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「天空国の守護者」
トレジャ編

タミル vs. ロト

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「こっちです」
宙を瞬時に移動し、カルアがロトの気配を追っていく。
「街の中だな」
タミルがカルアの案内で一緒にロトを追う。
「寺院ですね」
「すでに侵入している連中と連絡が取れるか?」
寺院の前に躍り出て、タミルは訊いた。
「やってみます」
カルアは意識を寺院に向け、心話で仲間を呼ぶ。
タミルは周りに意識を向け、黙って待っていた。風がざわざわと寺院の周りの木々をゆらす。
空は雲がかかり、まだ宵の口だと言うのに真っ暗だ。
ひと雨来るな。
そうタミルが思った時、
「応答がありました」
カルアの声が聞こえた。
「そちらの様子は?」
タミルの命に頷き、カルアは意識を通信に集中する。
「特にこれといって、変化はないそうですが、夕方から奥で慌ただしくなったとか。クアールと繋がっている人間はすでに分かっているので、隊長の命令を待っているそうです」
「慌ただしいとは?」
報告が抽象的で訊き返す。
「クアールと組んでいる奴らが、地下に呼ばれてなにか会議をもったらしいですね。内容は分からないようですが」
「わかった。命令があるまで待機。すぐさま行動できるようにしておけと伝えろ。クアールと繋がっている奴らを殲滅する」
タミルの命令をカルアは正確に伝えた。
心話での通信が終わるとカルアはタミルを見た。
なぜ、逃げ込む先がここなんだ?
罠だろうか?
タミルは状況を再度頭の中で分析する。もっと軽いけがなら、確かに罠の可能性もある。だが……。
思考はカルアの問いで断ちきられた。
「どうしますか。怪我をしていたのに、どうしてここに逃げ込んだんですかね」
タミルはカルアを見つめた。
「それを考えていたんだが。あの男、結構な深手だと思う。首は切り落とせなかったが、傷はつけたはずだ。クアールの領土に帰ったほうが治療には良いと思うが、ここへ逃げ込んだ。罠かもしれない。だが、俺たちを誘いこむにしては、あいつの怪我はひどいと思う」
「そうですね。罠の可能性はないと思いますよ。他のクアールの気配が全く無い。例の2人の分だけです」
カルアの回答にタミルはますます首をひねる。
「行ってみればわかるか」
ここで、全ての可能性を洗いだしても仕方がない。あっさりとタミルは考えることを放棄した。
「その奥というところには飛べるか?シールドもしくは障害物の存在は?」
「ありません。距離的にも一気に飛べます。ついでに、人間の気配が強い。何人かすでにいるようです」
カルアの説明を聞きながら、タミルは考えを巡らす。だが、次の瞬間にはすでに意思を決めた。
「わかった。一気に決する。こちらに振り分けた隊50名は、寺院の裏手で待機していたな。一刻後、隊50名と潜入組5名とともに一気に突入する。地下にいるものは全て抹殺しろ。一人残らずだ」
にやりと獰猛に笑ったタミルの口端から長めの犬歯が牙のように覗いた。
「了解」
その顔に見惚れながら、カルアは命令を全ての兵に伝えた。


一刻後、寺院の周りには、不穏な気配が満ちていた。
禍々しい気が建物から立ち上っているようにすら見える。空はますます暗く、雲が上空の強い風に流されて、街の上に集まってきた。
「さっきよりひどい気だ。いったい何が起きているんだ」
寺院の裏手に終結した黒軍の部隊はタミルを先頭にこの気配を見上げていた。建物から上る気は、守護者には揺らめく黒い影のように見える。ここまで、禍々しく、悪意に満ちた気は見たことがない。
「かなり不穏ですね。しかし、中から特別な連絡はありません。つい先ほどの通信でも異常なしです」
「やっぱり罠か」
カルアの言葉にタミルは少し考える。
「中の連中が心理操作されている可能性は」
「否定はできませんが、それでしたら私の能力に引っかかるはずです。彼らの気配に変わったところはありません」
再度、タミルは首をかしげた。確かにそうだ。カルアの感知能力は、ずば抜けて強い。その彼にすら感知できないのだとすると、何も気にすることはないのかもしれない。
「考えて、ここで様子をうかがってもどうにもならない。罠の可能性は低そうだ。予定通り突撃する」
タミルの言葉にカルアが笑う。俺らしいと思っているのかもしれない。
タミルは部隊の隊員を振り返った。部隊の全ての眼がタミルを見つめた。
「我々の任務はクアール残党の殲滅とこの件に係わった人間の抹殺だ。聞いての通りかなり危険がある任務となりそうだが、頼んだぞ」
部隊を見渡してタミルは宣言する。
全員が頷く。その瞳は久しぶりの戦闘に対して、輝いている。これで、この間の屈辱を果たせると全員が思っているようだ。
何人かが、拳を見える位置でぐっと握った。きっと本当は鬨の声を上げたいのだろうが、人間世界で目立つのはできるだけ避けろと命じてある。それを頼もしく思いながら、それでも、突っ走らないようにタミルは全員にくぎを刺す。
「無理はするな。ヤバい時は潔く退け。立て直しはきくからな」
それにもみな深く頷く。
「よし。行くぜ」
タミルはそう言うと空気の波動だけ残して、姿を消した。部隊全員がその後に続く。
飛んだ先は、薄暗い地下室だった。
「隊長」
僧服に身を包んだ仲間が出迎える。こころなしか慌てているようだった。
「どうだ、様子は」
「たった今、世話していた贄の少年が連れて行かれました」
「こんな状況で、儀式があるのか」
タミルはひどく不思議なことを聞いたように首を傾げた。クアールが怪我をして飛び込んできたのに、願い事をかなえる儀式などしている場合ではないだろうと思う。一体どういうことなのだろう。
「それが、やけに連中、怯えてまして」
「怯えてる?」
「そうなんです。どうもいつもと違って、贄を要求したのはクアールらしいんですよ」
その言葉にタミルは目を見張った。
「何をする気だ?」
その言葉に、僧侶姿の仲間は首を横に振る。
わからないのだろう。
ひどく嫌な予感がする。だが、やらなければならないことは一つだ。あそこに見えている扉の向こうにいる人間とクアールの抹殺だ。
タミルは、その男に背を向けて歩き出した。奥に見える扉に歩み寄る。禍々しい気はそこから漏れ出ていた。瘴気が渦巻く。悪意と憎悪に満ちた気。それに恐怖か。
「隊長……」
カルアの声がしたが、タミルは振り返ることなく、その扉を押し開けた。
むっと強い香りがした。香木を燃やして上がる火が薄暗い地下のホールを照らしている。炎が揺れ、壁に陰影が揺れる。中央に白く浮き上がるサークルが描かれ、その円にそって5人の全身黒いマントで覆った人間が不思議な旋律を詠唱していた。その真ん中に年の頃は16、7の全裸の少年が両手を真横に上げて、ふらふらと上体を揺らしながら立っている。
赤い炎の影が肌に映え、まるで血を流しているように見えた。
この少年が生贄なのだろう。栗色の髪に白い肌、華奢な肢体。一瞬タミルはそれがキリスエールに見えた。おぞましさに肌が粟立つ。
上がりそうになった叫び声を喉の奥で殺した。
しっかりしろ。あれは、キリスエールじゃない。
ぎりりと唇を噛みしめ、痛みでタミルは無理に浮かんだ不吉な思い込みを振り払った。香木の影響かもしれない。髪の色しか似ていない少年をキリスエールと見間違えるとは。
視線を巡らすと祭壇の上にもう一人、剣を掲げた男がいた。こちらもすっぽりと祭衣を来ており、顔もわからない。しかし、これが取り仕切りの者だろう。神を呼ぶ儀式にしてはあまりにも禍々しい。
ホールにいるのは人間だけだ。クアールの気配は祭壇のさらに奥に2つあった。人間は全く気付いていない。
すでにクアールはここにいるのに、贄を必要とする儀式とは、とんだ茶番だ。
タミルはあまりの光景に眉をひそめた。
人間は扉を開けて守護者が乱入してきたのにも全く気付かずに儀式を進行していく。見えていないはずも、音が聞こえていないはずもないのに、全く気がつかないのだ。
すでに、正気ではない……?
クアールも動く気配がない。こちらは、とっくに気づいているだろうに。儀式を邪魔されるとはつゆほど思っていないのだろうか。
あまりの光景に守護者の誰もが動けなかった。部屋に満ちている気は狂気をはらんでいる。
タミルはなんとか前に出ようと足を動かす。地面に縫いとめられたように動かない足は、必死に前に出そうとしても、数センチしかずれない。
詠唱の音量が上がり、祭壇の男が少年の前に降りてきた。そして、剣を振り上げる。
波のように奥から力の波動を感じた。
ごおおおおお
ホールを突風が吹きぬけ、立っていた人間は全て風で飛ばされ、床に叩きつけられる。倒れないのは、真ん中の贄の少年だけ。そして、守護者も顔の前に腕を上げただけで、この風をやり過ごす。
一体何をするつもりだ。
タミルが思った瞬間に、贄の前に2人のクアールが降り立った。ロトとエムールだ。
傷つけた肩の傷から流れ出た血はすでに止まっているようだが、乾いた血が黒ずんだ染みを服に残している。
首の傷も出血したのだろう。上半身は血まみれだ。顔色も心なしか青い。
それでも嫌な笑みを口元に張りつけて、ロトは腕を振り上げた。
身体が動いた。
「待て!」
タミルは叫ぶと炎を投げ、ロトに向かって走り出す。ロトとエムールの間を炎が走り抜けた。
一動作で、ロトとエムールはその炎を避ける。ひどく動作が億劫そうだ。
「追ってきたの。しつこいな」
エムールはロトをかばいながらひどく嫌そうに答えた。
「観念するんだな。ここで終わりだ」
剣に手をかけ、タミルは告げた。
「それはどうかな」
これだけの守護者に囲まれている割にはまるで平静にロトは言う。
そして、全くタミルたちがいないかのように少年に近づいた。少年の焦点は全くあっておらず、何が起きているかも認識していない。ロトはその少年の顎を捉えると上向かせる。
「おい」
寄ろうとするタミルをエムールが遮る。
「お前の相手は僕だ」
タミルは剣を抜いた。エムールも手の中に光の剣を出現させた。
カルアが気色ばんだ。周りの守護者も武器を取る。
その隙を突くように、エムールの後ろで少年の顎を持ち上げたロトはその首筋に唇を落とした。
少年が恍惚の表情を浮かべる。
タミルはあまりの光景にロトの行為を止めることができなかった。動きを止めた隙に、ロトが贄を喰らうのを見る。
ぞくりとタミルの背筋に戦慄が走った。忌むべき光景が淫靡で退廃的に見える。
ロトは少年の首筋に歯を立てて生き血を啜る。タミルは少年の身体から多量のエネルギーがロトに移動しているのを感知した。
少年は快楽に身をゆだねているような表情で、濡れた瞳が天井を見ていた。陶然としたまま、身体が何度かびくりと痙攣し、少年の腕が身体の脇に落ちた。
「人間を喰ってる」
タミルは一歩後ろに下がった。
周囲の騒ぎも気にせず、ロトは首筋から流れる血の最後の1滴まで吸い取ると、顎を離す。少年は崩れるようにその場に崩れ落ちる。全身蒼白で、ピクリとも動かない。すでに事切れていることは一目了然だった。
ロトは自身の唇の周りをぺろりと舐め、タミルを見た。ゾッとするような憎しみに満ちたまなざしで。青かった顔色は、血の気が戻っていた。
「少しはましかな。あんたのおかげで流れちゃったものを少しは補給したからね。まだ、足りないけど、あんたの相手をするには十分」
ロトの手に剣が出現した。先とは違う本物の剣だ。目の前に立つエムールを押しのけ前に出る。
「ロト、大丈夫なのか」
「ああ。こいつは俺のだ。残りよろしく」
エムールの心配そうな声に答える口調はいつものロトだ。
「人使い荒いよ」
エムールのぼやきにカルアが反応する。
「隊長。こいつは俺が」
エムールに向かって、掌を向ける。
「頼む。こっちは俺の獲物だ。お前たちは人間を狩れ。このけったくそ悪いクアールを信望している奴らは一人残らず殲滅しろ」
一気にそれだけ命ずるとタミルは、ロトに向かって飛んだ。
金属がぶつかる音が、地下のホールに反響した。打ってそのままタミルは後ろに跳び退る。
受けた剣を流すように払って、ロトが剣をつきだしたからだ。崩れた姿勢を逃すわけもなく、タミルはその剣を跳ねあげると一気に間合いを詰める。剣と剣で押し合うような格好になった。
しかし、力比べならタミルに分がある。おされぎみのロトは、その勢いをうまく利用し、後ろに跳ぶと、左手を突き出して、光の珠をタミルに投げつけた。
シールドを張って避けると後ろの壁と柱が粉々に砕け、轟音と破片が舞い上がる。
その塵の中を剣を構えて、タミルはロトに向かった。再び金属音が響く。何合も剣のあたる音がこだました。
すでにカルアとエムールの戦いも始まっている。しかし、こちらは物理戦ではなく、感知能力による精神戦だった。
キンっ!!
ひときわ大きな音がして、タミルとロトが離れた。対峙し睨みあう。
くそう。
長引く戦いにタミルはぎりっと唇を噛んだ。
相手は手負いだ。さっさと片をつけてやる。
地を蹴ると同時に炎を投げ、剣をふるう。受け止めて、ロトは剣先を跳ねあげた。しかし、それをタミルは狙っていた。そのまま返し、腰へ剣を叩きこむ。
とっさにロトは身を翻すが、腰を浅く切り裂かれた。血がしぶく。
「くっ…」
痛みに顔をしかめて、ロトは身を翻した勢いのままタミルに突っ込んだ。剣先が頬を掠める。
「やってくれるじゃねえか」
走り抜けたロトの方を振り返り、タミルはぐっと拳で頬の傷を拭うと獰猛に笑った。
「死にぞこない。俺がきっちりあの世に送ってやる」
「なに言ってやがる。死ぬのはお前だ」
ロトは言うなり突っ込んでくる。それを真っ向からタミルは受ける。再度、激しい剣戟の音が響き渡った。
音のみが空を震わし、松明の明かりに煌めいた剣の残像だけが、一瞬目に映る。
永劫に続くかと思われた戦いは、あっけなく幕を引いた。
地面に飛び降りざま、ロトは手近にあった篝火の木を引き抜くとタミル目がけて投げつける。顔に当たるのを腕でかばい、叩き落としたところにロトが突進し、剣を上から振り下ろす。タミルは避けなかった。そのまま左肩に剣が喰い込んだ。肉を断つ音が体内に響き、タミルは右手で、動かなくなったロトの剣をもつ右腕を肘で切り落とした。
からん
腕ごと剣が地面に落ち、血が飛沫いた。
「ロト!!」
「隊長!!」
床のレンガに剣が当たる音で、顔を上げたエムールとカルアの叫び声が響き、ロトは傷口を押さえて、地面に膝をついた。
「ロト」
再度名を叫んで、エムールはロトの脇まで一気にとぶと、ロトの脇に肩を入れ担いだ。タミルをきつい瞳で睨みつけ、次の瞬間に二人の姿はそこにはなかった。
「逃がすか」
後を追うため跳ぼうとしたタミルの腕をカルアが引いた。
「離せ。逃げられる」
「無駄です。すでに気配は遠い。逃げた方向もクアールの領地方向です。追っても無駄です。」
腕を掴むカルアの手にさらに力が加わり、タミルは動けない。代わりに唇をぎりりと噛んだ。
「他はすべて片付けました。いったん陣に戻りましょう」
カルアの言葉に地下のホールをタミルは見渡した。すでに、守護者以外動いているものはいない。
「わかった。いったん戻るぞ」
タミルの言葉にほっと息を吐いてカルアは頷いた。


「ルシード」
夜が明けて、戻ってきたルシードにカルアが声を掛けた。
「隊長は?」
ルシードはカルアに近づくと、隊長の安否を問うた。
「あそこ」
親指を立てて、天幕をカルアが指した。
「何があった」
ルシードの質問はもっともだ。天幕の周りは強い殺気に覆われ、感応力の強い者では近づけないありさまだ。
「クアールとやりあって、怪我をしているんだが、肝心の獲物に寸前で逃げられた」
「手当は?」
「この状況じゃ、近づけない。見ろよ。この距離でも産毛が逆立っている」
カルアの腕には鳥肌が立っていた。
「セイン将軍がいてくれたらよかったんだが」
確かに、こういう時のタミルを癒せるのはセインだけだ。
「ほっとくわけにもいかない。ちょうど報告もあるから」
ルシードはそう言うと天幕に向かって歩き出す。差し出す足が震えるのを止められなかった。
「隊長、入りますよ」
ルシードは、天幕の入口で声をかけ、中に滑り込む。手負いの猛獣の檻に忍び込むような気分だ。
「ルシードか」
天幕の中でタミルは床にどかりと座っていた。肩には血が滲んだ布が無造作に巻かれている。見た目は変わったところはない。暴れるとか怒っているとかそういうことではないのだ。
まさに手負いの獣が全てを拒絶し、殺気を撒き散らしている状態と同じ。感応力がなければ、特にタミルを怖いとは思わないだろう。
「報告にきたんですが、どうしたんです。この殺気は?」
「殺気?」
本人にも自覚はないようだ。声もいたって普通で、憤りも感じられない。
「自覚はないが、確かに力が暴走しそうで、抑えるのに苦労している感じだな」
「ちゃんと手当てしたんですか」
ルシードは、入り口から動かない。否、動けなかった。
「自分で適当に。カルアはここに入って来ないし、お前はいないし」
「俺でも駄目そうですよ。カルアくらい敏感だとここに近寄れないでしょうね。そのくらいの気を放ってますよ、隊長」
タミルは哀しげに微笑った。
「逃げられたからな。2回も。トドメを刺す前に」
「そりゃすごい。隊長の剣を逃れるとは」
ルシードの感嘆の声はもっともだった。剣の腕にかけては守護者一と名高いタミルだ。その彼をして逃げられたというのは、ありえないことなのだから。
「お前の方は」
報告に来たのだろうと目で告げられ、ルシードは姿勢を正した。
「人間の方は、ほとんど全滅です。俺が率いていたのが千ですから、若干行き残りはいますけどね。隊を組むのは不可能でしょう。クアールは正確な人数は分からないですが、かなり片つけましたよ」
「こっちの被害は?」
「死傷者120ってとこです。死んだ者は少ないですが、怪我は軽くないですね。あのクアールが味方ごと爆撃してくれたせいです」
あれでずいぶんクアールも人間も吹っ飛んだ。
「このまま上と合流するのもいいが、残党がいると厄介だ。セインに報告後、このあたりの掃除をする。上で戦っている奴らには、下からの攻撃はないと伝えてやれ。アズールとフレミールならすでに決着をつけているかもしれないが」
「了解」
「だれか感応力の強くない人手をよこしてくれ。傷は塞いだが、できたらきちんと固定したい。さすがにまだ左腕があがらないからな」
タミルの言葉にルシードは心配そうな顔をした。しかし、彼の気が強すぎて、ルシードではどうにもできない。
頷いて、天幕を後にした。
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