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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」4

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青年団のテントにずいぶん長居をしていたらしい。それでも、まだ外は人で賑わっていた。
祭囃子も聞こえる。それに背を向けて、花嫁が籠っている宮を外からだけでも見たいと思い、そちらに足を向ける。村はずれって言っていたのでそちらを目指すとどんどん人通りもなく、暗くなる。
田舎だからかあまり街灯がなく、祭りのために焚かれたかがり火や電気が遠ざかると辺りはどんどん暗くなった。
取材のアイテムの一つ、懐中電灯を鞄から取り出すとそれで照らしながら歩く。しかし、本来は手元のメモを照らすためだけのものなのでそう遠くまで光は届かず、暗い中を葵は村はずれを目指した。
目が慣れてくると今夜は月が明るく、ぼんやりでも道が見えることに気付く。足を止めて、葵は空を見上げた。一面の星空が広がり、あまりの数の多さに葵は息を飲んだ。天の川がくっきりと認識できる。
これが本当の夜空なんだよなと葵は思った。
今回は発見が多いと葵はうっすらと見える道をゆっくり、村はずれへと歩む。そのうち、月明かりでも黒々と大きな建物が前方に見えてきた。
お籠りの宮っていうからもっと小さいのかと思ったけど、けっこうでかいな。
明かりもない木造の宮を見上げて、葵は目を見開いた。日本の伝統的な宮造りの建物は、厳かな雰囲気を漂わせる。辺りには人っ子一人いなかった。
ここは静かに身を清めるところで、祭りの中心でありながら、俗世からは切り離されているんだなと思う。しばらく佇んで、黒い建物としか認識できない宮を見上げ、葵は戻るかと視線を前に向けた。
その瞬間に身体が硬直し、あまりの驚きに身動きもできなくなる。
視線の先に白い女性が立っていた。後ろが透けて見える。儚げな影のような女性の姿に葵の目が見開かれ、身体が震えだす。
気温が一気に下がったような感じがする。
『さがして』
女性が口を開き、微かに声が聞こえた。
ありえない。こんなこと。あれはなんだ。
頭の中で言葉がぐるぐる回り、葵は何度か瞬きをする。
『さがして。わたしを』
声もエコーがかかったように脳内に響く。
『お願い』
そういって、女性はふいっと消えた。跡かたもなく。
葵はその場に崩れ落ちた。腰が抜けて座り込んだと言ってもいい。
「いまの何?」
自分が呟いていることもわからないように前方を見つめて、葵はそのままへたり込んでいた。身体の震えが止まらないのに、腕すら上げられない。どれだけそうしていたんだろう。長いような気もするし、ほんの数分だったような気もする。
ふいに、目の前が影になり、頭上から声が聞こえた。
「葵」
自分の名を呼んでいる気がするが、頭の芯が痺れていて何も認識できない。
「気付けには弱いがしょうがない」
そんな言葉が聞こえた瞬間、温かくやわらかいもので唇を塞がれた。冷たい液体が口に流れ込み、葵はそれを飲み下した。
ビール?
苦味が舌を滑り、頭の隅でそんなことを思う。唇が離れたと思ったが、また唇を塞がれ、またビールが流れ込んできた。それを葵は再び、飲みくだす。その際に、葵の舌が相手の舌と触れた。
いきなり、後頭に手を添えられて口づけが深くなり、舌が絡みとられた。するりととかれ、また絡みつけられる。何が起きたかわからないが、誰かに口づけされていることだけは認識できた。それもやけに慣れた甘い口づけ。
なんだ。なんで、俺……。
身体が弛緩して、意識がはっきりしてくる。口腔内をまさぐる舌は熱くて、甘い。身体が熱くなるような口づけに、うっとりと瞳を閉じ、葵はそれに応えた。耳の底で、水音がする。
「んっ…」
口腔内を辿られ、喘ぎが口をつく。唇をつつっと舌で舐められて、唇が離れて行った。
葵は名残惜しそうに瞳を開けた。
「?!」
目に映った人に葵は言葉がない。肩に手を置いて、葵を見つめていたのは片桐だった。
「大丈夫か?」
低く心地の良い声が耳を打つ。
「何してんですか」
両手を地面について、目の前にしゃがんだ人を見上げて、葵は間抜けた質問をした。
「何って……。なんか呆けてたから気付けをと思って。本当はもっと強い酒の方が良かったんだが、ビールしか持ってなかったから」
「気付け……?」
そうだ。確かに、流し込まれたのはビールだった。でも、キスしたんだよな、片桐さんと……
片桐の唇を見つめ、柔らかい唇だったと一瞬思い、葵は真っ赤になった。
何考えて……。
「あーっ」
いきなり叫んだ葵を驚いた顔で片桐は見た。
「片桐さん、見ました?幽霊。幽霊が……」
「白い人?」
ぶんぶん、葵は首を縦に振った。
「でも足があった」
「幽霊だって足くらいあります」
そう、足のない幽霊はそっちの方が怖いからっていう理由で、江戸時代に創作されたもの。西洋の幽霊には立派に足がある。
「まあね。とにかく、一回、宿に帰ろう」
片桐に手を差し出され、葵はそれを取った。まだ、足が震えていたがとりあえずよろけずに立ち上がる。
「歩ける?」
片桐の問いに葵は首を縦に振った。
「幽霊……見ちゃった」
歩きながら、葵は呟く。
「事件なんてないって聞いてたのに。なんで?」
声に出して自答して、葵はあれ?と思った。
「でも、『私を探して』って言った。ここにいるじゃなくて探して?」
ぶつぶつ呟いている葵の頭を片桐がポンポンと叩いた。
「大丈夫か。とりあえず、一回落ちつけ」
「落ち着いてられませんよ。だって、おかしくないですか。あの幽霊、『私を探して』って言ったんですよ。自分のいるところがわからないなんて変」
それを聞きながら、片桐は苦笑いをする。
「変なのは、葵クン、君の方。とりあえず、白い人のことは置いておいて、宿に帰ろう」
片桐を見上げて、葵はちょっと首をかしげた。
片桐さんって俺のこと名前で呼んでたっけ。
再度、頭をポンポンと撫でられ、その手の大きさと温かさに、なんだか安心して、まあいいかと葵は思った
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