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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」14

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三人で滝へと歩を進めた。山の宮を回り込み、細い道を少し下ると昨日と全く同じように唐突に視界が開け、大量の水が目の前を流れ落ちて行くのが見えた。
「すげえ」
桧榊の感嘆の声を聞きながら、葵は目を凝らす。昨日、見たオレンジ色の百合を鬼百合を探す。
水しぶきで視界が悪いが、それでも見えないほどではない。じっと見つめて、何度も目線を行き来する。
「――無い」
呟きが届いたのか、片桐が「何が?」と問うた。
「昨日、あそこら辺で百合を見たんだ。オレンジの鮮やかな百合」
葵の指さす方向を片桐もじっと見つめた。何一つ見落とさないような視線を送って、それから葵を見る。
「確かに何も見えないな」
「おかしいよな。あそこに一輪だけなんて。見間違えだったんだ」
ひどく落胆する葵の肩に片桐が手を乗せた。
「あの辺りまでなら歩いてもいけるから回ってみるか」
顔を上げて片桐を見ると葵は頷いた。自分は百合だけを探していたが、片桐はそこまでの遊歩道も確認していたらしい。
「おいおい、おいてかないでくれ」
歩き始めた二人の後ろから桧榊が追いかけてくる。滝を左手に見ながら、遊歩道になっている道を歩く。道は下っていた。滝が作った池のまわりをぐるりと回っている道を三人は、足もとに気をつけながら下って行く。水しぶきのせいでしっとり湿った地面は思いのほか滑りやすかったからだ。
だんだん近づいてくる滝の水しぶきは、激しさを増し、高さも見上げるほどになって少し怖い感じさえすると葵は思う。細かい水しぶきを見つめていると霧の中にいるような気分になって、葵は片桐の腕を無意識に探した。
視界が水しぶきか霧かわからないものに覆われて行く。すでに自分が歩いているのか止まっているかも定かでない。
隣を歩いているはずの片桐の腕も見つからず、背筋を寒気が走るのを感じた。
「片桐さん」
呼んだはずの声は葵の耳にも届かず、片桐からの返事も聞こえない。
怖くて足が震えた。夢と同じ光景。
嫌だ。助けて、片桐さん……この先は見たくない……章!
叫んだつもりだったが、声が出ていたかはわからない。瞑りたかった瞳も瞼が降りることはない。
大きくを目を見開いた葵は、霧の向こうに人影を見た。
「章」
名を呼んで駆けだそうとした足がぴたりと止まる。人影は片桐ではなかった。それどころか人間でもなかった。
「き、君は……」
霧に同化してしまうかのような透き通った影は、女性の形をしており、オレンジ色のワンピースを着ていた。夢で葵を苦しめた女性。
「――澄江さん」
葵の囁きに白く透き通る女性はにこりと笑った。
『わたしはここよ』
こめかみで血液がものすごい勢いで流れる音がする。頭が痛い。それにかぶるような滝の轟音。
「どこなの」
返しちゃいけないと思った返答を口にする。
『ここよ』
ふわりと浮きあがった澄江の影が後ろへと下がり大きな木の根元でふいっと消えた。
「――葵。葵。葵」
がんがん耳鳴りがする中、自分を呼ぶ片桐の声が聞こえた。声の方に手を伸ばすとぎゅっと抱きしめられる。
「大丈夫か。葵」
強く背と腰を抱き締められて、葵はその腕の熱さと強さに夢のような幻影から現実へとひき戻される。
「章」
名を囁くとさらに強く抱き締められた。
ゆっくり周りを見回すと心配気にこちらを見ている桧榊と目が合った。
「あっ、だ、大丈夫。離して、片桐さん」
二人きりではなかったことに葵は動揺した。こんなのはまずいだろう。
少し腕の力を緩め、上から葵を見下ろした片桐の目はひどく心配そうで、切羽詰まっていた。
「本当に、大丈夫か」
それに頷く。
片桐は身体は離したが、腕を掴んだ手は離さなかった。それも離してと目線を上げると首を横に振られた。
「お前また、身体が傾いで水に飛び込むところだったんだぞ」
「え?」
驚きに目を見張ると桧榊も頷いている。
「何度、名前を呼んでも聞こえてない風で、焦点もあってないし」
腕を掴んだ手に片桐が力を入れたのがわかった。その手がかすかに震えていた。
「もう一回、病院で検査した方がいいかもしれないね。昨日、頭を殴られたのが原因かもしれないし」
桧榊の言葉に葵は頭を左右に振った。
「そうじゃない」
何故、自分に澄江が見えたのかわからない。でも、明らかに写真でみた彼女と同じ顔だった。
ここにいると何度も言った澄江は、俺を一緒に連れて行きたいのだろうか。
ふと前方を見ると澄江が溶けて消えた大木が見えた。そして後ろも振り返ると最初に滝を見た場所が上の方にくっきりと見える。
「百合が見えたところへ」
歩き出す葵を止めた片桐にきっぱりと告げる。
「戻らないのか」
「このまま引き返しても何も変わらない」
強い葵の瞳に片桐は大きくため息をついた。
「見かけによらずお前は無謀だよ」
片桐の呟きに笑みを返して、葵は足を前に出す。腕をつかんだまま片桐が続く。当然のように桧榊も従った。
大木は水際ぎりぎりに立っていた。打ちよせる水で、根元のところに土砂がたまり、太くて長い根に泥がかぶっていた。
葵の探すオレンジの百合はなかった。木の根元は黒々とした土が堆積しているだけ。
目の前まで来たが、そこで足がすくんで動かなくなり、葵は両手を握りしめ、木と滝と土を睨みつけた。
片桐は葵の腰を抱きよせる。
「ここに見えたの。百合?」
桧榊だけが木の側まで寄ってあちこち見ていた。木は一周できるらしく、木の周りを木に手をつきながら観察していた。
「百合どころか花の一つもないね。お、カブトムシ」
のんきな声が聞こえる。
そう、怖いことなどない。ただの木だ。それなのに葵の足はびくとも動かない。
「大丈夫か?」
心配そうな声に片桐のほうを見ると桧榊の「うわあああ」という悲鳴と派手にすっ転ぶ音が響いた。
慌てて目線を前に戻す。
水際の方へ回って、湿った堆積物で転んだらしい。水のせいで脆くなっていた土を踵で思いっきりえぐってしまったようだ。
「大丈夫ですか?桧榊さ……」
水際で、スーツを泥だらけにしながらひっくり返っている桧榊に声をかけた葵は片桐の手で瞳を覆われた。
「ちょっと。片桐さん、なんで。見えない」
後ろから抱きこまれるようになった様子に葵は焦る。目を覆った左手をはがそうと手を掛けるが、びくともしなかった。
そのまま桧榊に背を向けるように身体を反転させられ、あっという間に片桐の胸に抱きこまれた。
「片桐さん。ふざけてないで」
音だけで桧榊が立ち上がったのはわかったが、そのあとの彼も無言で、いったいどうなっているのか葵にはさっぱりわからない。
「吉野くん」
桧榊の声に振り向こうとするが、さらに強く抱き締められて身動きも儘ならない。
「見つけたよ。オレンジの百合……」
掠れたような桧榊の声が聞こえた。
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