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「天空国の守護者」
天空国編

懺悔

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瞼を射る光にキリスエールは、一つ呻いた。
寝返ろうと動かす身体は怠く、力が入らない。あがくように伸ばした腕でシーツを掴むと急速に意識が浮上した。
何度か目を瞬く。すでに外は明るく、朝とも呼べない時間帯であることを認識したが、キリスエールは身体が起こせなかった。
腰から下はまるで自分でないかのようで、その原因も鮮やかに思い起こして、一度は上げた頭をキリスエールは枕に沈めた。
……タミル様……。
ベッドにはすでに彼の姿はなく、部屋にも誰かの気配は感じない。
怪我をして別人のように殺気だっていたタミルは、自分を抱くだけ抱いて帰ったのだろうか。
兄のように師のように接していたタミルが何故?
キリスエールの頭の中には疑問しか湧かない。生気を吸われたのが、怪我のせいだったとしても自分を抱く必要はなかっただろうに。
やっぱり、贄なんだとキリスエールは心が冷える。闘いで荒ぶった神経を鎮めるためのもの。
セインもレイラースもタミルも自分を大事にしてくれていたから、忘れていたが。
守護者には逆らうな。守護者の望みを叶える。
これが俺たちの存在意義……。
ぐっと奥歯を噛みしめた。鼻の奥がつんと痛み、瞳が潤んだ。枕に染みが落ちる。
後から後からぽたぽたと涙が枕を濡らした。
「うっく……うっ……」
一度泣き始めたら止まらなくなった。
キリスエールは枕を握りしめながら泣き続けた。


「入るぞ」
扉を引き開けると、セインは中の返事も待たずに部屋へと入った。
「どこ行ってた?」
ベッドに身体を起こして、立てかけた幾つかの枕に寄りかかって本を読んでいるタミルにセインは声をかけた。その声はやけに硬い。
怒りを含んでいると言ってもいい。
それもそのはずで、昨夜、黒軍が引きあげてきたとの報告が入り、セインはタミルの怪我の様子を見るために部屋へと訪れたにも関わらず、この部屋は無人だったのだ。
タミルはすっとセインに視線を流すものの、また手元の本に戻る。
「タミル隊長。どこに言っていたと訊いているんだ」
友人として訪れたのではないと言外に告げセインはベッドの側に歩みを進めると上からタミルを睨みつけた。
「別に。ここで寝てた」
「嘘をつけ」
タミルを眺めて、セインは舌打ちをした。報告では感応力の高いものほど側に寄れないほどの殺気を放っているとのことだった。しかし、今、目の前のタミルは通常と変わらないように見える。弱ってはいるが。
「ちゃんと報告してもらおうか。タミル」
「うるさい。邪魔だ。出ていけ」
上官に告げる言葉ではない。セインは眦を吊り上げた。
「タミル・ブラックウェル隊長。命令だ。きちんと報告したまえ」
セインの声にタミルは舌打ちを返す。
仕方なさげにベッドから降りると直立不動の姿勢をとった。傷が引き攣れたのか、一瞬、痛みに顔を歪める。
「昨夜、帰国し一時解散の命を受けました。その後は特に指令はありませんでしたから、あとはプライベートです。お答えする義務はありません」
「貴様」
腹の底から怒りをセインは感じた。確かに命令違反は何もない。部屋で待機とは怪我を負って、心身ともに疲れ切った者にする命令ではないからだ。
セインはタミルに近寄るといきなりシャツのボタンをはずしだす。
「やめろ。何をするんだ」
「じっとしてろ。怪我の具合を見るだけだ」
「うるさい。ほっとけ。俺なら大丈夫だ」
払いのけられそうになる手をセインは掴んだ。そのまま有無も言わせずに、シャツをむしり取る。
タミルの肩には布があてられ、綺麗に包帯が巻かれている。身体中、傷だらけだが、大きいもの以外は、ほとんどがふさがりつつあった。
「手当は誰が?」
タミルは答えない。
「キリスエールか……」
セインの言葉にタミルの視線が微かに揺れた。やっぱりと思うと同時に怒りが募った。それが己がキリスエールに逢いたくても会えないのに、タミルが会いに行ったからなのか、それともこんなに友人が心配しているにも関わらずに、それを心にも留められていないためなのかセインにはわからない。
「そのせいで昨日まで誰も近寄れないと報告のあった殺気も消えているんだな」
タミルは無言だ。
しかし、それは肯定しているに等しい。
「傷を治すためにキリスエールから生気を奪ったんだな?」
セインは拳を握った。殴ってやりたかった。手加減なく人間相手に生気を摂ったら、相手の命に保障はない。セイン相手とはわけが違うのだ。
「殺す気か?」
「違う」
初めてタミルが言葉を返した。掠れたような声だ。
「わかっているのか。相手は人間なんだぞ。俺達とは違うんだ」
「……わかっている」
「わかってない。お前が欲するだけ摂り上げたら、無意識にしたってだ、一瞬で相手の心の臓が停まるんだ」
タミルは俯く。
「タミル隊長。しばらく自室で謹慎していろ。部屋から出るのは許さない」
はっとタミルは顔を上げる。
「待ってくれ……」
こんな事言いたくはない。こんな命令はおかしい。タミルは軍規は何一つ犯していないのだから。公私混同も甚だしい。
わかっていてもなお、腹の底を渦巻く怒りはいかんともしがたかった。キリスエールは人間だ。それもトレジャの。だれが何をしたって、セインに罰する資格なんてない。
それでも――
タミルの言葉は継がせない。
「その様子なら衛生兵で手当ては十分だろう。まずは傷を治すんだな」
セインは踵を返した。
「セイン」
「レイラースが帰国次第、国主のもとに報告との命を受けている。それまで、ここで反省していろ」
そのまま全てを拒絶してセインは歩き出し、扉まで来ると足を止めた。
「いいな、これは命令だ」
冷たくそう告げるとセインは扉を後ろ手に閉めた。


くっとタミルは唇を噛みしめ、拳を握りしめた。
「わかっている。言われなくても……」
扉は無情にも閉じたままで、セインの遠ざかる気配がする。
呻くように言葉が漏れた。
セインの言葉はもっともだ。
昨夜、帰還するやいなや軍装も解かずにキリスエールのもとに向かったのは、考えがあってのことではない。
気付いたらあそこにいて、キリスエールの姿をみるや抱き締めていた。
その後のこともあまり記憶にない。
次に目を開けたら、キリスエールが腕の中にいて、あとはただ、本能の赴くまま、欲したまま行動した。
自分が何をしでかしたかを意識したのは、全てが終わった後だった。腕の中でぐったりと意識のないキリスエールを見つめて気付いたのだ。自分が何をしたのかを。
確かに、全てが終わったら心に沈めた感情と向き合うつもりだった。だが、こんなことをしたかったわけではない。
「キリスエールを傷つけるつもりなんか……なかった……」
守りたかったのだ。そのために、戦いに赴いたのに。
まさか、自分のなかにこんな生々しい欲望が眠っていたとは思わなかった。
可愛くて愛おしくて、笑っていて欲しいと願って……。
身体を繋げたいと思ったことなど……そう思って、タミルはどさりとベッドに座った。
両手で顔を覆う。
セインの告白を聞いた時から、昏い想いはなかっただろうか。
セインがキリスエールを抱いたと聞いて、受けた衝撃は忘れられない。
キリスエールを見出したのは俺なんだ。誰にもやりたくないし、誰のものにもしたくない。
「それでも……」
呻くが言葉は続けられない。
ぐったりと腕の中で気を失ったキリスエールの身体には無数の赤い鬱血と情交の痕が散っていた。いったい、どれだけ攻めたてたんだろう。
ベッドに横たえて、身体を側にあった濡れタオルで拭いた。キリスエールの身体には力がなく、何をされてもくたりとした人形のようだった。
ベッドも整えて寝かせなおし、それ以上顔を見ていられなくて、逃げるように帰ってきた。
嫌だとやめてくれと何度も哀願していたのに……。
もう、合わせる顔もない。俺の中の感情はお前を壊してしまうものだったから。
会えないと思う端から会いたいと思う。
だが、顔を見たらまた欲するだろう。キリスエールの全てを。
俺は馬鹿だ……。
両手で顔を覆ったままタミルは肩を震わせた。涙は出なかった。胃の底が冷え、身体が震えた。
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