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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」3

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祭りは思ったより人出があった。この地方では有名な祭りなのかもしれない。
できるだけ出店などが並んで人通りの多いところで取材を始めた。祭りなので、取材はやりやすい。雑誌社から祭りの取材に来たといえば、わりと好意的に答えが返る。
ひろいたいネタは女性の幽霊との関連だが、そんなことを知らない人間が尋ねても誰も答えるはずもない。それが観光資源ならなおさらだ。
まずは外堀から埋めるのがこういう取材のやり方で、そこからどこまで噂を拾い集められるかが腕の見せ所って奴だ。
葵は辛抱強く、話を聞いて回る。大抵は、祭りの由来だったり、どうやってこれだけ人を集められるようになったかとか、祭りプロジェクトの詳細だったりしたが、それをにこやかに熱心に聴いていると青年会とやらの一人が葵を青年会のテントへと招いた。
「雑誌社の人だ。俺たちの祭りを取り上げてくれるらしいぞ」
中に入るなり青年会のメンバーはテントの中で飲んでいたほかのメンバーに葵を紹介する。
「こんばんは。お邪魔します」
にっこり微笑んで挨拶する葵に他のメンバーは、ぼおっと見惚れた。こういうときは、顔で少しは得しているかもと思うこともある。
「東京の人か?」
「そうです。雑誌社のものです。吉野って言います。取材を許可いただいてありがとうございます」
営業スマイルで答えるとさらにざわざわと青年たちがざわめいた。
やっぱり、都会の人は違うなどといっているものもいた。
「記事にできるかわかりませんが、いろいろお話を聞かせていただけるとありがたいのですけど」
ほとんどが同じ年くらいの若者で、丁寧な感じの葵に好感を持ったのだろう。相手からもにこやかに、「まあ座れや」などと声をかけられた。
パイプ椅子に座るとビールを手渡され、内心苦笑しながらも葵はにっこり笑って礼を言う。
こう見えても仕事モードの時はすぐに人の輪に入れる性格で、この笑みに大抵の人間が警戒心を解く。
「このお祭り、最近は毎年行っているって聞きましたけど」
そう水を向けると、青年会のメンバーで最も体格の良さそうな青年が頷いた。
「そうなんだ。だんだん、村から若いもんが流出しているものだから、できるだけ観光事業とかで仕事を作って、ここで生まれ育ったもんには、このまま村で暮らして欲しくて」
そういう自分も葵とたいして年は変わらなさそうだ。
「さっきも屋台とか見ましたけど、結構な人手でしたよね。宿も満室でしたし」
「兄ちゃん、若いのになんか他人行儀だねー」
奥から、年配の人が茶々を入れた。
「えー。そうですか。僕も苦手なんですけど、こういうの。でも、初対面でなれなれしくてもいいんですか」
はははと笑ってみる。
「いいって。いいって。みんな堅苦しいの嫌いだし。今日は祭りで無礼講ってことで」
「じゃあ。お言葉に甘えて」
またにっこり笑った葵に男女問わず、何人かの頬に赤みが差した。
「ここまで盛り上げるのもたいへんだったんだけど、近隣の村からも人手が出るようになったし、一回、雑誌にも取り上げられたら、かなり都会からも人が来て」
さっきから質問に答えてくれている体格のいい青年が嬉しそうに答える。
「そうそう、武朗。頑張ったもんなぁー」
「こいつUターン組でね。都会で働いていたけど、帰ってきて村のために頑張ってんのよ」
体格のいい青年の背中を叩いて、他の青年団の若者が口々に言う。
「へー。すごいな」
感心すると、武朗は照れたように笑った。
「このお祭りって神様に花嫁を捧げるお祭りなんだよね」
皆が頷く。奥に座っていた老人に祭りの起源は聞いたかと問われ、葵は首を横に振る。
「じゃあ、聞いとけ。昔、昔、それはたいそう大昔にこの村に住んでいた一人の娘が、毎年山から出る鉄砲水を憂いていたんだそうだ。そのせいで年によっては特産の筍だの山菜だのが採れなくて、その上、田んぼにも被害が出てな。ある年、山神さま、この辺の土地神様だな、に娘っこが何とかしてもらえるように頼んでみるって言いだして、その代わりに娘っこが山神様に嫁いだのが始まりだとか。それ以来、この村は水に悩まされたことも山の実りにありつけなかったこともねえ。神様は恵みを与えてくれるが、見返りと畏れ敬うことも忘れちゃいけねえってことだな」
老人の話に、葵は目を瞠った。それこそ、何百年も続いている祭りだと知って、その由緒に驚いたと同時にどれだけ犠牲を払ったんだろうと思った。
「お嫁さんはどうやって選ぶの?」
「自薦、他薦問わず、募集する」
武朗も葵の前の椅子に座って、ビール缶のプルトップを上げた。
「やりたがるもの?」
「わりとね。といっても、人口少ないから、二十代の女性が順番になってるかな」
葵は聞いた端からメモをとる。録音装置も回っているのだが、基本的にアナログが好きな葵はメモをこまめにとる。
「ああ、ただここ数年、この役をやるとすぐに幸せな結婚ができるとかってジンクスもあって、やりたがる人が増えたかな」
「条件とかあるの?」
「成人で、未婚ならだれでも」
成人のみ、未婚。とメモに書く。まあ、お嫁さん役だから既婚者は駄目なのだろう。
「役をやったお嫁さんはどうなるの?」
その問いに皆笑う。
「どうもならないよ。ただの役だから、神事が終わったらもとに戻る」
「じゃあ、人身御供ってわけでもないの?神様に攫われちゃったりとか?」
さらに、笑い声が起きる。
「そんなことあるわけないじゃないか。神事だよ。そりゃあ、大昔は殺されちゃったり、行方不明になったりしたこともあるらしいけど。そんなの大昔の話だ」
「じゃあ、神隠しにあった人はいないんだね」
「ないね。俺が知る限り花嫁役では行方不明になった人はいないよ」
武朗の言葉に葵は引っかかりを感じる。
「花嫁役では?他にはあるの、そういう話」
武朗の顔色が変わり、葵から視線を反らした。他のメンバーを見渡してもしまったと言う顔をした。
「あれ?まずいこと訊いた?」
困った顔で、葵は武朗をじっと見た。
「い、いや。別に……」
「ほんとに?」
すまなそうな表情で、葵は武朗を見つめる。武朗の方が大柄なので、座っていても葵が下から見上げる感じになる。
どぎまぎと武朗の顔が赤くなった。男とはいえ、ここらでは見ないほどの華奢で綺麗な葵だ。見つめられてどうしていいかわからないらしい。
「ちょっと前に……」
「武朗」
言いかける武朗を後ろに立っていた女性が遮る。口を閉ざした武朗に葵は内心舌打ちした。
「事件?ヤバい話?」
そこは記者だ。ここで引き下がっては取材はできない。
「違う」
はっきり言って、武朗は後ろを振り返り、女性を見た。
「アッコ、別に黙っていることじゃない。ここじゃ珍しくても都会じゃ良くあることだし。こんな風に秘密めかす方が怪しいだろう」
「でも……」
アッコとよばれた女性はためらったが、武朗は葵に向き直った。
「去年、女性が一人、祭りの最中にいなくなっている。でも、事件じゃない。駆け落ちなんだ」
「駆け落ち?」
なんだかひどく珍しい単語を聞いたと葵は思った。自由恋愛が普通な現在、よっぽどの家柄じゃないと聞かない話だ。
「祭りで知り合った男と恋仲になったのがいて、祭りの夜にその男と消えたんだ」
「反対されていたの?」
「まあね。旧家の娘だったし、村は人口が減るのを嫌がるからさ……」
確かに、女性を連れ出られては人口が増えるのを妨げられていると思われても仕方がない。村の男と結婚して、子供を作ってくれと言うのが本音だろう。
しかし、駆け落ちじゃ事件性はない。ここでは大事件かもしれないが。
「今夜は前夜祭なんだよね」
重くなってしまった空気を一掃するために祭りの話に戻す。
明らかにほっとしたように、武朗は頷いた。
「具体的には何をするの?」
「今夜は潔斎日。離れた宮に一晩こもって、花嫁が身を清める」
顔を上げて、葵は先を促す。
「その間に本宮では降りてきた山の神をもてなすんだ。本宮では奥の部屋で饗宴が張られているよ」
「それ、公開する?」
その問いに、武朗は首を振った。それに葵は残念そうな顔をした。こんな本格的な神事を見るのは初めてで、持ち前の好奇心が刺激される。
「その代わり、外では屋台が出ていたろう。一般の人にも饗宴のおすそ分けっていうわけ。参道までは店を出してもいいことになっていて、さらに本宮の前では振るまい酒が出る」
なるほど。ちゃんと神様のおすそ分けもあって、みんなで祝うようになっているんだ。
葵は神事のシステムに感心した。
「明日は?」
「朝に花嫁が宮を出て村中を練り歩き、本宮に入る。それから神主が詔を唱えて、花嫁は神様の待つ部屋へと入る」
「花嫁さん、見れる?」
それには武朗は首を縦に振った。
「村中に花嫁姿をお披露目するよ。かなり盛り上がる」
わくわくした顔で聞く葵ににこりと笑い返して武朗が説明をくれた。
「明日で終わり?」
「違う。きちんと花嫁になった報告を神官が次の朝にして、神様と花嫁を送り出す神事が行われる。この時、花嫁は出てこない。神輿が山の宮へと帰るのに皆がつき従って、それで、祭りは終わる」
すごいと葵は思った。概要はある程度片桐から聞いて知っていたが、きちんと話をしてみれば、ストーリもあり、かなりしっかりした祭りだ。歴史も古いと聞いたし、由来の話もちゃんとしている。本当に昔から綿々と執り行われてきたのだろう。
「いいね。素敵な祭りだ」
にこにこと感想を述べた葵に青年団の面々も嬉しそうな顔をする。
このまま祭りの記事を書いても受けること間違いなしだと葵は思った。なにも読者はオカルトだけを求めているわけじゃないだろうから、こういうちゃんとしたお祭りがあるって知らせて、来年からたくさんの人に見てもらうのもいいだろう。
「最後にひとつだけ。祭りとは関係ないし、失礼な質問かもしれないけど……」
声を低めた葵に武朗は怪訝な顔をする。
「この村にお化けがでたとか幽霊が出たとかって話はあったり……する?」
訊きたくないという口調で葵は言う。こんないい祭りの日にこんなこと訊くなんて間抜けで恥ずかしい。
その様子がわかったのか、それとも質問が間抜けだったのか、また青年団全員が声をたてて笑った。
「なに、それ」
アッコと呼ばれていた女性もくすくす笑っている。
「いきなり何を訊くかと思えば、お化け?ないないそんなの」
「そんなの信じているの、あんた」
信心深そうな村の人たちに大笑いされて、葵は憮然とした表情をする。
「マニュアルで訊くことになってんです。僕だって訊きたくなかった」
赤くなって反論する葵をみて武朗が笑いを止めた。
「確かに山の中の村だし、肝試しする場所には事欠かないけど、そんな話、聞いたことも見たこともないな。狐狸が化かしたって話ならあるけどさ」
気の毒そうにみられて、なんだかいたたまれない思いを葵はした。
「サラリーマンは辛いよな。わかるよ」
元サラリーマンの武朗に同情され、葵は青年団のテントを後にした。
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