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「巡る季節と恋の順番」
夏の恋

2

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ちゃぷんと波が船体にあたり音を立てた。
釣糸を垂れる一條の肩に頭を凭れて、美玖は海面に溶けるように沈んでいく真っ赤な太陽を見ていた。
静かな時間が流れていく。身体は疲れて重かったが、触れ合ったところから感じる体温に安心する。
小さく息を吐いたら、一條が視線をこちらに向けるから、美玖は小さく笑い返した。
結局、あの後、事が終わってしがみついていたら、もう一回抱かれて、外へ出てきたころには、日は西へと傾いていた。
もう泳ぐには遅くなっていたから、夕釣りといこうと一條に誘われたが、釣りをしたことがない美玖は横で見ていることにした。
なんだか離れがたくて、とにかく側にいたかった。
身体が倒れないようにと甲板についた手に、一條が手のひらを重ねてきた。ふと顔を上げると口元に微笑を浮かべた一條の顔が近づいた。
「んっ……」
重なる唇に美玖は目を閉じる。熱くてかさついた唇に自身の唇を啄まれて、じんと心の奥が揺れた。甘くて静かな時間。
このまま時が止まってしまえばいいとすら思う。
そうすれば、会えない間の寂しさも不安も感じなくて済むだろう。仕事だから仕方ないと自分を慰めて、メールをくれるんだから、飽きられていないと言いきかせることもない。
舌先で唇をたどられて、美玖はひくんと喉を鳴らした。身体は満足したはずなのに、もっと触れていたい、くっついていたいと思う。
こんなこと思っているなんて知られたら引くよな。
重いもんなと考えて、つい眉間に皺が寄ってしまった。
「美玖?」
唇が離れて、怪訝そうな声が降って、美玖は慌てて両目をあけた。
「なに?」
問うたのと、一條が手元に視線を戻したのが同時だった。美玖も視線をそちらに向ける。
「あー。ひいてる」
一條の竿の先がしなって、水面へと引っ張られている。暗くなりつつある水面に時折、きらりと光が躍った。
一條が釣り竿を握る力を強め、ぐっと上へと竿を上げる。糸の先がぐるぐるとまわり、さらに竿の先端が水面に向かってたわんだ。
はらはらと身を乗り出して、美玖は一條の手元と水面を睨む。糸の感じからすごく大きな魚が掛かっているだろうと予想した。リールを慎重に巻き戻す一條の横顔も真剣だ。
糸はまだ、せわしなく回転を続けている。
「美玖。網」
短い命令に美玖ははじかれたように立ち上がると後ろに置かれていた網を取り上げた。
釣竿を上に持ち上げながら、一條はリールを一気に巻き戻し始める。水面から飛び出すようにきらきらした魚体が空中に躍り出て、ぴちぴちと前後に身体を揺らした。
美玖は慌てて網を差し出して、釣糸の先についた魚を掬いうける。
「すごい」
網の中で身体を跳ねさせる魚を覗き込んで、美玖は感嘆の声をあげた。魚を釣り上げるところなんて本物は初めて見た。しかし……、
「小さい……」
どれだけ大きいだろうと思った魚は15センチくらいのアジだった。
「これじゃ、夕飯のネタにならないな」
頭上から降ってきた一條の声に美玖はとっさに顔を上げた。一條は膝に手をついてかがんだ格好で、美玖と魚を見下ろしていた。
「え?」
よもや食料は自力調達なんだろうか。
「というわけで、おまえも釣って」
にっと笑われて、差し出された竿をとっさに受け取って立ち上がった。
「で、でも。俺、やったことない・・・・・」
代わりに網にしゃがみこんで、一條は釣り針を魚の口からはずし、魚を隣のバケツに離す。はぐはぐ苦しそうだった魚は、水の中でじっとしてる。
その様子を交互に見て、手の中の竿も見て、美玖は途方に暮れた。たしかに隣でやり方は見てたけど、別のことを考えたりしてたから、一條がどうやって釣ったかなんて見てなかった。
「大丈夫、教えてやるから」
立ち上がって爽やかに笑った一條がまぶしくて、美玖は手元に視線を落とした。
「そこに座って」
先ほど、一條が座っていた辺りを指し示されて、美玖は渋々、そこに腰を下ろす。
一條はといえば、機嫌よさそうに、船べりに金具を取り付けている。
さらに、一條は床に置いてあった別の竿を取り上げて、ひゅっと軽く竿をふると海へと針を投げ、竿を金具に固定した。
一連の作業を見ながらも、美玖は気乗りがしない。かなり難しそうだ。
「隼也さん、やっぱり……」
「よし、その竿を貸して」
辞退しようと口を開いたのに、手を差し出されて、美玖は持っていた竿を手渡した。
「いいか、この針の先に餌をつけて」
竿に巻きつけてあった釣糸をくるくると解き、先っぽに取り付けてある釣り針にオキアミをつける。
「で、釣糸を左手で持って、竿をしならせて投げる」
一條の動きに合わせて、竿が一條の後ろから前へ動くと、綺麗な放物線を描いて、釣り針は海へと落ちた。かなり遠くまで飛ばしたように見える。
何をやらせてもかっこよくて、美玖はぼおっと一條を見つめた。
「それで、これを持って」
竿を渡しながら、一條は美玖の後ろに、座った。
「と、隼也さん……」
後ろからすっぽり抱き込むように座られて、美玖はうろたえた。
「ほらちゃんと持って」
手に手を添えられて、一緒に竿を持つようにされてしまう。
「あ、あの」
背中に一條の体温を感じて、美玖はひどく戸惑う。まさか、さっきまで考えていたことがばれているんじゃないかと恥ずかしくて、どうしていいかわからない。
「美玖」
「な、何」
「やっぱり、おまえは可愛いな」
頬に唇を寄せられて、ますます身体を密着されて、どきどきと鼓動が高まる。
「さっきまで、もっとすごいことしてたのに、こんなことで照れてる」
そうなんだけど、それでもベッドの上で理性が飛んでる時と今とでは違うんだと思う。いや、ベッドでもいつも狼狽えてるし、恥ずかしいのだけど、なんていうか、あの時はいつも訳が分からなくなっていて、今は、釣りをしているはずなのに、こんなにぴったりとくっつかれたら……。
頭の中をぐるぐるとよくわからない考えが巡る。
「誰も見てない。二人っきりなんだから」
左手でぐっと腰を抱かれて、美玖はうつむいた。本当に恥ずかしい。
「それに、俺が、離れていたくない」
ひくんと背が震えて、美玖は後ろを振り向こうと身じろいだ。だが、その動きを抱きしめた腕で封じられる。
「おまえに会えなくてつらかった」
「隼也さん……」
背中にしみこむような声に一條もまた美玖に会えなくてさみしいと思ってくれたんだと思う。
「駄目だな。美玖といろいろなことをしたいと思って、それこそ、泳ぎも釣りもと考えてきたんだが、我慢できなかったしな」
「ち、違う。嫌なんじゃない。ただ、恥ずかしいだけで」
先ほど、ベッドを共にしたことを悪いと思っているのかと美玖はふるふると首を横に振った。あれは、自分が誘ったようなものだし、それに、美玖も飢えていた。一條の肌と熱に。
「わかってる。それでもだ。これから3日、片時も離してやれそうにないから、先に謝っとく」
どくんと大きな音を立てて鼓動が跳ねた。謝ると言いながらも一條の声には、熱と色香が感じられて、ちっとも悪いと思っているようには聞こえない。 
おまえを抱き続けると宣言されたに等しいような気がする。じわじわと顔に熱が上がって、耳まで熱い。
どうしよう。うれしくて、嬉しくてめまいがしそうだ。
この休暇はずっと海の上で2泊3日を過ごす予定だから、その間、本当に2人きりで、一條を独り占めできるのだ。
離れている間に降り積もった寂しさが、一條の熱で溶けていく。ずっとくっついていても誰にも咎められないし、一條もそうしてくれていいと言ってくれる。
「美玖」
真っ赤だろう外耳を歯で甘噛みされて、ますます美玖はうつむいた。うれしくて泣いてしまいそうだった。
「……いい。隼也さんにだったら、何をされてもいい」
消え入りそうな声で呟くと後ろで、息を飲む気配がした。
「お、おまえな……」
一條が何かを言いかけた途端、持っていた竿がぴくっと揺れた。何かが掛かったらしい。
「ほら、美玖、リールを回せ」
「え、えー。どうやって」
いきなり現実に戻されて、驚いてわたわたしてしまう。手を添えられて、一緒にリールを巻き戻す。ぐいぐいと糸が引かれ、竿がしなる。
竿が引っ張られて重い。魚も必死なんだろう。少し手をとめて、また、リールを巻き戻す。
「よし、竿を上げろ」
ぐっと竿を上にあげると水面から勢いよく魚が飛び出してきた。
「竿を離すなよ」
一條は竿から手を離すと、後ろを振り返っているようだ。
「と、隼也さん、どうすれば」
「いいからぎゅっと持っておけ」
網が差し出されて、空中でばたばた跳ねている魚を後ろから一條が掬い取ってくれた。
「お。鯛だ。すごいな」
網を甲板に下ろしながら、一條が驚いた声をあげる。
美玖も後ろを振り返って、網を覗き込んだ。20センチほどの丸みを帯びた魚がぴちぴちと跳ねている。
「美玖は魚にもモテるんだな」
わけのわからない一條の感想に、美玖は呆れて絶句し、それからおかしさがこみあげて、くすくすと笑った。
「何言ってんの」
褒めるにしたっておかしいだろうと思うとさらにおかしくて、美玖は本格的に笑い出した。
「そんなに笑うことないだろう」
針を外してバケツに魚を放し、一條は立ち上がると憮然とした表情を見せた。
「だって……」
お腹が痛くなるほど笑っていると、後ろから、がしっと抱きつかれた。
「じゃあ、反撃だ」
「えー」
くすぐられて、慌てて身を捩って逃げた。そのまま、甲板を子供みたいに駆ける。追いかけてくる一條の手から逃れて、向かい合わせに右へ左へ身を躱した。
フェイントかけて、横をすり抜け、成功したと思ったら、手首を掴まれて、ぐっと後ろに引かれて、バランスを崩す。
「おっと」
後ろ向きに倒れこんだところを身体と反対の腕で支えられて、見上げると上から覗き込むように自分を見ている一條と目が合った。
「捕まえた」
「うー」
手首と腰を捕まえながら、一條はくすくすと笑って、美玖をキャビンの中に引きずっていく。
あっけなく、捕まってしまった美玖はなんだか悔しくて、おとなしく運ばれながら、恨めしげに一條を見つめた。
扉を潜るとクーラーが効いていて、汗をかいた肌を撫でる。あー、涼しいと頭の隅で思ったとたん、くるっと体勢を入れ替えられて、美玖はあっけなくソファに転がされた。
「さて、ご褒美もらおうか」
嬉しそうに意地が悪そうに、肩を押さえつけながら、一條がのしかかってくる。
「ちょっと、隼也さん、た、タンマ……」
離したくないと言われたし、ずっと触っていたいとも告げられて、それでもいいと確かに返したけど、まだ、先ほどの情事の名残が体中に残っているのに、またすぐには無理だ。
「待てないな」
首筋に唇を押し付けられて、美玖は目をギュッと閉じて喉をのけぞらせる。
どうしよう。うれしいけど、肌もざわめいて身体も反応するが、やっぱり無理だ。
「隼也さん、む、無理」
チロチロと首筋を舐められて、シャツの上からさわさわと胸を撫でられて、美玖は固まったまま叫ぶ。
のしかかった一條の重みが増して、胸元で一條が身を震わせた。それが、笑っているのだと気付いて、美玖は憮然とする。
「どいてよ。笑うことないじゃないか」
「笑ってない」
「笑ってるだろう」
一條の身体を押しのけようと肩を押すが、腕を胴に巻き付けて、一條は美玖をギュッと抱きしめる。
「可愛いって言ってるだけ。無理っていうからさ。ダメじゃなくて」
かわいくて仕方がないから、笑っているんだとさらに抱きしめる腕を強められる。
「だ、だって、さっきしたばっかりで。でも、別に隼也さんが嫌なんじゃなくて……」
「わかってる。じゃあ、夜ならいいな?今は勘弁してあげるけど、今夜は、離してあげられそうにないよ」
「と、隼也さん……」
甘く囁かれて、美玖は耳の付け根まで真っ赤になった。一條はベッドでも美玖が嬉しがるような甘い言葉をくれるけど、こうやって普通の時に言われると悶えてしまうほど恥ずかしい。うれしいけど、身の置き所がなくて、どう返していいかもわからない。
「イエスならキスして」
身を起こして、まっすぐに一條は美玖を見つめている。唇の距離はわずか数センチだ。
あまりに近くて、その瞳の力が強くて、くらくらと酩酊感のようなものすら覚えた。
一條が好きだ。嫌なことなんて何もない。美玖だって、一條と肌を重ねたい。
美玖は少し頭を持ち上げると、一條の唇にそっと自分のを重ねる。
「美玖」
小さく名を呼んで、一條は口づけを深めた。舌で掬うように美玖の舌先を舐めて、それから、絡めるように奥までぐっと差しいれる。
キスはいつも以上に甘くて、美玖は夢中で舌を絡めた。
大好き。一條さんだけ。
それが伝わるようにと腕を持ち上げて、一條を抱きかえして、美玖は口づけに酔った。
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