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空の月を恋う

11

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髪を梳く指の感触。何度も、何度も髪の間を指が移動する。
気持ちが良くて、広夢は温もりのある方へ身体を寄せる。髪を掬いあげるように指が動いて、広夢はくすぐったくて肩をすくめた。重い瞼を押し上げて、目を開ける。
ああ、また眠ってしまったんだと思いながら、目が覚めても消えない指の感触に上目で頭上を伺うと、黎二が広夢の髪を指で弄んでいるのが見えた。驚いて顔を上げた。
「目が覚めたのか?」
口元に笑みを刷いて、黎二が訊く。
「若槻さん……いつ起きたんです……?」
黎二が目が覚めたのに、隣にいて、広夢の髪を梳いている状況がなんでかわからなくて、広夢はそのまま固まった。
「少し前だ」
黎二なら目が覚めたら広夢なんかほっておいて起きだしそうなのに。
「どうして……?」
広夢の問いに黎二は口元の笑みを深くした。皮肉にもみえる笑みに広夢の心音が大きく鳴った。
「離してもらえなかったからな」
はたと広夢は自分の手を見た。しっかりと黎二のシャツの胸元を握りしめている。
「えっ。お、俺……」
慌てて手を離し、広夢は黎二から離れようとした。
くつくつと黎二に笑われて、広夢は首筋まで朱を散らす。指に絡めていた髪に手のひらを差し入れて、黎二は広夢の髪を後ろに引く。髪を後ろに引っ張られて、広夢は顔を黎二に向けた。
ゆっくり黎二の顔が近寄ってくるのを呆然と眺める。身動きがとれないまま、黎二の唇を自分の唇で感じた。啄ばむように唇を合わせられて、最後は音を立てて離れる。恥ずかしくて、どうにもならなくて、広夢は目を見開いたままだ。
「遅くなったが、なんか食べるか」
面白そうに笑われて、黎二は身を起こすとベッドから降りる。硬直したまま動けない広夢は黎二の後ろ姿を見送る。
「この時間だともう、朝食とは呼べないが」
呟きながら部屋を出る黎二が後ろ手に締めた扉に我に返る。
慌てて起きあがると広夢は後を追った。

黎二はキッチンにいた。
ありえない事態が続いていて、広夢の思考は混乱したままだ。まるで、甘い恋人のような黎二の振る舞い。
確かに黎二に恋人にしてやるとは言われたが……。
あまりの黎二の豹変ぶりに広夢は何をどう考えていいかがわからなかった。ダイニングに現れた広夢に気付いたらしい黎二がちらりとこちらを見た。
「気分は?」
冷蔵庫から出したものをならべながら、黎二は広夢に訊く。
「え?あ、大丈夫……」
黎二に視線を流されて、学習能力がないと言われた言葉だったと思い出す。
「悪くないです」
包丁で、黎二は野菜を切り始める。
「頭痛、吐き気は?」
「ありません」
そうかと黎二が呟く。包丁がまな板を叩く音だけが響き、それを呆けたように見つめていた広夢は、はたと我に返る。自分の理解範囲を越えていて、黎二がどうしたいのか、自分がどうしたらいいのかもわからないが、このまま黎二に食事を作らせるのはどうかと思ったのだ。
慌てて、キッチンに入って、黎二の脇へと移動した。
「俺がやります」
「いい」
「よくないです。昨日だって……」
さっくり否定されるが、広夢は食い下がる。
「お前は病人なんだから、そこに座ってろ。安静って言われているだろう、峰先生に」
そうなんだけど。だからって……。
「だけど……」
「邪魔だからあっちいってろ」
キッチンから追い出されて、広夢は途方に暮れる。キッチンの外に所在なげに立ちつくし、お湯を沸かして、野菜を煮る黎二を見つめる。
昨日からずっと世話を焼いてもらっている。いや、その前からか。
混乱に拍車がかかった。
「どうして……」
言葉が口から零れる。
「どうして。俺を構うんだ。好きじゃないと言いながら、まるで、こ、恋人みたいに……」
考えなく口をついた言葉に頬が熱くなる。だが、口を閉ざすことができなかった。こうやって溢れる感情のまま、何かを言うと大抵失敗するってわかっているのに。
「ほっとけばいいんだ。俺なんか、俺なんか……痛っ!」
ごんと頭を叩かれて、広夢は俯けていた顔を上げた。
「なんで、殴るんだよ」
目の前の黎二は眉を上げて、灰褐色の瞳の色を濃くしていた。怒りが瞳の奥に見え隠れする。
「お前の言っていることが支離滅裂だから。俺が欲しいんだろう。俺の側にいたいんだろう。お前はそう望んだ。俺はそれを叶えている。どうしてもなにもないだろう」
そ、それは本心だが、だけど、そう言ったら黎二が自分から手を離すと思ったから投げやりになって告げた言葉だ。それを受け取られたら、どうしたらいいんだ?
「俺はお前の望みを叶えることにしたんだ。ついでに、お前は俺のものになりたいんだろう?」
黎二は広夢を見て微笑んだ。意地の悪い笑みだ。
とっさに広夢は身を引いた。だが、少し遅かった。腰を攫われ、あっという間に腕に抱きこまれて、顎を掬われた。ひたと黎二の瞳が広夢の瞳を捉える。
「だ、だけど……これはあなたの気まぐれで……」
「かもな。お前の言う気まぐれと本気の意味はわからないが、俺は俺のしたいようにする。言ったろう。意に染まないことはしない主義なんだ。それをお前が気まぐれと呼ぶなら好きにすればいい。俺はお前の側にいる。ずっと……」
腰を抱く腕に力が入って、広夢の唇に黎二の唇が重なった。舌で唇をこじ開けられて、乱暴に口の中を探られる。
「んっ……」
舌を撫であげられ、裏顎をくすぐられて、甘い吐息が鼻に抜ける。更にキスが深くなって、黎二がぴたりと身体を広夢に密着させる。
好きなだけ、逃げる舌を追い掛け、絡ませ、舐め上げられて、頭を霞みが覆う。
「やっ……」
拒んでみてもそれは形だけで、腕には力が入らない。黎二のキスはいつも甘くて、熱くて、広夢にはどうにもならない。ゆっくりと名残惜しそうに唇が離れた。長い吐息が広夢の口をつく。
「もう、決めたんだ。お前がこの関係を何と呼んでも、俺はこの腕を離す気がない」
掠めるように唇を合わせて、黎二は広夢の瞳を覗き込んだ。
「広夢」
名を呼ばれて、広夢は瞳を大きく見開いた。面と向かって、黎二が自分の名前を呼んだのは初めてだ。いつも「おまえ」としか言わなかったのに。
零れ落ちそうなほど、大きな瞳をさらに見開く広夢に黎二は苦笑を浮かべた。
「何を驚いている?」
「だって、名前……」
「今までだって呼んでただろう?おまえが気がつかなかっただけで」
そうだっただろうか。呼ばれた憶えがない。
夢の中だけだ。自分の願望を映しとった夢の中だけ。
「やっぱり夢……?」
呟くと頬をつねられた。
「いひゃ……い」
目の前の黎二は意地悪く微笑んでいる。この痛みも優しくない黎二も確かに夢の中と違う。
だけど……
「夢の中の俺はお前を名前で呼んで優しくするのか?」
興味深そうに尋ねられて、広夢はよく考えた。黎二を知る前はそうだった。いつも優しく微笑むきれいな黎二。広夢は首を横に振った。
「違う。名前は呼ぶけど、夢の中の若槻さんも意地悪……」
言った途端にまた頬をつねられた。
「ひでょ…い」
「まあ、いい」
黎二はそう言って、広夢を離した。頬を手で押さえて、広夢は黎二を下から見上げる。
「おまえが邪魔するから、食事にならないだろう」
キッチンに戻って、続きを始めた黎二を広夢は瞳で追った。Tシャツの袖からのぞく腕や大きな手のひらを見つめる。
この人と恋人になったとはとても信じられないが、黎二が側にいてもいいと言ったからには、この人が嫌になるまで、それは許されるのだろう。
俺の告白は届いたんだよな……?
素直に頷けないことに、一抹の不安を感じながら広夢はキッチンで動きまわる黎二を見続けた。黎二の好きなけぶるような大きな瞳で。
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