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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」5

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部屋に戻ってきて、窓際の籐製の椅子に崩れるように葵は座り込んだ。
片桐は考えるなと言ったけど幽霊を初めて見てしまった葵はそんなことはできなかった。
それでも、片桐がお茶を入れてくれ、それを飲んで一息つくと、恐怖や驚きが薄れた気がした。
「落ち着いた?」
向かい合って座る片桐を見上げ、葵はドキリとする。
「また、助けてもらって。ありがとうございます。なんだか、俺、片桐さんに助けてもらってばかりの気がする……」
「そんなの気にしなくていい。それより、あんな人気のないところに一人で行くなんて、そっちを気にした方がいいと思うが……」
お茶をすすりながら、ちらりと片桐が葵を見た。その視線に責められている気がして、葵は手元の茶碗を見つめる。確かに人気のないところには行ったが、自分は男で何があるわけでもあるまい。心配しすぎだと葵は思う。
あっ、でも、絡まれたところを助けてもらったこともあるんだった。いつもヒーローみたいにいいところで現れるよなと思って、葵は顔を上げた。
「そういえば、片桐さん。どうして俺があそこにいるって」
「見かけたんだ」
まっすぐに視線が合って、葵の鼓動が跳ね上がる。
「祭りの人ごみと反対方向へ歩いて行く葵クンを見かけたから、後を追った」
なんでそんなまっすぐに見つめるんだろう。どぎまぎと視線をそらす。
「花嫁が籠っている宮が見たくて」
なんか悪いことをした気がして、葵はそう口にする。
「そうだろうな。あそこにはそれしかない」
つっけんどんな受け答えに、どう返事をしていいかわからず、葵は黙ってお茶を飲んだ。
やっぱり責められていると思うと言葉が出ない。
沈黙が落ちる。
一人で行動したことを不快に思っているらしい片桐に、困惑を隠せない葵は残ったお茶を一気に飲み干し、立ち上がった。
「どうした?」
「風呂、行ってきます」
荷物のところに行って用意をし、葵は部屋を出る。廊下を大浴場に向かって歩いた。
なんか片桐さん怒ってた。
面倒ばかり掛けるからだろうか。心配し過ぎだから放っておいてくれと思うが、すでに三度も助けられている葵にしてみれば、そんな心配いらないとは面と向かって言えない。だが、確かに、面倒はかけているかもしれないが、今回ばかりは幽霊が出たことが誤算で、ひどく驚いたが、それだけじゃないか。
片桐は、ただの知り合いにしては過保護だ。どうしてここまで俺に構うのだろう。こんな風に大事にされると、自分に都合のいいように誤解したくなる。
そんなことあるはずもない。
期待はしないほうがいい。違ったときに辛いから。自分みたいな性癖の人間はそう簡単に恋は実らないんだから、希望を持ってはいけない。必死に自分に言い聞かせながらも、つくんと胸が痛んだ。
謝ったほうがいいのかな。
一人きりの脱衣所で、葵は小さくため息をついた。
時間が遅いせいか、大浴場は誰もいなかった。身体をざっと湯で流し、葵はさっさと外の露天風呂へ行くと身を湯に沈めた。じわりと身体が温まり、気持ちがいい。
「はー。やっぱ、広い風呂はいいよな」
露天風呂は木々に囲まれていて、影絵のような木が時々、風に揺れている。
天空には月が昇っていて、虫の声が草の陰から耳に響いた。
こうやって湯につかっていると先ほどの幽霊は夢だったんじゃないかという気さえする。
「でも、見たんだよな。白い影」
すごく怖くてしばらく動けなかったと思ってから、葵は真っ赤になった。先ほどの幽霊のことを思いだしたら、片桐とキスしたことまで思いだしたのだ。
違う。あれはキスじゃない。だって、気付けって言ってた。そうだよな。あの人ストレートだし、俺男だし。俺があまりに呆けていてどうしていいかわからなかったんだよな。
顎の下まで湯につかって、葵はもう何度目になるかわからない溜息をついた。
気持ち悪くなかったんだろうか。同性とキスなんて。
そう思うが、思い出してみると二回目のキスはなんだかひどく情熱的だった気もする。
まさかね。妄想が過ぎるだろうと思う。あれは自失していた葵の目を覚まさせるため。それだけだ。
唇に指を当てて滑らす。甘い片桐の口づけを思うと、胸がキリで突かれたように、きりりと痛んだ。
その瞬間、扉がからりと開く音がして、葵は露天風呂の戸口に視線を送った。
「なんで?」
湯の中で葵は身体を固くする。戸口に立っていたのは片桐だった。思った通り、長身の身体は細身ながらよく引き締まり、綺麗に筋肉がついていた。陽に焼けた肌からなにかスポーツをしていることがわかる。
どこから見ても葵の好みで、あまりの均整のとれた身体に葵は目を奪われる。
ゆっくり湯船に歩み寄り、片桐は湯船に身体を沈め、葵に笑いかける。
「なんで?」
同じ問いを葵は繰り返した。
「汗かいたからな。葵クンが風呂行くって言ったし」
一緒にと言われて嬉しさを覚える反面、意識すらされていないことに落胆する。同性なんだからそれが普通なのだが、葵にしてみれば、心中複雑だ。
片桐の裸なんて見たくなかった。
見たら絶対に平静でいられない。好きな人の肌を見て普通でいられるほうがおかしい。
欲情しないように葵は自身を必死に抑える。
「な、ここの温泉なかなかだろう」
さわやかな笑顔で片桐は言う。
そんな顔で笑わないでほしいと葵は切に願う。必死に平静を保とうとしているのに、理性が切れて余計なことを口走ってしまいそうだ。
「ここの温泉、肌にもいいらしい。肩コリとか腰痛にも効くって話だ」
「腰痛って。そんなのないんですけど。まだ若いし俺」
葵の言葉に、一瞬目を見開いて、片桐は豪快に笑った。
「それはそうだ」
笑いながら、片桐は座ったまま湯船の中を葵の方に近づいてくる。
葵は勢いよくざばりと立ちあがった。
「のぼせちゃうんで、身体洗ってこようっと」
もう、片桐は見られなかった。お湯を蹴立てて、風呂を出る。
自分の細くて白い身体を見られることにも抵抗があったが、それよりも片桐が側に来たら何を言い出すかわからない自分の方が怖かった。
驚いた顔をして、顔にかかったお湯を手で拭った片桐を視線の端に捉えながら、葵は逃げるように洗い場に向かった。
髪の毛と身体を洗って、葵は鳴りやまない胸の鼓動と戦っていた。目の前に片桐の裸体がちらついて、自身が勃ち上がり掛けるのを別のことを考えて抑える。片桐を見て欲情しているなんて、絶対に本人には知られたくなかった。
もう顔を合わせられなくて、ゆっくり身体を洗っていたら、背中を人が通り過ぎる気配がして、葵は身体を固くした。
気配は止まることもなく、そのまま扉を開け出て行く。片桐が上がったんだということがわかり、葵はほっと息を吐いた。
やっぱり、ストレート相手の片思いは辛い。
同性なら普通のことが普通でない感覚は彼らにはわからないだろう。一緒に来ているのだから、風呂で語り合って親睦を深めるくらいにしか思っていないんだろうが、そういう目で見ている葵にとっては、拷問でしかない。
哀しい思いが胸に広がって、葵は手にしていたタオルをギュッと握りしめた。もちろん相手がゲイだって、想いが叶うとは限らない。
それでも、こういう感覚は共有できるだろうし、告白もできる。気持ち悪いとか男だからとかそういう理由で振られるのが嫌で、もう二度と側にいられなくなるのが嫌で、葵は想いを告げられずにいる自分が辛く、哀しかった。
お湯の栓をひねると頭から勢いよくお湯が落ちてきた。それをかぶりながら、葵は涙ともお湯ともつかない滴が頬を流れるままに、もう一度、持っていたタオルをきつく握りしめた。

部屋に戻ってくると片桐は窓際の籐製の椅子に座り、ビール缶片手に外を見ていた。
「遅かったな。のぼせるって言ってたわりには長湯なんだ」
窓の側に寄ってタオルをタオル掛けに掛けた葵に、片桐が笑う。
「髪を乾かしてたんですよ。そのままにすると大変だから」
タオルをきれいに広げて、落ちないように付属の洗濯バサミで止める。
「長いと手入れが大変だな、切らないのか?」
問われて、葵は首を横に振る。
「癖がひどくて、短くするとくりんくりんの髪型になっちゃうんですよ」
そうするとただでさえ童顔な顔が、さらに子供っぽくなるんでとは、心の中でのみ呟く。
「ふうん」
かがめていた身体を起こすと、いきなり自分の後ろから片桐の声がした。さっきまで椅子に座っていたのにと思っていると、髪を一房掬いあげられて、身体が固くなる。
「ほんとだ。ちゃんと乾いてる」
振りかえると片桐の指から髪がさらりと零れた。
見上げると片桐と目が合った。そこには何の感情も読み取れない。ただ、ちょっと好奇心で触れただけといった感じだ。
「緩くウェーブがついているのに、さらさらなんだな」
案の定、そんな感想を述べた片桐を軽く睨む。そうでもしないと、なんだか変な錯覚をしそうだ。
これで相手がゲイだったら絶対、口説かれていると思うし、それなら我慢することもない。葵は片桐が好きなのだから。
でも違うのだ。相手はストレート嗜好で、これには何の意味もない。
なんでもない。こんなの別に口説かれているわけでも誘われているわけでもない。
必死に自分に言い聞かせ、このまま身を投げかけて抱きついてしまいそうになる衝動を抑える。
心が痛い。何度も何度も。片桐といる限り心の痛みが続く。
「悪い。触られたくないよな。せっかく手入れしてきた髪なのに」
葵の睨んだ理由をそう捉えた片桐が手を降ろして謝った。
違う。本当は触って欲しい。髪だけじゃなくて、どこもかしこも。
心の中で叫んで、葵は瞳を伏せた。
「もう、日付が変わっている。明日も見るんだろう、祭り。そろそろ休もう」
何も答えなくなった葵に背を向けて、片桐は隣の寝室へと移動した。見たくないのにそれでも視線は片桐を追う。肩幅の広い背中が布団へと移動した。
視線の先には二つ並んだ布団。ここで並んで寝るなんて絶対無理だと葵は溜息をついた。
それでも、寝ないわけにも断るわけにもいかず、葵は片桐の隣の布団に身体を横たえた。隣が気になって、全く眠れない。何度も寝がえりをうち、瞳を閉じるが隣から聞こえる息遣いだけで、鼓動が跳ね上がり、身体が熱くなる。
今夜は眠れないかもしれない。
そう思って隣を見るとすでに片桐は寝息を立てていた。ゆっくりとした呼吸を繰り返し、たくましい胸が上下していた。
意識しているのは自分だけだと、それが当然だと、ほーっと息を吐いて、葵は、滲みそうになる涙をこらえる。
やっぱり、ただの知り合いか友人くらいにしか思われていない。当たり前なのだが、何度か、“もしかしたら”と思うこともあって、そのたびに否定しながら期待し、期待しては否定してた。
バカだな。全部、自分の思いすごしだ。
そう思ったら、鼻の奥がつんと痛んだ。
構われたい。でも放っておいてほしい。
想いが叶わなくても、友達でいいからそばにいたい。辛い恋なら、もう見たくない。
好きなのに……。
ぎゅっと目を閉じて、葵は矛盾を含んだ堂々巡りな思いを繰り返した。
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