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奇跡の刻

奇跡の刻

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ふと目を覚ますとまだ部屋は闇の中だった。横に向けた視線の先には誰もいない。身体を動かすのが億劫でうつぶせになったまま、聖は闇を見つめていた。
今、何時だろう。まだ夜明けには遠そうだ。ぼんやりとした思考が徐々に形をなし、シーツの白さに、自分が何をしたかを思い出す。
右腕をだれも寝ていない傍らのシーツにそっと伸ばす。
冷たい。
起きだして結構経つのだろう。シーツに神栖のぬくもりは残っていない。
魔法がとけたのに帰れなかったシンデレラ……。
そんな言葉が頭に浮かび、聖は苦笑に口元を歪めた。そんなことを思うほど神栖さんと自分の間には絆がない。
流されても何も変わらなかった。
神栖の身体の熱さを掌の感触を身体が覚えている。それなのに、ゲームは終わってしまった。
俺は馬鹿だ。こんなことで神栖さんと絆が持てるはずはなかったのに。
瞳を閉じる。聖の瞳から一筋涙が落ちた。
払わなければならない代償は全て済んでしまった。自覚してしまった神栖への想いだけを残して。
俺は馬鹿だ……。
そう思ってまた頬を流れる涙を感じた。しばらくそうやってじっとしていた。
と、ひやりとした感触に聖は瞳を開ける。
風?
濡れた頬に空気の流れを感じ、聖は動かすのが億劫な身体を腕で持ち上げると顔を反対側に向けた。
「神栖さん……」
息だけで呟く。街明かりでぼんやりと明るい窓に視線を投げると、窓枠にもたれ煙草をくゆらして外を見つめる神栖の横顔が見えた。煙を逃がすため少し開いた窓から風が流れ込んでいる。街明かりで浮かびあがる神栖は、上半身は何も身につけておらず、肌に風を受けている。きれいについた筋肉と張りのある肌、しなやかに鍛えられた身体。
聖は神栖にしばし見惚れていた。煙草をくゆらせているだけなのに、それすらも絵のように様になっている。
あの腕についさっきまで抱かれていたことを思い、また哀しくなる。
離れられなくなったのは結局、俺の方……。
身じろぐ音が聞こえたのか、神栖がゆっくり聖に視線を移した。逆光になって表情が見えない。
「起きたのか」
神栖の低く甘い声が届き、聖はかすかに身体を震わせたが、黙って神栖を見つめる。
神栖も聖を見つめた。夜明かりに発光するように見える聖の肌を眺めながら、神栖は大きく煙を吐き出した。
「綺麗だ」
神栖の言葉が何を指すのか聖には分からない。煙草の火を消して、そのまま聖のもとへと歩み寄り、ベッドの端に腰かけた。
聖の前髪を大きな手で梳きあげる。
「大丈夫か?」
心配そうな瞳に瞳を覗きこまれた。その途端に、心の底にたゆたっていた哀しみとそれを知らしめた神栖に対する怒りが噴出した。
「触るなっ!」
聖はとっさに神栖の手を左手で跳ねのけた。そのまま、神栖に背を向けてまるくなる。動くと身体が悲鳴をあげるようにあちこちが痛む。だが、それを悟られるのも労わられるのも耐えられず、聖はぐっと痛みこらえるように拳を握りしめた。
人が動く気配がして、聖の背をふわりと神栖は抱きしめた。ひやりとした神栖の肌の感触が背中に当たる。
「聖……」
名前を呼ばれて、聖はお願いだから謝らないでくれと願った。謝罪されて、抱かれたことすら間違いだと否定されたら、その言葉を聞いたら生きてもいけない気がする。
「今、何時ですか」
続く言葉を聞きたくなくて、聖は時間を問うた。抱きしめる神栖の腕に力がこもる。震えた腕に、また、怒らせたかもしれないと思った。
「なぜ、そんなこと聞く。電車は動いてないし、帰す気もない。明日もずっとここにいろ」
「何故?」
どうして俺を引きとめるんだ。ここにいる理由はもう何もないのに。
わめいてしまいたくなる心を聖は懸命に押し殺し、そっけなく訊いた。騒いだって、泣いたって何も変わらない。それならば、神栖にみっともないところは見せたくなかった。
神栖は聖をさらに強く抱きしめると、聖の耳のそばに顔を寄せ、そっと髪にキスした。
「俺が一緒にいたいから」
耳に届いた神栖の言葉に、聖は息を飲んだ。
一緒にいたい……
それは聖の望みであって、神栖の望みではないはず。一夜の夢は夜明けとともに、溶けて消えるだけだ。約束の時間を過ぎたのに、時計の鐘は鳴り終わったのに、帰れないシンデレラはみすぼらしい姿を王子にさらして、ジ・エンドだ。
「聖、こっちを向いて」
抱きしめる腕を緩めて、神栖は聖の肩を引いた。痛みで竦む身体を気遣うように神栖がゆっくりと聖を仰向けにし、上からのしかかった。神栖の顔が近づいて、額同士が合わさった。まっすぐに神栖は聖を見る。聖の好きな強い光を宿した瞳が、今にも泣きだしそうな顔の聖を映している。
「聖。俺のそばにいろよ。お前が望む限り」
神栖の独特の甘く低い声が聖の予想していなかった言葉を紡ぐ。聖は目を驚きに瞠った。
「俺が嫌いか」
神栖の問いに聖は左右に首を振った。
あんたを嫌いになれる奴なんかいない。
「それなら、そばに……ずっと……」
頷いてしまいたかった。それは聖の望みだったから。だが、その一方で、選択肢を俺に譲るのかと聖は思った。この申し出に否を言う自由を神栖は残した。
憧れの人だが、世界の違う人間。偶然にも交差した道だが、行き先が同じとは限らない。これさえも神栖のゲームなら、あとで傷ついて二度と立てないほどの痕跡を残されるのは自分だ。それほど聖は神栖に深くとらわれたことを感じていた。
失うくらいなら、今ここで手を離したほうが……。
「聖」
聖の揺れる思いを感じたのか、それとも答えを口にしない聖に焦れたのか、神栖は強い口調で聖の名を呼ぶ。まっすぐに聖を見つめる神栖の瞳の光が強さを増した。聖の両手首をシーツに縫いとめている手に力を籠められる。
「もしも、今、お前がここで俺の手を振り払って逃げようとも、俺はあきらめる気はない。どこまでも追うからな、覚悟しろ」
瞳を見開いて聖は神栖を見た。迷う心が一瞬にして破砕される。
どこまでも自分中心の告白。逃げを許さない姿勢。そしてこの自信。
なんて人だ。これが神栖輝。一目で聖の心に棲んでしまった人。彼の言葉に嘘はなかった。否と唱えても神栖は自分を追い、いつかすべてを取り込んでしまうだろう。
射ぬくようなこの強い瞳には、嘘もごまかしも通用しない。迷いさえも見抜かれて、退路はきれいに断たれてしまった。いっそ気持ちのいいほどに。
聖は知らずに口元がほころんだ。
自分の心にそむいて逃げたくても、もう道はない。
心が望むように神栖さんを受け入れてみよう。それで、この人をもう少し側で見ていられるのなら、この関係が何かわからなくても、絆が気まぐれでもいいかもしれない。
この手を取ろう。例え行き先が幸福とは遠かったとしても後悔はないだろう。
聖は心を決める。一度ゆっくりと瞬いて、口元に微笑みを佩いた。
「はい」
聖の答えに神栖が獰猛に笑う。そして、顔が近付き、神栖は聖の唇に自身の唇を重ねた。啄むように何度も唇に唇を合わせ、聖の口を覆うように深く深く口づけた。
「優しくするから」
吐息の届く距離で、神栖が囁く。
夜明けはまだ遠く、朝の光は気配もない。神栖と聖の関係もまた光は遠い。
夜気が二人を包み、針を止めていた甘く切ない時がゆっくりと動き出した。
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