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「天空国の守護者」
天空国編

金の天使の思惑

 ←国主の贄 →金の天使の思惑(2)
キリスエールは温もりに頬を寄せ、横たえた身体もその温かさにすり寄せた。さらさらのシーツの感触に眠っていたんだと思う。
あったかい。
眠りと覚醒の狭間に漂いながら、頬に滑らかな肌を感じた。
肌……?
ぼんやりとキリスエールは目覚めない頭のまま瞳を開けた。金色の光が見える。うねるような金の流れ。朝日にきらきらと光る黄金色にキリスエールは目を細めた。
そして、長い金色の睫毛。通った鼻筋。紅い唇……。
「金の天使……きれい……」
呟く自分の声に目が覚める。その途端、キリスエールは自分の状況を認識した。
自室のベッドの中、抱きこまれるようにキリスエールはレイラースの腕の中にいた。しなやかな腕が首と腰に巻きついている。
緩やかに上下する胸を頬に感じた。
触れあう肌の感触からお互い着衣を身につけていないことを悟って、キリスエールの頬に朱が散った。
昨夜のことを思い出す。
レイラースの望みを叶えず、泣きながら眠ってしまったことも思い出した。
溜息が洩れる。
俺は守護者の贄だ。望みを叶えるのが使命……。それすら満足にできない。
「レイラース様……」
囁き、目線を上げると金の睫毛がふるると動いた。
「……キリスエール?」
瞼が上がって、赤と緑の瞳がぼんやりとキリスエールを見つめた。
「目が覚めたの?」
笑みを浮かべながら、レイラースが尋ねる。キリスエールは頷いた。
「おはようございます」
消え入りそうな声で挨拶をすると、レイラースは鮮やかに微笑った。
「おはよう。キリスエール」
笑顔が綺麗で眩しくて、キリスエールはどぎまぎと視線を逸らした。見つめていられない。頬が熱いから、きっと真っ赤になっているだろう。
「俺……」
呟くとぎゅっと抱きしめられた。
「いいね。こういうの。目が覚めたらキリスエールが腕の中にいて、その可愛い顔を一番に見られる」
嬉しそうな声にキリスエールはどうしていいかわからない。
「レイラース様」
掠れてしまった声にレイラースがキリスエールを覗き込んだ。
「あれから、俺……」
「大丈夫、何もしていないよ。抱き締めて眠っただけ」
「でも……レイラース様……服が……」
レイラースが何もしていないのはわかっている。そんな違和感は身体にない。だが、肌を合わせているこの状態が恥ずかしくて、キリスエールは困ったように呟いた。
「ああ」
納得したように、呟いて、レイラースはくすくすと笑う。
「裸だってこと?僕は寝る時はいつもこうだから、気にしないで」
それは無理だとキリスエールは思った。朝日の中でみるレイラースの肌は、白くなめらかで、目のやり場に困ってしまう。困ったように視線を落とす。
「キリスエールは僕の肌を見たことがなかったんだっけ」
「それは、いつも……」
「いつも何?」
キリスエールは紅くなって目を閉じた。いつも勝手に触って、キリスエールだけ気持ちよくして、レイラースは帰ってしまう。だが、そんなことは恥ずかしくて言えない。
「キリスエール?」
名を呼ばれても羞恥で目を開けられなかった。目を閉じたままじっとしていると唇に柔らかい感触を覚えた。
「んっ……」
キスされていると思った途端に舌がちろちろと唇を舐めた。
「……あっ……」
驚いて声を上げると舌が滑り込んできて、歯と舌を辿られた。ゆっくり優しく、口の中を舌で撫でられる。
いつもの激しいキスではなく、いたわるような甘い口づけ。
「おはようのキス」
唇を離すとレイラースは微笑んだ。キリスエールは顔を紅くして笑い返す。恥ずかしくて、甘くていたたまれなかった。
朝までレイラースがここにいたこともないし、こんな状況にも慣れていなくて、キリスエールはうろたえる。
「かわいい。キリスエール」
鼻先にキスを落として、レイラースは身を起こした。髪を手でかきあげる。
キリスエールもつられて、身体を起こした。レイラースの前に座る。握りしめていた掛け布が肩にかかって、キリスエールはそれをかき合わせた。
そんな仕草をふふふとレイラースは笑って見ている。レイラースは肌を晒していることを何も思っていないらしい。上半身を日の光にあてて、腰から下だけ、キリスエールを覆う布に隠れていた。
艶めかしくて、それでいて清冽で綺麗で、キリスエールはレイラースから目が離せない。天使とはこの人のためにある言葉だと思ってしまう。
「どうしたの。そんなに見つめて」
「え?」
じっとレイラースを見ていたらしい。慌ててキリスエールは下を向く。
「見惚れてた?」
笑いを含んだ声で訊かれて、困ったキリスエールは俯いたまま微かに頷いた。
「それなら嬉しいけど……ねえ、キリスエール」
目の前に腕を差し出されて、顎を掬われた。
恥ずかしいのに、顔を上げざるを得なくて、キリスエールはレイラースの緑と赤の瞳を見た。
「お前を傷つけたのは誰?」
優しくそれこそ、睦言のように、レイラースは囁いた。キリスエールは身動きが取れなくなる。背筋が冷えて、手先が痺れた。
キリスエールは微かに頭を横に振った。レイラースはキリスエールの顎を離す気はないらしい。
「言いたくない?」
大きな溜息のあと、ぽつりとレイラースはそう呟いて、キリスエールが何も言わないとみるや仕方ないなと告げた。
「わかった。訊かない。だけど、僕はキリスエールが大事。それはわかる?」
レイラースはキリスエールを大事にしてくれている。本当に嫌がることはしないし、いつも面白がられているけど、構ってもらうことも嫌ではなかった。それはキリスエールも感謝していた。
命令すればいいだけなのに、自分の意向もちゃんと訊いてくれる。今だって無理やり訊きだしたりしない。
瞬きで肯定の意を示すとレイラースがほっとしたように笑んだ。
「ここにもうお前を置いておきたくない。キリスエールだって、ここにいたらいろいろ考えてしまうだろう?」
つい瞳を伏せてしまった。レイラースの言うとおりだった。ここにいるとこのベッドで眠っていると、あの日のタミルを思い出して、凌辱された哀しみに胸が塞いでどうにもならない。何度、悲鳴を上げて目を覚ましただろう。
「だから……」
反対の腕が伸びて腰を攫われた。胸元に抱きこまれる。キリスエールは逆らわなかった。
「レイラース様……?」
何を言うつもりだろうとキリスエールは怯えた声で名を呼んだ。真剣なレイラースの色違いの瞳が自分を見ていた。
「僕のところにおいで」
甘く囁かれて、キリスエールは瞬いた。何を言われたか理解できない。
どこへ?ここ以外のどこへ行くっていうんだろう。
「わからない?僕の屋敷で一緒に暮らそうって言っているんだけど。そこなら、僕の許可なしに誰もやってこれないし、お前を勝手に誰かに蹂躙されることもない」
「レ、レイラース様……それって、天空?」
「そうだよ。大事にするし、奥の宮なら、キリスエールの好きな庭園も水辺もある」
どうかな?と目で訴え掛けられてもキリスエールには返事ができない。自分はトレジャの住人で、ここから出ることはできない。
「で、でも……」
無理だと言おうとすると顎を押さえていた指が離れて、唇を辿られた。
「ここの掟は?」
「守護者に逆らわないこと。その願いを叶えること……」
言ってからキリスエールははっとした。
「そう。僕の願いはお前と天空で暮らすこと。もう、贄にはさせたくない。一緒に来てくれるよね」
掟をそうとらえれば確かに可能かもしれない。だけど……。
キリスエールは混乱して、どうしていいかわからない。人間が天空に行ってもいいものなんだろうか。それより、俺がトレジャを出ることは本当に可能なんだろうか。
「キリスエールは僕が嫌い?」
それには首を横に振る。嫌いなわけがない。優しくてきれいな金の天使。
「なら、問題ない。持っていきたい物は何でも運んであげるし」
ぎゅっと抱き締められて、キリスエールは困惑のままレイラースの胸を手で押した。
「どうした?」
「アルタイルも……」
呟きが口をついた。レイラースが嬉しそうに微笑む。
「あの子か。もちろん。僕の屋敷の側には草原もあるから、たまにはそこまで遠出をしよう。普段は庭になっちゃうけど、それでも運動不足にはならないと思うよ」
いいかもしれない。ここにいたら、タミルを思い出して、あの悪夢に苛まれる。逃げなのかもしれないけど。それに……。
次にタミルがやって来た時にどうしていいかわからない。どういう顔して会えばいいのかも。
「一緒なら……アルタイルも……」
ぐるぐる回る思考についキリスエールは呟いていた。レイラースのところに行くという意味を深く捉えることもないまま。
「キリスエール」
ギュッと抱き締められた。レイラースの声には喜びが籠っている。
「好きだよ。キリスエール。ずっと側にいて」
抱き締めながら、レイラースが囁く。心からの言葉が心に染みた。自分を必要だと言葉を変えて伝えてくれる優しさが嬉しかった。
「レイラース様……」
キリスエールはレイラースを抱き締め返した。

レイラースは性急だった。
その日の午後にはキリスエールは天空国のレイラースの屋敷にいたのだから。
「ここがキリスエールの部屋」
キリスエールを誰にも見られたくないとの配慮だろうか。レイラースはキリスエールを抱えて飛んだらしい。
キリスエールにはわからない。瞳を閉じてと言われ、眩暈のような足もとが揺れるような感覚の後には、ここに立っていたから。
開け放たれた扉の向こうは、日の光に満ちていた。
広い。
扉の反対側は全面バルコニーになっているらしく、窓に掛けられたカーテンが揺れていた。
部屋の中は白を基調にした大理石の床に、毛足の長いラグが敷かれ、キリスエールにはベッドにもなってしまいそうなソファと黒曜石のテーブルが置かれていた。ソファの側には暖炉が切ってある。もちろん、夏である今は空っぽだが、冬にはここで火を焚くのだろう。
奥には更に扉が見えて、開け放たれたドアの向こうに天蓋のついたベッドが見えた。ベッドも今までつかっていたものの倍はあるだろう。キリスエールなら3人はゆうに寝られてしまいそうだ。
「書斎は廊下を隔てた向かいの部屋。寝室の奥には湯殿もあるから、入りたくなったら、言いつけて」
一人なのに部屋を3つもとキリスエールは目をまるくする。領主の息子だったが、領土も大きくなく、中央とは離れていたために、キリスエールの家はそう大きなほうではない。だから、こんなきらびやかで、広い部屋を見るのは初めてだ。
「この建物は基本的にキリスエールのものだから、好きに使っていいよ」
「建物……?」
上機嫌のレイラースを振り返って訊く。
「そう。ここは奥の離れなんだけど、ここはキリスエールの館だよ。僕は主殿に部屋があるけど、キリスエールが許してくれるなら、ここで一緒にいたい」
後ろから抱き締められて囁かれる。
キリスエールは肩越しにレイラースを見つめる。今朝から、レイラースは片時もキリスエールを離さない。
「キリスエールの世話をしてくれる人を集めている時間がなかったから、とりあえず、館の管理者と女官長だけ紹介しておこうか」
トレジャとはあまりにも違う生活にキリスエールの思考回路は止まりがちだ。
世話……?
「じぶんのことは自分でできます」
きっぱりそう言ったところで、戸口に頭を下げている2人の人影に気付く。
「おかえりなさいませ、レイラース様」
「ああ。よかった。いま呼びに行こうと思っていたところだ」
二人にレイラースが声を掛けると彼らは頭を上げた。
一人はひざ丈までのスカートに白いエプロン、頭に大きめのキャップをつけた女性で、もう一人は、黒ズボンに裾の長い上着、白のシャツにネクタイというきちんとした格好の男性だった。年齢はどちらも50代くらいだろうか。
レイラースの腕に抱かれているところを他人に見られて、首まで赤くして俯いたキリスエールは、腕から逃れようと身を捩った。だが、レイラースは手を離さない。
「キリスエール。こっちが、屋敷の管理をしているバファ。そっちが女官長のエルダだ」
「バファ、エルダ。キリスエールだ。僕の大切な人だからそのつもりで」
さらりととんでもないことを告げられて、キリスエールはますます俯いた。
「お初にお目にかかります。バファです。キリスエール様」
「エルダですわ。よろしくお願いします」
深々と頭を下げられて、レイラースに腰を抱かれながらもキリスエールはなんとか頭を下げた。
「キリスエールです。よろしくお願いします」
消え入りそうな声でそう挨拶するのが精いっぱいだった。
「エルダ、湯殿の用意と夕餉の仕度を」
上機嫌で微笑みながらレイラースはエルダに告げる。
「どこで召し上がりますか?」
「下のサロンにするかな」
思案顔で答えるレイラースに「かしこまりました」とエルダは頭を下げた。
「しばらくここに籠るから、誰も近寄らないように。誰か訪ねてきても今日は留守だって言っといて」
部屋に籠るときいて、キリスエールはレイラースを見上げる。
そんなキリスエールにレイラースは優しい笑みを向ける。日の光に金の髪がきらきらと光った。
眩しくて、キリスエールは目を細める。レイラースの笑みがまた深くなる。
バファとエルダが頭を下げ、部屋を辞した。
それを見送って、足音が遠ざかるのを確認してから、レイラースはキリスエールに歩くように促す。
誘われるまま足を進めるが、レイラースの向かう先が奥の寝室だと気付き足を止める。
「キリスエール」
上から見下ろされて、行こうと瞳で誘われて、キリスエールは困惑の光を瞳に灯した。
「ここには僕とキリスエールしかいない。恥ずかしいことはないし、ちゃんと説明するから。それより、抱えあげて欲しい?」
悪戯っぽく笑われて、キリスエールは更に瞳を揺らした。恥ずかしくて、頬が熱い。
腰に回ったレイラースの腕を振り払うようにキリスエールは寝室に向かって急ぎ足で進んだ。
ベッドまで来るとレイラースはそこにごろりと横になる。
「おいで」
たくさんの枕で上体を起こしながら、レイラースはキリスエールに手を差し伸べた。キリスエールはベッドの横で困った顔で立ちつくす。
これってそういうことだよな。
『次はもう途中でやめない』と言ったレイラースの言葉を思い出す。昨夜、レイラースの望みを叶えなかったから、今、それを望まれているんだろうか。こんなに明るい部屋の中で?
「困っているキリスエールも可愛いけど、とりあえず、ベッドに座るくらいいいだろう?」
くすりと微笑んでレイラースはそう提案する。
レイラースならいきなり襲いかかることもあるまいと、キリスエールはおずおずとベッドの端に腰を掛けた。
「この屋敷の中はどこへ行くのもキリスエールの自由だ。後で案内するけど、この館の裏に広がる草原も森も湖に行くのも構わない。この建物には図書室もあるから、雨が降ってもそんなに退屈することもないだろう」
まあ、ここはあまり雨は降らないけどね。
付け加えて、レイラースは微笑んだ。
「だけど、一人で屋敷の敷地からは出るな。ここにいても、誰もキリスエールの気配は見えない。人間が天空国にいることすら気付かないだろう」
いままでトレジャでそうだったように、レイラースがキリスエールの気配を遮断するために力を使ったんだろうとキリスエールは思う。
「だから、お前の気配を頼りに誰かがここに現れることもない。セインやタミルですらね」
タミルの名を耳にするや、キリスエールの瞳が微かに揺れた。そう、タミルから逃げるためにここに来たんだから。あの夜のことをキリスエールは必死に頭から締めだす。
「キリスエール……?」
瞳をぎゅっと瞑ったキリスエールにレイラースが怪訝そうな声を掛ける。
「な、なんでもないです。大丈夫……」
キリスエールは首をふるふると横に振った。
そんな強がりは見抜かれているだろう。だが、レイラースはなにも言わなかった。
腕を伸ばして、指先でそっと頬に触れた。
「だけどね、キリスエール。力はまだ閉じていないんだ」
「え?」
何を言われたか全くわからなくて、キリスエールはレイラースを見る。
「この屋敷とお前に、力の膜みたいのを施したけど、まだ、それは完成ではないんだ」
首を傾げたキリスエールの頬をレイラースの指の背が撫でる。
「まだ、おまえが僕のモノではないからね。何事も契約は同意がないと成立しない。キリスエールが僕のモノになったら、この力が閉じる。そうしたら、だれにもお前は感知されない」
驚きに目を見開くキリスエールに苦笑を浮かべて、レイラースはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「出来るだけ早い方がいい。今晩まで待てなかったのもそのせいだ。天空国に人間の気配を察知される前に、キリスエール。この力をお前を護る呪を閉じよう」
キリスエールはもはや瞬きも忘れたようにレイラースを見つめる。レイラースの瞳には切なげな光が揺れていた。
レイラースの手をとれば、ここでずっとレイラースと穏やかな日々を送ることができる。だが、それは、レイラースに抱かれることを意味する。
きっと拒んでもレイラースは何も言わないだろう。無理強いも嫌なこともしないと彼は昨夜、自分に告げたのだから。そして、護ると言ってくれた。
それに頷いたのは、あの部屋から出たのは自分なのだ。
「それに、今朝からキリスエールをトレジャと切り離すための手続きに頑張った僕にご褒美をくれても罰は当たらないと思わない?」
キリスエールは、レイラースの瞳を見つめながら、ベッドに乗り上げた。どうしていいのかもどうしたいのかもわからないが、レイラースの言う通り、彼が自分にしてくれたことに報いたい気持ちもあった。
手をシーツについて、そっとレイラースの側へと寄る。
レイラースは動かない。ながながとベッドにあおむけに横たわって、キリスエールを見ていた。
側まで近付いて、キリスエールはレイラースの色違いの瞳を覗き込んだ。赤と緑の宝石のような瞳。
「トレジャから贄が出てもいいんですか?」
顔を見合わせて尋ねるとレイラースが苦笑を浮かべた。
「大丈夫。贄を受け取ったのは守護者だから。今までも人間を引き取った守護者がいないわけではないんだ。印があれば、守護者の力がある程度強ければ、ここへ人間を置くことも可能なのだから」
睦言とはほど遠い言葉を交わしながらも、レイラースの瞳は揺るがずにキリスエールを見つめる。
「ただ、手続きはちょっと面倒だったな。トレジャの責任者とかいうのに会わなきゃいけなかったし」
「え?で、でも、レイラース様、ずっと俺と一緒に……」
横にずっといてくれたはずだとキリスエールは思う。ずっと腰を抱いて離してくれないレイラースに身の置き所もないくらいの羞恥を感じたのだから。
「お前以外の人間と直接会うなんて、ちょっとぞっとするからね。姿だけ飛ばしたんだ」
悪戯っぽく微笑まれて、レイラースが守護者の力を使ったんだということを知る。守護者は、人と同じに見えても守護者だ。似て異なるもの。
キリスエールの瞳に怯えか落胆の色を見たのか、レイラースが片眉を上げた。
「キリスエール。あるものは使うんだ。僕にとって力があるのはあたりまえだし、僕はお前を傷つけたり、嫌がることに力は使わない。誓ってもいい。お前に力がないなら、僕のを使えばいいんだ。お前の望むことは叶えるから」
腕を差し出された。
「さあ。時が移る。おいで、キリスエール」
差し出された手にそっと手を重ねた。
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