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「巡る季節と恋の順番」
冬―始まり

中編

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「あの夜、おまえが何度も通りを行き来しているのを見ていた」
「なっ…なんで」
一條の話が、身を売る決意をして通りを歩いていた時だと気付く。ずっと、あの壁に寄りかかって自分を見ていたのかと、美玖は恥ずかしさに頬に熱が上がるのを自覚した。
「あの辺は俺のテリトリーだ。そんなところで未成年に、それも高校生に商売されて、問題を引き起こされたら厄介だからな」
「そ、それって」
あの辺を取り仕切っているんだろうか。ショバ代とかそういうのを集めているだろうかと美玖がヤバい想像を巡らせると一條はそれを察したのか苦笑いを返す。
「おまえ、いま、俺をそっちの筋の人間だと思っただろう。違うよ。あの辺のバーやクラブの何軒かは俺が経営しているんだ」
驚いた。美玖は瞳をこれ以上ないくらい見開く。着ているものや持ち物が高級品で、自分にも破格の報酬を支払っていたから、それなりの地位か身分があるだろうとは思っていたが、30に届くかどうかの年でいくつもの店を経営しているとは、考えてもみなかった。
「あの夜、道行く誰もがおまえを見ないふりして視線で追ってた。だが、さすがに高校生を堂々と買おうなんて、非常識な奴はいなかったってわけだ。だいたい、年をごまかす必要なんてなかったんだ。普通にしていたって、年から4つは下に見えただろう。精いっぱい大人のふりしてますって格好で歩いていたら、次から次へと声をかけられてた」
わざとしたことが裏目に出ていたと聞かされて、美玖は眉間に皺を寄せる。驚いたり怒ったり忙しいと自分でも思うが、一條の言葉はどれも衝撃的で、美玖の感情は上下動を繰り返す。
的外れな格好で、うろうろしていた自分はさぞかし滑稽だったろうと自分を卑下した時、一條は、美玖の頬に手を当てた。
「誰もが気にしているのに、近寄れずにいたお前から目が離せなかった。だから声をかけたんだ」
小さく囁く一條の声は少し掠れていた。近づいた身体から一條が吸っているタバコが香った。
美玖の瞳をまっすぐに覗き込んで「最初の誘い文句を覚えているか」と一條は訊いた。
『つきあうにはどうしたらいい?』
思い出した言葉に、美玖は赤い顔のまま一條を見上げた。一晩いくらかとは聞かれなかったことを思い出したからだ。
「金額を提示されたから、ああ金に困っているんだと思った。抱いてみたら初めてで、事前の準備すらしていなくて、こんな生業をしている奴でないこともすぐに分かった」
一條はまっすぐに美玖を見つめている。
「精いっぱい突っ張っているおまえが可愛くて、ほかの奴に触らせたくなかった」
だから、専属にと言ったんだと告げられ、一條のセリフがことのほか甘く聞こえて、美玖は、あてられた手の下の頬が熱くなるのを自覚する。
「もう、俺は必要ないのか?」
一條の囁き声には、甘さと切なさが潜んでいる気がする。
「そ、それは……」
困って、顔が熱くて、自分が真っ赤になっているだろうことに気付いて恥ずかしい。なんて答えていいかも、どう考えていいかもわからなくて、美玖は一條を見上げる。
ずっと忘れられなかった。忘れなきゃと思いながら、身体だけの関係は嫌だと思いながら、夜も昼も、一條が恋しい。
「キスしてもいいか?」
低く掠れた声で囁かれ、心音が高く一度、跳ねた。
いいとも悪いとも言っていないのに、一條の端正な顔が近づいてくる。美玖は身動きもできずにそれをじっと見ていた。
拒まなければいけないと思うが、思うだけで身体は動かない。
そっと唇が触れて、その熱に思わず瞳を閉じた。啄むように口づけられて、胸が苦しくて、痛くて、喘ぐように息を吐いた。
開いた唇の間を一條の舌が潜り抜け、舌で舌先をつつかれる。
逃げる舌を追われて、一條は少し顔を傾けて、口づけを深くした。
「んっ……」
鼻から甘く抜けるような声が出て、舌で舌を撫でられて、頭の中でかすかな水音がした。口の中を舌でたどるように舐められ、逃げた舌に舌を絡まされ、美玖はちいさく呻く。
背に回された腕でぐっと抱き寄せられて、吐く息さえも絡め取るような口づけに、美玖は頭の芯がじんとしびれた。
「美玖。お前が欲しい」
そっと口づけを解いて、まだ、唇に唇が触れ合ったまま、一條が囁く。その声も言葉も媚薬のように、美玖の腰の奥を痺れさせたが、美玖は小さく身体を震わせる。
これが一條の気紛れでないとだれが言えるだろう。一條ほどの男が自分を欲しがる意味が分からなくて、美玖は怯えた瞳を一條に向ける。
「好きなんだ」
好きだと繰り返す一條を揺れる瞳で美玖はじっと見つめる。どうしていいかわからなかった。
初めての恋、初めての相手。なにもかも初めてだったのに、そこに恋心以外のものを介在させて目をそらしてきたから、どうしていいかわからない。
「俺が好きだろう?」
一條はまた、言葉を繰り返す。
それは紛れもない真実で、でも頷いてしまっていいのだろうか。
「いま自分がどんな顔をしているか、わかっているか?そんな瞳で違うと言っても俺は信じない」
どんな表情を自分はしているんだろうと美玖は思い、たぶん縋るように一條を見上げているんだろうと思いつく。
「好きだって言えよ。おまえの本心を言葉で伝えろ。言葉をのみこまずに、全部吐き出せ」
焦点があわないくらいの近距離で、囁かれる言葉が美玖の心に突き刺さり、解けていく。
「俺が必要だと言ってくれ」
一條の瞳が揺れて、たまらずに美玖は腕を伸ばした。一條の首にぎゅっと抱きつく。
どうしてわかるんだろう。なぜ、自分の心が一條を求めていることを知っているんだろう。
どんなに隠していても一條は自分の心をすべて読んでしまう。まるで魔法か超能力のように。
でも……もういいんじゃないかと美玖は思った。
隠し通せないなら、仕方がないじゃないかと美玖は、一條を抱きしめる腕に力を込めた。
それが魔法でもなんでもかまわない。
「あなたが好き。そばにいて、離さないで」
目を閉じて、勢いのまま美玖は一條の耳に一気に告げた。頬を涙が伝った。一條が美玖の背をぐっと抱きしめ、立ち上がる。
一條にしがみついていた美玖の身体も自然と立ち上がり、その反動を使って、一條は美玖を抱き上げた。膝の裏と背をしっかりと抱かれる。
部屋の片側のふすまを一條が、からりと開け、四畳半の小さな部屋へと踏み込む。小さな部屋は、セミダブルのベッドで占拠されていた。
美玖を抱きかかえたまま、一條はその部屋を横切っていく。
「ちょっと待って」
一條の思惑に気付いて、焦った美玖は足をばたつかせた。ベッドは朝、起きたままになっているし、床も脱ぎ散らかした服で散らかっている。それに一條には、このベッドは小さいだろう。
「暴れると落ちるぞ」
抱く腕に力を込められて、美玖は動きを止めた。
「で、でも。こっちは寒い……」
暖房をかけていたのは、リビングだけだ。寝室代わりに使っている部屋はしんと冷え切っていた。ふすま一枚のことだというのに、この部屋では吐く息が白かった。
一條は美玖の瞳をひたと見据えると、口端を悪戯を思いついたかのように引き上げた。
「温めてやる。俺の全部でおまえを」
その言葉だけで、自分の肌を這う一條の大きな手や、合わせた肌、心地よい身体の重さを思い出してしまい、美玖はかっと体温を上げた。
自分のベッドに背中からそっと下ろされて、起き上がろうとしたら、肩を抑え込まれて、身動きがとれなくなる。
冷えたシーツがシャツ越しにひんやりと感じられた。
「一條さん……」
「隼也(としや)だ」
囁きへの返答は口づけに遮られた。いきなりな深い口づけに、美玖は息を止める。
苦しいほどぴったりと口内を深く貪られて、美玖は喘ぐように息を吐く。
鼻を抜けた声は自分でもびっくりするくらい甘かった。さらに口腔内を犯すようにかき回されて、美玖は腰を捩った。
体温が上がり、美玖自身が頭をもたげるのを自覚する。瞬く間に身体が反応し、ここまで、一條に飢えていたことを思い知る。
キスだけでソノ気になってしまうなんて。
「としや……さん」
告げられた名を反芻したら、舌を打つような音がして、くるりと身体を反転させられた。
「美玖」
背中から小さく「ごめん。先に謝っておく」と掠れた声がして、あっと思う間もなく、ズボンと下着を一緒くたに脱がされた。
その反動で、足だけベッドの下に降りて、うつぶせたままで、ひどい格好に頬に血が上った。
「やっ」
拒絶の言葉をあげるとするりと大きな手で臀部を撫でられて、息をのむ。湿った指先が蕾を行き来し、美玖は上体を逃がそうともがく。だが、腰を押さえられていて、どうにも身動きが取れない。
指が体内に沈む感触に、美玖は頭をあげた。
「あっ……」
声を上げると真っ白な息が唇から宙へと拡散した。体内を擦られる感覚に、腰が揺れる。
前に回された手に形をなしている自身を包み込まれ軽く扱かれると、美玖は背をしならせた。
「んっ……ああっ……」
指で壁を撫で上げられ、擦られて、逆の手で自身を弄られると頭の中が白くなる。
まだ、服すらも脱いでないのに、高められる体温に美玖は不安を覚えた。
「や……だっ…。一條さん、やめ……」
不安のままやめてほしいと懇願すると、上体を倒した一條が美玖のうなじに舌を這わせ
「無理。一瞬も待てない」
と囁く。首筋に触れた一條の吐息は熱くて、その言葉に偽りがないことを伝えた。
指で手で追い立てられて、弱いところを攻められて、美玖は甘い声を上げる。
「やっ……だめっ……ああ」
身体の奥をまさぐられて、腰が揺れ、上ってくる切ない快感にどうにかなりそうだ。
「美玖。どうした?すごく感じている」
「いわないで」
顔を両手で覆って首を横に振る。だが、それすらも一條を煽ってしまったらしい。背を滑る感触のあと、手で双丘を広げられて、ぴちゃりと濡れた音がした。
嘘。
「やぁっ……」
腰を捩るが、がっちり押さえられて動けない。その間にも一條の舌は、指をのみこんでいる美玖の蕾を這う。
「だめっ」
背をしならせ、美玖は叫ぶ。どうにかなってしまいそうだった。上半身はシャツ一枚、ボタン一つ外していないのに、下肢をむき出しされ、足を開いて腰を振る自分が淫らで、身体の奥から湧いてくる焦燥にも似た快感に、頭をかき回されているような気がする。
「はぁっ……んっ……やっ」
熱く濡れた舌が、体内に滑り込んで、いやいやと美玖は首を振る。それなのに、体内は柔らかく解れ、一條の指をさらに奥まで飲みこんでしまう。ぐるりと指を回され、美玖は甘い喘ぎ声を上げた。
衣擦れの音がし、一條が身体を起こした。
「ごめん」
ひどくせっぱつまった声で囁かれて、指を抜かれた。襞が指を引き留めようとするのを感じて、美玖は羞恥に身を染めた。
「美玖」
名を呼ばれて、腰を押さえられると、熟れた蕾に熱く濡れた切っ先を感じて、あっと思う間もなく、美玖は一気に貫かれた。
「あああぁぁぁ………」
長い悲鳴のような嬌声をあげ、背を反らせる。背からは一條の荒い呼吸が聞こえた。
こんな風に、いきなりされたことは今迄に一度もない。いつも丹念に愛撫を繰り返し、もう欲しいと散々訴えるまで、挿入をしなかった一條が、前戯もなく、美玖の体内に押し入ってきたことに戸惑いを隠せない。
だが、攻め立てる一條は熱くて大きくて、体内を擦られるとひとたまりもなかった。理性も羞恥も一気に吹っ飛んで、美玖は声を上げるしかできない。
白い息が宙に散る。視界の隅が白いのも一條の吐く息のせいだろう。
寒いベッドルームで、服を脱ぐ間も惜しんで、獣のように繋がって身体を揺すられる。
「美玖」
いつも余裕を失わず、教え込むようなセックスをする男が、何度も何度も美玖の名を呼びながら、美玖を貫く。
「いちじょうさん……ああぁぁ」
嬌声とともに名を返すと、顎を掬われ、後ろを向かされる。唇をふさがれて不自由な体制で口づけを交わした。
繋がったところが熱く溶けていく気がする。寒さは感じなかった。白い息が室温を示しているのに、背を覆う一條の体温が熱くて、かき回される内部が熱をはらんで、身体全体が発熱しているようだ。
「美玖」
激しく抽挿を繰り返され、手で自身を扱きあげられると、息が乱れた。
「あぁっ……もう……やっ……」
頂まであっという間に持ち上げられて、美玖ははしたなくも腰を振る。
「いいか」
何を訊かれているのかもよくわからずに「いい」とだけ繰り返し、美玖は首を横に振った。手でぎゅっとシーツを握りこむ。
もどかしい一線に辿りつくと身体が勝手に一條を貪りだす。中が収縮して、一條を食いしめてしまい美玖は、腰から頭まで走ったしびれに瞳を見開いた。
「達く。だめっ……はぁぁ……んっ」
両手でシーツを皺になるほど握りしめ、焦点の合わない瞳を宙に投げて、美玖は自身がはじけて一條の手を汚すのを感じた。何度もびくびくと腰が揺れる。
「美玖」
嬉しさを隠さない艶めいた声とさらに揺さぶられる身体に美玖は声を上げた。達したあとはさらに内部が敏感になる。硬い切っ先がいいところを抉って美玖は背をしならせ、一條を締めつけた。
「くっ……」
腰を抱いていた一條の腕に力が入り、締まった内部がじわりと熱を覚えて、一條もまた達したんだと霞んだ頭で思う。
荒い息を何度も吐いて、美玖は体温で温くなってしまったシーツに身を横たえた。
ずるりと体内から一條が去る感覚に腹に力が入り、かすかに身体を縮めた。
その背に一條が覆いかぶさり、ぎゅっと抱きしめられた。合わさった体温に、まだ拍動の早い心臓にうっすらと背に汗がにじむ。シャツがしっとりと肌に張り付いた。
あんなに寒かったのに、いまでも室温は冷え切っているというのに、この熱さはなんだろうと美玖は思う。浮かされたように息を整えながら、まだ、冷めることを知らない身体が、なお、一條を欲していた。
髪に落とされる口づけ。
「悪かった」
何を謝られているかわからずに、美玖は一度目を瞬く。
まさか、身体を求められたことを謝られているんだろうか。やっぱり欲しいのは一時の快楽なんだろうか。胸を一抹の不安がよぎり、つきんと胸の奥が痛んだ。
「俺を抱いたこと?」
訊ねる声が震えた。
「違う」
即答だった。
「……いや、違わないのか。お前が欲しくて、抑えがきかなかったからな」
一條の言葉に鼓動が跳ねた。あの性急さは……?
「今もお前が欲しくてどうにかなりそうだ」
告げられた言葉に身体の奥がじんわりと温かくなる。
それは美玖も同じだ。もっと触ってほしいし、抱いてほしい。謝罪なんていらない。溶けて消えてしまうほど繋がっていたい。
「どうして?」
口から出るのは単語ばかりで、自分でも何が訊きたいのかよくわからない。決定的な言葉が怖いのかもしれない。
「好きだから。可愛くて、可愛くて。そんなおまえが、俺の下であんな声をあげたら抑えがきかなかった。ごめん」
ぎゅっと前に回された腕に力を込められた。
それでも、やめられなかったと身体を抱き込まれて、耳元で囁かれる言葉に、美玖は動きを止めた。
「震えている。寒いか?」
美玖は小さく首を振る。寒さは感じない。まだ、身体が快感の余韻を引きずっていて、体内からぼおっと熱を発している。
「服を脱がす間もおしいと思うなんて、どれだけおまえに飢えていたんだか」
自嘲気味に笑われて、美玖はその言葉に熱が顔に上がるのを感じた。
「で……でも」
身体だけなんじゃないかとの問いは怖くて口から出せなかった。
「美玖」
名を呼んでさらに身体を密着させて、一條は美玖を胸に抱き込む。背が一條の胸にピタリとついて、隙間もないほど。
「温かいな。ずっとこうして美玖を感じていたい」
唇を美玖の頭にあてて、一條は呟いた。
じんわりと胸の中が熱くなった。一條の告白が胸につかえていた雪を溶かしていく。外からも中からも温められて、じんとしびれた。
不安に思う必要も疑心暗鬼に駆られる意味もまるでなかった。
一條は美玖が欲しくて、美玖もまた……。
美玖は身体をひねって起きあがる。背から一條が離れた。黙って身を捩ったせいか、美玖が怒ったとでも思ったのか、眉間に皺を寄せて、目尻がほんの少し下がっている。不安そうな顔だと美玖は思う。
この人にこんな表情は似合わない。それも自分のために、そんな顔をして欲しくなかった。
美玖は腕を広げ、一條の首に腕を回して抱き寄せると、自分から唇に唇を寄せた。
「美玖」
そういえば、一條は部屋に来てから、美玖を“みく”と呼んでいないことに今更気づく。ちゃんと本名のまま“よしひさ”と呼んでくれる。
「隼也……さん、好きだ」
身体は熱をあげていた。熾火のように身体の奥にくすぶっていた熱が一気に炎を上げる。
「欲しいよ、全部。我慢なんてしなくていい。俺の身体を気遣う必要もない。俺を全部あげるから……あなたをください」
ぎゅっと抱きついたまま、美玖は言った。恥ずかしくはなかった。ただ、身体の中から燃えてしまいそうなほどの熱さと欲がおしよせて、今すぐにでも一條が欲しかった。
この人が好きだ。認めてしまえば、その感情は甘美で、すこしだけ苦しい。
「美玖……そんな風に、煽ると手加減できない」
「そんなものしなくていい。壊れてもいいから、抱いて」
さらに抱きつく腕に力を込めるとふっと息だけで笑われて、抱きかえされた。
「その言葉後悔するなよ」
笑い交じりで言うなり、美玖はベッドに押し倒される。
ベッドに仰臥したと同時に唇を唇でふさがれた。息も奪うほどの口づけにうっとりと美玖は目を閉じる。
一條は美玖のシャツのボタンをあっという間にすべて解いてしまう。ひんやりとした外気が肌を粟立たせた。衣擦れの音が響いて、一條もまた、自分の纏ったスーツを脱いでいるんだと美玖は思う。
だが、全ての衣服を取り去られても寒さは感じなかった。吐く息は薄闇に白く上がるが、それすらどうでもいいほど、身体が熱かった。
「はやく」
欲にかすれた声でささやくと、「可愛い」と低く甘い声で返されて、口づけられる。
熱を放つ舌に、口腔内をかき混ぜられて、美玖も自分の舌で、一條の舌を追う。
「はあっ……」
舌が触れただけで、身体の芯が震えた。
肌を合わせて口づけているだけなのに、一條の肌の熱さに、その重さに、幸せを感じて、美玖は背を抱く腕に力を込めた。
「ったく。優しくするつもりだったんだ」
口づけを解くと悔しそうに一條が呟き、胸の粒を指でこねられた。
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