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煉獄の恋

第17章 会えないか?

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社長室の扉の開く音に神栖は、顔を上げた。
「神栖さん、まだ終わらないようなら何か買ってきましょうか」
「澤村くん、まだいたのか」
仕事の手を止め、神栖は社長室に入ってきた秘書を見た。
「これは、私の仕事ですでに終業時間は過ぎているのだから、待たずに帰っていいっていっておいたはずだが」
「わかってますが、神栖さんが働いているのにそうそう、早くは帰れません。今日は、吉井さんもいらっしゃらないし」
溜息を殺して、神栖は困った顔をした。
秋に雇い入れた秘書は、どんな仕事も嫌な顔一つせずにこなす優秀な人材だった。人見知りで、我儘な神栖ともなんとか折り合いをつけて上手くやっている。珍しく神栖もいい拾い物をしたと思ったくらいだ。しかし、尽くすタイプらしく、神栖が仕事をしていると付き合ってしまうことがしばしばあった。
それほど背は高くないが、すらりと姿勢がよく、容姿もなかなか整っている。卵形の顔に二重の目、通った鼻筋で髪は黒く短く、真面目な印象を受ける。
少し聖にも似ているかと思って、いやそうでもないかと思う。聖の方がもう少し儚い感じで庇護欲をかきたてる。
「いいんだよ。ここのところ会議が続いていて、昼間は自分のことができないからこうしてやっているだけなんだから」
神栖は、月曜から水曜の今日まで、就業時間は全て会議に追われ、その後、社長室にこもってたまった仕事を片つけていた。集中し始めると時間の感覚がなくなり、空腹に気付くといつも夜中近い。
「確かに空腹ではあるかな」
神栖は、手元にあった携帯を取り、時間を見た。時刻はとうに22時を過ぎていた。
「何か買ってきますか。それとも食事に行きます?」
問いかける澤村の声を聞きながら、携帯が点滅していてメールが入っていることに気付き、さっと目を通す。
「なんだって。あの馬鹿」
つい悪態が口をついた。澤村にも聞こえたらしく驚きの表情で、神栖を見る。
「いや、悪い。今日はもう私も帰るから、澤村君も帰りなさい」
言うなり、片付け始めた神栖に澤村が呆然とする。
しかし、すでに神栖の性格をかなり把握しているらしい澤村は、不思議でも興味があっても、わけありそうなことを質問されることを神栖が嫌うことを理解していたようだ。
「それでは。お言葉に甘えて失礼します。また、明日、お疲れ様でした」
余計なことは一つも訊かずに澤村は頭を下げた。
「ああ、遅くまで悪かったな。気をつけて帰ってくれ」
片付ける手を一瞬だけ止め、神栖が挨拶を返す。それに、澤村はなぜか嬉しそうに微笑い、きびすを返した。
澤村が出て行くと、神栖はポケットに戻そうとした携帯を再度開いた。
何度見てもメールは聖からで、
『今夜、会えないか。待っているから、もしも今日帰ってこないなら連絡してくれ』
と書かれていた。
「待ってるってあいつ鍵も持たずにどこで待つんだ」
携帯を閉じるとポケットに入れ、神栖は鞄を持って慌ててオフィスを飛び出した。


夜の21時に聖は、神栖のマンションのエントランスにいた。インターフォンを鳴らしてみたが、まだ、帰っていないらしく応答がなかった。
帰らないのならメールしてくれと昼間に送ったメールには返信がなかったので、とりあえず待っていることにした。
部屋の鍵は返したまま、今度会う時にといって貰ってない。そのうち、本人が帰ってくるなり、メールに返信があるなりするだろうと聖は、エントランスの風の当たらないところで壁によりかかり、神栖を待つ。
本も持参して来たから、何時間かはもつだろう。
初めて会いたいとメールをした。どう書こうかしばらく悩んで、会えないかとだけ書いた。
神栖に悪いと心を押し殺していたときには辛くてできなかったことが、素直になると決めてからしてみると今度はやけに恥ずかしかった。
喜んでくれるだろうか。それとも困るだろうか。
いつ来るかわからない相手を待つ間、珍しく本に意識が集中しない。
エントランスには風は入ってこないが、季節は真冬でさすがに気温は低い。かなり厚着をしてきたが、本を持つ手がかじかんだ。
帰らないかもしれない人を待つのは寂しいが、帰ってくると思えば楽しい。
自分が何をあんなにこだわっていたのかとおかしくもなる。本気だと認めたくなかったのかもしれない。
人を好きになるのにプライドなどいらなかったのに、認めたら負けてしまうような、従属するような気がしていた。今でも守ってもらいたいわけでも、従属したくもない、対等でいたいと思っているが、神栖を誰よりも好きになることが膝を折ることではないと聖はひどく回り道をしてわかったのだ。
彼を好きだと思うと心の中が熱くなる。
知らずに唇が微笑みの形を作っていた。
「聖!」
エントランスの自動ドアが開き、息せき切って神栖が駆け込んでくる。
顔を上げるとそのまま抱きしめられた。
「冷たい」
さらに強く抱きしめて、神栖は怒ったように言った。
「冷え切っているじゃないか」
「輝……」
その身体を押し返す。こんな誰が通るかもわからないところで抱き合っているものじゃない。
「大丈夫だ」
身体を離して、神栖を見る。
「仕事の邪魔だった……?」
怒っているらしい神栖の表情に聖は急に不安になった。
「違う。とにかく部屋に上がろう」
背を向けて歩き出す。聖もその背に従った。

部屋に入ると神栖は着替えもせずに、バスルームに向かった。所在なげに聖はリビングへ行く。部屋は荒れていたのが嘘のように綺麗に片付いていた。あの惨状を掃除させられた業者はさぞ迷惑だっただろうと思う。そのくらいの荒れ方だった。
寒いので聖もコートを脱がずに部屋の真ん中に佇んでいた。そう言えば、最初にこの部屋に来た時もどうしていいかわからず、こうして立っていたことを思い出す。
『身体で払ってもらおうか』と言われたのが遥か昔のことの気がした。あの時は、彼とこんな関係になるとは思ってもみなかった。
バスルームから戻ってきた神栖もコートを脱いでもいなかった。まっすぐ聖のもとに歩み寄り、コート姿のままなのを見ると不機嫌に眉を寄せ、ふんわりと抱きしめた。
「冷たいな」
「そう?」
神栖の肩口に頭を埋める。
「お前、俺がメールに気がつかなかったらどうするつもりだったんだ」
言われて、聖はきょとんとした顔をした。そんなこと考えもしなかった。自分は割とこまめに携帯をチェックするから。
しかし、仕事をしている神栖を思い返せば、ありえることだと思った。神栖は、仕事に向かうとスイッチが入るように仕事モードになり、その集中力たるや並みではない。多分、周りの物音もなにもかも遮断するに違いない。聖自身も勉強したり、本を読んだりするとそういうことがある。
耳元で溜息をつかれた。
「いつから待ってたんだ」
「9時過ぎくらいに着いたかな」
「1時間半か。この寒空に」
神栖は抱き締める腕に力を込めた。
「帰ってくるまでずっと待っているつもりだったのか」
それに頷く。
「どこか店で待っているとか、電話するとか、やりようがあるだろう」
呆れたような怒ったような口調で神栖が言う。
「仕事中に電話はできない」
「午後6時を過ぎたら、業務外だから構わない。それ以外でも別にいつかけてきてもいい。まったく、気付いたからいいようなものの、鍵も持ってないのに待っているというメールをみて、肝が冷えたぞ」
怒っている神栖の低い声に聖は瞳を閉じた。
「心配してくれたんだ」
嬉しいと思った。寒いのは覚悟の上で待っていたし、そうしたかったから待っていたのだが、神栖はメールに気づかなかった自分を責めて、さらに自分を心配してくれたと聖は心が温かくなるのを感じた。
「怒るぞ」
「ごめんなさい。次はちゃんと連絡を考える」
聖も神栖の背に腕をまわして抱き締め返す。ふわりと神栖のコロンの香りが鼻をくすぐった。
「お前はもう少し自分のことを考えてもいい。我儘でいいんだ」
仕事中なのを知っていて、会いたいとメールして待っていた。これ以上の我儘はないと思うのだが、神栖はこれ以上どうしろというのだろう。
神栖が聖の顔を覗き込んできて、瞳が合った。困った顔をしているだろう聖に神栖はふっと口元を緩める。
「嬉しかった」
言われた言葉に聖は瞳を大きく見開いた。どくんと鼓動が跳ねる。
「会えないかって言ってくれたのは嬉しかったんだ」
初めて聖からメールが来て、会えないかと書いてあった。心配で、急いでかけつけたが、こうして凍えてもいないのを見て、ほっとしたら嬉しさがこみ上げてきたと神栖が説明してくれる。
「まだ週末でもないし、最後にあってから3日しか経っていないのに会いたいと望んでくれてうれしかった」
覗きこまれた嬉しそうな神栖の瞳に視線を合わせ、聖は微笑んだ。
「会いたかったんだ。話したいこともあったし」
聖の唇に神栖は軽く唇を寄せて重ねた。触れるだけのキスをくれて、
「その前に風呂に入ってこい。ちゃんと温まったら話を聞こう」
と囁かれ、聖はさらに笑みを深めた。
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