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空の月を恋う

10-3

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黎二のリビングのソファの上で広夢は膝を抱えて座る。結局、ここへ戻ってしまった。往来で自分ばかりが熱くなって、黎二は相変わらず、落ち着き払って、まるでどうでもいいことのようだった。周りの視線を集めていることにもいたたまれなくなり、それ以上に、黎二の態度が変わらないことが哀しくて、広夢はなにもかもどうでもよくなってしまった。
どうあっても一方通行だ……。どうせ片思いなら、相手に知られない方がよかった。
告白したのは自分なのに、後悔したってどうにもならないのはわかっているのに、時が戻せたらとか、あんな告白しなかったらと叶わないことばかりが頭を巡った。
もう、疲れた。
広夢は額を膝頭につけた。涙は止まらず、奥歯を噛みしめていないと瞬きの度に頬を伝う。
泣くなよ。こんなことで。
大の男がみっともないと自分でも思う。だが、ざっくりと切りつけられたような心の傷はじくじくと疼いて、息をするのも辛いほどだ。
ことんと音がして、少しだけ目線を上げた。目の前のテーブルにマグカップが見えた。湯気が広い口から立ち上って甘い香りがした。
ココアかな?
そんなどうでもいいことを思ってみる。
黎二の気配がした。ソファの前に立っているんだろう。足が見えて、広夢はまた目を伏せた。
ふわりと頭に大きな手のひらを感じ、指が髪に潜った。振り払いたかったが、それすらも億劫で広夢はじっとしている。
「俺が嘘をついたと怒っているのか?」
黎二の言葉に広夢は反応しない。
「あの薬、何だと思ってたんだ?」
微かに身体が揺れた。あんな言い方されたら、普通、やばい薬だって思うだろう。それに、あの時、本当に身体が熱くてどうにもならなかったんだから。
「お前がそう思ってそれが効いたのなら、それはそういうものだ」
広夢は黎二の腕を手の甲で跳ねあげた。
「勝手な事言うな」
もう頭の中がぐちゃぐちゃだった。あんな薬飲ませてまで俺を抱きたいのかと、気まぐれでも俺が欲しいのかと一瞬でも思ってた。でも、よく考えれば、この薬が本物だったとしても同情だった可能性もあることに広夢は気付いてしまった。
「あんな奴らに好きにされそうになってかわいそうだから、抱いたんだろう」
「同情であんなことできるか」
顔をあげたら呆れたような瞳とぶつかった。
「理由が欲しいなら、やるよ。俺がしたかったから」
広夢は驚いた。そしてさらに怒りが湧いてくる。
「そんなの信じられるわけない」
「それはお前の勝手だ」
「だったら薬の話なんてする必要ないじゃないか」
そうだ。なにも薬なんて話をしなくてもよかった。そう言ってくれればよかったんだ。
「嫌がられたくなかったからな。その前に抱こうとした時には、思いのほか抵抗されたから。薬のことがあったから、流されたんだろう?」
睨みつけて、広夢は流されてしまえと黎二が言ったんじゃないかと思う。だが、もしもただあのままされてたら、吐いていたかもしれない。誰に触られても感じる身体だとあの時、自分に対して嫌悪しかなかったから、薬のせいだからってどこかで思ってたから、感じても罪悪感はなかった。
だけど……。
「でも、そ、それじゃあ、俺、薬のせいじゃないのに……」
膝を抱える腕に広夢は力を込めた。
汚い……。
「誰でもいいんだ。触られれば悦んで……」
気持ち悪い……。
身体の中が違和感でざらざらする。繋がれて犯られそうになったことを思い出す。
後頭部の髪に手のひらを置かれて、前に引き寄せられた。バランスを崩して、抱えていた膝を離した。前に倒れ込んで、額が額に触れた。
目の前に黎二の灰褐色の瞳がある。
「話を聞かないやつだな。薬のせいなんだ。そうお前が信じたんなら。プラシーボ効果だ」
「プラシ……?」
「人間は気持ちで体調が左右する生き物だ。薬を飲んだと強く思えば、それがビタミン剤だろうとただの小麦粉だろうと効いてしまうことがある。科学的にも実証されている」
近すぎる瞳に焦点が合わせられない。それでも、広夢は黎二の視線がまっすぐに広夢の大きい虹彩を射ぬいているのが見えた。
「それに、俺に触(ふ)れられるのとあいつらと同じなのか?」
瞳を逸らせずに、広夢は大きく目を見開いた。
違う。あいつらに触られた時には嫌悪感しかなかった。だが、黎二に触れられるとそこから熱が生まれる。
「あの時は薬のせいだったが」
囁かれるなり唇を奪われた。舌で唇の合わせをちろちろと舐められると、あの日の熱さが身体に甦って、広夢の頬に朱が散った。
「今は……?」
身を捩っても離してくれる気配はなく、益々、深く口づけられる。
「……ん……」
鼻に抜ける甘い声がでた。黎二にキスされれば、熱くならずにはいられない。好きなんだから。
口の中を舌で蹂躙されて、くちゅりと濡れた音が頭蓋に響き、広夢はそれに更に煽られる。つい、黎二の舌をおずおずと舌で触って、ビクリと身体が揺れた。逃げる舌先を追われて、捕らえられ、舌が絡む。腰の奥が痺れた。
黎二との口付けは甘くて恥ずかしい。熱心に舌で辿られ、広夢は溶けかかる思考を引きもどす。
どうしていつもいつもこうやって流されるんだろう。最初の時も今も。そして、後悔するんだ。
……好きだから……。
頭を言葉が回った。
そうだ。好きだから。嫌われたくないんだ。若槻さんに。
じゃあ。このままにしておけばいい。若槻さんがどういう気か知らないけど、俺を構っているうちは、それでいいじゃないか。
深く口の中を探られて、広夢は思う。
だけど……。嫌だと思った瞬間に、広夢は思い切り腕を突っぱって、黎二を突き飛ばした。
「やめ……」
黎二は驚いたような顔で広夢を見た。広夢は腹にぐっと力を入れ、黎二を睨みつける。
「もう、気まぐれに俺を振りまわすのはやめてくれ」
絞るような声で広夢は告げる。
「気まぐれだと誰が言った?」
黎二の瞳の色が濃さを増した。
「本気……?」
そんなはずはない。
「お前のいうことはよくわからない。お前はどうしたいんだ?何を求める?」
伸ばされた黎二の腕を広夢は払った。後ろへ身体を逃す。ソファの背もたれが、それ以上の退路を阻んでいた。
「何度も告げた。そうだろう?あなたがわかっていないだけで」
瞳に力を込めて、広夢は黎二をまっすぐに見つめた。これを言ったら、この言葉を口にしたら、このよくわからない関係は終わってしまう。どういうつもりか黎二が自分を構って、それに夢を見続けた関係が……。
こくりと口にたまった唾をのみこんだ。それでもいわなきゃいけないと広夢は口を開いた。
「俺は……俺は、あなたが欲しい」
言葉が広夢の口から飛び出して、まっすぐに黎二に刺さるのを広夢は瞬きもせずに見続けた。黎二が動きを止めた。驚いた表情で広夢を見ている。
とうとう言ってしまった。たぶん、若槻さんが一番、ききたくない言葉だ。
「あなたが俺のもので、俺があなたのもので、ずっと側にいて、たわいのないことで笑ったり怒ったり……。俺が好きっていったのはそういうことで……あなたが俺を気にしてくれて、俺はあなたが喜ぶことをしたくて……」
言っているうちにぐちゃぐちゃになって、広夢は頭を抱えた。
「だから、気まぐれじゃ嫌なんだ。振り回されるのも憐れまれるのも……」
感情が激して、瞳が潤んだ。泣きたいわけでもないのに、鼻の奥がつんとして、感情の高ぶりとともに、涙が溢れた。
「あなたが好きなんだ。夢ですら側にいて欲しいと思うほど……」
肩に腕が回って、身体を前に引かれ、ソファから立ち上がった途端、黎二に抱きすくめられていた。身体に回った腕で痛いほどの力で、抱き締められて、広夢は黎二の胸に頬を寄せた。
「泣くな」
掠れた黎二の声が頭上から聞こえた。
「もう、泣くな」
強い声音にびくんと広夢は身体を震わせた。
「俺が欲しいなら、お前にやるから。側にいたいなら、いればいい。だから、もう泣くな」
低く、掠れた声で黎二は何度も泣くなとくり返す。そう言われるほどに涙が溢れて止まらなくなってしまい、広夢は訳もなく泣き続ける。全部吐き出してしまったからかもしれない。
更に強く抱き締められて、黎二の体温が伝わって、あんなに冷たい手をしているのに身体は温かいんだと思った。
それでも涙は止まらなくて、広夢はしゃくりあげるように泣き続けた。

腕の中の広夢を見て、黎二は困ったように口端を上げる。
泣く広夢を抱き締め、それでも泣き続けた彼をソファに座らせて背を撫でながらずっとこの腕に抱いていた。
広夢の涙は止まることを知らないかのように、あの大きい瞳から湧いて、頬を濡らしていた。
腕に眠る広夢の瞼が赤く腫れている。あれだけ泣けば当たり前だ。
声を殺して泣き続けた広夢は、いつしか泣きやみ、そのまま眠ってしまった。睡眠導入剤のせいだろう。いままでもあまりよく眠れていなかったようだったから、薬がかなり効いたに違いない。
広夢の言葉が涙が、黎二の心に深く染みた。自分を好きだと言った人間は広夢が初めてではないが、黎二が欲しいと言いながらも、広夢には変な熱を感じない。
まるで空に浮かぶ月が欲しいと言っているようだ。諦めを含んだ手の届かない望みを見るような瞳の色だった。不快ではなかった。
それに……。と黎二は笑った。
これで拒絶されるのは何度目だろう。
こいつは俺に流されない。好きだと言いながら、キスしても抱いても、拒絶する。
くしゃりと髪を撫でた。柔らかい茶色い髪。それを指で掬いあげて、黎二は唇を寄せた。
心を寄せるくせに、それ以上は近づいても来ない。
眠る広夢は穏やかな顔をしている。夢の中の俺は拒絶しないんだろうか。あの綺麗な瞳で夢の中の俺を見つめているんだろうか。
ばかばかしい。
イライラした。夢なんてしょせんは夢だ。
こいつの願望の産物なのだ。それにイライラする自分が滑稽だ。ましてや、その理由もわからないときている。それに、今は薬が効いている。夢なんて一つも見ずに眠れているだろう。
腕に抱えなおして、起こさないように黎二は広夢を胸元に抱きよせた。
腕の中にいるときだけ安心する。目が届くところにいれば、こいつは傷つかない。
「……広夢」
そっと黎二は名前を呟いた。
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