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 ←第9章 心の在り処(3) →あけましておめでとうございます
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煉獄の恋

第10章 告白

 ←第9章 心の在り処(3) →あけましておめでとうございます
飲む酒がなくなっても、神栖に安らかな眠りは訪れない。
昨日、聖のバイトする店に行った。なんとか聖と話がしたかったからだ。しかし、返ってきたのは拒絶だけで、その上、あの友人とやらにすでに自分のもののように聖を扱われ、苛立ちと焦燥、そして身を灼くほどの嫉妬で気が狂いそうだった。
逃れたくて、酒に手を出し、時折強くこみ上げる暴力的な苛立ちを抑えるため、酒瓶を投げつけ粉々にした。
すでに、床はガラスの破片と瓶から飛び散ったアルコールに覆われている。酒は今朝がた尽きてしまったが、グラスを手で弄びソファに座ったまま、そのままずっと過ごしている。いまは、いつなのだろう。
武流が来たような気もするがあれも夢だったのかもしれない。時折、訪れる眠りに身を任せると夢が神栖を苦しめた。
潤んだ目で誘う聖を引き寄せ、キスをすると、感情のない瞳で自分を見つめ、
「来ないで。もう会わない」
と告げられ、息を飲んで目が覚める。
あの友人と聖が絡まっている夢も見た。もう、どこまでが夢で、どこまでが現実かの境目もあいまいだ。
誰かを想って自分を無くした経験のない神栖は、この激しい情熱に翻弄される。その自分を冷静に見ているもう一人の自分が苦く嗤っている。
聖、お前を失ったら、もう生きているのさえ無意味かもしれない。
快活で自信過剰、何事も自分のエネルギーと常に前向きな思考ですべてを思うが儘にしてきた神栖はそこにはいなかった。心血注いだ会社にさえ、今週はまともに顔を出していない。
ここまで溺れるとは、俺はあいつと会った瞬間に狂ってしまったに違いない。
それともいままで、他人を弄んできた罰か。
神栖自身は本気にならなかった恋でも相手が思いこんでしまうことは幾らもあった。別れたら、生きていけないと縋られたこともある。
しかし、恋愛を楽しんでいるだけの神栖にそれは理解できない感情で、自分にその気がなくなれば、それで終わりだった。
彼らの気持ちが今ならわかると神栖は自嘲の笑みを浮かべる。
それでも、こんな状況は自分には似合わない。おかしいと思うくらいの分別はまだ神栖の中に微かだが残っていた。また、それすら無くすほど子供ではいられなかった。
手の中で弄んでいたグラスを手にふらりと立ち上がる。これだけ飲んでも酔いも眠れもしなかったのだから、もう無駄だと、水を飲みにキッチンへと立つ。
水をグラスに注ぎ、飲み干して、酒以外のものをずっと口にしていなかったことを思い出した。それに、また昏く嗤う。
もう一杯と水をグラスに満たしたところで、テーブルに放りだしてあった携帯の着信を告げるライトが点滅しているのに気付いた。
ちらりと時計に目を走らせ、すでに、夜中の3時を回っている。こんな時間にと思ったが、心配した武流かもしれないと携帯を手に取った。
着信表示を見て、神栖は動きを止めた。電話は切れずにライトの点滅を繰り返す。あまりの驚きに反応が遅れたが、慌てて神栖は電話に出た。
「聖」
出て相手の名前を呼んだ。
自分で掛けてきたくせに、相手は名乗りもせず、用件も切り出さない。無言だ。
「お前なのか」
再度、問うと
「いま、どこですか」
挨拶も何もなくいつもの平坦な声が電話口から返ってきた。
「部屋にいるが……」
こんな夜中にかけてきて、どこにいるかと訊くこと自体おかしいといつもの神栖なら判断しただろうが、そんなことすら頭に思い浮かばなかった。
「じゃあ、ここ開けてください」
その言葉を理解するのに、頭が認識するのにひどく時間を要した。
「お前どこに……」
「インターフォン鳴らしましょうか」
その言葉に慌てて玄関へと移動し、震える手でドアを開けた。
ドアの前には黒いコート姿の聖が無表情で立っていた。ふらりとやってきただろうことが分かる格好で、手には携帯電話を持ち、耳にあてていた。
「聖、お前」
これも夢の続きかと神栖は何度か目を瞬いた。
「入れてくれませんか。話があるんです」
声が固いが、どこからみてもいつもの聖だ。ただ、ずいぶん他人行儀な口のきき方に戻ってはいたが。
神栖は身を横に引いて、聖を部屋に招き入れた。
神栖のわきをすり抜けるように部屋に入ると聖はまっすぐリビングに向かった。そして入り口で立ち尽くす。荒れ果てた部屋の状況に驚いたのだろう。
実際、部屋はひどいありさまだ。床を埋め尽くすガラスの破片とアルコール、こぼれそうなほどの煙草の吸殻。
後ろから神栖は驚愕のまま立ち止まった背中からそっと聖を抱き締めた。夢でないことを確かめたかった。
だが、やんわりと振りほどかれて、神栖は痛いほどの落胆を覚え、腕を垂らしたまま動きを止めた。
神栖の腕の中から抜け出した聖はダイニングテーブルに行くとコートを脱ぎ、椅子の背に掛ける。
「話があるんです」
部屋の入口になすすべもなく立ち尽くしていた神栖を見つめて、聖は先ほどの言葉をくりかえした。
小さく口を開き何を言ったらいいかわからないのか、また閉じて、思いつめた瞳をまっすぐに神栖に向ける。
何度も逡巡した後、聖は椅子を引いて腰を下ろす。
話し合うつもりなのだと解釈して、神栖は深くため息を吐くと聖の前の席に着いた。まっすぐに聖を見つめる。聖も視線をそらさなかった。
長いのか短いのかわからない沈黙のまま静かに見つめ合っていると、聖は意を決したように一つ息をついた。
「俺を解放してくれませんか」
「それは、別れて欲しいという意味か」
とっさに切り返したが、声が震えていないか神栖には自信がない。
「そんな簡単なことではないんです」
そこで聖は言葉を切る。神栖は唇を引き結び、聖の次の言葉を待つ。鼓動が早くなり、胸が痛い。聞きたいのか聞きたくないのか神栖にもわからなかった。
口を開きかけ、ためらい、また開きを繰り返し、聖は一度瞳を固く閉じた。
そして開くとまっすぐに神栖の視線を捉える。
「あなたが好きです」
神栖は瞳を大きく見開いた。聖の言葉が神栖を射ぬき、心拍がどくんと大きく波打ち、息を止めた。
聖が自分のことを好きだといったのはこれが初めてだ。絶対に口にしなかったセリフ。ベッドの中で乱れて理性が飛んでも口にしてくれたことのない言葉。
「欲しいのはあんたの全てなんだ。あんたを構成しているもの、神栖輝を神栖輝にたらしめているもの全てです」
淡々と語られている中に聖の熱情を感じとって、その熱さに神栖は眩暈に似た高揚感を覚えた。
「常軌を逸しているのはわかってる。それでも、俺よりあんたの心を占めるものが存在することが俺には許せない。それが見えるたび、俺の中で何が壊れて行く。もう、耐えられない。会いたい。声が聞きたい。触れていたい。俺の欲望には際限がない。あんたの邪魔になるくらいに」
言葉を紡ぐ聖の声が震えている。抱きしめたいと神栖は思った。
「そんなことを言ったら、あんたは俺から離れて行く。それにも耐えられない。だから、ずっと逃げてた。あんたからも自分からも」
そこまで言って、聖は目を伏せた。
「だから、俺を解放して。神栖さんを全部なんてお前にはやれないと言って、二度と俺に会わないで、もう捨ててください」
そこまで一気に言いきって、聖は唇を引き結んだ。
テーブルがなかったら、奪うようにきつく腕に閉じ込めていただろうと神栖は思った。ここまで好いた相手に想われて、手を離す奴などいないだろう。
初めて自分から好きだと言った聖が愛しくて、どうにかなりそうだ。
自分の中の想いを伝えたら何故、俺が聖を捨てると思うのだろう。なんと答えを返せば、この他人(ひと)の気持ちをちっとも理解しない男に自分を分かってもらえるのだろうか。
神栖は震える身体を拳を握ることで黙らせて、聖をまっすぐに見た。
「聖」
名を呼ぶと聖が肩が大きく揺れた。
「俺にはお前だけだ」
想いをのせて告げたはずの言葉に、聖は左右に首を振る。
「全部、誤解なんだ」
それにも首を振り続ける聖に、最初の糸から解かないといけないと神栖は理解する。そもそも聖がこんなことを言いだしたのもあの金曜日が原因なのだから。
「お前と付き合いだした秋から俺にはお前しかいない」
「嘘、結婚するんでしょう。相手はちゃんとした女性だ」
神栖は大きくため息をついた。やっぱり誤解している。
「あれは、接待相手。仕事の付き合いで、取引相手だ。本当に仕事だったんだ」
俯いたままの聖は何も言わない。肩が小刻みに揺れていて、駆け寄って抱きしめてしまいそうな腕を力を入れることで神栖は抑え込んだ。
「だから、俺の心を占めているのはお前だけだ。最初からな」
言葉を切って聖を見つめるが、聖は身じろぎもせず唇を引き結んだ。
見つめたまま、神栖は待った。聖の気持ちに自分の言葉が浸透するまで。
長い沈黙が落ちる。神栖は聖から視線を離さない。少しの変化も見落とさないように。
俯いたままの聖も何も言わず、微動だにしない。
とうとう、神栖は立ち上がった。我慢できなかった。席を回って聖の後ろに立ち、後ろから抱き締める。腕の中の聖は震えていた。
「全部やるよ、お前になら」
腕の中の聖がひくんと身体を大きく震わせた。
「お前以上に大事なものは俺にはないから」
完敗だと神栖は思う。神栖輝ともあろうものがこの年下のまだ独り立ちもしていない学生に完全降伏していた。心を根こそぎ持って行かれ、聖がいなければ生きていくことはつまらないだろうとすら思う。
なのに、聖は小さく首を横に振った。
「俺を解放してくれ。一度手に入れたら、もう絶対に止められない。俺はあんたをがんじがらめにしていつか壊してしまう」
神栖は抱きしめた腕に力を込めた。離したくなかった。別れる気なんて毛頭ない。
「それはできない。俺はすでに止められないからな。お前を解放したら、いつかではなくいま俺は壊れるだろう。今週で実証済みだろうが」
「おれのせいとはかぎらないだろう!」
いきなり聖が怒鳴る。
「あんたの言葉なんて信用できない。いつもそうやって丸めこまれるのはもうごめんだ。言ってくれ。本当はちゃんと彼女がいて、おれはただの遊びなんだって」
「お前は俺といたいのかそれとも逃げたいのか」
神栖も声を荒らげていた。好きだと言いながら、別れたいという聖がわからない。自分を壊せるのは聖だけだと告げたのに、遊びだと言われて、神栖はかっとした。
「もう、こんな思いをするのは嫌なんだ。一緒にいたって離れてたって、俺はあんたのことで苦しむ。もう終わりにしたい。全て。この手を離してくれれば」
「それで、お前の苦しみは終わるのか」
神栖の言葉に腕の中の聖は首を横に振る。
「終わらない。でも、捨てられればいつか時が解決するときが来るかもしれない。このまま、あんたに飼われていたらその日は永遠に来ない。ずっと苦しいまま……」
「俺を受け入れて、二人で幸せになるという選択肢はないのか」
苛立ちが声に険を込める。一歩も引かない聖に愛しさと同じだけの怒りが込みあげた。
「無理だ。俺の欲望には際限がないんだ。手に入れたら次にはさらにもっと欲しくなる。自分でもどうしていいかわからないくらい、あんたのことになるとどうにも自分が制御できなくなってしまう」
神栖にはわからない。究極の口説き文句を口にしながら、聖はこの手を離せという。
矛盾している想いに神栖は怒りを募らせた。
思う儘に振る舞えばいい。聖になら何をされても許してやる。欲しいというならなんでもくれてやろう。
神栖は唇を噛みしめた。
この手を離すことはできない。逃がしてなんかやるものか。お前は永遠に俺のものだ。
どうしたらこのかたくなな青年は自分の腕から逃げることをやめるだろうか。
だが、ここでいくら言葉を連ねても、ましてや身体を奪っても聖は納得しないだろうと神栖は思った。
黙ったまま聖の温もりを感じて、神栖は聖をギュッと抱きしめた。
「ここにいろ」
さらに一度強く抱きしめて、神栖は耳元に囁く。
「逃げるなよ」
突きつけるように告げると、聖を離し、寝室で神栖は外出できる格好に着替えた。
リビングに戻っても聖はテーブルについたままだ。
逃げなかった聖に、少しの安堵を覚えて、神栖は小さくため息をつくと、その腕を掴んで立たせ、聖のコートもとって、引きずるように歩き出した。
驚いたように自分を振り仰ぐ聖の顔も見ずに玄関まで引きずって行く。
「神栖さん……?」
話しの途中でいなくなったかと思うと急にどこかへ連れ出そうとしている神栖を不審に思ったのだろう聖は神栖の名を呼んだ。
神栖は全く返事をせず、エレベーターに乗り込み、地下駐車場へと降りて行く。
硬く口を引きむすび、身体を荒れ狂う激情を押し殺す神栖に聖は不安そうな瞳を向けた。
車の助手席の扉を開け、聖を助手席に投げ込んだ。
「神栖さん。どこへ。まだ、話は終わってない」
理不尽だという響きを声に潜ませて、聖が助手席で叫ぶ。
神栖は無言で運転席に乗り込みエンジンを掛ける。シボレーの唸るようなエンジン音が駐車場に反響した。
「停めろよ。あんた飲酒運転だろうが」
「最後にアルコールを口にしてから18時間は経ってる。酒気帯びくらいの数値はでるかもしれないが飲酒運転じゃない」
大体がめっぽう酒に強い神栖である。18時間も前なら数値もでないだろう。それでも心配なのか、聖はきつく神栖を睨み据える。
「どこへ連れて行く気だ」
それには答えをやらない。
「神栖さん!!」
「うるさい」
怒鳴って、神栖はアクセルをぐっと踏み込んだ。きゅるるとタイヤをきしませて車を勢いよく発進させて、口を閉じた。
呆れたような驚いたような聖の視線に気づいていたが、それをあっさりスルーすると、聖はあきらめたのか、シートに身を沈めてフロントグラスに視線を戻した。
明け方の街を車が疾走していく。高速道路に入り、さらにスピードを上げる。
身体を渦巻く、愛しさと怒りと、聖を離したくないという強い想いが神栖の内を暴れまわる。
聖も口をきかない。彼も覚悟を決めたのかもしれないと思う。
薄明るくなってきた高速道路をシボレーは駆ける。二人の男の決意を乗せて。
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