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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」15

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引きずるように抱えられたままその場から連れ出された葵は、山の宮でやっと身体を離された。
「なんだよ」
むっとして片桐を睨みつけると彼らしくなく哀しそうな顔をしていて、葵はそれ以上言葉を継ぐことができなかった。
宮にはすでにほとんど人が残っていなかったが、何人かの神官と青年団の人たちが滝の方へと走るのを見た。
そして、しばらくして警察の人たちが通り過ぎて行った。
山を降りることもせず、かといって滝に戻ることもなく、片桐は葵の手を握りしめたまま宮の前に立っている。
声もかけ辛く、葵は片桐を見つめたままその場に立ちつくしていた。
「武朗さん」
下から息せき切って上がってきたのは、青年団団長の武朗で、声が聞こえたのか、葵の側まで寄ってくると彼は息を整えた。
「やっぱり、もう年かな。これだけの距離を走っただけでこのざまだ」
はあはあと肩で息をし、息の合間に言葉を紡いで、武朗はにっと笑った。
「どうしたんです」
わかってはいたが、もう何を考えていいのか、葵はそんなことを訊いていた。
「警察に呼ばれて。ああ、あと吉野さんも探していたんです。京子ちゃん、えっと、花嫁役をやった娘が吉野さんに会いたいと伝えてくれって」
何故、警察に呼ばれたのかが知りたいのだ。桧榊は「百合を見つけた」と言った。葵は見ていない。これだけの大騒ぎだ。想像通りであることには間違いはないだろうが、葵は認めたくなかった。ちゃんとしたことを聞くまでは。
しかし、誰も葵には何も告げない。
「いま、京子さんはどこに?」
「まだ、本宮にいます。彼女は宮司の娘ですからね」
その言葉に葵は頷いた。
武朗はまたさわやかに笑って、宮の後ろへと駆けて行く。
「行くのか」
横から片桐の声がした。葵は片桐を振り仰ぎ、頷く。
「真実を知りたい。あなたが俺の目から隠したことも含めて」
きっぱりと言い切ったつもりだったが声が掠れていたかもしれない。
「一度宿に戻ろう」
葵は首を横に振る。
「その顔色では許可できない」
「なんで、片桐さんの許可がいるんだ」
あまりの言い草に葵は振り返って怒鳴る。とたんに眩暈がして、身体が傾いだ。難なく抱きとめられて、
「歩けるか?」
と訊かれ、葵の怒りがさらに増した。
腕を振りほどき、たたらを踏んだが、それでもしっかりと立って見せる。助けてくれたことは嬉しい。だが、守られるのは嫌だ。
「一人で歩ける。あんたの手はいらない」
怒鳴った葵を目を眇めて片桐は見る。
「お前がいらなくても、俺には必要だ」
言うなり、腰に回った手であっという間に肩に担ぎあげられ、葵は暴れる。
「降ろせよ。俺は荷物じゃないんだ」
「暴れると落ちるぞ」
事実そうだったので、葵は暴れるのはやめたが、開いている手で片桐の背中を叩く。
「なら、降ろせよ」
散々喚く葵のことはさっくり無視して、片桐は葵を肩に担いだまま村へと戻った。

「吉野葵さん」
受け取った名刺を見て、きっちり座敷で正座した京子は葵の名を呼んだ。
大きな座敷だった。宮に向かうとすでに話が通っていたのか、二十畳以上ある客間に通され、まもなく着物姿の京子がやってきて前に座ったのだ。
「はい。あなたが京子さんですか」
京子は手を着くと深々とお辞儀をする。写真で見た通り、小柄ながら丸顔の可愛らしい娘さんだった。
「そうです」
「僕を幽霊が出たという匿名の手紙でここへ呼んだ方ですよね」
それにも京子は頷いた。
「そして、幽霊話をでっち上げたのもあなたですね」
「申し訳ありません。騙すつもりはなかったんです」
葵は大げさに溜息をついて見せた。
「わかるように説明してもらえますか」
はいと答えて京子は話し始めた。
「どこまで、ご存じだか。一番の仲良しだった澄ちゃんが、昨年のお祭りの時に駆け落ちをしたんです。お正月まで、二人は無事に逃げたんだと思ってました。私だけは澄ちゃんの相手の人の連絡先を知っていたんです。だから、お正月のこともあるし、こちらの様子も知らせようと連絡をとったら、澄ちゃんはあの日来なかったって。俺、振られたんだって言うんです」
葵は隣の片桐と顔を見合わせた。ついて行くといってきかない片桐に葵が結局、折れて、片桐は今も葵の隣にいる。
「私はそんなはずはない。澄ちゃんはここにはいないと告げたんです。村はずれに向かう前に別れも交わしたと」
驚く彼にもう少し調べてみるからと電話を切ったという。しかし、村ではみんな話したくない話題で、どこに澄ちゃんがいったかわからない。警察にも行ってみたが、本人の意思でいなくなったのなら、未成年でもないので捜索願は出せないと言う。
打つ手が無くなったとき、雑誌の心霊スポットの記事に目を止めた。
「雑誌の人が来て、調べてくれたら何かわかるかもって。事件性が少しでもあったら警察も動くしって。だから……」
「匿名の手紙で取材に来させて、さらに幽霊まで演じたんだ」
冷たい葵の言葉に京子は身体を震わせた。
「どうして私だと」
「澄江さんと京子さんじゃ背格好が違いすぎる。最初は騙されたけど、写真を見せてもらってすぐに分かった」
葵の言葉に京子はうなだれた。
「それに、『私を探して』なんておかしいと思った。居場所を告げるならわかるけど」
「そうですね。確かにおかしい……」
そう言って、手を畳に揃えると
「本当に申し訳ありませんでした」
と深々と頭を下げた。気丈に見えるが、その実、打ちひしがれている京子は小さく頼りなげに見える。
これを調べたせいで殺されかけたとは葵は言わなかった。これ以上、彼女を責めてもしかたがなかったからだ。
しばらく沈黙が流れる。
「京子さん」
外から声がかかり京子が顔を上げ、振りむいた。
「何?」
「武朗さんが見えてますが」
襖があいて、葵達を案内した人が座ってそう告げた。
「お通しして」
それから葵を見て、「ご存じですわね」と尋ねる。
しばらくすると廊下を渡って、武朗が姿を見せた。心なしか顔色が青く、悄然としている。
「武朗さん、どうしたの?」
入ってきて、葵達に軽く頭を下げると後ろ手に襖を閉め、武朗はその場にどかりと腰を下ろした。
「京子ちゃん。さっき、警察に呼ばれて山の滝まで行ったんだが」
武朗は大きく息を吐いて、肩を落とした。
「澄ちゃんが見つかった」
頭を左右に振って、武朗はぼそりと呟く。
「嘘。どこに」
声を上げる京子を見ながら、葵はやっぱりと思っていた。
オレンジの百合は澄江だったのだ。
「滝の木の根元で」
武朗は目に涙を浮かべた。それだけで、京子は澄江がこの世の人ではなかったと悟ったようだ。
「そんな……澄ちゃん……」
京子は袖を目にあててはらはら泣きだした。幽霊話をでっち上げたくらいだから、覚悟はしていたのだろうが、それでも一抹の望みを掛けていたのかもしれない。
「……京子さん」
葵の呼びかけに京子は泣き濡れた瞳を上げた。
「最後に澄江さんに会った時、彼女は何を着ていましたか?」
京子は、淡々と語られる言葉に何を言っているのだろうという顔を一瞬し、そして少し首を傾げる。
「なんだったかしら」
必死に記憶を辿っている。
「あの日、澄ちゃんはとても浮かれていて、でも不安そうで。ああ、そうだ。派手じゃないかしらって言ったんだわ。目にも鮮やかなオレンジのワンピースの裾をちょっとつまんで」
京子の話に葵は納得する。夢に出てきた澄江もオレンジの服を着ていた。そして、オレンジの百合。全ては澄江を指していた。なぜ、俺を選んだかは知らないが、彼女もまた自分を見つけて欲しかったんだ。
やりきれなさに葵は髪をかきあげた。今朝は別の髪ゴムで後ろに束ねていた髪がかきあげた拍子にばさりとくずれ、葵は舌打ちした。
結びなおそうと髪ゴムをはずす。
武朗と京子の息を飲む音が部屋に響いた。葵は髪ゴムを指に通したままそちらを見る。
二人は葵の肩のあたりを見ていた。
「どうしました?」
声をかけるとはっと我に返ったように二人は首を横に振った。
「失礼しました。じっと見たりして。吉野さんの髪で、澄ちゃんを思い出したんです。彼女も肩までのウェーブのかかった髪だったものですから」
「顔は似ていないのに、髪をおろしたら、びっくりするほど似ている気がして……」
京子と武朗に口々に言われて、葵は慌てて髪を結わきなおした。
また二人が涙ぐむので、何も言えずに葵は俯く。
「ごめんなさい。女の人に似ているなんて失礼ですよね。こうしていると全然違うのに変ですね」
気丈にも涙を着ものの袖で拭って、京子はにこりと笑った。強がっているのも葵に気を使っているのもわかって、葵はこれ以上訊くこともないと暇を告げた。
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