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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」13

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瞼を通しても明るい光に葵は目を覚ました。
「今何時?」
がばっと起き上がって、身体の奥に鈍い痛みとだるさを感じて葵は顔をしかめた。その感覚に昨夜のことを一気に思いだして葵は周りを見渡した。
すでに片桐の姿はなく、隣の布団はたたまれていた。
「夢……のわけないよな」
夢にしては生々しく、夢ではこの身体の奥の違和感を説明できない。
山の宮入りの儀式には起こしてと言っておいた気がするのに、片桐は一人で行ってしまったのだろうか。
葵はのろのろと起き上がり、自分の身体が拭き清められて、浴衣を掛けられていたことに気付く。しかし、その下は全裸で、やはり昨夜のことは夢でなかったことを知った。
かちゃっと音がしてそちらに目を向けると部屋についている浴室のドアから片桐が出てくるのが見えた。
「葵。おはよう」
にっこり微笑まれて、直視できずにふいっと顔を背け、葵は
「おはようございます」
と口の中で呟いた。
しかし、片桐はそんなことに頓着もせず、大股で近づいてくると葵の腕をぐっと引っ張り、立たせると腕に抱きこんだ。
「よく眠れた?」
「ちょっと、片桐さん。いきなりなんなんだ」
「抱き締めたいから抱き締めている。駄目か?」
片桐の言葉にまたもや葵は言葉を無くした。目が覚めたら隣にいなくて、かなりがっかりしていた葵としては、抱き締められて否はない。しかし、こういうことをきかれても答えられるわけもなく、大体、片桐はこういうことをどうしてさらりと言えるのだろうか。
「や、山の宮入りは?」
答えの代りに気になっていることを葵は訊いた。
片桐は少し身体を離して葵を見下ろし、片眉を上げた。
「まだ。神輿の出発は九時だから、あと一時間くらいある。今は神事の最中だが、それは一般は立ち入り禁止だから」
葵はほっと息を吐いた。
「もうちょっと時間あるから、シャワー浴びてこいよ。それで軽くなんか食べて出かけよう」
そう言いながらも片桐は葵を離さない。葵は困った顔をして、両手を胸につけるとぐっと身体を離した。
その途端に後頭部に手を差し入れられて、軽く引かれ、顎が上がると、片桐が腰をかがめて唇を唇で覆う。
何度か啄ばむように口づけされ、あっけなく離れた。
「シャワー行って来い。これ以上そんな格好見ていると宮入りに行けなくなりそうだ」
片桐に告げられた言葉に赤くなって、葵はさっと身をかわすとそのまま浴室へと向かった。ドアを閉めて、それにもたれかかる。
「うー」
片桐の言葉は毒のようだ。告げられると身の置き所がないくらい恥ずかしいのに、心では気にかけられていることを悦んでいる。
それにしても恥ずかしいのには変わらないんだよな。
葵は溜息を一つ吐き、そのままシャワーの下に行くと勢いよくお湯を出す。とにかく今は、山の宮入りに間に合わないといけない。
現実に目を向けることで、葵は朝っぱらからの甘い空気をシャワーとともに洗い流した。

本宮から出発した神輿は、よくお祭りで見かけるような形をしていた。大きさも人がとても乗れるようなものではなく、小ぶりなものだ。午前中の光に神輿についた数々の装飾品が輝き、神々しい感じはするが、ここからお祭りに参加したらよくある神輿の練り歩きだと思っただろう。
山の神と花嫁を乗せたとされる神輿は粛々と宮を出発し、山の宮まで進んでいく。沿道には、村の人たちが待っていて、神輿が通るたびに花びらや稲穂を投げた。神輿の後ろからも続々と人が続き、ちょっとした行列になっている。
ともに一夜を過ごした神様と花嫁が山に帰るんだよな。
実際は神話になぞらえた話だとはわかっていても、昨夜初めて想い人と一夜を共にしてしまった葵にしてみればあまり人ごとにも思えない。
そんな風に思うこと自体が、バカバカしいと思うが、ここにきていきなり自分の想いが通じてしまって戸惑っている葵としては、妙に親近感がある。
そんなことを漠然と思いながら、行列に参加していると神輿は村はずれに差し掛かった。
村から出る道が見えてくると葵はビクリと身体を震わせる。もう、犯人は捕まったのだから、襲われることはないとわかっていても昨夜の恐怖が甦って足が震えた。
腰を抱きよせられて、葵ははっと我に返り横を見上げた。
「大丈夫。側にいるから」
小声で片桐に囁かれた。
慌てて葵は周囲を見渡す。
「見られても困らないが、これだけ人がいると逆にわからないものだ」
葵の行為に苦笑して片桐は言葉を継いだ。
実際、彼の言う通り、だれも片桐が葵を抱きよせたことなど見えていないようで、特に何も変化はない。
「ごめん。こういうの慣れなくて」
葵の言葉に片桐は微かに首を横に振った。
ゲイであることは極力隠して生きてきた葵にとって、それがわかってしまう行為に敏感になるのはいたしかたないと片桐は理解してくれたようだと葵はほっと息をつく。
そして、さっきまで自分を襲っていた恐怖もきれいに払拭されていることにも気付いて葵はおかしくなった。
「吉野さん」
沿道から掛けられた声に葵ははっとそちらを見る。すでに、片桐の手は葵の腰を離れていたが、後ろにぴったり葵を守るように立つ片桐の気配を感じた。
「桧榊(ひさかき)刑事」
そちらに歩いて行き、葵は自分を呼んだ昨夜の刑事に挨拶をする。
「何をしているんです?」
「現場検証」
行列の邪魔にならないように脇にどいて刑事は言った。
「昨夜は暗くてわからなかったからね。明るくなってから再度見に来たんだ。神事が始まってしまって、今はどうにもならないけどね」
昨日よりずいぶんくだけた口調で桧榊は葵に接する。事情聴取だと記録が残るが、こういう会話は残らないからかもしれない。かなり気さくな性格だなと葵は思う。
「検証って現場保持が基本なんじゃ?」
これだけの人が通ってしまったらダメなのではないかと葵は尋ねた。
「殺しならね。それに、ここを神事に使うって聞いてたから、早朝に来てすることは全てしたんだ」
桧榊は朗らかに笑う。
「加害者の証言は?」
葵の後ろから片桐が尋ね、桧榊の顔が曇った。
「残念ながら、まだ、加害者がまともじゃなくて」
「錯乱しているんですか?」
「そう。君を殺してしまったとでも思いこんでいるらしくて、お前はもう死んだんだから消えてくれって何度も呟いている」
それはおかしいと葵は思う。俺の首を絞めた時にはすでに彼はそう呟いていた。そう桧榊に告げると「いつから加害者がおかしかったかわからないからな」という答えが返ってきた。
「住んでいるのもこんな村はずれだしね。家宅捜索もしたけど、なんにもない家だったよ。村の人の話だと交流はあったみたいだけどね、昔は村八分とかにあってたんじゃないかって感じだよ」
こういう田舎にはよくある話だけどさ、と桧榊は付け加えた。
「で、この行列、どこへ行くの?」
いきなり話題を変え、尋ねた桧榊に片桐が呆れた顔を向けた。
「聞いたんじゃなかったんですか」
「なんか、宮入りの儀だっていうのは聞いたけど、お神輿なのに村はずれに来て村を出てくなんておかしくないか」
村の人たちも突然の事件で、上へ下への大騒ぎだったのだろう。祭りの最中でたくさんの観光客も来ているというのに、事件など洒落にならない。そのせいもあって、あまり詳しく刑事に祭りの説明をしている余裕がなかったらしい。
「これは山の神様が山へと帰る儀式なんで、村から出ないと困るんですよ」
葵が説明し、山の方を指さした。
「へー。結婚して嫁さんを連れて帰る儀式ね」
桧榊は感心して山を見上げた。すでに、粛々と進んでいた行列が山へと入って行くのが見える。
「俺たちも行かないと。刑事さん、それじゃあ」
そちらに足を踏み出した葵の腕を桧榊が掴んだ。片桐が桧榊を射殺しそうな瞳で睨みつける。
「俺もそれ参加したい。ついて行っても大丈夫かな?」
睨んでいる片桐を見もせずに桧榊は葵に問いかけた。
「い、いいんじゃないですか。観光にもなっているくらいだし」
腕を取り返しながら、葵は告げる。後ろから怒りの波動が伝わってくるのを感じ葵は頬をひきつらせた。
「そうか。じゃあ、ご一緒させてもらおう」
明るく言い放って、桧榊は行列の最後尾に向かってゆっくり歩き出す。
そっと振り返ると葵の瞳(め)と片桐の視線がかちあった。きつく怒ったような視線に葵は竦み上がる。
俺のせいじゃないのに。
そう思うが、これくらいのことで嫉妬されたと思うとそれはそれで嬉しい気がするから、もう駄目かもと葵は自嘲した。
「ほら行くぞ」
桧榊の出現で離された手がまた腰にあてられて、葵の身体がビクっと跳ねた。
「どうした?」
わざと滑らすように腰に手を当てたくせに片桐はさらりとそんなことを言う。
「片桐さん。子供じゃないんだから」
睨みつけて葵が反論するとさわさわと腰を撫でられ、わき腹で指を曲げられた。
「んっ」
朝方まであんなことをされていたこともあって、感触を覚えている身体が反応する。それを見て、片桐は嬉しそうにくっくっと笑った。
実はけっこう意地悪かもしれない……
葵はもう一度片桐を睨みつけ、それから足を進める。
その後ろから楽しそうな笑い声が追いかけてきて葵は憮然としながら行列に続いた。

細い山道を神輿は進んでいく。賑やかな輿入れの行列と違い、こちらは厳粛に進んでいく。帰ってしまう神様を喜んで送り返すのはおかしいからだそうだが、本来は望んでもいない客が来て娘を攫って帰るのだから、哀しい行列なのだ。
行列は静かに粛然と進んでいく。
神輿は山の宮へと到着し、宮の前に設置された黒い台に神輿が乗せられた。
神官が儀式を始め、詔を唱える。それが山の中へと朗々と響き、幻想的な祭りのクライマックスにふさわしい光景が展開する。
木々の葉ずれの音に神官の声が重なって、山の神が寿いでいるような気さえした。
榊が振られ、山の宮の扉と神輿の扉が同時に開けられると一斉に神官が頭を下げる。神様が宮へと帰るのだが、当然、何も出てこないし、何かが起こるわけでもない。しかし、そこには確かに神々しいような空気が存在し、だれもが自然に頭を下げる。
神官の一人が花嫁を模した紙の人形(ひとがた)を取り出し、宮へと献上した。これで神様と花嫁は神様の領域へと帰って行く。
最後に神官が詔を唱え、そして、宮の扉と神輿の扉がゆっくりと閉じた。
神官たちは見ていた人たちにも一礼する。
人々は拍手をもって祭りの終焉を讃えた。

「初めて見たけどよかった」
ほうっと息を吐いて葵は後ろの片桐を振り仰いだ。片桐は葵を見つめて優しく笑う。
「伝統ある祭りだしな。これで人身御供かと思うと哀しいが、今は人形だし、山の神との友好の祭りだからな」
「こんな祭りが近くでやってたなら最初から見れば良かったですよ」
見つめ合う二人の横から桧榊の声がした。
また、あんたかという目でみる片桐を葵は目線でたしなめる。
「これからどうなるんです?」
桧榊の言葉に周りをみれば、祭りの関係者は、無事に祭りが終わったことを喜び、そのあたりで話をしている。三々五々帰り始めている人も見えた。
「終わりですよ。これで片つけて村へ帰るだけです」
葵に何も言わさずに片桐が説明をする。
「そうなのか。これだけだと呆気なかったが」
まあいいかと言いながら、桧榊は大きく伸びをした。刑事のわりになんだか大らかでのんびりしている。
「久々に自然の空気も吸ったしな」
それを見て葵がくすくす笑った。桧榊はそちらに顔だけ向けて、片眉を上げた。
「やっと笑ったな。そっちの方がいい。吉野くんは綺麗な顔をしているんだから、いつも笑っ
ていたらいいよ」
さらりと述べられた言葉に葵は驚いた顔をする。綺麗とはよく言われるが、まさか刑事にまで言われるとは思わなかった。
葵はあまり気にもしなかったが、片桐がさっと動くと桧榊の視界から身体で葵を隠す。
「で、葵はどうする。帰るか?」
過剰に反応する片桐にも驚き、なんかくすぐったい感じがして葵はまた笑う。ひとしきり笑うと少し心が軽くなった。
片桐さんが側にいてくれたら大丈夫かもしれない。
確かめたかったが、怖くて足が踏み出せなかったことに向かう勇気が少しだけ出て、葵は片桐を振り仰いだ。
「滝をもう一度見たいんだ」
片桐は驚いた顔をし、そして眉をひそめた。昨日、眩暈を起こしたことを思い出したらしい。
「滝?そんなのあるの?」
片桐の後ろから、桧榊が顔を出して問う。そして、周りをきょろきょろ見渡した。
「刑事さんも一緒に来てください」
「葵」
なぜ、そんなことを言ったのか葵は自分でもよくわからなかった。でも、そう言わなければいけない気がして、桧榊も誘う。
「おおう。もちろん」
滝に心惹かれたらしい刑事は頷いた。横では心配そうな片桐が睨んでいる。
大丈夫と目で葵は片桐に告げる。それに苦い顔で片桐は溜息をついた。
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