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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」7

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「おはよう」
声が聞こえて、籐製の椅子に腰かけて新聞を広げていた葵は顔を上げた。すでに着替えも済ませた片桐が洗面所の入口に立っていた。
「早いな。眠れなかったのか」
気遣わしげに問われ、葵はにっこり笑う。冷やしたから瞼は腫れていないだろうが、そのくらい泣いた自覚が葵にはある。
「まさか。早くに寝たので、わりと早く目が覚めたんですよ」
普通に振る舞えているだろうか。
内心ビクついていてもそれを表には出さない。
「そうか。昨日、怖い思いをしたみたいだから、眠れなかったのかと思った」
怖い思い……?
反芻して、昨日の幽霊騒ぎを葵は思いだした。今の今まですっかり忘れていた。あまりに近くに片桐がいて全ての意識がそちらに向いてしまっていたから。
「大丈夫です。幽霊、本当にいましたしね。祭りで記事を書こうと思っていたけど、やっぱり幽霊のほうで書きますよ。俺にも見えてびっくりですけどね」
できるだけ明るく答えると片桐が近付いてきた。
「それなんだが、あれ、本物だと思うか?」
目の前に立たれて、また勝手に心臓が暴れ出し、葵は相手に気付かれたくないと思う。
「どういう意味です?」
走りそうになる息を押さえながら、片桐の顔を見上げた。
「昨夜のところにメシ食ったら行ってみないか」
そう言われれば、昨夜も片桐は「足があったぞ」などと幽霊を信じていない発言をしていた。自分を落ち着かせるためだと思っていたが、そうではなかったのか。
「わかりました。確かめに行きましょう」
葵の答えに片桐はさわやかに笑って、洗面所へ消えた。
こんな普通の会話ですら気持ちがざわつく自分に葵は嫌気が差した。

白い女性を見たところへ行く。明るいところでみると何の変哲もないただの一本道だ。昨夜、大きいと思った建物がひっそりと佇んでいる。木造の社はこちらもよく神社で見かけるものと大差ない。
道や草むら建物を囲む塀などを見て回る。
顔を上げると片桐は、それとは別のところを見回っていた。
別に何もないよな。誰かに担がれたかとも思ったが、トリックの痕跡は見当たらない。といってもこの手の話は極力避けてきた葵にとってみれば、どんなトリックが使われているかなど検討もつかないのだが。
「どうだ」
草むらを適当に手でかきわけていたら、後ろから声を掛けられて驚いて振り返る。
「ああ。別に何もなさそうですよ。片桐さんは?」
「ん?ああ、まあ。これといったところは……」
なんだか歯切れが悪い。
葵は怪訝そうに片桐を見るが、瞳が合うとにっこり笑ってはぐらかそうとする。
「なんか隠してません?」
睨みつけてもまた微笑われ、なんかちょっと面白くない。
「証拠も何もないからどうもいえないんだが」
むっとすると困ったように片桐は説明をしだした。
「葵クンが座っていたのがここ」
移動して道の真ん中に立つ。
「葵クン、ここに立ってて」
言われて葵は昨夜しゃがみこんでいた位置に立つ。
「俺たちが見た白い女性はこの辺に見えた」
葵の立った位置の真正面に片桐は移動し、こちらを向く。それに葵は肯定の意味で頷いた。
「で、俺がいたのがここ」
すたすた歩いて葵の後ろに立った。振り向いて葵はそんな近くにいたんだと思った。
「そのとき、視界の端で人影が動いた」
「え?」
葵の問いかけを無視して、片桐は先ほど調べていた草むらに行く。
「この辺の草に踏まれた跡がある。でも、それだけじゃ証拠にならないしね」
「やっぱり、幽霊はインチキ?」
葵も片桐の側まで走って行き、草むらを見た。確かに草が踏みつけられた跡がある。
「たぶんね。鏡かスクリーンかを使ったトリックだろうが、それを設置した跡が見つからないんだ。だから百%の保証はない」
今まで、霊感なんかなかった葵がいきなり見えるというのもおかしいし、大体、あの幽霊は『私を探して』と言ったのだ。『ここにいる』ではなく。
それにしてもなぜ、そんないたずらを部外者である自分にしたのだろうか。雑誌に載せてもらって、もっと人を呼びたかったのだろうか。
そうだとすると武朗あたりは怪しいが、あれだけ祭りを大切にしている青年団がそんなことするだろうか。
考えに没頭していたら、頭をぽんぽん撫でられた。われに返って顔を上げると隣に片桐が立って、道を指している。
「そろそろ、花嫁の行列が離れ宮を出発する時間だ」
道を人がぞろぞろ、離れ宮の方へ歩いていくのが、片桐の指したほうに見えた。目線で行くんだろうと問われ、葵もそちらに足を踏み出した。

建物を回りこんで正面に行くとすでに結構な人出だった。宮の入り口には輿が止まっており、宮を取り巻く外廊下には白い神官姿の人がいる。
先触れの音がして、奥から鈴の音がしゃんしゃんと鳴り響き、白無垢の花嫁が先導する神官の後ろから現れる。
周りでシャッターを切る音とフラッシュが光った。
「きれいだな」
おつきの巫女さんに手を取られ、輿に乗り込む花嫁を見て、葵は呟く。
女性には性的にはまったく興味はないが、きれいなものは素直にきれいだと思う。変な色眼鏡で見ない分、余計きれいに見えるのかもしれない。
白い重そうな着物で花嫁が輿に座るとゆっくりと輿が引かれて動き出した。あわてて、正面にいた人々が道を空ける。
ゆっくり、ゆっくり輿が進み、葵は自分の横を通り過ぎるのを見上げた。
白い肌に赤い唇。きっちり整えられた髪には角隠しが乗せられ、どこから見ても伝統的な花嫁姿だ。
輿が移動すると人々がそれに付き従う。このまま村を練り歩き、花嫁のお披露目をするのだ。葵も人波に乗って移動する。
祭り特有の賑わいだ雰囲気を味わいながら、ゆっくりと村の中心まで歩き、葵はふと今のうちに神様がいるという本宮を先に見ようと思った。行列が道を折れるのを見送って、一人、本宮へと歩く。祭りでも人々の暮らしはあるから、畑や道にも村人の姿がちらほら見える。
畑の手入れかな。
それをぼんやり見ながら、参道へと入り、本宮の前庭へ出た。こちらはまだ、夜のための準備中ということもあってほとんど人気がなかった。
せっかくだからお参りしていこう。
本宮の前に設置された賽銭箱の前に行くと鈴を鳴らし、柏手を打って両手を合わせる。祈りたいことはたくさんあったはずなのに、結局、頭を下げただけでお参りは終わった。
頭を上げて周りをきょろきょろ見渡すと巫女さん姿の女性が二人、こっちを向いて何やらきゃあきゃあ話をしていた。
俺を知っているのかな。
そちらに向かっていき、「おはようございます」と声を掛けた。
「お、おはようございます」
ぽっと顔を赤らめて二人の女性は挨拶を返した。手には竹箒を持っている。掃除中だったのだろう。
女性のこんな反応はいつものことで、葵は愛想よく笑いかけるとさらに二人はそわそわした。
「取材の人ですよね」
一人が思い切ったように訊いた。
「そうですけど、知っているの?」
だってねーとか言いながら二人が頷く。
「二人とも青年団の人?」
その問いにも二人は頷いた。
「お化けは見つかった?」
年も近く、愛想の良い葵に警戒を抱かないのか、くすくす笑いながら、女性が問う。
「昨夜、あそこにいたんだね」
溜息をついて、くすくす笑う二人を見る。
「それがさ。あのあと見たんだ、幽霊」
「えー。ほんとー」
全く信じていなさそうに、二人は顔を見合わせた。
「どんな幽霊?尻尾生えてなかった?」
狐にでもたぶらかされたのだろうとまた笑い出す。
「白いワンピースの女性で……」
葵は昨夜みた白い人を思い出す。怖くて記憶の隅に追いやっていたが、あれがインチキだというのなら話は別だ。
「肩より少し長めの髪で。そうそう、髪を一房だけ三つ編みにしていた」
二人の顔から笑みが消える。
「それを髪飾りで留めてた」
「どんな形でした……?」
問う声が震えている。
「リボン形?蝶々?そんな感じの」
二人の顔色が変わる。
「色もわかります?」
「暗かったし、なんか光ってたから、でも紫っぽっく見えたかな」
葵の言葉に二人は息を呑んだ
「澄江ちゃん……」
口に手をあてて、一人が名前を呟いた。
「すみえさんって誰?」
聞きとがめて、葵が問うと首を横に振る。
「そんなはずない。だって、澄江ちゃんは街で幸せに……」
泣きそうな女性をもう一人が心配そうに見る。
「すみえさんって駆け落ちした娘?何、友達なの?」
葵の問いに二人は頷いた。
「同級生」
「そのときのこと聞いてもいい?」
二人は顔を見合わせた。好きな男性と幸せに暮らしているはずの友達を思って、逡巡する。
「その相手の男性は村の人?」
問う形にすると二人は首を横に振った
「違う。街の人。一昨年の祭りに来てたの」
「一昨年の祭りで澄江ちゃんと知り合ったんだね」
訊くと頷く。
「澄江ちゃんが花嫁役で、それを見て一目惚れしたって」
目線で葵はそれでと問う。
「それからも手紙とか、電話とかでやり取りしてて。何度か澄江ちゃんが駅のほうで会ったとかも言ってた。すごく幸せそうだった。でも、結婚しようって言われたって澄江ちゃんがご両親に話したら、ひどく反対されたって。澄江ちゃんってすごくきれいな子で、同級生の男の子たちの一番人気だったし、だから、村の人と結婚しなさいって、もう婚約まで話が調っているからってお父さんに怒られたって泣いてた」
ここまで話せば一緒だと思ったのか、それとも実は話したかったのかはわからないが、二人は密やかにことの次第を話しだした。
「去年の祭りにもその人が来るって聞いて、私たち、それなら一緒に村を出ちゃえばって。本宮へ神輿が入る夜には、村はずれは人気がなくなるからそこで待ち合わせて、二人で村を出るってことになったの」
「君たちが応援したの?」
「そう。同級生の女の子みんなで協力して、村の誰にも見つからずに二人は街へ行ったの」
それなのになぜと二人の顔に書いてある。
インチキかもしれない幽霊話に、駆け落ちした同級生が係わっているかもしれないと心配する二人に悪くて、葵はばつの悪い顔をする。
「あ、俺が見たのは見間違いかもしれないし。それに幸せに暮らしているんだろう、二人とも。連絡はないの?」
また、二人は顔を見合わせた。そして、頷く。
「きっと、居場所を知られたくないんだってこの間もみんなで言ってた。ご両親にばれると連れ戻されるかもしれないでしょう?だから、もう少し時間が必要だって思ってた」
宮から神主姿の男性が出てきたのが二人の肩越しに見えた。
「おい。そこの二人。いつまで掃除しているんだ。そろそろ次の神事が始まるぞ」
大声で言われて、二人は肩をすくめた。
「行かなきゃ」
「ごめん、時間取らせて。それに、俺の見たのはきっと違うよ。澄江さんは今頃幸せに暮らしてると思う」
根拠なく声を掛けると二人は少し笑って踵を返す。
「あ、最後に一つだけ。澄江さんの一番の仲良しは誰?」
「京子ちゃん」
名前を言われて、首をかしげると
「今年のお嫁さん役」
そういって、二人は駆けていった。
それを見送り、葵はさっき見たお嫁さんを思い出していた。
あれが、京子ちゃん。
なにか引っかかることがあるのだが、それがなんだかわからない。
「うーっ」
一つうなって、葵も神社を出ようと歩き出す。
俺が見た幽霊が駆け落ちした澄江だとすると彼女はもうこの世の人間じゃないことになる。駆け落ち先で病死?それだと『私を探して』というセリフと合わない。
駆け落ち相手に殺されたとか?
まさか、なんとかサスペンス劇場でもあるまいし。
ぶつぶつ呟きながら歩いて、ふと顔を上げると参道の先の鳥居に片桐が寄りかかって立っているのが見えた。
近づくと軽く睨まれる。
「片桐さん」
「なんで、一人で勝手に動くかな」
怒ったように言われる。
「心配しすぎですって、子供じゃないんだから……」
言いかけて、葵はやめた。何度も助けられている奴の言うセリフじゃない。
「巫女さん相手に鼻の下伸ばしているし」
「は?何言ってんですか。伸ばしてませんよ」
意味不明なことを言われてとっさに反論する。なんで、俺が女性相手に……。
そう思って、ああ、この人はノンケだったと思い返す。
「好みだったんですか、巫女さんたち」
きっとどっちかが好みで、それに妬いているのだと思ったらまた胸が痛くなった。
「声かければよかったのに」
そしたらお近づきになれましたよという言葉を葵は飲み込んだ。
「深刻そうに話をしてたからな。なんか邪魔かと」
「違いますよ。いろいろ聞いてただけです。駆け落ちのこと」
怒ったように言うのが不思議だ。狙っていた娘だったんだろうか。
かいつまんでことの次第を述べる。別に片桐さんに報告の義務もないのだが、そうしなければいけないような雰囲気だったのだ。
片桐は黙って葵の話を聞く。
「次はどうするんだ」
全部聞き終わって、少し考えた顔をした片桐は葵にそう訊いた。
「昼にここで神事があるらしいけど、それはまあ、どっちでも良いと思っているので、一足先に明日、花嫁の神輿が向かう山の宮を見てみようかと」
答える葵に視線を走らせ、「じゃあ、俺も行く」と片桐は言った。
「いいんですか。神事見なくて」
たしか、片桐は祭りを調べに来ていたのではなかったか。
「いいんだ。葵クンにつきあうよ」
そう告げられ、不覚にも胸がどくんと鼓動を打った。
「仕事でしょうが」
先に立って歩きながら、つい非難めいた言葉を投げる。心配されているのはわかっている。危なっかしい知り合いを放っておけないのも。
ありえないとわかっていても葵は期待をしてしまう。
もしかして片桐さんも俺に気があるんじゃないかと。
ばかなことを考えていると否定して、痛む胸の上のシャツを葵はぎゅっと握りしめた。
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