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「天空国の守護者」
トレジャ編

嵐の前(2)

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ほうっとレイラースは長く息を吐いた。キリスエールが瞬いたがために、呪縛が解けた。そっと手を伸ばして、レイラースはキリスエールの髪を梳く。
瞳の奥を見つめるようにレイラースはキリスエールと視線を合わせた。
「お前の魂に変化がある。誰かになにかされたよね。最近」
怒るわけでもなく淡々と語られた言葉にキリスエールの頬に朱が上った。
「セインに抱かれた?」
キリスエールの反応をみれば、答えはおのずと明らかだ。その問いにキリスエールは凍ったような顔をした。
しかし、レイラースにとってみればそれは面白くはないが些細なことに過ぎない。彼にとって大事なのはこの自分と過ごしているまさに「今」なのであって、他のことは例え誰かに抱かれていてもそれはそんなに重要なことではない。強姦でもされない限り、身体も魂も傷がつかないからだ。
それより魂に変化がある方は見過ごせない。タミルが無意識に所有者の証をつけたせいで、もともとキリスエールの魂には微妙な色があった。それがまた今も少し色合いが異なっている。
固まったままどう答えを返していいかわからずにいるキリスエールをそのままに、レイラースは身を起こすと瞳を閉じ、横たわっているキリスエールに右手をかざした。
強い違和感をキリスエールの頭に覚える。さらにレイラースは意識を凝らす。視覚ではなく感覚に触れるものがあった。髪に隠れて花形の印を見つける。
守護者の印がもう一つ。セインが……。
驚いて瞳を開く。鮮やかに浮かび上がった印が一瞬にして消えた。
「レイラース様……」
行動が不可解なのかセインとのことをどう言っていいかわからないのか、キリスエールはレイラースの名を呟いた。瞳が困惑と後ろめたさの色を帯びて揺れている。
「セインが印を残した」
レイラースの言葉の意味がわからなかったのだろう、キリスエールはレイラースを見つめた。
「所有者の印がもう一つつけられているよ。キリスエール。知ってた?」
いらいらとレイラースが尋ねる。同意してつけられた印なら、キリスエールを永遠に自分は失ってしまう。それはキリスエールが主人を決めたことを意味するから。
「もう一つ?」
繰り返して、キリスエールが驚きに目を見開いた。
「タミル様がつけた印以外に、印があるって言うんですか」
身体を起こして、問う。
「そう。やったのはセインだろうね。そこまでお前に執着していたとは驚きだけど」
キリスエールの様子から勝手にセインがしたのだろうと判断し、レイラースの語気が少し和らぐ。
「やっぱり、さっさと僕のモノにしてしまえばよかったな。お前があまりに初心だったんで、急ぐこともないかと思っていたんだ。無理やりは嫌だし。少しずつ教えてあげるつもりだったんだけど」
そう、そうしてキリスエールに選ばせるつもりだった。自分を。
最後の言葉は口にしなかった。
「……レイラース様……」
優しく語ったつもりだが、レイラースは静かな怒りを感じたのだろう。キリスエールの瞳が揺らぐ。
「どうしようか。もともと今夜はお前を抱く気で来たんだけど」
このままだとそれだけでは済まない気がする。
その言葉をレイラースは飲み込んだ。
そう、誰に抱かれてようがそんなことはどうでもいい。印をつけられたことが気にいらないのだ。でもセインがキリスエールに触れたのが、面白くないと思うのは何故だろう。
レイラース自身も自分の中に湧いた怒りの理由がわからない。
「キリスエール。お前の気持ちはどこにあるの」
淡々と問う声にいらだちがにじみ出た。

怒っているんだ。セイン様に抱かれたから……。それでも、俺にどうしろというのだろう。
俺は贄で守護者の求めに拒否権はない。
「俺の気持ち?」
わからない。そんなことは。通ってくる守護者があなたたちでよかったとは思っているが、拒否権も選択権もない俺にどうしろというのだろう。
レイラースの言葉にキリスエールは静かに首を横に振った。
セインもレイラースもタミルもお前の望むようにというけれど、それは許されていない。
「自分で贄だと認めてしまっているんだね」
キリスエールは大きく瞳を見開いて、レイラースを仰ぎ見る。
読まれた。心を。
キリスエールは一瞬、目の前のレイラースに怖れを感じた。座った姿勢にも関わらず、無意識に身体が後ずさり、レイラースと距離をとる。
それがレイラースの感情を逆なでしたらしい。レイラースから表情が消える。
「僕が怖い?お前の感情は強くて、読まなくても伝わってくるだけなんだけど……」
その言葉にもキリスエールは首を横に振った。自分の心を読んでいるだろうこの異能の守護者が本能的に怖かった。
壮絶な美しさも人間にはない色彩もキリスエールの恐怖を増長した。
ゆっくり腕を伸ばしたレイラースの動きを視界にとらえながら、キリスエールはベッドの上を後ずさる。
「逃げないで。キリスエール」
ゆっくりとした動作であるのに、レイラースの手がキリスエールの二の腕を掴んだ。思いのほか強い力に痛みが走る。
「っ痛……」
そのままぐっと前に引かれた。抵抗するが力の差は歴然としており、あっという間にレイラースの胸に抱きとめられた。
「逃げないで。キリスエール」
同じ言葉をレイラースは繰り返した。キリスエールの身体がびくりと震える。
この腕から逃れようと暴れそうになるが、頭のどこかでそれはいけないと警鐘が鳴る。
「僕を怖がるな。お前が嫌がることをしたことはないだろう」
頬をレイラースの胸に付けながら、凍るように動きをとめたキリスエールはゆっくりとうなずいた。
確かにレイラースはいつも優しくて、本当に嫌なことをしたことはない。ついさっきまで怖いと思ったりしなかったのに、何故。
「僕が怒っていると思っている?セインに抱かれたから?」
わからない。怒りの波動が怖いのではない気がする。
答えを返せないキリスエールをレイラースは責めない。
「少しは怒っているかもしれないね。お前を一人占めできないのが哀しいから」
ぐっと抱き締められる。
「どうしようか。このままだとお前を手荒く扱ってしまいそうだ」
レイラースの腕の中のキリスエールは身動き一つできない。レイラースのことが怖かった。しかしそれ以上に、言葉は淡々としていて感情がないのに抱き締める腕は強くて、聞こえてくる鼓動が切なくて、キリスエールにはどうしていいかわからない。
もう一度ぎゅっと抱き締めて、レイラースはキリスエールをはなした。
顔を上げるとレイラースと視線が絡んだ。その瞳は切なさと哀しみを含んで揺れている。
つと視線を外し、後ろに下がるとレイラースはベッドから降りようとする。キリスエールはとっさに手をのばし、レイラースのシャツの袖を掴んだ。
「キリスエール……?」
不思議そうに問いかけられる。
「俺……」
自分のしたことに気付いたキリスエールは真っ赤になって俯いた。
どうして引きとめたかは、キリスエールにもわからない。本当にわからないことだらけだ。ただ、揺れる瞳を見ていたら自然と手が伸びていた。
レイラースはキリスエールを抱き締める。先ほどよりずっと優しく、愛おしそうに。
「お前を僕だけのものにしたいよ。キリスエール。だれにも渡したくない」
「レイ……」
胸が痛かった。キリスエールは瞳を閉じる。こんな風に誰かに想われることがあるなんて考えてもみなかった。それが嬉しさではなく、切なさと胸の痛みを伴うなんて。
キリスエールの肩が微かに震えているのに気づき、レイラースは身体を少し離す。
「キリスエール……」
驚いたような声で名を呼び、指でキリスエールの顎を掬いあげる。
キリスエールは泣いていた。瞳を閉じ、懸命に堪えているのにはらはらとその目尻から涙が落ちる。
レイラースはキリスエールの瞳から落ちる涙にそっと唇を寄せた。
「泣かないで」
囁いて、涙を吸う。
「泣かないで」
何度も繰り返し囁きながら、キリスエールの目に頬に口づけを落とす。
「キリスエール」
頬に瞼に額に、泣き続けるキリスエールに口づけた。そして、唇にも。触れるだけの口づけを繰り返す。
「レイラース様」
唇に唇が触れた瞬間、キリスエールが微かに囁き、いきなりレイラースは深くキリスエールの唇を覆う。
「ああ」
深く、吐息すら逃さずにレイラースはキリスエールに口づけた。
舌で舌を絡みとり、撫で、口腔内を辿る。柔らかく温かいキリスエールの口のなかをレイラースは堪能する。あまりに深い口づけに息もつけず、唾液が唇の端を伝う。
「はあっ……レイラース……さま……」
唇がゆっくり離れると二人の唇の間につっと橋がかかる。キリスエールの息は上がり、視界は霞んでいた。
「もう泣かないで」
至近距離で見つめられ、レイラースは微かな声でそう告げる。それに頷き返す間もなく、レイラースはキリスエールの首筋に唇を寄せた。
「んっ……ああっ……」
首筋にそって唇が移動し、耳たぶを甘噛され、声が上がる。
「可愛い。キリスエール」
耳元で囁かれた声にキリスエールはゾクリと身体を震わせた。
「でも、今夜はやめておくよ。何があっても優しくできそうにないから」
「レイラース様」
「戻ってきたら続きを。今度は絶対にやめてやらないからね」
さらに強く抱きしめてレイラースはキリスエールの耳元で囁いた。
そのままレイラースの姿はかき消える。
「……レイラース様!」
いきなり目の前から消えてしまったレイラースの名を叫ぶ。答えは返らず、闇だけがじわりとキリスエールの呼びかけに震え、キリスエールは自分で自分を抱き締めた。
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