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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」9

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かなり賑やかな祭囃子が響き渡り、参道に等間隔にならんだ篝火が、闇に火の粉を飛ばしている。その間を花嫁の輿がゆるゆると進んだ。
幻想的で時代を忘れさせる光景に葵は目を奪われる。
さすがに祭りのクライマックスとあって、人出は相当なものだ。参道には人がひしめき、花嫁の輿の後ろからも大勢の人がつき従っている。身動きも儘ならない人ごみにも葵は感心した。
あまり知られていないだろう祭りにこれだけの人を動員できる魅力がこの祭りにあるということだ。
「葵クン」
声をかけられて後ろを振り向くと片桐が立っていた。
この人ごみで会えるとは驚きだ。
「よくわかりましたね、俺だって」
これだけの人出なのに、後ろ姿で認識されたことにも驚いて葵は言う。
「そりゃあね。探してたから」
さらりと言われたセリフにドキリとする。
「それに葵クン目立つし」
そうかなぁと思う。確かに淡い髪の色はこの村では目立つが、今の光源は篝火だけで、髪が黒かろうが茶色だろうがよくわからないだろう。背格好も飛びぬけて他と違うわけでもないし。
疑問が表情に出ていたのか、片桐はおかしそうに笑って、それから片目を瞑ってみせた。
「葵クンだったらどこにいてもわかるよ」
片桐の言葉に葵は危うく地面にしゃがみこみそうになった。
無自覚な発言はやめてほしいと思う。片桐さんの頭の中には男が男に懸想するなんて事実は存在しないかもしれないが、普通これは口説いているととられてもおかしくないセリフだ。だが、片桐にそんなつもりはないんだと自分い言い聞かせ、つきたくなった溜息を押し殺し、葵は話題を変える。
「用事は済みました?」
葵の問いに片桐は頷く。
「どこ行ってたんです?」
「それは秘密」
また、面白そうに笑って片桐は何も答えない。
「なんで秘密なんです?」
「仕事のことは守秘義務があるからね」
片桐は調査会社に勤務しているはずだ。今回も祭りに関するなにかの調査で来ているのだろうが、隠し立てするような何かがあるんだろうか。
「葵クンは?具合はどう?」
引っ掛かりを覚えたが、片桐が心配そうに具合を聞いてきて、つかみ損ねて消えてしまう。
「ああ、もう大丈夫です。ちょっと寝不足だったみたいで、仮眠をとったらすっきり」
あまり心労を掛けたくなくて、できるだけ微笑んで答えると片桐の眉間に皺が寄る。
「やっぱりよく眠れなかったんだな」
ぼそりと呟かれた片桐の言葉に葵はしまったと思う。朝、先に起きていた言い訳に、早く寝たから早く目が覚めたって答えたんだった。
「そういう気は使われても嬉しくないから」
少し怒ったように片桐は目つきをきつくした。
「べ、別に、片桐さんのせいで眠れなかったわけじゃないし」
言い募れば言い募るほど自分的には墓穴を掘っているとしか思えないが、何故だか怒っている片桐をどうにかしなければと葵は焦る。
「眠れなくて疲れているなら、山道なんてのぼらせなかったのに」
片桐の言葉にはっとする。体調が万全でないのが理由で迷惑をかけたのは事実なので、葵はそれに反論できなかった。
「ごめんなさい」
気づけば素直に謝って、うなだれる。
ポンポンと頭を撫でられ、片桐は葵の手を取った。手首をギュッと握られる。
「こっちだ」
葵の手を引いて参道の奥へと片桐は移動し始め、引きずられるように葵もそれに続いた。
「え?」
なんとなくそのまま手をつないで歩きだして、葵の頬に朱が上る。
「神輿のお宮入り見るんだろう?輿が宮に着くのはこっちだから」
足をとめそうになる葵に、振りむきもせずに、片桐は葵の手を引いて社へと歩く。
「あ、ああ」
なんて答えていいかもわからず、葵はそのまま片桐に手を握られたままついて行った。

宮入りも印象的だった。
花嫁の輿が宮社に着くと、神輿は地面に置かれた台に固定され、巫女に手をとられた花嫁がしずしずと階段を下りた。宮の玄関には神官や巫女がずらりと並び、白と若草色で統一された神官装束にかがり火が映り込んで、まるで昔へタイムスリップしたかのようだ。神主が前に出て、榊で花嫁の頭上を払い、詔を唱え始めた。
俯き加減に花嫁はじっとたたずんでいる。その後、巫女が朱色の杯を掲げて現れ、花嫁に手渡すと同じ朱塗りの片口銚子から酒が注がれ、三回で花嫁がそれを干した。
「結婚式なんですね」
横に立つ片桐に小声で問うと、片桐は視線を葵にうつした。
「そうだな。神様との婚礼だからな。神は宮で待つが、ここにいるものとして式を執り行うんだろう」
なんだか不思議な光景で、まるで劇中にいるような気にもなってくる。
式典が無事に終わると花嫁は巫女に手を引かれ、宮へと入って行く。
「このあと契の間で神と一晩過ごすんだそうだ」
片桐の解説に葵は苦く笑う。
こんなに幻想的なのに、そこだけひどく俗物的に聞こえたからだ。それでも、こんな祭りのただなかにいると本当に山の神が降りてきて、ヒトと契を交わしそうで少し怖い。
「この後は?もう見れないんですよね?」
「ああ。この後は完全にクローズだ。だけど、中では宴が設けられるんだが、同じように参道の外の広場でも宴が張られるよ。そこはだれでも参加できるから行ってみようか」
見ている間も離されなかった手を引かれる。
なんで俺、片桐さんと手をつないでいるんだろう。
恥ずかしいのに振り払えなくてつないだままの手が哀しい。
それでも、その手を離せないまま葵は片桐について行った。

連れて行かれた先では野外ブッフェとも呼べそうな宴会が開かれていた。参加費を払えば、だれでも参加できるらしく、広場をぐるりと囲んだ屋台からは湯気が立ち上り、笑いざわめく人たちが列をなしていた。
葵たちは宿で渡された夕食券なるものを入り口で渡して、広場へ入る。本日の夕食はこちらの宴でお願いしますと発行されたものだ。
酒もふんだんに用意されているようで、あちこちで紙コップを配っているのが見えた。
「すごいな」
「これだけでも観光名所になりそうだな」
片桐の言葉に葵は笑う。確かに、これを記事にするだけでも面白いかもしれない。
神様と人間の結婚披露宴とでも題するかと冗談で考えていると酒のコップを渡された。
「日本酒も飲めるか?」
片桐に渡された透明な液体を眺めて葵は頷く。
「大丈夫、好きですよ」
「この辺は米どころだから、酒がうまい。もしくは焼酎だが、俺はこっちの方を薦めるな」
そう言いながらすでに片桐はコップに口をつけていた。
傾くコップには、「お土産に地酒をどうぞ」とプリントされている。青年団の武朗さんはこういうところも抜け目がないと葵は感心した。
自分も口をつけ、かなりさっぱりした飲み口なのに微かな甘さを感じてこれはうまいと思った。
「いいですね。好みの味だ」
嬉しそうに微笑んだ葵を片桐は目を細めて見ている。
なんか、最近、よくこんな表情(かお)で見られているなと葵は上目使いに片桐を見て思った。
視線が交差し、何故か目が離せなくなって、葵は焦る。
「お腹すきましたね」
つい、もっとも色気と程遠いセリフを口にした。
片桐は一瞬驚いた顔をし、そして豪快に笑いだす。
「そうだな……。確かに、夕飯はこっちでって言われたしな」
「そんなに笑わなくてもいいんじゃ……」
むっとして葵は屋台の方へ身体を向け歩き出す。片桐の言う通り、今日の夕飯はここでとることになっていて、まだ、何も食べていない。昼もバタバタしてあまりちゃんと食べられなかったので、葵は目が回るほどお腹がすいていた。
好きな物を取りたいからと、一緒に食べるための待ち合わせだけ決めて、葵は片桐と別れる。端から何があるのか一周して決めようと葵は屋台を覗き込んで歩いた。
地元名産の米で造った餅だとか、山で採れるキノコの蒸し物だとか、地元料理の屋台がずらりと並ぶ。アユや岩魚を串に刺して、炭火で焼いたものなどもあり、香ばしい匂いがあたりに漂っている。葵はいろいろ迷いながら見て歩いた。
そして、焼きトウモロコシの屋台であまりの醤油の香りに食欲が刺激され、それを一つ受け取った。さっそくかぶりつくと甘いトウモロコシと焼いた醤油の味が口に広がって本当にお腹がすいていたことを自覚する。
トウモロコシを片手に隣の焼きおにぎりも皿に取ってもらい、待ち合わせの場所へ戻ろうと葵は踵を返した。
あれ?
くるりと回ったからか、空腹に日本酒を入れたからか、また眩暈がして葵の視界が白く濁った。トウモロコシを持ったまま膝に手をつき、何度か瞬きをする。
行かなければいけない。
ふいにそう思った、それも切羽詰まった感じで思う。
待っているから、行かないと。待たせたら悪いし。
思いはますます強くなり、強迫観念に似た感じがする。
ふと顔を上げ、葵はふらふら歩きだした。
片桐が待つ場所とは全くの反対方向へ。
まだ、視界はなんとなく白い。気分も悪く、足もとがフワフワした感じがするが、葵は歩みを進める。行かなければという焦燥感が葵の足を速めた。
どこを歩いているかも葵にはわかっていなかった。
ただ、焦燥感と不安のような期待のような感覚だけが葵の背を押す。広場を出、人の波と反対に村はずれへと葵は歩いて行く。
徐々に人の姿が無くなり、闇夜に視界が効かなくても葵はためらいもなく歩いて行った。

「ああ、まだ来てない」
自分の声に葵は我に返った。自分の状況が飲み込めず、周りをキョロキョロ見渡した。
ここは、昼間に来た村はずれだ。
視線を前方に送ると村から外へ出る山道の入口が見えた。
なんで俺こんなところに。
手にはまだ皿とトウモロコシを握っていた。ここまで来た記憶が曖昧で、ひどく気分が悪い。
こんな時間にそれも祭りの最中に村はずれに用のあるものなどなく、辺りには誰もいないし明かりもない。夏虫の声だけが煩いくらいに響いていた。
「戻らないと」
そう呟いて葵は足を踏み出した。その途端、いきなり後ろから頭を殴られた。
衝撃に葵は前のめりに倒れる。
「何をこそこそ嗅ぎまわっている。この薄汚いハイエナが」
怒鳴り声が聞こえ、葵は身体を反転して仰向けになる。顔の横の地面を木の棒のような物が叩いて、砂埃が上がった。
「だれだっ!」
再度、振りあげられた木の棒を視界に捕らえ、葵は叫ぶと地面を転がる。
「何を調べているんだ。祭りとか言っていたが、村で若いのと話をしただろう」
声から男でそれも年輩だとわかるが、暗くて誰かまでは判別できない。
それでも、葵が記者であることが気に入らないらしいことは、独り言のように呟く言葉からわかった。
「落ち着いてください。ほんとに祭りの取材です」
葵は身を起して地面に座った格好で、人影を見る。後頭部がずきずきして、このまま倒れ込んでしまいたい衝動と戦う。
「煩い」
怒鳴って男は葵に向かって突進してきた。避けようと身を捩るが、横向きになったところに肩からのしかかられ、葵は地面に倒れ込んだ。その拍子に髪を結っていたゴムが切れ、髪が肩へと流れ落ちる。
逃げようとする葵の身体に馬乗りになって男は拳を振り上げた。葵は両腕をクロスして顔を覆う。
「うわああぁ……」
殴られると覚悟して葵は叫んだ。ぐっと目を瞑る。
しかし、予想した衝撃は一向にやって来ず、腕の隙間から葵は男を見る。
拳を振り上げたまま男は震えていた。何を見ているのかわからないが視線は葵の顔ではなく肩のあたりにあった。
「なんで、お前がここにいる」
ひどく怯えたような震えた声で男は葵に告げる。
「ここにいるわけがない」
声から男の恐怖と動揺が伝わってくる。葵はどうしていいかわからずに声を出せずにいた。顔を覆った腕も解かずに暗くて見えない男の顔を凝視する。
「お前は死んだんだ」
男は叫ぶと葵の喉に腕を伸ばし、掌で喉を覆うと力を込める。
「うっ」
いきなり首を絞められ、葵は呻き声を上げる。顔を覆っていた両手を外し、男の両手首を捕らえ、外させようと力を込めるがびくともしない。
足をばたつかせ、身体全体で抵抗するが、身体の向きが横から仰向けになっただけで、なんら状況が変わることがない。
男は体重を掛けて葵の首を締め付ける。
息ができず、顔に血が集まって、苦しくて辛くて葵は呻くことしかできない。息苦しくて口を閉じていられず、喘いだ口の端から唾液がつたった。
抵抗もまったく無駄だった。足は男に当たらないし、離させようと掴んだ手も動かない。
苦しさに目の前が暗くなっていく。
もう、駄目かも。俺、死んじゃうのかな。
黒く塗りつぶされる視界に葵が瞳を閉じる。キーンという耳鳴りが煩いくらいに響いて、意識がどんどん遠くなる。
――片桐さんにもう会えない……。
「葵っ!」
遠くで片桐が葵の名を叫んだ気がした。
最期に聞こえるのがいるはずもない片桐の声だなんて出来過ぎだと葵は思った。
俺、あなたが好きでした。
伝えればよかった葵の心。
でも、これで辛い恋から解放されると葵は身体から力を抜いた。
その瞬間、喉に大量の空気が流れ込んできて葵は咳き込んだ。喉が破れるくらい咳き込んで、肺に息を送って苦しくて痛くて目尻から涙がぼろぼろ零れた。身体に乗っていた男の重みがなくなり、葵は身体を丸めて喉に手を置き苦しさに喘ぐ。
「このやろうっ」
怒鳴り声が遠くに聞こえ、人が争う気配が近くでしたが、葵は何もできずにその場で動けずにうずくまる。
「大丈夫か。葵っ!」
争いの合間に自分を呼ぶ声がする。
喘ぐ喉を抑え、葵は身体を起こしてそちらを見ようとするがまったく身体は動かなかった。咳が続き、息が苦しい。
「葵っ!」
近くで名前を呼ばれて、いきなり力強い腕で抱き起こされた。
「大丈夫か?俺がわかるか?」
重い瞼を持ち上げて葵はなんとか目を開ける。ぜーぜーと鳴る息で言葉はでない。
痛みからくる涙でゆがむ視界に片桐の心配そうな顔が見えた。大丈夫だと伝えたくて葵は笑おうとする。しかし、顔の筋肉は全く言うことをきかない。
また、片桐さんに助けられちゃったな。
そう思ったのが最後の葵の記憶だった。
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