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煉獄の恋

第13章 休暇

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「なにやってるんだ」
書斎から出てきた神栖は、キッチンに立った聖を見て驚いた声を上げた。
吉井に休暇宣言をしたものの、メールチェックとたまに鳴る吉井からの電話からは逃れられないらしく、神栖は時折書斎にこもって仕事をしている。
買い物に行ったり、周りをドライブしたのも楽しかったが、聖は神栖が仕事をしている間に、リビングのソファで本を読んだり、ネットで調べ物をしたりして過ごす時間も気に入っている。
好きな人と同じ空間にいて穏やかに時が流れるのは居心地も良く、安心だ。
しかし、神栖の方は暇さえあれば、聖の側にいたがった。
一昨日も消えかけた指の傷から岸のことに話が及んで、岸との関係を疑った神栖に、岸との間にあったことすべてを白状させられた挙句、明け方近くまで抱かれた。もう許してと懇願してもやめてもらえず、神栖の気が済むまで翻弄された。
おかげで昨日は身体がだるくて、一日中眠くて、なんだかうつらうつらして過ごしてしまった。こんな夜も昼もないような生活を続けていると駄目になりそうだ。
神栖は日がな一日、ベッドで過ごしてもいいと思っている節があるが、そんなことをされたら、聖の方がもたない。
だから、聖はできるだけ朝には起きて、寝室には近寄らないようにしていた。
今日も朝には起きだして、朝食をきちんととった。その後、平日ということもあって、神栖は書斎にこもって仕事をしており、今、やっと出てきたというわけだ。
「何か変?」
野菜を切っている手を休めて、聖は驚きに目を見開いている神栖を見た。
「もうすぐ昼だし」
「そうなんだが、だから、昼食の用意をしようかと」
「そんなにかからずできるから、輝さんは座っててよ」
休暇に入ってから、聖は神栖を下の名前で呼ぶようにした。呼び捨てでいいと言われたが、さすがに目上の人を呼び捨てにはできなくて、“さん”をつけた。
休んでいてと言ったのに、神栖はキッチンにやってきて聖の背後に立った。手元を覗きこまれる。やりにくいなと思いながらも野菜を切り刻む手は止めない。
「何を作っているんだ」
頭上から降ってくる声がくすぐったくて、聖は首を竦めた。
「あとでみればわかるよ」
包丁を持っているから振り返るわけにもいかず、聖は小さく頭を振った。
「それより、手元を見られていると落ち着かない。そっちで座ってて」
強めにお願いすると、渋々、神栖はキッチンから出た。
どうも聖が何をどうするのだろうと神栖は気が気ではないらしい。
そういえば、以前にも手伝ったら、「危なっかしくて、見ている方がいらいらする」と言われ、何もさせてもらえなかったことを聖は思い出した。
いまもリビングから聖をうかがっては心配そうな神栖に聖は苦笑を漏らす。手つきが危なっかしいとでも思っているのだろう。
だが、それにはとりあわず、聖は野菜と肉を適当なサイズに切り、フライパンで炒める。
鍋があおれないので、箸で混ぜながら炒めていた。見つめていると口を出したくなるらしい神栖を聖は小さくにらむ。一瞬、神栖は口を小さく開いたまま固まって、それから、ひどく仕方なさそうにソファに移動し、座ると新聞を広げた。
いらいらした様子で煙草にまで手を伸ばしている。
ここまで心配されるのはいくらなんでも不本意だ。小さな子供でもあるまいし、過保護すぎるよなあとだんだん笑いがこみあげて、聖は神栖から視線をはがして、作業に戻る。
静かな室内に油がはじける音だけが響く。
見ていても見ていなくても、気になるらしく、しばらくして新聞を畳み、ばさりと乱暴にテーブルに置く音が聞こえた。顔を上げるとソファの背から何度もキッチンを伺う神栖が見えて、聖は笑いをこらえながら、フライパンの中身を皿に盛り付けていく。
「どこで食べる?」
顔も上げずに訊くと、。
「そっちのダイニングテーブルで」
と気もそぞろな回答が返ってきて、また聖は笑った。そんなに心配しなくても簡単なものくらい作れるのに。
キッチンから出ると、綺麗に盛りつけたサラダの鉢をテーブルに運び、テーブルのセッティングを始める。
飲食店でのバイトのおかげもあって、テーブルのセッティングはお手のものだ。
作ったものを手際よくテーブルに並べてからテーブルの上を見渡し、聖は満足げに微笑んだ。
「できたよ。席について食べよう」
神栖に視線を移すと真っ向から目があってしまい、聖は少しドキリとした。
ずっと見つめていたのだろう神栖をいきなり意識して聖はいきなり恥ずかしくなった。
煙草の火を灰皿でもみ消して、神栖は立ち上がるとソファを回って、テーブルへと近づく。
テーブルには、サラダとコンソメスープ、焼きそばが並んでいる。
彩りも盛り付けもきれいで、かなりおいしそうにできたと思う。
席に着く前に神栖は聖に歩み寄り、そのまま抱き締められた。
「食事だって。座れよ」
軽く抱き締め返して、聖はあせったように言う。
「ありがとう」
囁くように礼を言われ、神栖は聖から身体を離すと、軽く唇にキスを落とした。触れるくらいの挨拶のようなキスだったのに、聖は頬を染めて、目を吊り上げた。こんな明るいリビングでの接触は本当に恥ずかしい。
毎夜、何度も身体を重ねていたって、なんだか、くすぐったくって恥ずかしく思うのには変わりがないし慣れない。
聖の初心な反応が面白かったのか神栖は笑みを返すと自分に用意された席に着いた。
その向かいに聖も座る。
「いただきます」
箸を取り、聖の心づくしを口に運ぶところを聖は固唾をのんで見守った。
「ああ、うまいな」
焼きそばを呑み込んで、神栖は聖に笑いかけた。
「本当?」
「嘘ついてどうするんだ。野菜も柔らかいし、結構、本格的な味がする。料理なんてできないと思っていたのに、こんな特技があったんだな」
神栖の褒め言葉に聖は嬉しくて、満面の笑みを浮かべた。
「料理はできない。できるのは、これだけなんだ」
照れくさくて、困ったように神栖を見て、聖は自分も箸を口に運ぶ。
「よく、母が昼ご飯に作ってくれて、すごく好物だったから、これだけ作り方を習った。作ったら家族が褒めてくれて、うれしかったから、気が向くとよく作っていたんだ」
「おいしいよ、本当に」
「よかった。いつも作ってもらってばかりだからね。たまには、お返しがしたいと思っていたから、食べてもらえてよかった」
聖の言葉に神栖が困ったように笑う。どうしてかわからなくて首を傾げると、それにも笑われた。
「なに?」
やっぱり口に合わなかったんだろうかと聖は心配になった。不安そうな目をしていたのか、神栖はまっすぐに聖を見て、優しげな笑みを浮かべる。
「そういう可愛いことを言われると俺の理性が持たないって、少しは学習して欲しい」
言われた言葉がわからなくて、聖はきょとんとした顔を返した。
その反応がおかしかったのか神栖はくっくっと笑って、艶のある瞳を見せた。
「俺のためを思ってやってくれたんだから嬉しいよ」
口ではそう言っていたけど、神栖の瞳は聖を腕に囲った時のような熱くて欲の籠った光を宿していて、『食事もだけどお前が食べたい』と言われたような気がして、聖は首まで真っ赤になった。
また、笑われて、憮然とした聖を眺めながら、神栖はサラダのトマトにフォークを刺す。
「こっちのスープとサラダもお母さんに習ったのか」
話題が料理に戻って聖はほっとした。
「それは、バイト先。あの店は、10時前なら食事も出すんだ」
「シェーカーも振れるのか」
「少しなら」
自信なさげに聖は答える。まだ習っている途中で、なんでもというわけにはいかず、基本的な簡単なものなら作れる程度だ。
「あそこがミニバーになっていて、大抵のアルコールはあると思うから、よかったら使え」
神栖の指さした先に視線を移すと、ソファの脇、暖炉の反対側に、腰高の大きめのサイドボードがおいてあり、その中に瓶が並んでいるのが見えた。
「簡単なものしかできないよ」
「いいさ。楽しみにしている」
目の前の皿を綺麗に平らげて、神栖は箸を置く。
「ごちそうさま、うまかったよ」
それに聖は笑い返した。自分の作ったものを神栖が残さず食べてくれたことが嬉しい。
片づけは神栖も手伝い、その間に聖は珈琲を入れる。
良い香りが部屋に満ちた。
「輝さんは珈琲には拘っているよね」
豆も珈琲マシーンも最高級で、いつ淹れてもおいしく飲める。
「そうだな。珈琲にもだ。好きな物には拘る性格なんだ」
淹れた珈琲をソファのサイドテーブルに置き、聖はソファに腰掛けた。カップを手にとり、口に運ぶ。
その横に当然のように座ると神栖は、ごろりとソファに横になり、聖の膝に頭を乗せた。
「こぼれるって。熱いんだから危ないよ」
「大丈夫」
下から聖を見上げ、目が合うと微笑んで、神栖は目を閉じた。
「しばらくこのままで」
囁くように言われ、聖は目を閉じた神栖を見つめる。どうしたのだろうと思ったが、しばらく黙ってじっとしていた。
「珈琲冷めるよ」
目を閉じたままじっと動かない神栖にどうしたらいいかわからず聖はとりあえずの声をかける。
「ああ……」
返事の語尾が消え、神栖は寝息を立て始めた。聖の膝を枕にしたままで。
聖は起こさないように、カップをソーサにそっと戻した。
そして、神栖の寝顔を上から眺める。こういうことは滅多にない。神栖は他人が側にいるとあまり深く眠れない性質だということを聖はよく知っている。
聖といても聖が起きると大抵起きているし、先に寝ることもない。
気を使っているのかと寂しく思ったりしていた聖としては、無防備に自分の膝で眠ってしまったのが嬉しい。
心許されている気がするからだ。
しかし、神栖が聖の前であまり眠らないのは、別に警戒しているためではなく、腕に聖を抱くと全て自分のモノにしたくて眠れないだけだったのだがそれは聖のあずかり知らないところだ。
聖は自分の膝の上で眠っている神栖を飽くことなく眺めていた。目を閉じると端正な顔が引き立って、綺麗だと素直に思う。起きているときには瞳の光が強く、荒々しい感じもするため、綺麗というよりは恰好が良いという感じだが、無防備な神栖はきれいで、ちょっとかわいい。
輝さんが好きだと眠っている神栖を見ながら聖はつくづく思う。
あんなに逃げたかった想いだったが、目を背けず、認めてよかったと思う。
あの時、この手を離してしまったら、この満たされた想いも安らぎもこの手に入らなかった。
「輝、好きだよ」
聞こえていないのを承知で、聖は囁く。そっと手を伸ばし、触れるか触れないかの距離で唇をなぞった。
何か感じたのか微かな吐息が唇からこぼれ、聖は満足げに微笑んだ。
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