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「天空国の守護者」
天空国編

トレジャにて

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国主の私室から戻ってからもタミルは屋敷に籠ったままどこにも出なかった。あれから1週間、キリスエールのところに行けなくなって2週間が過ぎた。
セインは、国主への報告までと言ったような気がするが、謹慎を解くという命令をいまだに受けていない。
命令を遵守する気があったわけでもないが、キリスエールの前にどんな顔をして立てばいいかわからなくて、どう謝るべきかぐるぐると悩み、結局、今日まで何もできなかった。
戦勝に湧く現在、任務もあってなきがごとしだったし、身体の調子が悪いと誰もが思っているようで、どこからも苦情は来なかった。
私室の窓から庭を窓越しに眺めながら、タミルは拳で窓ガラスを叩いた。厚手のガラスが鈍い音を立てる。
「くそっ」
今すぐにでもキリスエールの元に飛んで行って謝りたい気持ちと、きっとキリスエールは俺の顔も見たくないだろうという予想が常に戦っていた。
激したキリスエールを前に平静でいられる自信もなくて、タミルは奥歯を噛みしめる。
愛しい、大切にしたいなのにどこかで壊したいと思っている自分がタミルは怖かった。キリスエールを傷つけたいのではない。そうではなくて、自分の腕の中で全てを明け渡すキリスエールを思う存分、貪りたいのだ。
自分の中にこんな欲望が沈んでいたとは、長く生きてきて知らなかったとタミルは思う。恋愛経験は誰よりも少ないだろう。女性に愛を囁くより、部下を相手に剣を振るっている方が好きなタミルだ。それこそ1夜の恋には困らなくても真剣に誰かを愛したことなど皆無かもしれない。
「キリスエール」
名を呼ぶと甘みと苦みが胸に満ちていたたまれない。イライラする。
逢いたい……。
もう笑ってくれなくても、声を聞きたい。この腕に抱きしめたい。
いつからこんなにもキリスエールが自分の心を占めていたんだろう。いままで、どうやって押し殺してきた欲望から目を逸らし続けられたんだろう。
キリスエールの嬉しそうに笑う顔が瞼の裏に閃く。タミルは苦しそうに眉を寄せた。痛む胸に息が詰まる。
「逢いたい……キリスエール」
窓にあてていた拳をぐっと握る。タミルはくるりと窓に背を向けた。
もう十分だ。
タミルは扉に向かって足を進める。
心は決まっていた。2週間悩み続けたことに終止符を打つ時が来たのだ。
二度とこの腕にキリスエールを抱くことはなくても、逢いたい。謝りたい。
愛しているんだと。だから、抱いたんだと告げよう。
キリスエールが許してくれるかどうかはわからないが、憎くてしたことでないことだけはわかってくれるだろう。
腕を伸ばして、部屋のノブを握った。ゆっくりと扉を開く。この扉を開き切ったら、飛ぶんだ。
トレジャへ……。


「キリスエール……?」
トレジャのキリスエールの部屋へ直接飛んだ。いつもキリスエールが座っている寝椅子の前に降りたち、タミルはぐるりと部屋を見渡した。部屋は窓も開いておらず、カーテンが引かれて真っ暗だった。誰の気配もない。
まさか。病気なのか?
あれから2週間だ。だが、あれきり寝込んでしまったのかもしれない。全く予想もしていなかった自分にタミルは腹が立った。心も身体も傷つけられて、キリスエールが病気になることを想定もできない自分に。
タミルは、つかつかと寝室へと入った。
できるだけ、気配と足音を押さえる。寝室も暗く静かだったからだ。
「キリスエール。眠っているのか?」
ベッドまで歩み寄って、そこが空な事に気付いた。
部屋にいないとなると湖だろうか。タミルは空間を移動する。
瞬きの間に湖の上空にでた。
日の光に輝く青い湖面は、時折吹く風にさざ波を立てる。色づいてきた木々の乾いた葉の音が湖面を渡る。
相変わらず、湖は静かだった。湖畔には人の気配がない。
空中に浮いたまま、下を見下ろし、タミルは焦りが心を占めるのを感じる。
落ちつけ。いらついたら、キリスエールに会った時に彼を怯えさせる。
腹の底まで息を吸いこみ、ゆっくりと吐く。それをタミルはくり返した。足もとの水は青々として、静謐さを保っている。
タミルは宙に浮いたまま瞳を閉じた。黒く鋭い光が瞼に閉ざされる。
感覚を自分からトレジャの隅々まで、薄く伸ばすように広げて行く。キリスエールの気配はわかりやすい。あれだけ目立つものはどこにいようと感知できるだろう。感応力が苦手なタミルでも。
感覚を伸ばす。外側へ、タミルを中心に同心円状に広げて行く。
だが、キリスエールの気配はどこにも見えない。こんなことは初めてだった。
かっとタミルは瞳を開いた。心には黒く渦巻く焦燥が広がる。
キリスエール、どこだ。どこにいる。
怒鳴るように声を発した。人の声でないことにすらタミルは気付いていない。
ひどく嫌な予感がした。このままキリスエールには会えなくなるような。もう、2度と謝る機会も失ってしまうような気がする。
「あっ」
知った気配にタミルは、飛んだ。キリスエールがよく一緒にいた人間の気配。考える間もなかった。引かれるようにその気配に向かう。
タミルは姿を現すや床に降り立った。
キリスエールの部屋とよく似たつくりの部屋の中にいた。日の光が窓から降り注ぎ、カーテンが風に揺れている。
「きゃっ」
目の前に急に現れた人影に怯えた悲鳴が聞こえた。タミルはまっすぐに部屋のソファに座った少年を見つめた。
相手はさらに怯えたように身体を震わせる。
「キリスエールの友達だろう」
タミルはそちらへ足を踏み出した。少年は後ろへ身体を逃がし、ソファの背もたれに阻まれて、身を縮めた。
「あ、あなたは……」
「ルイス。そうだ、そんな名前だ。そうだな」
タミルは目の前でルイスが怯えているのを察して、そう問うた。
「キ、キリスエールの……僕を消すの?」
震える声で、瞳を大きく見開いたルイスの呟きにタミルは片眉を上げた。
「何を言っている?俺がお前を消す?」
「だって、キリスエールは……。あなたを怒らせて、キリスエールは消えちゃったんでしょう」
ガタガタと震えて、声も掠れて小さい。それでも、瞳を離せずにルイスはタミルを見つめる。
「新しい子を探しているの?次は僕なの?キリスエールと友達だったから……?」
「だから、何を言っているんだ」
手を伸ばして、ルイスの腕を掴んだ。ルイスの身体が跳ね上がる。真っ白な顔で、タミルを見つめている。
「消さないで。僕が欲しいならいくらでもあげるから。だから……」
「おいっ」
何を言っているかまったくわからずにタミルは大きな声を出した。
「ひっ」
怯えたルイスの喉から息だけの悲鳴が漏れる。
タミルは自分がルイスを怯えさせていることに気づき、手を離した。その瞬間、目の前のルイスが消えた。
「隊長。ルイスをいじめるのはやめてもらえませんか」
ソファの後ろから声が聞こえて、タミルを真っすぐに睨んだ男がルイスを腕に抱いていた。
「お前は……第2小隊長……キリエか」
「名前を覚えていただいていたとは光栄です」
そう告げたキリエの声は、告げた言葉とは程遠い怒りの波動が含まれる。
「俺みたいな下っ端も記憶にあるんですね」
「あたりまえだ」
むっとして、タミルは答えを返す。自隊の隊長クラスの名前は憶えるだろう。
「隊長に逆らう気はありませんが、この子は俺のなんで、虐めないでほしいんですけどね」
「はあ?」
ただ、キリスエールのことを聞こうと思っただけなのに、どうして、俺がルイスを虐めていることになるんだろう。
「キリエ様」
キリエの胸に顔を伏せて、ルイスは涙の混じった声で名を呼んだ。キリエが助けてくれてほっとしたのだろう。
「ルイス。大丈夫だ」
キリエはルイスの腰をぐっと抱き締め、安心させるように優しい声で何度も大丈夫だと告げる。
「俺は、そこの少年にキリスエールを知らないかと訊きたかっただけだ。虐めてなどいない」
「これだけ怯えさせたら、立派に虐めていると思いますけどね」
髪を撫でて、ルイスを腕の中へ懐へとキリエは抱きこむ。
「キリスエールのことを聞いたらすぐに帰る。キリスエールはどこだ」
ルイスは首を横に振った。いやいやするように。
「キリスエールはいない。もう、2週間くらいになる」
震えているが先ほどよりはしっかりした声で、ルイスは話し始めた。
「ルイス……?」
「時々あるんだ。トレジャに来た贄が消えることが。大抵は部屋を移っただけなんだけど」
ルイスは顔を上げて、キリエを見た。キリエが優しく微笑み返す。それに勇気を得たのか、ルイスはタミルの方に視線を投げた。
「キリスエールはトレジャにいない。気配はまったく辿れない」
部屋を移ったんじゃないことを匂わすとルイスは瞳を伏せた。
「あなたのせいじゃないんですか。キリスエールのところに通ってきていたのはあなただけなんだから」
呟くようにそう言うと、ルイスはタミルを睨んだ。
「僕にも黙ってどこかへ行くような奴じゃないんだ。だから、あなたが……あなたが……消しちゃったんじゃないんですか?」
慌てたキリエがルイスの口を手で覆った。
「ばか。ルイス」
「ばかじゃないよ。キリスエールはある日、いなくなって、でも誰も騒がないんだ。世話人も誰もだ。まるで彼はいなかったかの様に、部屋は元通りになって今は誰も使っていない空き部屋になったんだ」
手を振り払うとルイスは恨めしげにキリエを見つめる。いままで堪えていたものが一気に溢れたようだ。
「故郷へ帰ったのか?」
「まさか。それなら、逃げたんなら、世話人が騒がないはずがない」
床に縫いつけられたように一歩も動かないタミルに警戒を少し解いたのか、それとも自分を抱き締めるキリエに力を貰ったのか、ルイスは先ほどとは打って変わってはっきりと発言をする。
「黒の守護者様。僕が訊きたいんです。キリスエールをどこにやったんです。返してください。彼を。彼に会いたい……」
タミルを睨んだまま、ルイスは涙を流した。キリスエールを返してともう一度呟いて。
この場にいたくなかった。キリスエールはトレジャにいない。この少年は俺がキリスエールをここから奪ったと思っている。
「わるかった。騒がせたな」
視線を床に落して、タミルはぼそりと呟く。
そして姿を消した。
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