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「天空国の守護者」
天空国編

セインの休暇

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重い瞼をゆっくりと上げ、セインは何度か瞬きをした。明るい室内は、時折風が通るのか、さやさやと揺れるカーテンの衣擦れの音がする。
隣にも室内にも他者の気配はない。
「シスル……?」
身体をゆっくり起こす。怠さが身体のそこかしこに色濃く残るが、痛みはなかった。身体を見渡しても傷一つみあたらない。きちんと夜着を身につけている。まるで全てが夢であったかのように。
そうであったらどれだけいいかと目の上に手のひらを押し当てて、セインは溜息をついた。自分が身体を横たえていたベッドは、シスルのもので、ここはまだ国主の私室だ。あれから、何日が過ぎたのだろう。
それすらも定かでない。シスルは貪るだけセインの身体を貪って、満足したか飽きたかしたのだろう。それで、いまはここにいないのだ。
暗い部屋でどれだけ苛まれたか。思い出すだけで、身体が震えてくる。
セインはベッドから降りた。
床の冷たさが裸足の足に染みた。寝室を出て、シスルの居間へと向かう。
「いない……」
部屋は無人だった。日の光で満たされた室内は、暗い影もこの部屋の主の狂気も感じさせない。ぐるりと部屋を見回す。服がどこかにあるはずだ。寝室にはなかった。ここへ来た時に来ていた礼装。
ここにもない。
このまま夜着で帰ろうかと思う。だが、気が触れたと思われる。
国主の狂気は誰も知らない。強大な力に皆が怖れていることもあるが、国主は外では大量の猫を被っている。だれも、あの一見優しそうなシスルが、セインに拷問のような行為を強いているとは思ってもいまい。
闘いを勝利に導いた国主に心酔した将軍が、国主と恋を語っているくらいにしか思われていないだろう。
溜息が洩れる。シスルは全て見越したうえで、部屋から出さないつもりなのだ。
きらりと光ったものにセインの注意がむいた。居間のテーブルの上に無造作に置かれた透明な珠。日の光が差し込む居間でそれはセインを誘うようにきらきらと輝いていた。
セインはテーブルに歩み寄り、手を伸ばす。透明な珠のなかではゆらりと紫の炎が躍っていた。
「言伝の珠」
紫ということはシスルからの伝言だ。
聞きたくない。
それが、セインの偽ざる本心だった。だが、そういうわけにもいかない。これを無視して、彼の望みに反した場合、待っているのは昨夜以上の饗宴だ。
長い溜息を一つつくと、セインは珠に手をかざした。セインの手から青い揺らぎが生まれ、珠にあたると珠の表面が溶けて消えた。紫の炎だけがゆらゆらとテーブルの上で揺れる。
「おはよう。セイン。僕の休暇は終わっちゃったんで、執務に行ってくる。いい子でこの部屋にいて。勝手に帰るのは許さないよ。あと2日の君の休暇は全部、ぼくのだからね。愛しているよ」
くすくすと笑う声が続いた。
休暇があと2日。ここにすでに4日もいる計算になる。祝勝に湧く中、隊長クラスは順番に休暇を取っていた。セインが最後だ。国主の部屋に訪れた後から、休暇に入る予定だった。
キリスエール……。
休暇に入ったら顔を見に行くつもりだった。急に誰もこなくなってひどく心配しているだろう。落ち込んでいるかもしれない。
下級兵士も休暇の者が多いから、トレジャは多くのもので賑わっているだろう。外に出て、誰かに襲いかかられていないといいが。
逢いたい……キリスエール。
闘いの間もその存在を忘れたことはない。彼を護るために戦ったのだ。なのに……。
セインはぐっと奥歯を噛みしめた。
あと2日だ。
シスルが機嫌よく過ごせるように。
それだけを心に思う。
この苦行が終わったら、キリスエール、お前に逢いに行くから。
あの綺麗な笑顔を思い浮かべる。僕の心を奪った初めての人間。この間にもタミルやレイラースがキリスエールに逢っているかもしれないと思うとそれだけで、胸の奥に痛みが走った。
キリスエールは僕のものだと心のどこかが主張している。この腕に何度も抱き、自分の下で声を上げたキリスエールを思い出す。彼はセインを拒絶しなかった。だから、きっとキリスエールの心は少しは自分の上にあるのだと思う。
早く逢いたい。顔が見たい。そして、この腕に抱くんだ。
キリスエールが傷のついた自分の心を慰めてくれるだろう。あの甘やかな声で、僕の肌を撫でる手で、心についた傷はきれいに治ってしまう。
「傷か。そういえば、タミルの謹慎を解いていない」
連想ゲームのように心に浮かんできた言葉にセインはそっと笑った。タミルの傷の具合を、現在の様子を心配する前に、タミルがキリスエールに勝手に逢いにいけないことを喜ぶ自分がいる。自分の目の届かないところで、タミルがキリスエールの生気を吸ったりしていないことに安堵する。タミルの命よりキリスエールの安全を優先している自分……。
「キリスエールと引き換えにできるものはないってことか……」
呟いて、セインは自嘲した。友情を失うかもしれないと思ったが、自分が手離しているのだと、キリスエールが絡んだら冷静でいられない自分がおかしかった。
ぴりりとうなじの後ろの毛が逆立つ。この気配は……。
「シスル……」
この宮にシスルが戻ってきたことを察し、セインは物思いを心の奥底に沈める。この部屋にいる間はキリスエールへの想いは封印してしまわなければいけない。シスルに知られたら、自分がキリスエールに心囚われていることを知ったら、彼がキリスエールに何をするかわからない。
大きく息を吸い、吐く。思っていたら隠せない。シスルは心の底まで見通すから。だから、自分の意識の外へ思いを追いやる。そして、何重にもくるんでしまおう。別の感情で。
あと2日。それまでは、キリスエールを忘れる。
扉のノブが回るのを見ながら、セインは心からキリスエールを追いだした。

扉がゆっくり開き、シスルのたおやかな身体が部屋へと入ってきた。
「ただいま。セイン。いい子にしていた?」
まっすぐセインに歩み寄ったシスルは腕を伸ばすとセインをその中に閉じ込める。
「逢いたかった。政務などどうでもよくなるくらい。まったく、休暇がセインと完全に重なってないっておかしいよね」
ぐっと抱き締めて、シスルが耳元で囁いた。
「いつ目が覚めたの?一人で退屈じゃなかった?」
髪に唇をあてて、シスルはセインに問う。
「つい先ほど。退屈を感じている暇はありませんでしたよ」
セインはそっとシスルを抱き締め返した。
「食事にしようか。お腹すいただろう。朝も起きられなかったしね」
それは、シスルのせいだろうと思ってもセインは口には出さない。それでも、シスルには伝わってしまうだろうことはわかっていても、思わずにいられなかった。昨夜も途中から記憶がない。なのに、身体の奥底に刻まれたことを身体が憶えている。
「昼食?」
「そうだよ。午前の政務が終わったからね。抜けてきた。午後は特に、急ぎの仕事はないんだけど、いくつか書類の決裁があるからね。それだけ終わったら、すぐに戻ってくるよ」
シスルの言葉を聞きながら、まだ、真昼だということに気付いた。
「私の服は?」
身体を少し離し、同じ目線にある紫の瞳を見つめる。まだ、大丈夫。この色の瞳の時には惑わされることはない。この紫が濃く色を変えたら、また囚われる。
「いらないでしょう。服。ここにいる間は、夜着でいい」
「こういう格好で食事を摂ったりする習慣がないんです。だから、きちんと着替えたい」
逃げるのではないと暗に伝える。逃げても無駄なことはよくわかっている。この我儘な国主は自分の要求の通し方を良く知っているのだから。
「どうしようかな」
くすくすと笑って、シスルはセインのスミレ色の瞳を見つめた。
「本当は裸でいて欲しいところを夜着だけでもあげたんだけど」
「シスル」
声を荒らげると、また、くすりと笑われた。
「冗談だよ。そうだな。この部屋にいる間は、その堅苦しい言葉使いをやめてくれるなら、考えてもいい。おまえの服はすでに、セインの屋敷に返しちゃったから、僕がセインに似合いそうな服を貸してあげるよ」
部屋に服だけ返した……。
あまりの出来事にセインは呆然とする。屋敷の者もさぞ困惑しただろう。国主と休暇を過ごすにしたってあんまりな話だ。
「シスル……」
頭が痛くなって、セインはこめかみに指をあてる。その指とこめかみにシスルが唇を寄せて、キスをした。
「わかった。ここにあと2日はいるし、言葉使いも改めるから、服を」
瞳をセインは伏せた。勝てない闘いだ。従うしか道は残っていない。
「いいよ。そうやって近しくしてくれたら、僕だってそんなにセインに無体な事はしないよ。僕はセインが好きなんだから」
また、シスルは笑う。
「本当だったら、今もお昼ごはんより、セインが食べたいけど、それも我慢しているんだよ。わかってる?」
セインはシスルを抱き締めた。
「わかってる。だけど、お腹がすいた。昨日、果物を口にしたのが最後だ」
「そうだったね」
嬉しそうにセインの髪を撫でながら、シスルはまた微笑んだ。
「いいよ。一緒に食事にしよう。そのかわり、また寝かさないから。まだ、セインが足りないんだ」
物騒な言葉を投げて、シスルはセインを解放した。
「寝室に服を用意した。着替えておいで」
言葉に従って、寝室に戻る。確かにベッドの上に着替えが乗っていた。
夜着を脱いでそれを着た。襟元と袖口にレースがあしらわれた薄手のブラウスと黒のズボン。
あと2日。
これに耐えたら……。
ぐっとセインは唇を噛んだ。ドアの向こうを睨み、セインは足を踏み出した。
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