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遠回りの片恋

遠回りの片恋 序

 ←長らくすみませんでした →「遠回りの片恋」1
屋根もない駅のホームに一両の車両が滑り込む。
ぶしゅっと扉が開いて、吉野葵は、小さなボストンバックを片手にホームへと足を踏み出した。あいている手で栗色の髪をかきあげ、周りをぐるりと見渡す。ホームを渡る風が葵の後ろで結んだ髪を揺らした。
小さな駅で、葵以外降りる人もおらず、改札も一つで無人だ。
鄙びた田舎の駅舎を出て、葵は色素の薄い瞳を眇めた。駅舎の周りは田園地帯で、青々とした稲の若苗が、満々と水をたたえた水田に植えられている。見渡す限りの水田に青い稲が揺れ、さんさんと降りそそぐ太陽に照らされて、きらきらと輝いていた。
「すごいな」
雑誌に載せる記事の取材のために東京から電車を乗り継いでやってきたが、見渡す限りの稲の碧さに感嘆を隠せない。
ひとしきり周りを見渡してから、葵は小さく息をはくと、肩から掛けた鞄を開け、手紙のコピーを取り出し、行き方を確認した。
「蓮村行のバスにのって、蓮村入り口っていうバス停で降りてあとは一本道。まちがいない。あれだな」
葵は、駅前にぽつんと立つバス停に足を向ける。停留所には円い看板のついた鉄柱が立っており、『蓮村行』と記されていた。
しばし待つと小型のバスだかバンくらいのバスがやってきて、葵はそれに乗り込む。
乗客はほとんどなく、お年寄りが何人かと子供連れの主婦くらいだ。地元の人間でないのは葵だけだろう。
バスはなかなか発車しない。エンジンも掛けずに、止まっていた。
葵は見るともなしに、バスの窓越しに一面の田んぼを眺める。緑が陽光に輝いて、目に優しい景色だった。
片桐さん……。
葵は名を心でつぶやいた。とくんと心臓が音を立てた。
思い出すたびに走り出す心臓がとめられない。助けてもらったあの日から葵は、片桐にとらわれている。
好きだけど、あきらめないといけない人。
葵は大きな溜息を一つついた。あれは、二か月ほど前のことだった。

ざわざわと言葉ではない音が満ち満ちていた。
すでに明かりの点った駅前の繁華街では、呼び込みやらの声が騒々しい。車も渋滞していて、クラクションを高々と鳴らす奴までいる。
そう、あの日、葵は、そんな喧騒を見るともなく眺めて、ビルを背に立っていた。飲みに来いと誘った悪友たちとの待ち合わせなのだが、時間になっても待ち人が現れる気配はない。
時計を見て溜息をついた。すでに二十分は過ぎている。
あいつらの待ち合わせが時間通りだったことはないのだから、まだ待っていないといけないだろうと諦めモードで思う。
携帯電話を忘れてきたのもまずかった。これでは何かあっても連絡は取れない。携帯電話のない時代にはいったいどうやって人は待ち人と巡り合っていたのだろう。
とりとめないことを考えながら、ぼおっと街行く人を眺めていた。
その無防備さがいけなかったのかもしれない。この辺は治安がいまいちなのも忘れていた。
すいっと葵の視界を三人ほどの人影が塞いだ。葵は顔をそちらに向け人影を見渡すが、もちろん全く知らない人間だ。
「待ち合せ?」
声を掛けてきたのは、かなり荒んだ雰囲気をもった男だった。年は葵とそう変わらないだろうが、葵は実際より若く見られがちなので、男たちは年下の良いカモくらいにしか思っていなさそうだ。
知らない男なので葵は無視を決め込んだ。ここで迂闊に返事をして、難癖つけられても困る。
「それとも、客引き?」
黙っていても災難はやってくるらしい。葵は声を掛けてきた男を睨みつけた。しかし、全く逆効果だったようで、男は軽く口笛を吹いた。
「睨んでる顔もそそるぜ。綺麗な兄ちゃん」
女と間違えているんじゃなかろうかという憶測は最後のセリフで断ち切られた。男だとわかった上で誘っているのだ。
葵は確かに端正でかなり綺麗な顔をしている。モデルといっても通用するかもしれない。色素が全体に薄いのか、染めてもいないのに髪は栗色で、癖のある肩までの髪を後ろで一つに結んでいた。肌も抜けるように白く、虹彩の色も茶色でまるで日本人ではないようだ。
れっきとした日本男子なのだが、よくハーフに間違えられる。
背はそこそこあるが、全体的に身体の作りが華奢で、ひょろりとした印象だ。
「売りはやってない」
このまま無視もできずに、睨みつけたまま葵は答えた。
返答に気を良くしたらしい男はにやにや笑って、葵に手を伸ばす。残りの二人の男も葵に近づいた。
「じゃあ、俺と付き合えよ」
どういう根拠なのかわからない展開に、顎にかけられそうになった手を葵は、はたき落とした。
男たちは色めき立つ。
「下手に出てればいい気になりやがって」
「お高くとまってんじゃねえよ」
口々に悪態をつきながら、葵に近づいてくる。葵は身体をずらして後ろに下がった。しかし、これが最悪だった。今まで背にしていたビルと隣のビルの間が、人が入れるほどの狭い通路になっていたのだ。葵の身体がその通路に入り込む。
男たちはますます葵に近づき、葵は後ろに下がる。そうすると通りからは、ここで何かしていても目立たない。
最初に声を掛けた男が葵の胸倉をつかんだ。シャツの襟を捻りあげられて、息が詰まる。
「こんなところに一人で立ってんだ。堅気じゃないだろう」
床から足が離れそうなほどに服ごと持ち上げられ、それでも葵は首を横に振った。
「良い思いさせてやるから、付き合えよ。それともここでやるか」
葵が抵抗できないとみるや男は、にやにやと笑った。
「ふ、ふざけんなっ!」
怒鳴るが喉が締め付けられて大きな声がでない。男の腕を外させようと両手で腕をつかみながらもがくが、相手の力が強いのかそれとも何かコツでもあるのか、腕はびくともしなかった。
「威勢がいいな」
抵抗しても、ただ相手の嗜虐心を煽るだけで、なんら解決にならない。
男は何を思ったか、嫌な笑いを浮かべると、つと顔を近づける。葵は顔をのけぞらせて逃げる。このままではここで本当に犯られてしまう。
焦れた男は、身体を九十度反転し、葵を片側のビルの壁に押し付けた。喉ごと押されて、一瞬、息ができない。
苦しくて目を閉じた葵が観念したと思ったのか、男は下卑た笑みを浮かべながら、再度顔を近づけてくる。
もう駄目だ……。
葵が固く目を閉じたとき、
「何をしている」
通りから低く、怒りを含んだ声がした。
葵を押さえつけていた男にもはっきりと聞こえたようで、慌てて、そちらに顔を向ける。
通りの方が明るいので、逆光になって顔が見えない。しかし、身長が高く、鍛えた身体つきをしていることは、見てとれた。
「なんだよ」
「邪魔すんじゃねえ」
「あんたには関係ねえだろう」
口々に殺気だった男達が喚く。
「関係なくはないな。お前が掴んでいる奴と待ち合わせをしていたんだからな」
葵を掴んでいた男が葵を見る。
待ち合せをしていたのは事実だが、葵はこの声の主には覚えがない。しかし、ここでこの助けを逃す手はない。助けてもらえないとこのまま目の前の男たちに玩具にされるのは明らかだ。
葵は首を縦に振り、現れた男の方へ行こうともがいた。
「離せ」
通りを背に立つ男が、葵を押さえつけている男に歩み寄り、男の肩に手を掛けた。
「もう一度言う。離せ」
決して怒鳴るわけではないが低く凄味のある声で告げ、その肩を手前に引いた。葵を押さえつけていた男はその行為に我を忘れ、葵を締め上げている手を離すと、現れた男に向かって拳を振り上げ、殴りかかった。
ぱしんっ。
男の拳は、助けに現れた男の右掌にあたり、そのまま握りこまれた。特に力を入れているわけでもなさそうな様子だが、殴りかかった方の顔が痛みに歪む。握りこんだ拳がぎりぎりと耳障りな音を立てた。
「いてぇ……」
「どうする。このままだと指の骨が砕けるが」
涼しい顔で男はさらに力を込めた。
相手の顔から血の気が引き、額からの脂汗が通りの明かりに光った。男は不意にその拳を突き飛ばすように離した。
掴まれていた方は無様に後ろに転がる。
男は一歩そちらに足を踏み出した。残りの男たちが喉の奥からひっ、と絞り出す悲鳴を上げた
三人はじりじり、後ろ向きに移動し、男の横をすり抜けるように路地から飛び出ると
「おぼえてやがれ」
捨て台詞を吐き出して、駆け去っていく。
そいつらが完全に視界から消えるまで、男はその行方を視線で追っていたが、もう大丈夫と判断したのか、その場に座り込んでいる葵の方を向き、手を差し出した。
「ありがとうございます」
その手を取って葵は立ち上がると男を見上げる。
「大丈夫?怪我はない、吉野くん」
手をとったまま、葵は驚いた顔を助けてくれた男に向けた。だが、まったく見覚えがない。大体、声も記憶にないのだから、知らない人間に間違いはないのに。
「なんで俺の名前……」
手を引かれて、路地から出ると男は手を離した。
葵はまじまじと男の相貌を見上げた。
長めの黒髪に、面長の顔、切れ長の目は涼しげで、かなりの男前だ。身長も百八十を超えているだろう、肩幅が広いせいか、ダークカラーのスーツがよく似合っていた。
こんな見栄えのする男を忘れるはずはないと思うが、葵は記憶に引っ掛かるものがなく、首をかしげる。
「こんばんは。これならわかるかい」
男はそう言って前髪をかきあげた。
「あーっ!!あなたは」
だれだか思い出した葵の声に男はにっこり笑った。

バスのエンジン音がいきなり響き渡り、葵は、はっと物思いから醒めた。出会ったときのことをあまりに鮮明にトレースしていたから、今の自分の状況が一瞬、認識できなかった。
まるで夢でも見ていたようだ。
「発車いたします。閉まるドアにご注意ください」
運転手のアナウンスが聞こえ、バスは駅前の広場を抜け、田んぼの間をゆっくり走りだした。田園風景はどこまでいっても変わらない。時折、民家がぽつんと田園の真ん中に見えるくらいで、見渡す限り風にそよぐ青々とした稲だけが広がる。
あの時、助けてくれたのは、片桐章という葵が手伝っている喫茶店の常連客だった。毎朝、カウンターの隅に座り、珈琲とモーニングセットを注文する。それを食べながら新聞を読んでいた。手が大きくて指がきれいだと、接客しながら葵は毎朝、こっそり見ていた。だが、いつも見えるのは新聞を見つめる横顔だけで、いつもきちんと髪を後ろになでつけていたから、助けてもらった時には、とっさにはわからなかったのだ。
バスの椅子の肘掛けで頬杖つきながら、葵は、あれから親しくなったんだっけと思う。曲がりくねった道でバスが左右に揺れるのに任せる。
「だけどなあ……」
つぶやいて葵はため息をついた。
助けてもらった時とその後、一度、お礼を兼ねて一緒に食事をした。だが、葵の思いとは別に、片桐との関係は知り合いの域をでない。
年も二十二の葵より六つも年上で、一緒にいても女性がちらちらと視線を送ってくる美丈夫だ。毎朝見ているあの大きな手に触れてみたいと思っても、それはかなわない夢だった。
葵は大きなため息をついて、右手で顔を覆った。
「不毛だ」
片桐はどうみても同性と付き合うようには見えない。女性の扱いも慣れていそうだし、不自由もしていなさそうだ。
話していても受け答えがスマートで、センスもいい。同性しか好きになれない葵とは違う世界の人間だ。
「叶わない恋なんてしたくないのに」
つぶやいて、葵は窓の外へ視線を戻す。
どうしていつもいつも自分を好きになる可能性のない人ばかりを好きになるんだろう。
友人にも同じ嗜好者と恋愛すればいいと何度も忠告されているし、自分でもそれが正しいと思う。なのに、葵が好きになる相手はいつも同性が恋愛の範囲外の人ばかり。
「バカだよな」
ぽつんと呟いて、葵はごつんと窓に額を当てた。
告白なんてできない。嫌われたくもないし、気持ち悪いと言われたら立ち直ることすらできなさそうだ。
忘れた方がいいと自分に言い聞かせて、風にそよぐ青々とした稲を見つめた。風に歯向かわずに揺られている稲穂は、何もかもを受け流しているようだ。
想いがこれ以上深くなる前に、取り返しがつかなくなる前に、流してしまおう。
「忘れるんだ」ともう一度、口の中で葵は呟いた。
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