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空の月を恋う

5-4

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部屋に着くと、着てるんだかわからなくなっている服をはぎ取られて、浴室に放りこまれた。
椅子に座って、シャワーを捻ると勢いよく湯が頭の上に振りかかる。温かいお湯が肌に染みいるようだった。
ずっとそのままの姿勢で湯にあたる。頬を涙がつたった。怖くて張り詰めていた気がふと緩んで、広夢は片手で顔を覆った。あんなところを黎二に見られた。そればかりかあの連れの人にまで。
『いい格好だな』
黎二の言葉が耳から離れない。軽蔑されたに違いない。連れの人、庸介って人は大通りに出るまで、終始、憐れみの目で見ていた。
庸介は部屋まで来なかった。「悪いな。巻き込んで」と言った黎二に頭を横にふり、大通りでタクシーを拾うと帰って行った。
涙は後から後から零れ落ちる。両手で顔をこすり、止まらない涙を何度もお湯で洗い流す。ピリピリとした痛みに広夢は両手首に視線を落とした。
手錠を掛けられていた両手首が、皮がむけ赤くなっている。湯がしみて、傷を見た途端、痛みが増した。心の痛みも……。
あんな奴らに。悔しくて、悔しくて、怒りが腹の底を渦巻いた。
まったく抵抗もできなかった。力で押さえつけられ、蹂躙され、それに応じた身体も疎ましい。
汚い……。
広夢は黎二に渡されたスポンジに手を伸ばし、石鹸も取って擦りつける。意地になって擦りつけているとフワフワの泡がスポンジから溢れて、足もとに落ちた。ケーキのクリームみたいな泡はスポンジを覆って柔らかだ。広夢はそれで身体を擦る。
あいつらの指が舌が触れたところを何度も擦る。擦っても擦っても汚れは消えない気がした。
汚い……汚い……。気持ち悪い……。
胸も腹もそして、自分自身も強くこする。尻もその谷間も。身体を覆うはずの泡は、頭上から降り注ぐシャワーに流されてつく端から消えていく。耳も口もだ。
気持ち悪い……。
ぐっと胃がせり上がって、広夢は吐いた。吐くものがなくなっても、えづきは止まらない。シャワーのお湯を口に含んではうがいをする。そして、また吐いた。
「おい」
げほげほと噎せていると浴室の扉が開いた。人の気配にとっさに腕で自分の身体を広夢は抱き締めた。
「見ないで。出てって。見ないで……」
身体を丸めて、できるだけ小さくなる。俯いた頭にシャワーがかかる。
「汚い……汚いから……出てって」
呟きは黙殺された。唐突に頭上から降っていたお湯が止まった。手に持ったスポンジを取り上げられ、更に広夢は身を縮こませた。
床に湯が撒かれた。桶で湯船の湯を掬って撒いたのだろう。酸味のある匂いが薄まる。えづきは止まっていた。かたく自分を抱き締める。
背後の気配が近づき、髪に指がさしこまれ、広夢はビクリと身体を震わせる。何も言わずに指が地肌を這う。泡が額からつたってきて、髪を洗われていることに気付いた。
黎二は何も言わない。
指が髪の根元を滑って行く音だけが広夢には聞こえた。長くて節ばった大きな手を思い出す。黎二のあの手がグラスを握るのを見るのが好きだった。
耳の上、つむじのまわり、前髪の生え際、全てを指の腹が滑って行く。長い後ろ髪まで指がするりと滑った。
シャワーが床を叩く音がすると思った途端に、頭に勢いよくお湯がかけられ流される。とっさに目を瞑ったが、いくらか目に入り、また涙が出た。きれいに流されて、さらに髪を揉みこむようにコンディショナーをつけられて、また湯を掛けられた。
「ったく」
呆れたような呟きが聞こえ、黎二が離れる。その声に怒ったような気配も感じて、広夢はまた身体をこわばらせた。小さくなれば、消えてなくなるような心地がして、さらに身体を丸める。
どうしていいかわからない。このまま消えてしまいたい。
一度浴室から出た黎二はすぐに戻ってきた。また背後に気配を感じて、広夢は背を震わせた。
しゃわしゃわと音がしたと思ったら、背中を何かが這った。柔らかい感触とざわついた感触が背を這う。軽く擦られて、くすぐったい。
ああ。身体を洗われているんだと認識した。
身体に巻き付けた腕を掴まれ、広夢は力を込めた。
「力抜け。洗えない」
「触らないで。俺、汚いから……」
逃げようとしたら広夢の二の腕を掴まれる。痛みに顔を歪めた。
「手間かけさすな。こっち向け」
冷たい声音に広夢は身体を震わせ、それでも逆らえなくて、声の主を振り返った。瞳を大きく見開く。
「なんで……」
黎二も裸だった。その均整のとれた骨格を呆然と広夢は見つめた。
「濡れるから」
あっさりと答えを口にし、驚きに力の抜けた広夢の腕を取りあげる。伸ばされた腕にもスポンジが滑って行く。
そりゃあ風呂だし、別におかしくないけど。だけど……。
見る見る間に頬が赤くなる。目のやり場に困ると思いながらも、視線は黎二から離せない。
手首までスポンジが滑ると、黎二は手を止めた。軽く持ち上げて、手首の傷を見つめる。広夢は慌てて手を引っ込めようとするが指を握られて、押しとどめられた。
「大丈夫ですから……」
「モノ覚えが悪いな。大丈夫かどうかは、俺が決める」
前にも言われた覚えのあるセリフを吐かれて、黎二は傷の上は避けてスポンジを滑らす。
「反対も」
こんな状況で、嫌とも言えずにおずおずと広夢は腕を伸ばす。
そっちの傷も検分されて、さらについでとばかりに洗われた。おかげで縮こまっていた身体はすっかり開かれて、あっと思う間もなく、胸をスポンジが這う。さっきあまりに強くこすったので、皮膚に傷がついたのか、胸の周りが赤くなっていた。
それを何も言わずに、黎二は撫でるように泡をつけていく。さすがに手が下半身に伸びて、広夢は黎二の手を掴んだ。
「じ、自分でできます」
たぶん顔は真っ赤だろう。ちらりと黎二は広夢の下半身に目を走らせ、手を伸ばす。足首を掴まれて、伸ばすように促される。
「え?」
足の先からスポンジが這いだして、広夢は慌てた。
「だから、自分でできますって」
手を差し出すと黎二に睨まれた。感情のこもらない瞳だった。
この人の前で恥ずかしがったり、うろたえたりするのはいつも自分だけで、この人は全く動じない。広夢はなんだかいたたまれない思いを感じた。
すっとスポンジが差し出された。広夢はそれを受けとる。
どうしていいかわからずに、黎二を見つめると黎二は、桶を取りあげて、湯船のお湯を汲むと自分の頭にざっと掛けた。髪を洗う気らしい。
気にせずに目の前で髪を洗いはじめた黎二を広夢は呆然と見つめた。艶やかな黒髪をシャンプーの泡が覆っていく。時折、蛍光灯が泡に反射して、七色に見えた。
動かす腕はしなやかに筋肉が覆い、着やせするんだと広夢は思った。痩せて見えるが、自分を軽々と担ぎあげるくらいの筋力を持っている。胸も腹も引き締まった筋肉が覆っている。肌は驚くほど白いのに、柔な感じはまったくない。硬質のナイフのような人……。
「シャワーとって」
声を掛けられて、広夢ははっと我に返った。ずっと黎二に見惚れていたらしい。
「はい」
お湯を出したシャワーヘッドを慌てて手渡した。
「そのスポンジ、次使うから、さっさと足洗え」
髪をすすいでいる黎二に言われ、広夢は慌てて、両足を洗っていく。急がなければと力を入れて擦ることすら忘れて、広夢は手早く洗いあげる。
コンディショナーをすすいだ黎二は、シャワーヘッドを広夢に向けた。湯で身体の泡が流れていく。
「先に入って。スポンジ」
それだけ言うと黎二は手を差し出した。広夢はスポンジを黎二の手の上に乗せる。否を唱える隙も与えられずに、広夢は大きめの湯船に身体を沈めた。擦りすぎた肌に湯がひりひりとしみた。あれだけ擦ったのにまだまとわりつく感覚に広夢はぎゅっと目を瞑る。
きれいにならない。汚い。
ぐるぐると頭の中を男たちの厭らしい笑みが回り、触られた感覚が甦って、広夢は思わず立ちあがった。ざばっと湯が大きな音を立てる。
「どうした。のぼせたか」
目を開けると目の前に黎二が立っていた。片足を湯船に入れている。
「い、いえ。大丈夫です」
とっさに答えると、腕をとられて、じゃあ、座れと言われた。
戸惑っている間に、湯船に入った黎二に引きずられるように座っていた。後ろから抱きこまれて、肌が密着して、広夢は慌てた。
「ちょっと、若槻さん。やめてください」
「暴れるな。さすがに大人二人じゃ狭い。湯が零れる」
腰に回った手に力が入って、広夢は暴れるのをやめた。黎二の声には熱を感じない。本当にただ、狭くて邪魔だから大人しくしてろという意味以外はなかった。
広夢は大人しく、湯につかる。だが、気が気じゃなかった。黎二にその気はなくても背中にあたる肌に広夢の心臓は高鳴る。鼓動が早くてどうにかなりそうだ。
黎二は何も話さない。ゆったりと湯に浸かっているのが、緊張もないのが、触れあった肌から感じられた。無言の時間が過ぎていく。意識もされていないことが、今はとてもありがたかった。
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