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空の月を恋う

4-3

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大通り沿いの歩道を自転車を押して歩きながら、広夢は何度目かの溜息をついた。新宿駅へと続く国道は、ひっきりなしに車が通る。さすがに昼間の渋滞は日曜日のそれも深夜を回ったこの時間にはないが、それでも眠らない街には車が行きかう。
車のヘッドライトが広夢の茶色の髪を金色に彩って通り過ぎていく。歩道にも終電に急ぐ人が駅へと早足にその歩を進める。広夢はその流れを妨げないように、駅から離れる方向へと自転車を押して行った。
黎二の家がこの通り沿いだと知ってから、広夢は仕事帰りに裏通りではなく、この道を通って家路に着いていた。今日で四回目だ。会えることを期待しているわけではない。ただ、気になってどうしようもないのを紛らわしているだけだ。否、遠目でも見たかったのかもしれない。
中学生の初恋でもあるまいし、どきどきしながら、偶然でもあの人を見かけたらと期待している自分が滑稽だ。
火曜日になれば、きっと彼は店に来て、何事もなかったかの様に二杯だけウイスキーを飲んで帰っていくだろう。疎まれているかもしれないのに、それでもできるだけ彼を見たい。あの冷たい灰褐色の三白眼が甘く笑むことがなくても。
だが、近くを通りかかったからって、見かけるわけもない。広夢は彼の予定を知らないのだから。事実、昨日までの三日は影さえ見なかった。マンションを見上げても、日付が変わったばかりのこの時間では、灯りがついた部屋は少ないし、遮光カーテンを下げている部屋は灯りがあっても外からではわからない。
怪我をしてから五日目の日曜日。すでに、頬の痣は黄色みを帯び、目をこらさなければわからなくなっていた。鳩尾の痛みも薬を飲まなくなって二日が経ったが、時折、ひきつれるような気がすることもあるものの、忘れていることの方が多い。
「こんな時間だしな。日曜日だし」
マンションのエントランスまであと五十メートルほどのところで立ち止まって、広夢は呟いた。
こんなことしても会えないってわかってるが、何かしないと心の奥底がざわめいて落ちつかないし、眠れない。夢でも黎二の瞳が浮かぶ。あの日に広夢を睨んだそのままに。それにすら、背筋が震えるほどの悦びを感じている夢だ。黎二の瞳に映ることを願っている自分がいるのだ。
嫌われているっていうのに、本当にバカだ。
唇を無意識に指で辿りながら自嘲する。指で唇を撫でるのはあの日以来の広夢の癖。それも必ずと言っていいほど、黎二のことを考えているときに起きる。
溜息を一つ落として、広夢は自転車のハンドルを押して歩き出した。と、右手の車道からウインカーの音が聞こえ、広夢の姿をヘッドライトが照らした。広夢はそちらに顔を向け、眩しさに目が眩み、手を目の上にかざした。国道から、歩道へ車が左折で入ってこようとして止まる。とっさに反対側に視線を走らせると、大型のシャッターがゆっくりと音を立てて開いて行く。シャッターの隙間から数台の高級車が並んでいるのが見え、ああ、ここは駐車場なんだと広夢は思った。
「すみません」
自転車のハンドルを押しながら、広夢は頭を下げた。ここにいては、進路妨害になる。
いきなりヘッドランプが消え、広夢はなにごとかと車の方を向いた。フロントガラス越しに人影が見える。
広夢の足が止まった。アスファルトに縫いとめられたように動かず、膝が、がくがくと震えだした。電動モーターの音がして、運転席のウィンドウが開き、運転者が顔を出した。
「なにやってるんだ、ここで」
詰問調でそう言ったのは紛れもなく、広夢が見かけたらいいと思っていた人だった。
「わ……若槻さん……」
「邪魔だ」
動かなかった足は黎二の声でいきなり地面から離れた。慌てて前に移動する。
車はゆっくり歩道へ侵入し、また止まる。
「ここにいろ」
感情のこもらない瞳を広夢に投げ、黎二は短くそう言った。黎二を見つめ返し、広夢はとっさに小さく頷いてしまった。
ゆっくりと動き出した車はシャッターの向こうの坂になっている半地下の駐車場へ滑り込んでいく。車のテールランプが歩道を過ぎるとシャッターが閉まり始めた。それをぼんやりと見つめながら、広夢はまた動かなくなった足が震えだすのを感じた。

なんで逃げなかったんだろう。
広夢がそう思ったのは、黎二の部屋のリビングに立ちつくしてからだった。まさか、黎二と出くわすと思っていなかったから、顔を見たら頭の中が真っ白になってしまった。
促されるまま部屋に上がってきたが、どう振る舞っていいかがわからない。
「そこに」
指さされたソファを途方に暮れた目で見る。後ろで扉の開閉音が聞こえて、部屋の中の人の気配が途絶えた。黎二はそのまま廊下へと出たらしい。
「どうしよう……」
広夢は自分に向かって呟く。大体、なんで黎二が自分を部屋に上げたのかもわからない。ここにいた理由を訊くため?
それだけじゃないよな。だが、ここへ来るまでに彼が発した質問はあれだけだ。
理由。訳。根拠……。
意味をなさない単語が頭を回った。
そうだよ。痛みが引かないようなら医者に見せろって言ってたじゃないか。だからだ。痛みが止まらないから……だから……。そう言おう。
扉が開く音にびくりと身体が跳ねた。
「なんで突っ立ってるんだ?」
声のする方を振り返ると、黒のV字ネックのシャツにカーキ色の綿のズボンというカジュアルな姿の黎二が立っていた。見慣れたスーツ姿でないことに、広夢の鼓動が大きく波打った。
「い、いえ」
「そこ、座って」
再度、指し示された窓に背を向けたソファにぎくしゃくと腰を下ろす。どうしていいかわからなくて、膝に手を置いた左手を右手で握った。
「え?」
目の前に気配を感じて顔を上げると黎二が立っていた。頭上から手が降りてきて、左頬に右手が添えられて、親指が頬を這った。黎二の手の感触に肌がさざめいて、広夢は息をつめた。
優しい指の動きに、広夢の頭の中『なんで、どうして』と疑問符が駆けまわる。
「痛みは?」
問われた言葉に、慌てて首を横に振って否定した。
「ないです。もう平気ですから」
声が震えて、掠れた。
「薬は?」
「もう、飲んでません。痛みはないし。ホントにもう大丈夫ですから」
触らないでほしい……。
言葉をのみ込む。頬に血が上るのを感じて、目をぎゅっと閉じた。
どうしようとその一言だけが頭の中をぐるぐると回った。
「それで、なんであそこに立ってた?」
症状を訊くのと同じ口調で、黎二は先ほどと同じ質問をくり返した。きつく目を閉じたまま、さっき考えた言い訳を言わなきゃと広夢は思った。それがすでに効力をなくしていることにすら気付かなかった。
ここにいるのは、もう一度……医……。
「……あ……会いたかった……から……」
口から出たのは、まるで違う言葉……。はっと目を見開き、両手で口を覆った。
何言ってんだ、違うだろう。そう思うのに、口をついた言葉は取り消せない。それを思い知ったのは、遠くない過去で、死ぬほど後悔したはずなのに。
うろたえて目の前の黎二を見ると、怖いくらい真剣な瞳で睨まれた。双眸がすっと細められる。
怒ってる……。
広夢は身を竦ませた。
右の肩口に手のひらの感触を感じて、そのまま後ろに突き飛ばされた。ソファに倒れ込む。長身の影が共に乗り上げる。
「若……槻……さん?」
右肩に手のひらがあてられて、ぐっと上から押された。
「簡単に言ってくれる。なんで、そんな双眸(め)で俺を見る?俺のこと何も知らないだろう?」
低く苛立った声だった。灰褐色の瞳は怒りを湛えている。
「そうだけど……し、知らない……けど。あの店でウイスキーを飲むあなたは知ってる。全部拒絶しているのに、寂しそうなあなたは……」
ぎりっと奥歯を噛みしめる音がした。黎二の怒りを増してしまったことを広夢は悟る。
「なるほど。親切で優しいお前としては、それを埋めて差し上げるってわけか」
「違っ……」
ぐっと黎二の顔が近付いて、首筋に唇を寄せた。
「わかった。抱いてやる。それが望みだろう」
「違うっ!」
身体をずり上げて逃げようとすると身体で押さえこまれた。身長も体格も一回りも違う黎二にのしかかられると広夢にはどうしようもない。Tシャツの裾から、手が差し入れられて肌を辿られた。いつも見ていたグラスを持つしなやかで節ばった指が肌を這う。
「やだっ……。離してっ……」
身体を捩ってなんとか下から這い出そうとするが全く叶わない。黎二の唇と舌は容赦なく、広夢の首筋を滑って行く。鳩尾に指が触れ肋骨の縁をなぞられた。ぞくりと腰の奥が蠢いた。ぴくんと身体がのけ反る。
息だけで嗤う音が肩で聞こえた。
かっと全身が羞恥で熱くなる。嫌なのに、黎二が触って感じている自分がいる。それを悟られたかと思うと恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
「若槻さん。やだっ……はなせっ……」
叫んでも押し返してもびくともしない。掴んだ肩や二の腕は、見た目に反して、鍛えた筋肉がついていた。かちゃかちゃと音がして、ベルトを外され、カーゴパンツのボタンとファスナーまで呆気なく開かれた。
「やだっ……」
「うるさい」
叫ぶと冷たい声が返る。
「あぁっ……やっ……」
下着の上から、自身を辿られて、広夢の口から色づいた吐息が流れた。情欲に掠れた声に自分でも広夢は唖然とする。相手は自分が欲しいわけでもないのに。そんな相手に触れられて、自分がたてる声が信じられない。強く、緩く下着の上を行き来する手に広夢自身が形を為した。
「身体の方が正直だ」
広夢は首を振る。何度も何度も激しく拒絶を込めて頭を横に振った。鳩尾を辿っていた左手が伸びて、顎を掴まれた。
「痛っ」
強く顎を捕らえられて、骨がぎしっと音を立てる。
「やっ……」
黎二の右手が下着越しに、広夢を掴み、顎の痛みに一度は動きを止めた広夢は背を逸らした。
「若槻さん。やだ。離して」
こんないたぶられるように抱かれたくない。そんなこと望んでない。
囁いた言葉は黎二の気には染まなかったようだ。顎を掴んでいた手がするりと動いて、人差し指と中指が口の中に入ってくる。逃げる舌を指が追って、挟みこんだ。
「あぁぁっ……」
ざらりと舌の表面を指が滑る。やめてほしくて、そんなことをする黎二が信じられなくて、広夢はぎゅっと目を閉じた。
「俺を見ろ」
低く硬い声音で命じられるが、さらに瞑る目に力を込めた。口の中を指が撫でる。下着の上を彷徨っていた手のひらが強く押し付けられた。
「やっ……」
刺激に思わず瞳を開けると黎二の灰褐色の瞳がじっと自分を見つめている。この瞳が自分を見たらどんなにいいかと恋焦がれていた。ずっと。
背を甘い疼きが走る。だけど、黎二の瞳は冷たいままだ。
「指、舐めて。舌で舐めるんだ」
睨みつけられて、命じられる。嫌だと言いかけたが、黎二の瞳には逆らえない力があった。怒っている彼をなだめたかったのかもしれない。広夢は恐る恐る舌を動かした。指の側面を舌が辿る。
「いい子だ」
口端を上げただけで笑んで、黎二は反対の手を広夢の下着の中に突っ込んだ。
「やあっ……」
じかに自身を握られて、広夢は背をしならせた。口の中の指は好きに動き、下肢の熱をもった自身に絡められた指が上下する。舌で指を押しだそうともがき、逃げようと身を捩るとくるりと身体が反転して、皮のソファにうつ伏せに押し付けられた。
「うっ……ぐっ……」
喉の方に指がもぐりこんで、えづきそうになる。背中から抱えられるように腕を前に回し、黎二の広夢自身を掴んだ指は外れることがなかった。
「こっちのほうがいいのか?」
耳の後ろに唇を落として、冷たい声が耳朶を打った。体勢が変わったせいで、より深く指が自身に絡み、動かされた。
「若槻さん。やめっ……だめ…だ……」
裏筋を強く扱かれて、腰が引けた。こんなことされたくないとどんなに思っても、黎二が自分のものを刺激するだけで、広夢はどんどん追いつめられる。くちゅくちゅと濡れた音が足もとから聞こえ、すでに自身から蜜が溢れていることを思い知らされる。
「何がだめ?」
冷たい声にも身体が熱くなって、広夢は首を横に振る。
「ちゃんと舐めて。抜けるだろう」
唇を濡れた指が辿り、また、頬の裏側へと這わされる。
耳の後ろを黎二の舌がなぞり、その感触に身体が震えた。嫌なのに、こんな物みたいに抱かれるのは嫌なのに、身体は勝手に悦んでいく。黎二が、思い続けた黎二が自分を抱き締め、触れていると思うだけで、どうにかなってしまいそうな熱さが身体を駆け廻る。
広夢は黎二の指を舐める。できるだけ優しく、そっと舌を絡めては離す。
「そう」
くっくっと喉の奥で笑って、黎二は広夢が指に舌を這わすのを後ろから見つめた。勃ち上がって、ふるると揺れている広夢からは手を離し、腿に絡みついているズボンと下着をソファについている膝まで下ろし、足をかけて取り去った。
自身への刺激が無くなって、広夢は熱を持て余し、黎二の指を夢中で舐めた。
「若槻さん……」
指までも口から取り上げられて、広夢は黎二の名を呼んだ。黎二は広夢自身に指を絡める。
「んっ……はぁっ…」
喘ぎ声が広夢の口をつく。
「あっ……やだっ……」
後ろの蕾に濡れた感触を感じ、広夢の唾液で濡れた指が這っていることに気付く。広夢は腰を振って、前に逃げようとした。だが、黎二に広夢を自身を掴む手の力を入れられて果たせない。ぴくんと動きを止めた広夢の後ろの蕾の上を濡れた指が行き来する。
「やめて。若槻さん。それはやだ。やぁぁぁぁっ」
第一関節まで、つぷりと沈められて、広夢は叫んだ。大きく瞳を見開いて、逃れようとあがく。前を擦られても、後ろに感じる異物に広夢は身体を捩る。
「抜いて。いやだ」
怯えた声で懇願する。さらに奥に進んだ指に広夢の身体が硬直した。
「お願い……やめ……。やだ……お願い……」
広夢の願いを黎二は聞き入れた。めんどくさくなったのかも知れない。指が引き抜かれ、手を離されて、どさりと身体がソファに崩れる。頬を涙が伝うのを感じた。
急に背中が重くなり、後ろから黎二が覆いかぶさるのを感じた。
「泣くな」
低い声が耳を打ち、黎二は広夢の頬に唇を寄せて、涙を掬い取った。広夢は瞳を閉じる。
「もう、何もしない」
宥めるように告げて、頬を唇が啄ばむ。優しい仕草に広夢は背を震わせた。
「ご、ごめんなさい……」
囁くように謝る。
「なんでお前が謝る?」
「ごめんなさい……」
呟く広夢を黎二は背中から抱き締めた。
「謝るな。お前が悪いわけじゃない」
後から後から溢れてくる涙を唇で掬って、黎二は耳に心地のいい声で告げる。
「ここ初めてなのか?」
広夢はこくんと頷いた。もう、抵抗する気力も意地を張る力も残っていなかった。
「男としたことはないのか?」
それには首を横に振った。仲よくしていた人はいる。いいなと思っていた人だった。恋をしていたかはわからないが、キスされて、一緒に気持ち良くなって、そういうことはしたことがあった。だが、最後までのセックスは一度もない。そこまで深い関係になる前に、広夢は黎二に恋をした。黎二のことが心を占めて恋人未満の男とはそれきりになった。
しかし、そんなことを話すわけにもいかず、広夢は頭を通過した過去を振り払った。
「……なんで……こんなこと……」
一番聞きたい言葉が口をついた。怒らせたのは広夢だが、追いだせば済むことだ。なにも襲う必要はないじゃないか。
「礼」
後ろから抱き締められたまま、広夢の耳はその音を拾った。
「礼……?」
「不本意だが、俺の代わりに怪我をしたようなもんだからな」
広夢は愕然とした。あまりな答えに身体に力が入らない。礼って……。
「お前も俺のセックス目当てだろう。俺が医者だって知らなかったみたいだから、金って線はないだろうし」
広夢が黎二をかばった理由をそう結論づけたらしい男は悪びれることもなく言ってのける。
「……離して下さい」
呟いた言葉はひどく掠れていた。
好きな人が傷つくのを見たくなかっただけだ。あの喧嘩に飛び込んだのは自分のため。だから、礼もいらないし、見返りなんて考えてなかった。
だけどそう思われたんだ、若槻さんには……。
身体も精神も重かった。好きな人を助けてそれが損得がらみだと思われたのなら、どうすればよかったんだろう。
「……帰ります」
黎二はソファから降りた。広夢はのろのろ身体を起こし、床に捨てられた服を拾うと身につける。動作が億劫で、口を開いたらまた涙が出そうだった。
広夢が服を着るのを黎二は見ていた。暗い顔をする広夢を不思議そうに眺めている。
「お前はどうして欲しかったんだ」
わからないと顔に描いて、黎二が首を傾げる。
「何も」
広夢は呟いて立ちあがった。
「じゃあなんで、あんなところに飛び込んだんだ」
リビングのドアまで歩いて、扉の取っ手に手をかけたところで問いかけられた言葉に広夢は立ち止る。後ろを振り返って、黎二に視線を向けた。目が合う。
「好きだから。あなたが好きだから。それじゃ理由になりませんか」
黎二の顔には、何の感慨も見えない。冷たく整った美貌で、静かに広夢を見返していた。
鼻の奥がツンと痛んで、広夢は頬にぐっと力を込めた。
「失礼します」
吐き捨てるように告げると扉を開け、広夢は部屋を出た。もう、後ろは振り返らなかった。
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