づけ、息が苦しくなったらしい聖の軽く開いた唇を割って、舌先で聖の口腔内を撫で、逃げる聖の舌を追って絡めた。
「っん」
舌を吸い、口腔内をとがらせた舌の先で辿る。聖の息があがり、顎が震えるのに岸は嬉しさがこみ上げた。それに反するように聖の心を締めているのが自分ではない事実に心がささくれ立つ。
暴れる身体を抱き締める腕で固定し、逃げようとする顎を手の力を込めて阻止する。
「岸…い…きが…でき…」
息ができないと訴える聖の言葉に耳を貸さず、追い詰めるように岸は口づけを続けた。
身体を入れ替え、聖の身体を壁に押し付け、さらに深くキスをする。
唇を離したときには、聖は走ったあとのような呼吸を繰り返していた。
「俺にしておけよ」
壁に聖を押しつけたまま、岸は聖の首筋に唇を落とす。
「岸。やめっ…」
首筋に唇と舌が這う感触が嫌だったのか聖は、岸を腕で押し返そうとする。
それをなんなく封じ込めて、岸は聖の耳たぶを甘く噛んだ。
「あっ…やっ…」
小さく可愛らしい声を上げた聖に身体の奥がかっと熱を持つ。このまま自分のものにしてしまいたいと聖の耳に舌を這わせ、外耳を甘噛みする。
「やめろって、岸。離せよ。何を考えているんだ」
身体を強ばらせたかと思えば、いきなり暴れだし、聖は抱きしめた腕からすり抜けた。怒りを含んだ瞳で岸を睨み付ける。そんな顔すら、自分を煽ることにしかならないと岸は上がる体温を認める。
「おかしいよ。お前」
睨みつける鋭い視線をものともせずにまっすぐに受け止めて、岸は諦めたように自嘲した。腕を伸ばして、聖の二の腕を掴んで引きずった。
「岸、離せ」
暴れられてもその腕は離さず、それにさらに怒りを覚えたのか聖は叫ぶ。
岸は無言で隣の寝室に聖を引きずりこむとベッドの上にその身を突き飛ばす。
いきなり身体を押された聖は、ベッドに背中から倒れ込んだ。
その上に乗り上げるように岸は身体で聖の動きを封じ、耳元に唇を寄せる。
「俺のものになれよ。そしてあんな辛いことは、あんな野郎のことは忘れてしまえ」
甘い岸の囁きに聖はかすかに身を震わせた。それすら、嬉しくて岸は聖を抱きしめて、耳元に唇を落した。
「俺とのキス、気持ち悪くなかっただろう」
身じろいだ聖に同意を感じて、岸は抱き締めた腕に力を込める。
自分の下で身体を固くした聖の耳を岸は舌でなぞった。聖がぴくんと背を跳ねさせる。
「っん、岸…やめ…ろって」
自由になる手で聖はのしかかっている岸の身体をどけようと暴れだす。身の危険を感じたのか、この状況の意味がわかったのか、聖は全力で身体を押し付けている岸から逃れようとしているようだ。だが、残念ながら、だてに運動部で鍛えていない。下から聖が押し上げようとする力を封じ込め、さらに身体で押さえつける。
「岸……なんで……やめろ……」
さらに逃れようと手足を振り回す聖をぎゅっと両腕で抱きしめた。
「好きなんだ」
耳に唇をつけたまま岸は告げた。想いはすべて言葉にのせたつもりだが、吐息にかすれた声が出た。そう、これが答えだ。友人のスタンスでいようなんてもとから無理だったんだと岸は抱きしめた温もりを確かめて思う。
「!」
腕の中の聖の身体がぎくりと動きをとめ、身体に力をこめたまま身を強ばらせる。
「好きなんだよ、聖。おかしいだろう。友達じゃなくてお前と一緒にいたいんだ」
逃がさないように、それでも壊さないように愛しさを込めてかき抱いて、岸は聖に言葉をおくる。
ずっと気になっていた。もう、出会った最初から好きになっていたんだと思う。やっと言葉を交わして友達になって、それでもいいと思ってきたけど、やっぱり聖を誰にも渡したくない。
抱きしめた聖の髪に岸は唇を落した。
岸の腕に抱き寄せられた聖はいきなりおとなしくなった。きゅっと唇をかみしめて、胸に宛てた手のひらが震えている。
「聖?」
全ての抵抗を止めた聖を怪訝に思って、少し身体を離すと岸は名を呼んだ。
聖はいやいやをするように頭を振る。
拒絶されたと思うと心が痛んで、岸は聖の首筋に唇を落とす。だが、暴れるかと思った聖は腕で瞳を覆い、身体の力を抜いた。
聖は何も言わない。言い知れぬ不安が岸を急き立て、岸は聖の来ているシャツのボタンに指を掛けると、片手でボタンを一つずつはずした。シャツの間から手を入れて、聖の胸を撫で上げる。
ビクリと聖の体が震えた。あんなに抵抗していたのに、眉を寄せて聖は岸をされるがままだ。はだけた白い胸に岸は唇を落とすが、聖は何も言わない。
「抵抗しないのか。合意したと思うぞ」
両腕をクロスして顔を覆っている聖には合意の意思などないのは分かっている。でも、言わずにいられなかった。
「いいよ、岸がそうしたいなら」
消え入りそうな声で聖は言った。
「俺の体が欲しいというなら、好きにしろよ」
「聖……」
岸は腕で隠された聖の顔を見る。聖は岸を見ない。腕で目を覆い言葉とは裏腹にそれだけで全てを拒絶しているようにも思える。
何を考えているのか、瞳が見えなくて真意はうかがえなかった。
「聖」
再度、岸は名を呼んだ。欲しいなら構わず自分を抱けと告げた聖の本心がわからずに岸は戸惑っていた。身体の下の聖は、力を抜いてシーツに沈み込んでいる。このまま抱いてしまっても聖は抵抗しないだろう。
「本気か?」
自分で押し倒しておいて、「本気か」もないと思うと岸は一人嗤う。
「ああ、お前が欲しいなら、いいよ、やるよ。だけど……」
聖の静かな言葉に岸は身体を震わせた。なにもかもわかったうえでの言葉の続きを岸は聞きたくなかった。だが、無情にも聖は言葉を継ぐ。
「身体だけな」
聖を抱き締めた岸の体が大きく震えた。それ以上何も言うなと首を左右に振ったが、聖は黙らなかった。
「俺の心は今ここに、俺の中にないんだ」
だから、お前に心はやれないと聖は岸にはっきりと告げる。
さらに力を込めて、岸は聖を抱き締めた。あまりの強さに聖の骨が軋む。それすら遠くに感じて、聖の髪に掌を滑らせ、身体をずりあげると岸は、聖の唇に自分の唇を押しつける。
そのキスで忘れさせてみせると、自分を振り向いてくれと息も継がせないほどのキスを贈る。
口腔内を舌で嬲り、きつく舌を吸い上げ、吐息すら吸いつくすように口づけて、ゆっくりと唇を離した。瞳が合う。視線が絡まり、岸は受け入れてほしいと懇願を込めて、聖を見つめる。だが、聖の瞳には自分は映っていなかった。岸の後ろに誰かを見ている。それがだれかなんて考えたくもない。岸は胸の痛みに耐えるためにぐっと奥歯をかみしめ、そして突き放すように聖を離した。
逃げるように背を向けると荒々しい足音を立てて部屋を後にする。
聖はベッドに横たわったまま追ってこなかった。岸の脳裏で聖の哀しげな瞳がいつまでも揺れていた。
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