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「天空国の守護者」
トレジャ編

出撃

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「入ります」
扉をノックする音がし、セインは「入れ」と応えを返した。開かれた扉からはタミルが現れる。入り口からもっとも遠い壁を背に席に着いたセインはあらためて部屋を見渡した。
部屋の中央に置かれた楕円形の会議用のテーブル周りにはすでに、6人の守護者の姿があった。全員、銀の甲冑に黒いマントという出で立ちで、小脇に兜を抱えていた。すべて大隊長だ。
天空国は人間の国であるパラドースを守るために守護者によって編成された軍をもつ。
守護者の軍は6つの大隊から構成される。大隊は命令系統を行き渡らせるために、さらに中隊、小隊と区分され、最少単位は10名からなる部隊でできていた。
集まった彼らはその大隊を指揮する司令官達だ。彼らで構成される最高会議で、戦いの方針が決められる。
会議室内部へ窓から光が淡く差し込み、銀の甲冑と兜に反射している。全大隊長が一堂に会すこの光景も久しぶりだとセインは思った。
「そろったな」
厳かに告げ、笑みもなくセインは彼らを見渡す。声の調子の重さが伝わったのか部屋の空気に緊張が走る。
「席についてくれ」
その命令で全員が円卓の各自の席へと腰をおろし、小脇に抱えた兜をテーブルに置く。甲冑がかちゃかちゃと音を立てた。
「すでに諸君らも知っていると思うが、一部の人間がクアールと手を組んだとの情報を得ている。これが大きな火種になる前にそれらを炙り出して殲滅する必要がある。これに失敗すると先の大戦と同じ規模の戦乱が来るだろう」
セインの言葉に揃った大隊長からざわめきが漏れた。
150年前に起きた先の大戦では、守護者は多大な被害を被った。軍の大半が死傷し、パラドース国にも天空国にも被害がでた。
あのときは、野心のあった男がクアールの当主となり、ここで一気に大勢を決めようと総攻撃を仕掛けてきたのが原因だった。さすがに、ここにいる者で先の大戦を経験した者はいないが、この戦いについては幼い時から嫌というほど聞かされてきた。
「説明するまでもないと思うが……」
セインの現状説明の声が会議場に流れ、大隊長たちは一様に口を閉ざし、耳を傾けた。
「先の大戦より150年、我が天空国軍も数が増えてきたとはいえ、現在の軍事力は現在約6万。少ないが幸いなことに、クアール軍も同じ規模だ。クアールも我が国と同じく出生率の低下は如何ともしがたいらしいな。まあ、拮抗が保たれているからこそ、ここのところは小競り合いですんでいたんだが……」
セインはここで言葉を切って、円卓に着く大隊長たちを見渡した。
「しかし、これに人間が加わるのは避けたい。我々とは違って繁殖力が強い人間を味方にし、軍に組みこまれたら、その数50万は下らない軍勢になるだろう」
ざわざわと会議室がざわめいた。人間を下等と見下しているクアールは過去に人間と組んだことはない。考えたこともないだろう。いままでは。
もちろん守護者と人間の個人の力は比較にならない。守護者が圧倒的に強い。だが、数だけをみれば人間は脅威だ。50万の軍勢は守護者といえども殲滅するのは難しい。
「ついでに我々が庇護しているパラドース国の人間は武器を持って戦った経験がないときている。これは長年、我々がそれを肩代わりしてきた弊害でもあるが、そもそも軍を持っていない。それに対し、パラドースの北に位置するドドスやエスク、南に位置するクラサ、スーザなどの国々では軍を保持し、時には戦争に明け暮れている。我らに比べて力が弱いとはいえ、これらの国の軍には戦闘能力のある人間が存在する。それら人間がクアールの戦力に数えられることは我々としては絶対に避けたい。だいたいにおいて、我々がクアールを相手にしている間に、他国の人間がパラドース国に侵入し、パラドース人が蹂躙されたら我らの存在意味すらなくなる」
守護者の存在意義――パラドースを全ての脅威から守る――。
セインの言葉にその意義を思いだしたのだろうタミルが苦笑を浮かべた。周りの大隊長も同様だ。自分もまた例外ではないとセインは思う。すでに、守護者と人間が交わした過去の契約は形骸化している。しかし、どんなに理不尽だ意にそぐわないと思ったとしても契約は契約なのだ。守護者には破ることはできない。
「事態の深刻さは理解してもらえたと思う」
告げたことの重さは隊長達に伝わったらしい。全員が沈鬱な顔でセインを見つめた。
「将軍。現状、どの程度の規模だとの報告なのでしょうか」
大隊長が一人、翠軍隊長カミールが問う。6人の大隊長の中で策士と名高い男だ。だが、その切れ者との評判は外見からではうかがいしれない。肩で切りそろえられた緑の髪がどちらかというとたおやかな顔を縁取り、思慮深い光を宿す瞳がセインを見つめた。
「パラドースの北に接する国ドドス北方、さらにその北のエスクでクアールを神と称える宗教が興っている。信者の数は推定だが2万というところだろう。その教えではクアールに敵対する我らは悪魔らしい」
くつくつとセインはそこで嗤った。パラドース国ではクアールこそが悪魔と呼ばれ忌み嫌われている。人間とは自分に都合の良いようにしか物事が目に映らないらしい。
「どうも教団の一部が狂信者と化し、クアールと儀式をもって通信し、協力を約束したらしいな。クアールは守るべきものを持たない。どこの人間だろうと命を差し出せば、都合の良い道具のように使うだろう。利用しているつもりがされているのもわからない愚か者集団だ」
人間へのセインの評価は容赦がない。すでに誰もが人間を守る意義を見失っていた。戦争は彼らにとってゲームであり、自分たちの天空国が守られ、宿敵クアールにやられなければそれでいいのだ。しかし、セインにとって今回の戦いにゲーム感覚はない。人間を守る意義はなくとも、彼には守りたい者がいる。キリスエールだ。
「その2万全てを相手にするのでしょうか」
尋ねたのは白軍隊長ヴァイスだ。腰まで届く白髪が褐色の肌に映える。
「教団をつぶすには頭をつぶしてしまえばいい」
即答が黒軍隊長のタミルから返った。不敵な笑みを浮かべたタミルはこの間の屈辱を果たしたいのだろう。ひどく好戦的だった。
「タミルの言うとおりだ。そちらを殲滅し、結局相手にするのはクアール軍だ」
セインのセリフにレイラースが口を開く。
「現状はわかった。それで、こちらの布陣と我々の役割は?」
セインは立ちあがった。後ろを振り返り、腕を上げると彼の後ろの壁にスクリーンが降り、地図が表示された。
「今回の作戦だが。まずは、エスクの教団へ、こちらは少数での潜入作戦をとる。目立つわけにはいかないからな、かなり少人数で向かってもらうことになる」
確かに守護者が敵国とはいえ、人間界に降りて人間を殺すのはあまり外聞が良くない。
「それは俺が引き受けよう」
説明の途中でタミルが発言した。
「俺には前回の借りがある。黙っているわけにはいかない。俺の部隊で潜入し、教団の頭を叩く」
右の拳を左の掌にぱんと当てた。笑った口元に長い犬歯がのぞく。すでに戦闘態勢に入っている狼のようだ。
「それに目立っちゃまずいなら、俺らはうってつけだ。黒軍の兵士には濃い髪の色のものが多い。北方の国の民族からそう浮かないと思うが」
隊長達が頷くのを満足げにタミルは見渡した。
「タミルは目立つからだめだ」
そうにべもなく答えたのは紅軍隊長フレミールだ。
「北方系の民族で褐色の肌のものはいない。それは南に多い。潜入は副隊長に任せて、君は後方支援もしくは混乱に乗じて最後の突入の指揮をとるかだ」
フレミールは目にかかる紅い髪をかきあげて続けた。
その言葉にタミルがフレミールを睨みつけた。フレミールも同じくらい強く睨み返す。
「確かに、フレミールの指摘は正しい。私もその意見には賛成だ」
フレミールの隣に座っていた藍軍隊長アズールが同意する。がっしりした体躯、青い短髪のアズールは、その落ちつきと戦闘能力の高さで誰もが一目を置いている。セインはアズールとフレミールそして睨みあっているタミルを見渡してから口を開いた。
「そうだな。フレミールの作戦は悪くない。情報収集、および首謀者の洗い出しは、黒軍副隊長指揮のもと精鋭を募って侵入させよう。タミル。君は情報を取りまとめ、潰すべきものが判明した段階で、殲滅部隊の指揮をとれ。借りはそれで返せる。後ろで糸を引いているクアールの奴らもともにな」
セインの言葉にタミルはセインを見つめ、そして頷いた。それに頷き返し、セインは言葉を続ける。
「こちらの殲滅が狙いなんだが、クアールの奴らの目を我々に逸らしておく必要がある。あくまでいつもの小競り合いだと思わせるくらいの戦闘でね。そうすれば、奴らが人間と接触しやすくなるだろうし、余計な部隊を教団に送ることもないだろう」
「それは我らに」
「それは我が隊に」
フレミールとアズールが同時に発言する。
「いいだろう。紅軍と藍軍に出動してもらおう」
セインは重々しく頷いた。
「これでわが軍からは2万の戦力だ。いつもの小競り合いの3倍近い戦力だ。奴らもうかうか人間とじゃれている場合じゃないだろう」
紅と藍の両軍に戦の機会を持って行かれた他の隊長は不満顔だ。ここのところ小競り合いや駆け引きが多くてまともな戦闘になっておらず、隊では不満が高まっている。彼らの存在意義は戦うことにあったからだ。
「君たちには天上界の守りを頼もう。言っておくが、こちらも戦闘になる可能性はゼロではない。クアールの奴らが人間を利用する気になったことがすでに罠の可能性もあるからだ。我々の目を北に向けておいて、裏をかかれては困る。今のクアールの国主は150年前の再来とまで言われているらしいからな。我々を天上界から追い出し、殲滅するためにはなんでもするだろう」
不満げな顔をしていた残りの3軍、白、黄、翠軍の隊長は深刻な面持ちで頷いた。
「なにか質問は?」
セインは全員の顔を見渡した。特に質問はないようだ。
「それでは、黒軍はすぐさま潜入部隊を組織し、教団へ送れ。紅、藍軍はともに出撃準備を。いつでも出られるようにしておけ。潜入部隊からの報告によって決戦日は通達する。残りの軍も第1級戦闘配備にて待機。以上だ」
ザッと全員が立ち上がり、右手の拳を握ると胸の前に掲げて敬礼した。
「解散」
セインの号令で軍議はお開きになった。フレミールとアズールは出撃のための打ち合わせに残り、他の隊長は戦の準備にかかるべく会議室を後にする。
「タミル」
セインに呼び止められ、タミルは足を止めた。
「今回は絶対に命令無視は許さん。お前は最後に殲滅部隊を率いて突入するまで、後方待機だ。忘れるなよ。失敗は許されない」
いつも以上にきついセインの言葉にタミルは少なからず驚く。今までも命令無視はするなと何度も言われたが、こんな言われ方をしたことはなかった。
「今回はやけに乗り気だな。セイン」
不思議に思って、タミルは挑発的な言葉を投げた。
「いつもと変わらないと思うが、あるとすれば、作戦の成功以上に守りたい者がいるからかもしれない」
呟くように言われたセインの言葉は、タミルにしか聞こえなかった。
「守りたい者?」
反復して、ハッとし、タミルはセインを見た。タミルはセインとレイラースが頻繁にトレジャに通っているのを知っている。
『キリスエールか』
とっさに頭の中での会話にタミルは切り替えた。
しかし、その言葉に答えは返らず、セインはふふっと笑った。その表情にタミルは唖然とする。
『本気なのか』
つい、心の中で呟いてしまった。まさか、セインが人間を守りたいと言う日が来ようとは、タミルは予想していなかったからだ。
『彼は僕のものだよ』
タミルをまっすぐ見つめて、セインはタミルにだけ聞こえるようにそう告げた。
その言葉にタミルはわれ知らず身動きが取れないほどの衝撃を覚えた。何も言い返せず、セインが会議室を出て行くのをただ見送るのみだった。
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