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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」16

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宿に戻ると桧榊刑事が待っていた。
「ちょっと話がしたいんだけど、いいかな」
断ることもできずに、葵は桧榊を部屋へ通した。当然、片桐もついてくる。彼は、宮でも一言も口をはさまず、今もまた無言だ。側からは離れないが口を出す気はないらしい。
部屋に入ると畳の上の座卓周りの座布団を勧め、葵もその前に座った。
片桐が一応という感じで三人分の茶を入れて置いた。
「すでに話は聞いている?さっき、一緒にいた滝で死体が出た」
警察から聞く話は生々しくて、葵は身を震わせる。片桐が目を覆ってくれなかったら、葵もそれを見ていたかもしれないのだ。
「被害者は、時任澄江。昨年の昨日、駆け落ちしたと思われていた女性だ」
「何を訊きたいんです?事件のあらましを言いに来たんですか?」
聞きたくなくて、葵は桧榊の言葉を遮った。
「そうじゃない。昨夜、吉野くんは、君を襲った男が『何を嗅ぎまわっている』と言ったと供述した」
葵は頷く。
「祭りの取材だと言ったが聞いてもらえず、『お前はもう死んだんだ』というなり首を絞めたと」
「そうです。何一つ嘘は言っていない」
何を訊きたいかわからなくて葵は苛々する。葵の許容を超える出来事が続いており、何がなんだかわからなかった。ゆっくり頭を整理する時間が欲しい。
「もしも彼が時任澄江を殺したとして、なぜ、君があそこに彼女が捨てられたことを知っていたんだ」
「やめろ、桧榊」
今まで黙っていた片桐が口をはさむ。
「それについては俺があとで話してやる。もう、これ以上葵を混乱させるな」
「お前がここにいるのも偶然じゃないんだろう、片桐」
桧榊は片桐を睨みつける。葵はさらに混乱した。なぜ、二人が呼び捨てなのか。この話し方はどう見ても初対面じゃない。
「煩い。全部あとだ」
苛々と片桐は桧榊を遮る。
「どうせ、全部説明しなきゃ、この坊やは納得しない。さっさと話した方がいいぞ」
坊やって俺のことかと葵は桧榊を見つめた。どう見たって、桧榊とだって四つくらいしか違わない。それなのに坊や扱いとはあんまりだと葵は思う。
しかし、今はそんなことを言っている場合ではなかった。どう見てもこの二人は知り合いで、それをいままで隠していたことになる。
「片桐さん。俺も聞きたい。ちゃんと説明してくれ」
その言葉に片桐は大きくため息をつき、再度桧榊を睨みつけた。
「桧榊、一つ貸しだからな。約束破りやがって」
悪態ついて、片桐は葵の方に向き直った。
「何から聞きたい?」
「桧榊さんとは知り合い?」
葵は自分の頭の整理もかねて慎重に口を開く。
「そう。腐れ縁だな。俺の仕事上、事件現場でよく出くわす。ついでにこいつも女に興味がないから気をつけろ」
「おい、片桐。勝手に俺のことカミングアウトしてんじゃねぇ」
それをあっさり無視して「次は?」と葵に尋ねる。葵は桧榊を見て、それであんなに片桐が妬いたのかと変なところに納得した。
「なんでわざと他人のふりをしたの?」
「刑事と知り合いなんて変だろう?仕事のことをお前に言いたくなかったのもあるし」
そっぽ向いて答える片桐に、それだけじゃないんじゃと思った。
「仕事のことを聞いてもいいかな?」
前に聞いたら秘密だと言われ、教えてもらえなかったこともあって、葵は遠慮がちに訊く。
「ああ。お前が幽霊話を取材していると聞いた時、俺はお前に『嫌な予感がする』と言ったのを覚えているか?」
そう言えばと思って葵は記憶を辿る。それがわずか二日前とは思えない。
「俺は駆け落ちしているはずが失踪した時任澄江を探していた。お前が来た時、すでに大体の概要は調べつくしていて、すでに澄江がこの村にはいないこと、一人で村を出たのも目撃されていないことはわかってた。答えは二つしかない。だれにも見られず、この村を出て一人で消えたか、もしくは殺されたかだ。しかし、澄江は車も運転できない。村から出るには歩くか、バスに乗るか、そして、街へ出るには電車に乗らないといけない。だが、目撃情報はゼロだ。村は祭りでにぎわっていて、澄江の動向に気を配っていた者がいなくても当然だとしてもだ。駅のあるあたり、もしくは電車の乗客に目撃がないのはおかしい」
確かにと葵は思う。
「誰かに車で連れ去られたとかもあるんじゃない?」
「それも考えたが、目撃情報がなさすぎる。よそ者の車があれば目立つし、車にはガソリンが、人間には食事が必要だ」
そこまで調べてあるんだと葵は感心した。それにしても片桐の仕事って何だ?探偵?警察?コンサルタント会社は人探しまでやるんだろうか。
「もしも、殺されていたとして、一年たって大っぴらに嗅ぎまわる奴が出てきたらどうなる?」
疑問を口にする前に片桐に問われていた。
「それも雑誌の記者ときたもんだ」
「それは犯人にとっては身の危険を意味する。いままでばれなかったのに何故って?」
そう口にして、ああ、つながったと葵は思った。あの男がやはり澄江を殺したのだ。首を絞めて、そして山の滝に捨てた。夢で葵が見た通りに。
「その通り。それで奴はおまえを襲った」
「だけど殺すつもりもなかった。あの人俺の髪がほどけた後から急に変なことを言いだした。そして、さっきの京子さんと武朗さんの反応見ただろう?」
髪が広がったらあの二人は息を飲み、澄江と似ていると言ったのだ。
「あの暗さだ。髪の色なんてわからなかったろうし、あの人、俺が澄江さんに見えたんだ。罪の呵責もあったのかも」
「犯人に同情なんてするな。お前は殺されかかったんだから。俺が行かなきゃお前は死んでた」
きつい声で片桐に咎められ、葵は首をすくめた。確かにその通りだったから。片桐と桧榊を見ると二人とも怖い顔で葵を睨んでいる。
「ごめんなさい」
「あとは俺にも説明はできない。ほとんどホラーだからな。なぜか、葵は会ったこともない澄江がオレンジの服を着ているのを知っていた。そして滝でオレンジの百合を見たと。そして今日。またなんか見えたんだな?」
片桐の問いに葵は頷いた。滝の水に落ちそうになった時、確かに葵は澄江を見た。
「澄江さんを見た。身体が透き通っていて、人間じゃなかった。霧が出ていて、オレンジのワンピースで『わたしはここよ』って笑った」
「やめてくれ」
桧榊が腕をさすった。
「俺は幽霊話は嫌いだ」
何度も腕をさする桧榊を見て葵は少し笑った。
「信じるの?」
「こういう仕事していると説明つかないことがたまに起こる。吉野くんがこの村に来たのも初めてなら、澄江に会ったこともないのもすでにわかっていることだ。昨年の昨日、彼女がどんな服を着ていたか知っているわけもないし、死体がどこにあるかなんてわかるはずもない。君が犯人じゃなきゃね」
「そんな……」
犯人じゃないことは自分が一番よく知っているが、そんなことを言い募っても証拠にならない。
「吉野くんってバイ?」
「は?」
いきなり訊かれた桧榊の問いに葵は目を丸くする。
「こいつがべったりなんだ。恋人なんだろう?」
そうだよな。この二人知り合いで、この人もゲイだった。
「俺は女の人には興味ありません」
「そう。俺が保証する。こいつはバリネコで、女は抱けない」
片桐のあまりの言葉に葵は片桐を睨みつけた。
「片桐さん」
「はっきりさせといたほうがいい。こいつが意味もなくこういうことを言うわけないんだから」
悪びれもせずに片桐は葵に告げた。
「で、片桐の言う通りなんだね」
「そうです。女性には性的なものは感じないんです」
どうにでもなれと葵は本当のことを言った。こんな告白今まで誰にもしてこなかったのに。
「じゃあ、君が犯人というのはあり得ない。被害者のワンピースは裂けていて、下着をつけていなかった。すでに白骨化していたから確証はないが、暴行中に絞殺したとみて間違いはないと思うね」
葵はぞっとした。夢に現れた自分に馬乗りになった男。澄江が自分がされたことを見せたとするなら、あれは首を絞めるためではなく、あの時、澄江は犯されていたのだ。
自分で自分を抱き締めて身を震わせた葵をふわりと片桐が抱き締めた。
「大丈夫」
とんとんと背を優しく叩き、片桐は大丈夫と囁いた。
ごほん。
咳ばらいが聞こえて、片桐のぬくもりに瞳を閉じた葵は我に返った。
「いちゃつくのは俺が帰ってからにしてくれませんかね」
「うらやましいんだろう」
片桐の言葉に葵はぎょっとする。なにもそんなこと言わなくても。
葵を離そうともせず、片桐は桧榊を睨んだ。
「青少年育成条例違反で逮捕してもいいんだぞ」
「ちょっと待ってください。桧榊さん、俺のこと未成年だと思っているようですけど、俺、二十二歳ですよ。調書の生年月日見なかったんですか」
さっきから人を坊や呼ばわりしているこの刑事は、葵の一言に目を見開いた。
「嘘だろう」
葵は桧榊を睨みつける。
「雑誌記者で立派な社会人ですし、どこをどうみると高校生に見えるんですか」
「綺麗だし、華奢だし。肌なんかすべすべだし」
いいわけを上げられたら余計に恥ずかしくなった。
「いいだろう。やらないからな」
「片桐さんっ」
「いいんだよ。こいつとは好みが近いから、ちゃんと言っておかないとお前が危ない」
抱き締める腕に力を込めて片桐は言った。
「はいはい。お前のものには手は出しませんよ」
両手を上げて桧榊は笑った。
すっかり事件から話がそれて、暗かった空気が一掃されていた。葵はそれがこの二人の優しさなんだと片桐の腕の中で微笑んだ。
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