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 ←12 →「空の月を恋う」終了
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空の月を恋う

終章

 ←12 →「空の月を恋う」終了
仕事に復帰して、カウンターに立つ広夢の前には黎二が座っている。
いつもの通り、注文したウイスキーを無言で口に運んでいた。それを広夢は仕事の合間に見つめている。変わらない火曜日の光景。
黎二がふと目を上げて、広夢を見た。視線が交差する。つい広夢は視線を逸らし、手元の磨いていたグラスに落す。首筋に感じる視線は外れることがない。黎二が自分を見ていると思うだけで恥ずかしくて、首筋に朱が散る。
気にしないように思っても、どうしても気になって、黎二を見れば瞳が合う。いままでだったらありえないことに、広夢はグラスを磨く手がおろそかになりがちだ。仕事にならなくて困ってしまう。それでも、ついつい黎二を見てしまう。
からりと溶けた氷が音を立て、黎二がグラスに目を落とす。口元に笑みを浮かべて、黎二はグラスを軽く揺らした。
微笑った……。
驚きに目を瞠り、次いで、甘さを含んだ温かさが心にじんわりと広がった。グラスに口をつけながら、微笑んでいる黎二を広夢は見つめた。鼓動が煩いくらいに胸を叩く。
ふと横に人の気配を感じてそちらを見た。店長の前川が横に立っている。
「店長」
前川は何も言わずに広夢の肩をとんとんと手のひらで叩いた。そのまま後ろを通って、厨房へと行ってしまう。なにもかも知られているようで、さらに広夢は居たたまれない。木曜日にここへ復帰してから、前川も河野も広夢に何も訊かない。
ただ、ひとこと「元気になってよかった。おかえり」と言ってくれた。
それだけで、二人が自分たちを認めてくれたようで、広夢はくすぐったいような嬉しい気持ちになった。心配を掛けるだけ掛けた自覚があるだけに、二人にはこれ以上余計な心配をして欲しくなかったのだ。
とんとコースターの上にグラスを置く音で、広夢はカウンターの向こうへ意識を戻した。立ちあがり、鞄を取りあげて出口へ向かう黎二を広夢は追う。
キャッシャーに立ち、会計を告げると黎二はぴったりの額を広夢に渡した。
「ありがとうございました。ちょうどいただきます。レシートです」
レシートを渡すとその手を取られて、ぐっと手前に引かれた。上体が泳いで、声が出る。
「仕事が終わったら、俺のところに」
耳元にそれだけ告げ、手を離すと黎二は後も見ずに店を出た。広夢の頬が染まる。
どきどきとうるさい鼓動を押さえるように広夢は胸に手をやった。

言われるまま、広夢は帰り道に黎二のマンションへと向かった。下から見上げても彼の部屋の灯りは相変わらずわからない。
水曜日にここを出てから、一週間が過ぎていた。その後、広夢は黎二に会わなかった。
日曜日の夜に一度、電話で声を聞いた。何のことはない電話だった。体調を尋ねられ、眠れているかと訊かれただけ。それだけでも広夢は嬉しかった。電話で黎二と話ができるなど考えたこともなかったから、気にとめてくれていたことが嬉しい。
自転車を置き場に停めて、エントランスでチャイムを鳴らす。そういえば、こうやって正面切って訪ねるのは初めてかもしれない。いつもわけがわからないまま部屋に上げられていた。
上がってこいとインターフォン越しに告げられ、広夢は部屋へと向かった。
「こんばんは」
玄関の扉を開けてくれた黎二に、微笑んで広夢は挨拶を送る。
「ああ」
そんな広夢を眩しそうに見て、黎二はそれだけを口にした。部屋に入るように促され、黎二について部屋へ入る。
「忙しかったんですか?」
黎二の後をついて行きながら、広夢は黎二に問う。
「ああ。忙しかった。おまえは?」
「俺も休んじゃった分、けっこう忙しかったんですよね」
振り返った黎二が広夢を見下ろす。広夢は黎二を見上げた。黎二の瞳が怒りをはらんでいた。
「若槻さん……?」
「それで、一回も訪ねて来なかったんだな」
掠れた黎二の低い声に広夢は固まって、後ろに一歩下がった。
「え、えっと……。いや、そういうわけでも……」
広夢は背を汗が流れるのを感じる。先週の水曜日、別れ際に会いたくなったら、ここに寄るように言われていたのだ。店が終わる時間なら家にいるからと。
だが、広夢はこの一週間、ここを見上げて通り過ぎることはあっても、寄ることはなかった。
黎二はあのとき「望みを叶えてやるから」と付け加えて、意味ありげに笑ったからだ。
下がると追われて、広夢は更に足を後ろに下げる。
すっかり忘れていた。ここに来るってそういうことだった。会いたかった。だけど、覚悟は決まらなくて、まるで、ここに自分から来れば、抱いてくれとねだっているようで、避けていたが、店で黎二に寄るように言われたら、顔を見たら、言われるままここに来てしまった。
どうしよう。
ひどく恥ずかしくて、広夢は後ろへ身体を逃す。
意地悪げに笑った黎二は腕を伸ばすとやすやすと広夢の身体を腕の中に囲いこんだ。
「わ、若槻さん……」
どくんと心臓が跳ね上がる。
ぐっと腰を抱かれ、面白そうに瞳を覗きこまれる。黎二の目がまっすぐに自分を見つめていた。
ますます、鼓動は早くなって、強く胸を打つ。黎二はそれきり何も言わずに、広夢の大きな茶色い瞳を覗いている。長い睫毛に覆われた切れ長の瞳、整い過ぎるくらい整った顔を広夢は順に見た。薄くて形のいい唇に視線が移った時、広夢の鼓動はひときわは高く、波打った。あの唇を知っている。冷たく整った顔なのに、その実、広夢の口内を辿る舌が熱いことも。
キスしたい。
強く広夢は思う。どうして、いままで黎二に会わずにいられたんだろう。何を怖がっていたんだろう。
広夢は誘われるように両手を差しのべた。黎二の頬をてのひらで包むとぐっと自分の方に引いた。背伸びをして、広夢は唇を黎二の唇に寄せる。そっと、触れ合せて、びくりと身を震わせる。黎二はされるままにしている。広夢はつま先に力をいれ、身体を伸ばすと唇をぐっと黎二に押し付けた。
腰を攫われる。広夢は黎二の首筋に腕を伸ばして抱きついた。強く抱きしめかえされて、広夢はそっと口を開く。口づけが深くなった。
「……っん」
熱い舌で舌を絡め取られて、何度も何度も撫であげられて、唾液が混ざり合う音がする。腰を抱かれた腕も熱くて、広夢は黎二のキスに酔う。
黎二の熱が移ったように、広夢の身体の奥も熱くなった。触られた、抱かれたことを肌が憶えている。あの熱を黎二の腕の強さを身体が要求した。
ゆっくり口づけが解かれて、広夢は目を開ける。黎二の双眸が見えた。
「……欲しい……あなたが」
熱に浮かされたように囁いた。微かに黎二が目を瞠るのに気づく。
「え、えっと……」
はたと広夢は夢から覚めた。
「ちがっ……そうじゃなくて……」
「そうじゃないのか?」
面白そうに黎二が問い、口の端を微笑みの形に上げた。
「いえ、だから……」
動揺すればするほど、何と言っていいかわからない。自分から口づけしてそんなことを言ったら、それ以外ないだろうが、黎二に引かれたと思ったのだ。
「だから……?」
追及の手を緩める気はないらしい。抱き締めながら、黎二は広夢の足の間に自分の膝を差し入れる。
「やっ……だめっ……」
身体が熱くなってしまっているのがばれてしまう。
「だめ……?」
意地悪げに黎二が笑う。
「いえ、だからそうでなくて……」
「広夢」
はっきりと名前を呼ばれて、広夢は動きを止めた。黎二に名を呼ばれるのにまだ慣れない。だが、広夢を抱き締める黎二の身体も熱い。
言ってもいいんだろうか。しかし、どういっていいかわからずに、広夢は黎二の首に回していた腕に力を込めて、身体を黎二に押し付けた。
「若槻……さん。俺を……」
それが精一杯だった。耳元で、黎二の笑う声がする。くすくすと楽しそうに笑う黎二に、広夢はいたたまれない。
「ここで?」
追いつめる黎二に広夢は首を横に振る。別にどこだっていいけど、でも恥ずかしくて、面白がっている黎二の余裕が嫌で、広夢は頭を振る。
「今夜は拒まないな」
抱えあげられて、そう囁かれた。目を大きく見開いて、広夢はこくんと頷いた。
またくつくつと笑う声が聞こえて、広夢はそのままベッドまで運ばれた。

「あっ……んっ……」
噛みしめる歯に力を入れようとした広夢は、甘く叫ぶ。身体の中から、どうにもならない快感が上がってくる。達ったばかりの広夢自身がゆらりと身を起こす。
「うそっ……なに……?」
「ここだな」
嬉しそうな声に広夢は黎二を探す。だが、指が一点を掠めるとそれすらもできなくて、腰が揺らめき、声が上がる。
「な……っ……やだっ……」
腰が揺れて中が波打ち、黎二の指を食んでしまっては拒絶も説得力をもたない。
何をされているのかもわからなくなった。黎二の指が起こす感覚が、あまりに強くて、背筋を何度も痺れるような官能が走って、頭の中が白く変わっていく。
「挿れるぞ」
もう、何を言われているのかもわからないまま、指よりさらに大きくて熱いものが身体を割って侵入してきた。
「あぁぁっ……んっ……はぁぁぁっ……」
口をつくのは意味のない喘ぎだけで、それすら熱を孕んで、悦んでいるようにしか聞こえないだろう。内壁をめくりあげるように進んでくる熱い楔は、時折、拍動する。
「熱い……」
囁くとさらに奥まで入れられた。身体の中の空虚を埋められるような感覚。広夢は腕を精一杯伸ばして、目の前の熱い身体にしがみつく。
「広夢」
耳元で名前を囁かれて、広夢は焦点の合わない瞳を開けた。黎二の髪を頬に感じる。首筋に口づけられて、それにすら吐息が漏れる。
「黎二……さん」
夢で呼ぶように呟くと強く抱きしめられた。
満たされる……。
「動くぞ」
告げられて、身体を楔がかきまわし始める。
「あっ……あぁぁっ……はぁ……」
揺さぶられるままに合わせて、切なげな声を出す。嬌声は抑えられなかった。まるで啼いているように、声をあげ、自分の体内を抉る動きに必死にあわせる。
繋がったところが熱くて、溶けてしまいそうだ。擦られて、抉られて。このまま離れなくなればいいのにとすら思うような快楽に広夢は溺れた。
俺、黎二さんに抱かれているんだ。
頭の片隅でしみじみと思っている自分がおかしくて広夢はうっすらと笑った。だが、その笑みも喘ぎために瞬時に消える。
「熱い……はぁぁっ……」
気持ちが良くて、合わせた肌が熱くて、広夢は縋りつく腕に力を込める。
やっぱり、俺、黎二さんが好きだ……。
身体の奥で弾ける熱を感じながら、広夢は真っ白に染められた思考でそう思った。

「好き……」
囁いた言葉に答えるように、額に落ちる髪を指で梳かれた。
「……あなたが好きなんです……」
夢見心地で広夢は呟く。
「ああ」
きれいな微笑みとともに返った答えに広夢は満ち足りた表情(かお)で、にこりと笑った……。


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