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「天空国の守護者」
天空国編

タミルとセイン

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タミルはトレジャから一気に天空国の軍本部へと飛んだ。赤い絨毯が敷かれた広い廊下へ出た。この廊下の奥につながる部屋に用事のあるものは、今の時間、誰もいないのだろう。廊下は守護者の姿もないまま閑散としていた。
長い廊下をタミルは歩いて行く。毛足の長い絨毯が足音を消していた。
この先にあるのは、セインの執務室。トレジャにキリスエールがいないとなれば、考えられる行き先はただ一つだ。
あの日にセインがキリスエールを攫ったんだ。謹慎を命じたあの日に。
そう思ったから、ここへ飛んだ。
タミルは手を伸ばした。目の前のこげ茶色の大きなドアを思い切り開く。
「セインっ」
怒鳴ると執務室の扉の真正面にあるデスクについて書類の決裁をしていたセインが顔を上げた。休暇明けのはずだが、顔色が悪い。白いというより青い顔をして、物憂げにセインはタミルを見つめた。
「お前か。仕事中だ」
「そんなの見ればわかる」
部屋の中につかつかと入るなり、タミルは机に両手をついた。
ばんっ!
机の天板が大きな音をたて、部屋の空気を震わせた。
「キリスエールはどこだ」
低く怒りを含んだ声にセインは何をいっていると首を傾げた。
「キリスエールはどこだと訊いているんだ。セイン、お前が連れ去ったんだろう?」
怒りに震えるタミルの声にセインはだるそうに髪をかきあげた。腕を持ち上げるのすら億劫そうな動きだ。それがやけに色香を孕んでいて、タミルはますますいきり立った。キリスエールを匿っている証拠のように思えたからだ。
「タミル。僕はまだ、おまえの謹慎を解いた覚えはないけど」
「ふざけんなっ!!国主に会うまでって言ったろう。それを今日まで我慢したんだ。命令通り、傷も直した。いつでも前線に復帰できる。だが、そんなことより、キリスエールだ。どこへやったんだ」
怒りの波動をまきちらしながら、セインを睨みつけたタミルが怒鳴る。
「タミル。怒鳴らなくても聞こえる。うるさい」
冷たい声色で突き放されて、タミルは口をつぐんだ。タミルの双眸が細められ、睨む力が益々強くなる。だが、セインはそれを気怠そうに見返した。
「キリスエールがどうしたって?」
セインの声色は淡々としていて、そこに後ろめたさも罪悪感も伺えない。ただ、疲れた表情で、タミルを見つめている。
「トレジャにいない。どこにもだ。キリスエールがつきあっていた人間も彼がいきなりトレジャから、いなくなったと」
「いなくなった?」
セインはまっすぐにタミルを見つめた。言葉の意味を理解するなり、セインの表情が微かに曇った。だが、それだけだ。驚きも心配もしないことが、キリスエールの行方を知っている確証のような気がする。
「僕はここのところキリスエールに会っていない。戦いの前から」
だが、セインの口から出た言葉はまったく逆だった。
「嘘だ」
とっさにセインの言葉を否定する。
「嘘じゃない」
セインは大きく溜息をついた。
「今夜行こうと思っていた。だが、いないってどこへ?」
「知るか。だからおまえに訊きに来たんだろう。キリスエールを返せ。おまえが匿まったり隠したりする権利はないはずだ」
「タミル」
静かに自分に呼びかける声にタミルは口を閉じた。細めた瞳に睨みつけられて、タミルはぐっと奥歯を噛みしめた。セインの心の内をタミルが読めたことなど一度もない。だから、セインの言葉が嘘か真実かの区別もタミルにはつかなかった。
しかし、ここで怒鳴っていてもキリスエールの行方がはっきりしないことだけはわかった。
「もういい」
くるりと踵を返すとタミルは大股で部屋を横切った。キリスエールを自分から引き離すものは全て敵だとさえ思える。それは、親友のセインですら例外ではなく、それに、彼のあのたおやかな手が、キリスエールを抱き締めたと思うだけで、胸が焼けるように痛んだ。
セイン執務室の扉を苛立ちに任せて、後ろ手に叩きつけるように締め、タミルはキリスエールの気配を求めて、人間界へと姿を飛ばした。


大きな音をたてて、閉まった扉をセインは見つめた。
タミルの怒った顔など見飽きるぐらい見ているが、あんなに切羽詰まった表情は初めて見るかもしれない。
しかし……。
セインはペンを置き、肘をついて両手を組むと顎をその上に乗せた。
「キリスエールがトレジャにいない……?」
タミルのもたらした情報に驚きを隠せない。
タミルに告げたことは嘘ではない。キリスエールに逢いたいと思っていたが、いままで叶わずにいたのだ。
今朝まで、シスルはセインを好きに扱った。政務のあと部屋に戻ると片時も離さなかった。ベッドでも執拗に求められて、痛みと快楽に翻弄された。
今朝、起きた時には腕をあげるのさえつらかったのだ。それでも、休暇は終わった。疲れてどうにも怠い身体をおしてシスルから逃れるようにこの執務室へと赴いたのだ。
やっと一人になった。
仕事もしたくないほど疲れ切っていたが、まさか放り出すわけにもいかず、セインはこのデスクについて、溜っていた書類の決裁にいそしんでいた。
そこへ飛び込んできたキリスエールの不在の情報。
「どういうことだ」
呟きが誰もいない部屋に散る。セインは瞳を細めた。焦りに似た苛立ちが腹の底から湧いてくる。
キリスエールはあの部屋で自分を待っているだろうと思っていた。トレジャに送られた贄は一生あそこから出られないのだから。
苛立たしげにセインは立ちあがった。
今は執務中だ。キリスエールが不在かどうかは、夜に彼を訪ねればはっきりする。もしも、不在であってもどこに行ったか探し当てるのはそう難しくないだろう。彼の気配は、自分にとっては特別だったから。
そう心で思うのに、セインはいてもたってもいられない気がした。イライラする。疲れていてまとまらない思考もセインを苛立たせる。セインは顔に落ちてきた髪を右手でかきあげた。指の間を銀の髪がさらさらと擦り抜ける。その感覚にも苛立って、胸の底がざわめく。
目の前の扉が開いて、立ちあがっているセインを驚いた瞳で見つめている補佐官に気付いても、声すら掛けられなかった。
「セイン様。どうされました?」
デスクを回るように歩き、開いた扉の前に立ちつくした補佐官の脇をすり抜ける。
「ちょっと出てくる。後は頼む」
「え?ど、どこへ……セイン様」
まったく状況が呑み込めないであろう補佐官の声を背にしながら、セインは軍本部の廊下を歩く。セインの執務室の前の長い廊下を早足でセインは進んだ。赤い絨毯が敷いてある廊下をかなり歩いて、右に曲がった。
その途端にセインの姿は溶けて消えた。
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