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「天空国の守護者」
天空国編

発覚(1)

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心穏やかな日々。地面にしゃがみこんでいたキリスエールは立ちあがって、うんと身体を伸ばすと空を見上げた。青い色がどこまでも続いている。日差しはゆるやかだ。下界ではすでに葉が色づき始めているころだろう。
キリスエールは自分の足元の黒い土に視線を向けた。屋敷の前の一角を薬草の栽培用にもらったのだ。土を柔らかくし、森で採取してきた薬草を植えた。散歩で訪れる森には傷や病気に効く薬草が何種類も生えていた。いくらかは採って乾燥させ、いつでも使えるようにしたが、広い森のあちこちに生えている薬草をいちいち取りに行くのは大変だ。キリスエールは幾つかを根ごと抜いてきて、ここで栽培してみることにしたのだ。いくつかはすでに根付いていた。
レイラースはキリスエールがしたいことは何でもさせてくれた。この敷地から出ること以外ならなんでもだ。薬草を育てたいと言った時も、庭師を紹介してくれて、なんでも訊くといいと笑った。仕事の合間をぬって、時間ができるとレイラースは一緒にいてくれる。庭に寝椅子を持ち出して、そこに寝そべりながら、キリスエールが薬草の手入れをするのを見ていることもあれば、一緒に散歩にも行った。
ここは居心地がいい。レイラースは優しく、できるだけそばにも居てくれる。アルタイルもいるし、寂しくないはずだった。だが、時折感じるこの空虚さはなんだろう。
トレジャは嫌いだったけど、あそこにはルイスやほかにも何人か友人もいて、それなりに楽しかった。今も楽しいが、寂しい。
ルイスはさぞ心配しているだろう。手紙を書いたが、レイラースはまだ、渡せないという。キリスエールがここにいることは、誰にもわからないほうがいいのだと。
セインにすら知られていないのだから、まだそのままでとレイラースは言う。確かにただの人間がレイラースの屋敷で暮らしているという噂でも流れたら、レイラースに迷惑がかかるのはわかる。だけど、ルイスもセインも心配しているだろうと思うと心が痛い。
タミル様も急に俺が消えて、驚いているだろうし。
タミルを想うと心が震えた。だが、この感情は怒りではない。悲しみと痛みがのしかかってくる感じがする。自分がただの贄であることを知らしめられた。タミルにとってもセインやレイラースにとってもだ。
みんなの贄かただ一人の贄かの違いだけ。
今もレイラースに求められれば肌を合わせる。レイラースはそれはそれは大切にキリスエールを抱く。痛い思いも辛いこともされたことがない。甘く切ない快楽だけをくれた。こんなに大事にされているのに、レイラースのことは好きなのに、キリスエールは自分で自分の心がわからない。
誰かに恋をするとはどんな感情なんだろうか。ルイスはキリエのことを語るとき、とてもとても幸せそうだった。見ているこっちが恥ずかしくなるくらい。心が温かくなるくらい嬉しそうだった。
ルイスに会いたい。今の状況を話したらルイスは何というだろうか。レイラースを語るとき、俺もあんな表情をするんだろうか。
背伸びしたついでに空を見上げて、キリスエールはトレジャを思う。あんなに嫌だったのに、いざ離れると懐かしいなんてどうかしている。
不意に表の方から騒がしい声が聞こえた。キリスエールはレイラースの表屋敷には行ったことが無い。同じように、この私的な屋敷に来るのは持ち主のレイラースとキリスエールの世話をしてくれるバファとエルダ、それに数人の女官だけだ。その表屋敷の方が騒がしい。誰かが咎めるように叫ぶのが聞こえる。
キリスエールは視線を空から音のする方に向けた。
「だめです」
「……さま。そちらは……」
切れ切れに女官たちの悲鳴のような声が聞こえる。
なんだろう。そう思ってそちらに出しかけた足をキリスエールは空中で止めた。キリスエールから3メートルほど離れた空間が、ぐにゃりと歪んだ。
瞬きのあと、黒い髪と浅黒い肌の長身の人影が見えた。キリスエールの喉で声が凍った。
いきなり目の前に出現した人物に大きな瞳をこぼれんばかりにキリスエールは瞠った。
「どうして……」
「やっぱりここに……」
記憶と何も変わらない声がキリスエールの耳を打った。伸ばされた手を見た瞬間、キリスエールは身を翻した。そのまま、屋敷に向かって走り出す。
「待て。キリスエール」
焦ったような声にもキリスエールは振り返らない。怖かった。あの手に掴まれたら、また……。
「待ってくれ、キリスエール。逃げるな。話を……話をしたいだけだ」
剣を教えてくれた時と変わらぬ声で、タミルが叫ぶ。足音から追われていることが分かって、キリスエールは走る速度を上げた。今のタミルは正気だ。あの時とは違う。わかっていても足もとから上がってくる恐怖は消えない。
自由自在に空間を移動できるタミルを相手に走るなんて行為が無駄なのは百も承知だった。それでも、キリスエールは足を止められなかった。
「まてって」
伸ばされた腕がキリスエールの肌を掠めたと思った途端、キリスエールは思い切り腕を振ってそれを跳ねのけた。
勢いのまま身体を反転させて、タミルに向かいあい、足を止めた。いつでも走れるように腰を落とし、キリスエールは怖れが顔に出ないよう、タミルを睨みつける。
「……キリスエール……」
タミルも足を止め、キリスエールを見つめ返す。タミルの瞳に傷ついた光が揺れた。
「お願いだ。話をきいてくれ」
絞り出すような掠れた声にキリスエールは首を横に振った。
聞きたくなかった。タミルの話を聞いてしまったら、きっと許してしまう自分を知っているから。何度もやめてとさけんだのにやめてくれなかった。言葉一つなく、自分を物のように抱いたタミルを憎めばいいのに、そんな気持ちはキリスエールには無いのだ。
キリスエールは首を横に振り、踵を返そうとした。
その時、ざんっと空気が鳴った。タミルが後ろに飛び退る。
「レイラース様!」
「ほう。よく避けたな」
キリスエールとタミルの間に、いきなり現れたレイラースの槍が空を切る。
「レイラース。どういうことだ」
「それは僕がききたいね」
キリスエールを背でかばいながら、レイラースは冷たい言葉を投げた。
「ここは僕の私的な館だ。そこに許可なく侵入してくるとはどういう了見だ」
「俺は探していたキリスエールに会いに来ただけだ」
ぐっと身体の脇で拳を握り、タミルは鋭い視線でレイラースを睨んだ。
「キリスエールがなぜ、ここにいると?」
「お前だけだ。トレジャからキリスエールが消えたのに、探しているそぶりもない。お前もキリスエールに執着していたのに。そう考えたら答えは一つだろう。お前がキリスエールを攫ったんだ」
タミルの言葉にレイラースは壮絶な笑みを浮かべた。
ぎりりとタミルはレイラースを睨む。怒りに瞳の色が濃くなっていた。
「キリスエールと話をさせろ。俺は彼に話があっただけだ」
唸るように告げられた言葉に、びくりとキリスエールが身体を震わせた。
「キリスエール……?」
怯えた様子のキリスエールにレイラースは後ろに視線を投げた。キリスエールの瞳が揺れる。まぎれもない恐怖を感じとったのだろうレイラースが訝しげに瞳を細めた。
心を消すんだ。レイラース様に気づかれる。俺がタミル様を恐れていると知られてはいけない。
キリスエールはタミルから視線をはがそうと努力した。何事もなかったふりをしなければ……。
「キリスエール」
名を呼ばれて、レイラースへ視線を移す。震えそうになる足に力を入れる。それでも、まっすぐにレイラースを見つめていられない。膝が押さえても震えた。
レイラースはすっと双眸を細めた。
「なるほど。そういうこと……」
声音に感情を込めずにレイラースの唇が動いた。キリスエールは首を左右に振った。
「違う。違うんです」
「許さない」
低く呟くような声だった。
「お前が……タミル、お前がキリスエールを……」
レイラースの言葉にタミルが顔を歪める。後悔と痛みを伴った表情だ。レイラースは持っていた槍を構えるとタミルのいる場所を薙いだ。
タミルは後ろに飛び退る。
「レイラース。お前には関係ない。キリスエールに話に来たんだ」
「うるさい。許さない。僕のキリスエールを髪の毛一筋たりとも、傷つける者は、なんであろうと絶対に許さない」
後ろに下がりながら左右に避けるタミルに容赦なくレイラースの槍が振り下ろされる。
怖いくらいに張り詰めた空気を身にまとって、槍を振るうレイラースをキリスエールは声なく見つめた。
レイラースはタミルを睨みつける。タミルもその瞳を睨み返す。
「やめろ。レイラース。お前と争うつもりはない」
「お前になくても僕にはある。キリスエールは僕を選んだ。彼は僕のものだよ」
ただ振り下ろされる槍を避けていただけだったタミルの黒い瞳が眇められた。足を薙ぐように振り回された槍を上に飛んで避けたタミルは着地するなり抜刀した。
「ふざけんなっ。キリスエールは物じゃないんだぞ」
地を蹴るとタミルはレイラースに向かって走り出し、槍に剣を叩きつける。金属のぶつかる音が響いた。
「レイラース様っ!」
キリスエールは叫んだ。
「キリスエール。危ないから離れておいで」
槍でタミルの刃をいなすとレイラースは背後のキリスエールに声を掛ける。
「やめてください。レイラース様もタミル様も。なんでお二人が争わないといけないんですか」
呼びかけても二人が刃を収める様子はない。
止めなくちゃ。
そう思うがどうしていいかわからない。
二人は剣を槍を打ち合わせると後ろに飛んだ。タミルは一度距離を取ると腰を落とし、前に走る。その行く手をレイラースが槍で払った。だがそれを避けて、タミルはレイラースの懐に飛び込んだ。慌てて引いた槍の首にタミルの剣が当たって、鋭い音を響かせる。
槍と剣を交差させて、ぎりぎりと力で押してから、二人はまた後方へ飛び退る。距離が開いた。
距離を開けて、二人は睨みあう。その身体から立ち上る闘気と殺気は力のないキリスエールにも見えるほどだ。
「やめてください」
キリスエールの叫び声は対峙する二人には届かない。
驚きと恐怖で竦む足を何とか動かして、キリスエールは動き出す。離れる方ではなく二人の間に。
剣を構えて腰を落とすタミルの動作に、キリスエールは二人の間に飛び込むと両手をひろげた。
「キリスエールっ」
「危ない」
二人の声が聞こえるがキリスエールはギュッと目を瞑った。
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