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空の月を恋う

6-2

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リビングの扉を開けると広夢と庸介の笑い声が聞こえて、黎二は驚いた。下でインターフォンを鳴らし、上にあがってくるまでの間に、何をやっていたんだろう。この二人は。
大体、一日でやけに親密になったものだと思う。
「あ。おかえりなさい」
「よう。早かったな」
テーブルの横に立った広夢とテーブルの椅子に座って、ビールを飲んでいる庸介に迎えられて、黎二は「ああ」と言葉を返した。
「若槻さんも座ってください。今、ご飯用意しますから」
にこっと微笑んで、広夢はキッチンへと姿を消す。朝とは打って変わって広夢は明るい。
「お前も座れ。広夢の飯うまいぜ」
いつの間にか名前で呼び合っている二人に何が起きているかもわからずに黎二は釈然としない。
上着を脱いで、横のダイニングテーブルの椅子にかけて、席に着く。すでに、席には箸が並べられている。
「若槻さんは、ビールにします?それともご飯よそいます?」
濡れたタオルを手渡しながら、広夢が訊く。
「食事って何?」
冷たい声が出た。状況が掴めなくてイライラする。なにか、結婚したての人間のうちに遊びに来たような心地がする。
質問に質問が返って、広夢の肩が揺れたのが視界の隅に入った。また、怯えさせた怯えさせたらしい。
「すごいぜ。カレイの煮付けとわかめと豆腐の味噌汁だろ。ほうれんそうの胡麻和えと茶碗蒸しだ。俺、こんな和食の夕食、久々に食った」
感心しきりの庸介が代わりに説明した。やけに機嫌がいい。時刻は午後九時を過ぎている。二人は先に夕食を済ませたらしいと黎二は推察した。
「広夢。俺にも箸くれ。黎二と飲むから」
黎二が答える前に庸介が決める。黎二に付き合って、晩酌するつもりらしい。
「はい」
にこりと笑って、広夢がキッチンへと引っ込む。
「よかったよな。ビールで」
「ああ」
ネクタイの結び目に指を入れて、黎二は少しタイを緩めた。外では絶対にしないが、庸介の前で、堅苦しくしているのも妙だ。
「どうぞ。他のもすぐに持ってきますから」
ビールの缶とグラス、ほうれんそうの胡麻和えの鉢と漬物を盆に乗せて、広夢がテーブルに近づき、それらを並べていく。
「あれ。漬物買ったっけ?」
「いえ。それ、さっき買った野菜を浅漬けにしてみました。といっても短時間なんで、きゅうりと白菜だけですけど」
漬物が綺麗に盛られた器には、トウガラシが小口に切って散らされていた。
「すごいな」
庸介は素直に感心していた。黎二も並べられた料理とその盛り付けに内心、驚きを隠せない。お酒をサーブする担当だと思っていたので、料理ができるとは想像もしていなかった。
「お魚を温めるのにちょっと時間がかかるので、先にそれで飲んでて下さいね」
お盆を下げて、広夢はまたキッチンへと戻った。
ビールのプルトップを開けると庸介に、缶を軽く当てられた。
「乾杯」
といわれて、「ああ」と答え、黎二はビールを喉に流し込む。良く冷えたビールが喉を潤す。箸を取りあげて、黎二は漬物をつまみ口にする。あっさりとした塩味に野菜の甘みがあとからやってきて、内心驚く。見た目だけでなく、味まで本格的だった。
「うまいだろう?」
自分のことのように自慢する庸介を黎二は軽く睨む。なんだか、面白くない。ビールを取りあげるとぐっと飲んだ。
「で、どうするんだ、黎二」
キッチンを伺うように声をひそめて庸介が口にした。広夢が戻ってくる気配はない。
「自傷行為を抑えるための処置だろう?記憶を引き起こさないように服を捨てたのも、包帯を繋げて両手の自由を奪ったのも。俺のところに預けたのもそれが理由だろう」
黎二は片眉を上げた。
「違うのか?」
何もいわない黎二に庸介が念を押す。
「わかってて、あいつに刃物の扱いを許したのか」
「ああ。見てたからな。後ろで。料理しているときには何も問題はなかった」
「ときには?」
庸介の言葉尻を捕らえて、黎二は庸介を見つめた。
「店の話を始めたら、過呼吸を起こした」
「過呼吸か……」
箸を置いて、黎二は庸介を見た。
「精神的なダメージだろう。身体には異常がない」
庸介は言葉を継いだ。
「わかっている」
「ホントか?今日はたまたま俺が側についていられたが、明日からはそうもいかないんだぞ」
冷静な黎二に庸介の方がイライラしているようだ。
「入院させるか?主治医どの」
「主治医?」
「そうだろう?精神科医も真っ青だ。いままでの治療方針、これ以上ないってくらい的確だと思う。ここまできたらもう、お前の患者だろう?」
庸介は心配そうだ。それだけ、広夢が不安定だということだ。入院させるのも正しいが、余計な精神的負担が増えて、悪化する可能性が高い。
「わかっている」
黎二は庸介を真剣に見る。乗りかかった船だ。ほっとくわけにはいかない。それに、広夢がこうなったのは自分の責任だとの自覚も黎二にはあった。だから、手を離さずに面倒をみている。
「もう少し時間をくれ」
黎二の言葉に庸介は不思議なものをみる顔をした。柄にもないことを言っていると思っているのだろう。そんなこと自分でもわかっていた。だが、ここで手を離すことはできない。
「わかった」
庸介は大きく頷く。少しは信用があるようだと黎二は苦く笑った。
軽い足音がして、広夢が両手に盆を掲げてやってくる。
「あれ?箸つけてないんですか?お口にあわなかったですか?」
カレイの煮付けと茶碗蒸しを黎二の前に置きながら、広夢の声は沈んでいる。
「違うよ。ちょっと話が弾んじゃってさ」
庸介がにこりと笑って、広夢に告げる。黎二は箸を取りあげた。魚に箸を入れるとほろりと身が崩れた。何も言わずに口へと運ぶ。広夢の視線が自分の上にあるのもわかっていた。
甘辛く柔らかい身に黎二は心持ち、目を見開いた。漬物もうまかったが、これは店で出してもおかしくない味だ。
「おいしくないですか?」
何も言わない黎二に心配げな声がかかる。
「いや」
そう答えて、もう一切れ、口に運ぶ。目に見えて、広夢が嬉しそうな顔をした。
「黎二さあ。もうちょっとなんか言ったら。おいしいとかありがとうとかさあ」
呆れた声で庸介がたしなめる。そんな言葉がすぐに口をつくなら、そう言っている。だが、あいにく、黎二にはどう褒めいいかなぞ思いつきもしなかった。黙々と箸を口へと運ぶ。
「いいんです。お口にあったなら」
広夢はにっこりと微笑んだ。黎二が口にしたのを喜んでいるようだ。
「広夢が嫁さんになったら毎日、こういう飯が食えるなあ。明るいし、可愛いし、俺のところに嫁に来る?」
漬物をつまみながら、庸介が広夢を見て片目を瞑った。
「嫁って……」
絶句した広夢に庸介が陽気に笑う。からかわれたんだと気付いた広夢が顔を赤くする。
「庸介さんっ!」
叫ぶ広夢に庸介はさらに笑った。
じゃれる二人がおかしくて、そっと黎二も口端を上げた。だが、心の底にイライラが堆積していくような感覚も消えてはくれなかった。
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