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空の月を恋う

12

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「よう」
玄関を開けて立っていたのは、庸介と遠江という組み合わせ。黎二は扉を閉めたくなった。
「見舞い。広夢の。あいつどう?」
さわやかに笑う庸介は広夢の担当医で、まさか無碍に追い返すことができない。黎二は痛む頭を指で押さえながら、扉を大きく開いた。
「だいぶ、いい。足の腫れも引いてきたし、食欲も出てきた」
靴を脱ぐ、二人に黎二は律儀に説明する。
「だが、なんで遠江まで」
「ひどいよ、黎二。庸介だけなんてさ。まだ、黎二と二人で飲みに行く約束も果たしてもらってないし」
黎二の横を通り過ぎて、遠江はリビングへと繋がる廊下を進んでいく。友人たちにしてみれば、勝手知ったる他人の家だ。
黎二は大きく溜息をついた。何を聞きつけたのか、そんな理由でないことだけはわかる。
リビングへ入ると庸介がきょろきょろと部屋を見回した。
「あれ?広夢は?」
「庸介さん」
庸介の声が聞こえたのだろう、キッチンから広夢が現れた。タオルで手を拭きながら驚いた顔をしている。
「見舞いに来た。どうだ、調子は?」
にっこり微笑む庸介に、広夢も笑みをかえす。
「かなりいいです。もう、頭痛も吐き気もありませんし。すごく寝ましたから」
広夢がちらりと黎二に視線を流したのがおかしい。
「おまえが安静を指示したんだろう」
昼食のあと薬を飲ませ、黎二は広夢を寝室に追いやった。夕方まではベッドから出るなと厳命し、広夢は渋々それに従った。実際、昼間の広夢は微熱があり、寝ていた方がいい状態だった。
寝室で見張っていると言ったら、首まで赤くして、ちゃんとベッドにいるからと固辞されたことを思い出す。
「確かに顔色はずいぶん良くなった。安心したよ」
庸介が笑って、広夢もそれに答える。
「庸介さん。ちょうどいい時に来ましたね。これから食事にするんです。たくさん作ったから食べて行きます?」
すっかり庸介に懐いている広夢の発言に黎二は微かに眉を上げた。もう眠れないと夕方起きてきた広夢に訴えられ、仕方なく黎二は広夢に食事の支度を許したが、庸介のためではない
「いいの?やった。広夢の作った食事はめちゃくちゃうまいからな」
「おい……庸介……」
止めようと上げた声を遠江に遮られる。
「君が黎二に廊下を走らせた原因?」
庸介の後ろから顔を出した遠江に驚いた広夢が目を丸くしていた。
「おい。遠江。広夢が驚いているって」
庸介が遠江を押さえるが、一歩前に出た遠江は気にせずに広夢を覗き込む。
「初めまして。遠江芳史です。この二人とは同期なんだ」
人好きする笑みを浮かべて挨拶する遠江に広夢は驚きながらもぺこりと頭を下げている。
「あ、俺、加瀬広夢です。遠江先生?」
「そう。俺は内科の医師。それにしても大きな目だね」
しげしげと遠江に見つめられて、広夢は困ったように微笑んでいる。拒絶しないところはさすがに客商売をやっているだけはあるかと思いつつも黎二は二人の間に身体を入れた。
「遠江」
背に広夢をかばうように立った黎二を遠江は物珍しげに、ついでにやたら嬉しそうに見上げた。
「やっぱり、黎二も人間だったんだね」
よかったと遠江が笑う。
「どういう意味だ?」
「言葉の通りだよ」
にこにこと笑う遠江を黎二は見下ろした。遠江の表情には喜びの感情だけが見える。
なにが楽しいんだかわからないが、他意はないらしいと黎二は釈然としないながらも追及するのをやめた。これ以上つつくと藪から蛇が出そうだ。
キッチンからタイマーの音が聞こえ、背後の広夢が身を翻した。
「もう、ご飯ですから、みなさん座ってて下さいね」
言いながらキッチンへと走っていく。それを見送って黎二は深く溜息をついた。

「よかったな。広夢」
ソファで広夢が食後の珈琲を用意していると横に座った庸介が、唐突に告げた。広夢は庸介を見る。
「想いが通じたんだろう?」
庸介は優しく微笑んだ。広夢は目を瞠り、慌てて、キッチンの方へ視線を走らせるが、そこで洗いものをしているはずの黎二はまだ現れる気配もない。
「どうして……?」
「遠江の言葉憶えているか?『あの黎二に廊下を走らせた原因』ってやつ」
声をひそめる庸介に広夢は頷く。確かに遠江は最初にそう言った。
「病院でも話題になっててさ。冷静沈着を絵に描いたような黎二若槻先生が廊下を走るなんてどうしちゃったんだろうって」
広夢には言葉もない。それって俺のせい?若槻さんが廊下を走るなんてことあるんだろうか?
「大体、あいつが誰かを診るなんてことも珍事だ。診察して、ましてや面倒まで見るなんて」
「だ、だって、若槻さんって、お医者さんですよね」
庸介の言葉の意味が全く取れずに広夢は焦ったように問い返す。
「そうなんだけど、あいつ病理医だろう。患者は診ないんだ。臨床は嫌だって、臨時で外来や当直もしない。基本的に人間に係わることを嫌うんだ」
確かに、人嫌いそうだが、仮にも医者だからいろいろ面倒を見てしまう性分なんだと思ってた。
「広夢が運び込まれたって聞いて、焦って廊下を走ってきたんだ。黎二は」
「だけど、それって知り合いが担ぎ込まれたらそりゃあ驚くんじゃ……」
「黎二だぞ」
その言葉が説得力をもつなんて、どういう人なんだと思うが、確かに黎二は知り合いが救急車で運び込まれたって顔色一つ変えそうにない。
「広夢だからだな。黎二は広夢を気に入っている。すごく大切に思っている」
真顔で告げられて、広夢は困った顔で庸介を見つめた。
若槻さんが俺を?
「変わり種の玩具くらいに思ってるんですよ、たぶん」
そう、若槻さんが俺を大切に思っているなんて奇跡は起こりっこない。
「それでもだ。あいつが他人を気にかけたのは初めてなんだから。大事だと守りたいと思ったのもな。広夢。あいつを頼むな」
「庸介さん……」
真剣な眼差しの庸介を広夢は見返した。庸介の表情には冗談もからかいも見えない。本気で、広夢に黎二を頼むと言っているのだ。
「そうだね。僕からも頼むよ」
ソファの背からも声がして、庸介と広夢は声の方を振り返る。
「遠江」
「遠江先生」
庸介と広夢の声が重なる。黎二にくっついて、キッチンで洗いものを手伝っていたはずの遠江がソファの背もたれに両腕を乗せてさらに顎まで乗せてこちらを見ていた。
「黎二の心を溶かしたのはどんな奴だろうって思ってたけど、広夢くんならいいや」
にこにこと遠江が笑う。何を根拠にそんなことを言うのだろうと広夢はまじまじと見つめる。
「あんなにおいしいもの作れるしね」
まったく意味のわからないことを呟かれて、広夢は益々、遠江を見た。
「まったく。おまえが何を言っているかよくわからん」
頷きそうになるのを懸命に広夢は堪える。
若槻さんをよろしくと言われても、大切にされていると言われても、俺たちが男同士だってことこの人たちは気にしないんだろうか。
「あの、だけど。俺、男ですけど、それでも……」
「些細なことだね。人間だから問題なし。だいたいさ。黎二はどっちでもいいって奴だし」
「そう。あいつの趣味には口はださん」
遠江と庸介にあっさりと言われて、広夢は身体から力が抜ける。黎二の友人に関係をあっさりと認められてしまい、広夢は嬉しいのが半分、不可解なのが半分の複雑な気分だった。
「おまえたち、何の話をしているんだ」
キッチンから出てきた黎二の声に広夢はソファの上でびくりと身体を震わす。
こんな話をお友達としていたと知ったら、黎二は怒るだろう。
「別に、世間話」
どこ吹く風と遠江が立ち上がる。
「ついでに、診察」
庸介が顔を黎二の方にむけさらりと言う。
こちらを睨みつけている瞳に、怖れを抱いているのは広夢だけらしい。
あんまり煽るのはやめてほしい。あとで、責められるのは俺なんだからと、広夢はそっと溜息をついた。黎二も相当だが、この友人たちも変わっていると広夢は思う。
「黎二もこっちでお茶にしよう。僕たちが持ってきたケーキもあるしさ」
庸介の前に座ってにこにこと手招きする遠江に、黎二がこちらに向かって歩いてくる。
テーブルに置いておいたお皿とフォークをみんなに配る。珈琲サーバーに入っていた珈琲を人数分のカップに注いだ。
遠江の横に座った黎二はむっつりとしている。絶対怒っていると、広夢は肩をすくめた。
そんな広夢に気づいたのか、黎二が広夢を見た。口端を上げるのを見て、広夢は震えあがる。
目が笑ってないし。
顔をひきつらせる広夢を面白そうに見遣って、黎二がくつくつと笑う。完全に遊ばれていると広夢は思う。だけど、こうやって何気なく側にいられたら。黎二が笑ってくれるなら、それでいいのかもしれない。
黎二を見つめて、広夢は嬉しそうに微笑んだ。
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