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煉獄の恋

第15章 愛の形

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雛段型の講義室の真ん中で、聖は教授が誰かの論説について解説するのを聞くともなしに聴いていた。いつもであれば、熱心に耳を傾けているはずの講義もなぜかここ数日は耳を素通りしている。
神栖とただ二人きりの休暇から戻ってきたのは、すでに3日前。日曜日だし泊っていけとの誘いを断り、直接自分の家まで送ってもらい、10日ぶりに部屋に帰ってきた。
そして、月曜からいつも通り大学へ通う生活が戻ってきていた。
違うのはここのところやたらと側にいてくれた友人がいないこと。
大学での講義は専攻が違うとなかなか授業は同じにならない。確かに大学で会うのはまれなのだが、それにしてもこれだけ顔を見ないと言うのはやはり避けられているからか。
当たり前か。
そう思って、聖は溜息をついた。
それだけのことを自分は岸にした。
友情を愛情と勘違いさせるほど岸の気持ちに甘え、その気持ちには答えられないと突っぱねた。岸が自分を好きだったことも予想外だったが、それにしてもひどいことをしたと聖は自分を責めていた。
講義の声を遠くに聞きながら、聖は再度溜息をついた。
そして、すぐ真横に人の気配が動いたのに気付き、顔をあげる。そのまま、聖は凍りついた。

「よう」
小声で岸はそう言って、当たり前のように聖の横に座った。
聖は目をこれ以上ないくらい開いて岸を凝視していた。
何故と大声で叫びたい衝動を抑えているようで、口を手でふさいでいた
「そんなに目を見開いていると瞳が落ちるぞ」
にやにや笑いながら岸はそう言った。
いつもクールで、感情の起伏をあまり表に出さない聖をこれだけ驚かせたことに岸は、ひどく満足感を覚えた。
『体調も戻ったから帰宅した。明日から、大学』
短いメールを貰ったのが3日前の日曜日の夜中だった。自分を遠ざけるために帰省するとメールを送ってきたのだろうと思っていた岸は、戻ってきたことを告げる聖のメールに面食らった。
拒絶されたのではないのか。
しかし、わだかまりが大きすぎて、それに返信もできないままになってしまった。そして、幸か不幸か水曜日の今日まで、聖と同じ講義はなかった。
岸は会うか会わないか何度も煩悶し、遠くで聖を見かけては避け、会えないと思うと目で聖の姿を探していた。
こんなことでは余計に意識して辛いと判断したのが今朝のことで、岸は講義に出ることにし、そしてありったけの勇気を振り絞り、隣に座った。
「岸……」
「出席、もう取っちゃった?あと5分で終わるけど。今日も欠席扱いはやばいな」
聖が何か言うのを遮って、岸はいつものようなセリフを吐いた。
「この講義の出欠は、最初だ。知っているだろう」
軽い岸の言葉に聖はつい真摯に返事をしてしまったようで、それに気づいてバツの悪そうな顔をする。いつもの生真面目な聖に笑いが込み上げる。
「それじゃあ、今日はここまで。課題の提出は来週の水曜日。それ以降は認めないからそのつもりで」
教室の教壇では、講義の講師が終了の合図を告げた。
「課題って?」
「あとでノート貸すよ」
手もとの筆記用具を片つけながら聖は告げる。言ってしまってから、それでよかったのかと思ったのか、鞄の蓋を開ける聖の手が震えていた。
「サンキュ。この後、講義ないだろう。早いけど、昼に行こうぜ」
意識している聖に岸もどう接していいかわからず、いつもより明るく軽く受け答える。
「岸」
聖は荷物を持つと岸を見た。何か言いたげに口を開くが、次の講義のために人の流れが講義室に向かっているのに気付くと、ふいと目をそらし、鞄を肩にかけた。
そして、そのまま腕を伸ばし、岸の腕を掴んだ。
「ちょっと付き合え」
硬い聖の声に、岸は抗わずに従った。岸の腕を逃がさないようにきつく掴む聖の手が震えていたからだ。
聖は無言で歩き続け、人気のない学部棟の裏に向かう。
ちょっとした運動ができそうな広場にはいくつかベンチが置かれており、昼休みともなれば、ここで昼を取る学生などもいるが、まだ、昼には早いためか、今はしんとしていた。
真冬の2限目だ。こんな寒空にここで、寛ぐ学生はいない。
「あの……」
「元気になってよかったよ」
聖が口を開くのを見ながら、岸はその言葉を遮った。聖に何か言われたくなかった。罵る言葉も謝罪も聞きたくない。
言葉を遮られたからか、それとも少し語気が強かったからか、聖は驚いたように岸を凝視した。
顔色がよくなっていたから口に出した言葉だったが、それは、岸の率直な感想だった。聖から口実のようにもらったメールを揶揄った訳でもない。目の前で、驚きと困惑に揺れる瞳で自分を見つめる聖からは、先週の病的な雰囲気はさっぱりと払拭され、岸のよく知る聖がそこにいた。。
心はどこかに置いてきたと言っていたが、それを取り戻したのか、預けたままでも良くなったのか、それとも……。
開き直っただけだったりして。
岸は一人ごちた。
好きだと告げた友人に、欲しいならと身体を差し出してしまうような奴だ。開き直っても不思議はない。
聖は何か言いかけて、逡巡し、また口を開いては閉じるを繰り返す。
「元気そうだな。メール悪いな。返事しなくて」
なかなか言葉を発さない聖に焦れて、岸は会ったら言おうと思っていたことを口にした。
「ああ」
聖はその言葉に心ここにあらずの様子で相槌をうち、そして俯いた。
「俺、お前に酷いことを……」
消え入りそうな声で聖は呟く。
「謝るなよ」
岸はそれを強く遮った。
「岸」
「軽蔑されるのは俺の方だからな。お前、襲われそうになって謝る馬鹿がどこにいるんだ」
そうだ、強姦されそうになって謝られたら、自分の立場がないと岸は思う。悪いのは自分であって聖ではない。
「気持ち悪いだろう。友人の振りして、お前のことをそういう目で見てたんだから」
自嘲して告げると、聖は首を横に振った。
「俺、岸のこと気持ち悪いとか思っていない。あのときもそんな風に思わなかったし。びっくりしたけど、それも俺が岸に甘えて寄りかかったのが悪いんだ」
「謝ったら怒るからな」
今にもごめんといいそうな聖を怒った声で遮ると、聖は口をつぐんだ。沈黙が落ちる。
うつむく聖に、苛めているような気がして、岸は小さくため息をついて、それから笑みを浮かべる。
「でも、嬉しかったよ。メールくれて」
岸の言葉に聖がひくんと身体を揺らした。岸はさらに笑みを深くした。
「もう、顔を合わせることもないと思っていたからな」
ばっと聖は顔をあげ、岸を振り仰ぐ。微笑んでいる岸に面食らった顔をして、聖は岸をみつめたままだ。
「俺も。岸から声かけてもらえるとは思わなかった」
「だろうな。そういう顔してた」
聖は困った顔で岸を見た。眉がさがっていていつものクールな聖とは違って見える。
「聖、キスしていい?」
その顔がひどく可愛く思えて、岸は軽い感じで訊いた。目を大きく見開き、また驚きに固まった聖は、しばらく間をおいてきっぱりと首を横に振った。
「抱きしめたい」
「それも、だめ」
「だよな。俺完ぺきに振られてんのに、カッコわる。いっそのこと嫌われた方がよかったかも」
「岸!」
いきなり怒った聖に岸はびっくりする。
「なんで、嫌いにならないといけない。今までのままで………」
聖の語尾は消えてなくなる。
さすがに都合のいいことを言っていると思ったらしい。
「友達でって言ってる?」
聖をちらりと見て岸は訊いた。固まったままの聖の答えは待たずに、岸は首を横に振る。
「それは無理。まだ、お前のことが好きだし。仲がいい男を振る女みたいなこと言うなよ。私たちお友達でいましょうってやつ。男なんだからわかるだろう、あれはけっこう堪える」
落胆した顔で聖は凍りついた。
「俺は諦めないって言ってるの。俺はお前のこと友達としては見れないから」
「岸」
大きくため息をついて聖は岸を睨んだ。きつい光の瞳で睨みつけられ、岸は背筋がぞくぞくするのを感じた。
聖だ。やっと本来のこいつに戻ったんだな。
嬉しいと思う。あんな儚げな聖にはもう二度とお目にかかりたくはない。
「お前のこと好きだけど、俺がお前をそういう風に思うことはないから。お前は特別だけど友達だから」
「わかっているよ。それでも、覚悟しとけって言いたかっただけ。隙を見せたらいつでも口説くから。お前の心に誰が住んでいようが、俺には知ったことじゃないからな」
そう、それがどんなに辛くて、哀しくても、今のこの気持ちは捨てられないし、忘れられない。岸はそう思う。もう二度と会わないという選択肢を捨ててしまった以上、どんなに辛くても仕方がない。
相変わらず胸は痛いし、自制しないとふとした瞬間に聖を抱き締めてしまいたくなるが、それはもはや俺の問題だ。
「なあ。昼いこうぜ。腹減った」
これで話はおしまいと切りあげた岸に盛大に溜息をついて、それから聖はにこりと笑った。
「ああ」
頷いて歩き出す。隣に並んで歩きながら、聖がいつも通り振る舞おうと無理していることを感じる。
たぶん、謝っているんだろう、心の中で。
だが、口にした通り、謝罪されたくなかった。それは、自分の恋を全否定する言葉だから。だから、聖がいつも通りにするなら、それに付き合う。友達には戻れないが、それでもこの男の隣のポジションを捨てられなかったから。
「学食?外出る?」
問いかけられて、岸はぶるると身体を震わせ、肩を竦めた。
「近いとこにしようぜ。寒いし」
その言葉に聖は笑って、岸も笑い返して、二人で学食に向かった。
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