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遠回りの片恋

「遠回りの片恋」19

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こんにちは」
メールで呼び出されて、場所を指定されたから、てっきりデートかと思って来てみれば、目的のテーブルには恋人以外にももう一人連れがいた。
「どうしたの。なんか目立ってるけど」
目の前の二人を見ながら、葵は笑う。引き締まって細身に見えるが、大柄な二人がテーブルについているだけで、周りからちらちらと視線を送られている。
前髪を今日はおろしていて、切れ長の目に不機嫌な色を漂わせた片桐と愛嬌をふりまいている桧榊(ひさかき)はタイプは違うものの端正で男らしい点は共通している。刑事ドラマのコンビの俳優みたいに見えるから、周りの人たちの視線があつまるのだろうと葵は思った。
「目立っているのは、お前」
頬杖ついて、むすっとした声で片桐は葵を見上げてそう言った。
「そうそう。今日も美人だね、葵クン」
「桧榊さんもお久しぶりです。なんで、ここにいるんですか?」
いきなり褒める桧榊に苦笑しながら、葵はいるはずのない人物に首を傾げる。
「お前、帰れ」
答えは聞きたくないとばかり、片桐は桧榊に冷たく言い放つ。
「ひどい……」
わざとそんな言葉を片桐に投げると、葵にウインク飛ばして、
「葵クン、こんな冷たい男、やめて俺にしなよ」
とか言う。
「勝手に口説くな。俺のだぞ」
また機嫌の悪くなった片桐に葵は笑った。しかし、これ以上のお遊びは危険だ。恋人になって、一カ月の付き合いだが、片桐の独占欲は半端じゃないことくらい葵は身にしみて知っている。冗談でも冗談ですまない。
「で、なにか用なんですか?」
「葵クンに会いに来たにきまってる」
ぎろりと片桐に睨みつけられて、桧榊は声を上げて笑った。
「ははは。わかった。もう、止める」
殺気が漂ってきて、さすがの桧榊も笑いを収めると真顔になった。
「事後報告に来たんだよ」
葵に座るように促し、今度は真面目に桧榊は言った。
「片桐に連絡したら、今日会うって言うから、伝えておこうと思ってね」
「事後報告?」
あまり聞きたくない話だと葵は眉をひそめた。
「認めたんだよ。君を襲った男が、澄江さんを殺したってね」
葵は片桐に視線を送った。彼はすでに知っていたのだろう。顔色一つ変えずに葵の背に手をかけるとポンポンと軽く叩いた。
「澄江さんが見つかったって話をしたら、錯乱していたのが嘘のように回復してね。衰弱もしていたから、治るのを待って話を聞いたんだ」
桧榊の話はこういうものだった。

昨年の祭りの日、容疑者は澄江と駆け落ち相手が村はずれで口論しているのを見た。
「今晩、ここに来て。一緒に村を出よう、ね?」
澄江は、泣きそうな声でそういうと、恋人だろう男の身体に縋りついた。
「ちゃんと認めてもらうまで、俺頑張るから。逃げるなんて言うな」
その肩を両手で掴んで、相手の男は澄江を説得しようと言葉を重ねる。
「いや。ここにいたら別の人と結婚させられちゃう。もう、婚約が調っているんだよ。私の意思も何もかも無視で」
泣きじゃくる澄江を男は抱き締めた。
「それに、もう一人じゃないの」
男は身体を離して澄江を見つめた。驚きとためらいと不安がないまぜになったような表情だ。
「ほんとなのか、それ」
澄江が頷く。
男はもう一度澄江を見つめると「わかった。今晩村を出よう」と抱きしめた。
聞く気はなかった。否、聞きたかったのかもしれない。容疑者の男は澄江に想いを寄せていた。憧れていたともいえる。ありえないくらい年が離れていたが、澄江の美しさに男は目が眩んでいたと言う。
しかし、この会話が男を狂わせた。自分が神聖に思っていた澄江がすでにこの男にされていたことを思うと身が焼けるような嫉妬と怒りを感じた。
澄江の相手の男が立ち去ると、男は澄江に今気づいたように挨拶をする。澄江もそれに挨拶を返す。
「あ、こんにちは」
「町に出るのか?祭りの日に?すでに練り歩きが始まっているよ」
優しく問いかけると、澄江はにっこり笑って、
「ええ。知っています。でも、明日、神輿が上る山の宮を誰もいないうちに見ておこうと思って。神事の間はよく見られないでしょう」
と答え、山に登って行った。

「もう。すでにおかしかったのかもしれないな」
桧榊の言葉に葵は祭りの日を思い出す。
あの日も男に「ここで何をしている」と問いかけられて、俺は同じ言葉を、奇しくも澄江と同じ言葉を返さなかったか?
「だから……あの人、俺に驚いたんだ」
「どういう意味だ?」
葵の独り言に片桐が反応した。
「覚えてない?あの祭りの日。俺が山の宮を今のうちに見ておこうと思うっていったら、ものすごく驚いた顔をして、顔色が変わって……」
「気付いていたのか」
葵の頭をポンポンと撫でて、片桐が言った。
「様子が妙だったから、気をつけてはいたんだ。だが、まさかお前が自分であそこへ行くとは思わなかったからな。あんな危ない目に合わせてすまなかった」
「章のせいじゃない。だれにも予測できなかった。あんなことが起きるなんて」
葵は片桐をみつめて首を振る。
「話の続きをしてもいい?」
二人の世界になりそうなのを桧榊が遮った。
「あ、ごめんなさい。どうぞ」
葵はそう言ったが、横では片桐が桧榊を射殺しそうな瞳で睨んでいた。
「容疑者も同じことを言ったよ。『どうしてあの日に澄江が言った言葉をお前が知っているのか』って。『記者で、澄江のことを嗅ぎまわって、俺が殺したことがばれたのでは』ってね。だから、あの夜、澄江が男と待ち合わせしていた場所に君がいて、逆上したらしいよ」
そうだったのかと葵は思った。
「話を被害者に戻すけどね。昨年の祭りの夜、村はずれの場所で澄江は彼氏を待ってた。オレンジのワンピースを着てね。早めについたようで、まだ彼氏は来てなかった。だから、そのまま、暴れる澄江を担ぎあげて、自分の家に連れ込んだそうだ」
もう聞きたくなかった。その先は知っている。忘れたいことだ。
葵は首を横に振る。続きは言わないでくれと。
「自分が神聖視していた娘が汚されて、それならいっそ自分の物にと思ったらしい」
葵は耳を押さえて、首を横に振る。
「桧榊、もうやめてやれ。葵はその後の話を知っているから」
「ごめん。動機を伝えたかっただけなんだ」
すまなそうに、葵を見て桧榊は謝った。大柄な男が肩を落としている姿は、大型犬が耳を垂れて謝っているようにも見えて、葵は少し笑った。
「犯人も逮捕されて、これで本当に終わったんですね」
「そうだ。後は、裁判の時に協力を仰ぐかもしれないが。君も殺人未遂の被害者だからね」
首を横に振りかけたが、止めた。桧榊の言う通り、葵はその男の勝手な思い込みで殺されそうになったのだから。
「じゃ。そう言うことだから」
桧榊が席を立つ。
「これ以上、邪魔すると俺が殺されそうだから帰るよ」
わざと片桐から遠い方へ立つと葵側から帰りかけ、桧榊は通りすがりに腰をかがめて、葵に耳打ちした。隣の片桐に聞こえないような声で。
「片桐には気をつけろよ」
それだけ告げると身体を起こして、右手を上げ、桧榊は去って行った。その後ろ姿を見送りながら、葵はその言葉の意味を図り兼ねていた。

「なんだって?」
横では不機嫌な片桐が葵を睨んでいる。
「なんでもない」
それすらも気に入らないようで、また睨まれたが葵はそれにふわりと笑った。
「デートに誘ったんでしょ、章?それとも喧嘩をしに来た?」
葵の言葉に片桐は苦笑した。さすがに大人げないと思ったようだ。きつい表情を改めて、葵を見つめる。
しばらく、沈黙の時間が流れる。見つめあったまま身動きすら儘ならなくて、葵は熱い片桐の視線に戦慄いた。
「記事読んだ」
先に沈黙を破ったのは片桐だった。それも思ってもみなかった話題で。
「読んでくれたんだ」
「ああ。結局、祭りを記事にしたんだな。陰惨なことはすべてなしで」
ありのままの事実を淡々と片桐は口にする。そこには彼がそれをどう思っているかは現れていなかった。
「そう。殺人事件を記事にしてもよかったけど、なんか三流のワイドショーみたいになっちゃうし、あまりそのせいでテレビとかがあの村に入るのが嫌だった。それにさ、あの祭りを広めたいよ。こんな都心からそう離れてもいない山村で、あんな素敵な祭りがあるなら、できるだけ多くの人に見てもらいたい」
葵の記事は、祭りの歴史や様子が描かれていて、まさに観光にはうってつけだという観点で書かれていた。
『肝試しをやる場所には事欠かないですけどね』
青年団のテントで武朗が言ったセリフを最後に引用して、オカルトめいた様子はその一行だけだ。
「よく、上が許したな。スクープだろう」
「そうですね。でも、俺が担当した雑誌は、オカルトとか温泉とか観光が絡まないといけないし、事件のことを大っぴらに言ったら観光客は行かないでしょ。ネタの方向性がタブロイド的だし、大々的に取り上げてもそんなに売上が変わるはずもないですからね。雑誌のイメージをとったんですよ、上もね」
葵の言葉に片桐は声を上げて笑った。
相当、理屈をつけて葵が強引に押し切ったんだろうと顔に書いてあった。
「話のわかる編集長でよかったな」
葵はにっこり笑った。
「変わりものですけどね」
その答えにも片桐は笑った。
パラソルで遮られた日差しはすでに夏の色を帯びていて、日陰でも暑い。季節は二人が出会った初夏から本格的な夏へと移り、そして、二人の関係もまた変化した。
手をかざして、夏の日差しを見上げながら、葵は「ああ、梅雨も終わりだ」と思った。
近くから葵を見守る優しい眼差しを感じながら。
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