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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」2

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葵の受難は終わらなかった。
無事に宿に辿りついた葵を見た宿の主人は心からほっとしたように喜んでくれ、宿に集まっていた葵の捜索隊、村の青年団だそうだが、も口々に無事を喜んでくれた。
その人たちにお礼と迷惑をかけた詫びをし、それじゃあ予約した部屋へ案内という段になって、宿の主人が言った。
「あれ?ダブルブッキングだ」
その言葉に耳を疑い、葵は主人に詰め寄る。
「そんな」
「大変申し訳ありません。システムのエラーで、予約が取り消されたと思って、もう一件受けてしまったようです。困ったな。祭りのせいで、本日は満室でして……」
あまりといえばあまりの無情な言葉に葵は呆然として言葉もない。
「他に宿は?」
「村に宿はここだけです」
確かにそうだろう。こんな辺鄙なところじゃ、何かない限り観光客はそう滅多に来ない。
「困ったな」
しきりに主人は困っている。
だが、困っているのは葵の方だ。泊まれないと取材ができない。
「近くの村には?」
「隣村まで山一つ離れていますが」
そうだった。この村は、かなりの隠れ里なのだ。車のない自分じゃ隣村に泊まるなんて、とてもじゃないが無理だ。
「村のもんに頼むか。相部屋か……」
ぶつぶつ呟いた主人の言葉を遮ったのは、片桐だった。
「吉野さんとは、知り合いですし、私と相部屋でも構いませんよ」
宿の主人にとっては救いの声だったかもしれないが、葵にとっては爆弾発言だ。
「それは助かります。吉野様いかがですか。宿代のほうは結構ですから」
断れる状況じゃなかった。普通は何ら問題がない。部屋の主が認めているんだし、知り合いだし、同性だ。
葵さえ認めれば、すんなり成立する上、宿代まで浮く。
「わかりました。片桐さんのご厚意に甘えさせていただきます」
そう答えるしかなかった。
部屋の窓の近くの籐製の椅子に腰かけて、葵は、本日、何度目かの溜息をつく。視線の先には向かいの椅子に座る片桐がいる。
二人で仲良く宿で出された菓子をつまみ、お茶を飲んでいた。
なんで、片桐さんと同じ部屋……。
「そんなに俺と一緒は嫌だった?」
あまりに溜息をつく葵に片桐は自分と一緒にいたくないと思ったらしい。誤解されてはと葵はあわてて首を横に振った。
「ち、違います。邪魔しているのは俺の方だし。普通、一人部屋がいいでしょう。仕事なんだし、ほんとにすみません」
「アシスタントで来て貰ってたら同じだったからいいよ」
恐縮し身を小さくして、迷惑なのではと問うた葵のセリフを片桐はやんわりと否定する。
その言葉に葵は目を瞠って、それから「やっぱりいいなあ」と葵は心中で呟いた。
こうなんていうか、さらりとこちらが気にならないような言葉をくれることに、片桐の優しさと機転を感じたのだ。
とくとくと心音が跳ねている。ゆっくり湯呑を傾けている片桐から目が離せずに、葵は片桐に強く心惹かれている自分を再認識した。
それだから、想っている相手とこのまましばらく一緒にいて、自分の理性がもつだろうかと葵は心配になる。何かのはずみに告白してしまって、蔑まれたらと考えるとぞっと背筋が冷えた。
気を張っていよう。片桐さんはただの知り合いなんだ。
何度も自分にそう言い聞かせ、片桐に気がつかれないように葵はそっと溜息をついた。

食事の前に風呂へ行こうと誘われて、さすがに葵は断った。ここは湯治場としても有名らしく、良い温泉が湧いているらしい。
「すっかり、霧で服も湿気ているだろうから温まった方がいいよ」
片桐にそう言われても、はいそうですね、とは言えなかった。好きな人の裸を見て平然としていられる自信がない。
「食事のあと、祭りを見に出るので、今、風呂行っちゃうと後で湯冷めするから」
言い訳を口にしたが、あながち嘘でもなかった。取材に来ている以上、仕事は仕事だ。今夜は前夜祭的な祭りがあるらしく、屋台がでたり、ちょっとした祭祀があったりするらしい。村の人たちはもちろん、近隣からも人が大勢来ると宿の主人から聞いていた葵は、これは取材には絶好の機会だと思った。
祭りには若者も多く参加しているだろうから、そのあたりに聞けば噂話は拾いやすい。人身御供の幽霊話では村の年配の人たちは話もしないだろうどころか、下手をすると敵視されかねない。
葵の仕事を口実にした断りに、片桐は「そうか」と言って、部屋を出て行った。それが少し寂しそうに見えたのは葵の願望だろう。
じつは、見かけによらず、人恋しい人なのかもしれないと勝手な物思いに沈みかけそうになるのを頭を振って振り払うと、葵は鞄からパソコンとボイスレコーダーを取り出し、起動したり、充電したりと取材の準備をする傍ら、今回の記事の背景をメモしたり、まだ途中だった書きかけの記事などを次々と片つけた。
没頭しだすと周りが目に入らなくなる性質の葵は、まっすぐパソコンの画面を見ながら、メモをタイプし続ける。
「女性の幽霊ね」
いきなり聞こえた声に葵は勢いよく振り返った。風呂から上がったのだろう浴衣姿の片桐が後ろに立っていた。
「片桐さん!」
いつから立っていたんだろうと思うが、片桐は葵の書いた記事用のメモをじっと見ている。
「これって、どこに出るとか、決まった時刻だとかそういう情報はないの」
画面を見るために葵の肩越しに身を乗り出す片桐からシャンプーのいい香りがした。ひどく近くに片桐がいて、葵の心拍が跳ね上がる。
「な、なんで見てんですか」
片桐の問いに答えるよりもあまりの状況にうろたえてしまい、咎める口調になった。
「ここ十年の祭りに選ばれた花嫁役で死んだ娘も失踪した娘もいないよ」
唇が頬に触れそうな距離で画面を見つめながら、片桐は不思議そうに言う。
「そんなことどこで」
震えそうになる声をなんとか押さえつけ尋ねながら、はたと気づく。
「そういえば、片桐さん、ここにはいつから?」
ここで会った時に最初にしなければいけない質問だった。偶然にしては出来過ぎている事実と一緒の部屋になってしまった衝撃で、すっかり忘れていたのだ。その際にできるだけ身体を片桐から離す。でも、そうすると彼と向き合う格好になってしまった。片桐は葵と目を合わせる。
「もう三日かな。この祭りは、全部で一週間くらいかかるからね。今夜と明日がクライマックスだ。今夜は、花嫁は村のはずれで潔斎をし、その間に神社では、村人がそれを祝う。花嫁行列の練り歩きが明日、それから花嫁は社に迎え入れられてさらに一日祭祀がある。宮の奥に一晩こもるだけなんだけど、神と一夜を共にするって意味合いがあるらしい。その後、人形(ひとがた)、要は身代わりの紙の人形を山の宮に奉納して終わるわけだ」
祭りの意味合いが理解できて、なるほどと葵は思った。
「この祭りは昔は五年に一度だったそうだ。それが、ここ最近、観光資源になると毎年やることになって、すっかり神事の意味合いは薄れてしまっているようだけどね」
それだと、幽霊話のもとがこの祭りであると言う根拠はないにも等しい。
「あ、昔は人身御供は殺されたりしたんですよね」
「そう。だけど、それこそ、戦前の話だ。一晩社にこもる間に、神に喰い殺されたり、行方不明になったりしたらしい」
片桐の説明はかなり昔の話であったにも関わらず、葵は背筋が寒くなった。
「じゃあ、その頃の人が化けて出て……」
「それだと昨年の祭りの後くらいから、急に幽霊が目撃されているっていう事実と合わなくないか」
片桐の言うことはもっともだ。戦前の人が今頃急に恨みを持って化けて出るなんて、それこそのんびり過ぎる。
「それもだ。場所が社の側ではなさそうだし」
目撃情報はまちまちだ。山への入り口だったり、学校だったり、それこそ田んぼの真ん中だったりする。
「なんか俺、すごいネタ持っている気になってきましたよ」
幽霊は怖いが、大きいネタならそれは大歓迎だ。
「食事したらさっそく、取材に行ってきます。ガセかもしれませんけど、面白くなってきた」
葵の言葉に片桐は眉を寄せた。
「本当に取材するのか、このネタ」
「まずいですか」
葵の言葉に片桐は心配そうな顔をした。
「なんか嫌な予感がする。俺のこういう予感って外れたためしないよ」
危ないところから遠ざけようとする片桐の態度に葵にはカチンと来た。
二度も助けられているからかもしれないが、子供扱いされたような気がする。
「嫌な予感、結構!そのくらいでないと大きいネタにはありつけないんですよ」
強気に葵は片桐の心配をはねつけた。
これが後にひどい出来事に遭遇するきっかけになるとも知らないで。
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