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「天空国の守護者」
天空国編

決められない心

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明るい部屋だった。窓はすべて開け放たれ、白いレースのカーテンが風を孕んで揺れている。正方形の白と黒の大理石が交互に嵌めこまれた床、中央に置かれた食卓テーブルは広く、周りに椅子が8脚ほど置かれている。茶器が並べられた飾り棚、壁際に切られた暖炉の上には大きな花瓶が置かれて、大ぶりな花が甘い香りを放っていた。
テーブルの脇に立って、キリスエールは溜息をついた。
セインの館に来てから、1週間が過ぎた。
セインは優しい。夕食時にはかならず、キリスエールの部屋を訪れて、食事を共にする。月を愛でるための夜の散歩をしたこともある。そして、夜半にはベッドにいざなわれた。優しくされることが辛くなるなんて、キリスエールは思わなかった。睦言が一番心に痛いことも。身体を開かれることより、心を決められない自分が嫌だ。誰も選べない。でも、拒絶もできない。
諦めて受け入れてしまえばいい。自分は一夜の夢を売る男娼だと。大きな街にはそういうお店があって、お金を出して相手を買うんだと聞いた。お金の代わりに生活の糧を得ていると思えば、自分はそれとなんら変わらない。望まれたら抱かれる。それでいいじゃないかと。割り切ってしまえばいいんだ。そう思う端から、望みを聞かれて、睦言を囁かれ、自分がどうしていいかわからない。
キリスエールはまた溜息をついた。扉がノックされる音で、キリスエールは我に返った。
「どうぞ」
返事をすると扉が開く。
「おいでになりました。お通してもよろしいですか?」
セインの屋敷で働いている給仕係りが扉の前で恭しく頭を下げる。これにもキリスエールは慣れない。総じては天空国の人だ。軍属でない天空国の人は守護者ではないが、天の国に住む人は守護者と同等だと思ってきたキリスエールにとっては落ちつかないことこの上ない。かしずかれるたびにどう振る舞っていいかわからなくなる。それに、天空国の人は人間を嫌悪している。同盟を結んでいると思っているのは人間だけかもしれない。
「はい。お願いします」
丁寧に答えて、キリスエールも頭を下げた。相手がどんな顔をしているか見たくなかった。セインの客だからあからさまではないが、キリスエールを見つめる目は冷たい。その瞳を見ると自分が招かざる客だと思う。
「キリスエール」
懐かしい声がして、キリスエールは顔を上げた。その次の瞬間には抱き締められていた。
「逢いたかった」
「レイラース様……」
キリスエールは訪れた人の名を呼んだ。
「よく顔を見せて。少し痩せたんじゃないか?」
キリスエールの頬を両手で挟んで、レイラースはキリスエールを見つめた。
これもセインがしてくれた約束だ。キリスエールが望むなら、表屋敷でなら、誰と会ってもいいと。
謹慎がとけたレイラースがセインに何を言ったか知らないが、正式にレイラースから面会の申し込みがあって、キリスエールはそれに応じた。
「そんなことありません。レイラース様は……」
何を言っていいかわからなかった。最後に見せたレイラースの涙が頭をよぎる。
「逢いたかったんだ。本当に寂しかった」
腕に閉じ込めて、レイラースはキリスエールを抱きよせる。
「レイラース様……。お茶にしませんか?」
キリスエールはレイラースの腕の中で小さく震えながら、提案する。そっと窺うように部屋の隅へ視線を向ける。この部屋は2人きりではなかった。お茶の仕度のために何人も給仕の女性達が控えていて、キリスエールとレイラースを見ていた。
レイラースはキリスエールを見下ろした。震えているのはわかっているのだろう。怪訝そうな顔で、キリスエールを見て、それから部屋の壁際に控える給仕達ををぐるりと見渡した。
「気になるの、彼らが?」
こくんと頷くとレイラースが微笑った。
「そんなに震えないで。彼らは仕事でいるだけなんだから、気にしなくていい。僕たちが何をしても彼らは気にしないし、他言しないよ」
給仕達にも聞こえるようにレイラースは告げる。それは優しく聞こえて、その一方で、脅しているようにも聞こえた。ここでのことが外部に漏れたらそれはお前たちの咎だと。レイラースは優しいが、時に容赦がない。視線の先の給仕係りが肩を揺らしたのからキリスエールは視線を外す。
レイラースはキリスエールの耳に顔を近づける。耳の後ろに唇を押し当てられて、キリスエールはぴくんと身体を震わせた。頬が熱くなる。きっと顔が赤いのだろう。
「印は残っている。セインを受け入れたわけじゃないんだ」
愛おしそうに印を舌で辿られ、キリスエールは瞳を閉じた。身体の震えが止まらなかった。
「……レイラース様」
懇願するように名を呼ぶと、レイラースは身体を離した。それでも手は離してもらえない。
「おいで」
言われて、テーブルにつく。
「お茶にしようか」
にっこり微笑んで、レイラースが告げる。
周りで固まっていた給仕達が慌てて、お茶の用意を始めた。
「まったくセインも考えたね。キリスエールが望めば、僕たちに会わせるけど、表屋敷で、人前。これなら、手が出せないだろうってことだよね」
手の甲にキスを落とされ、キリスエールはレイラースの言葉に赤くなって、俯いた。
きれいなオレンジ色の紅茶がそれぞれの前に置かれ、さらに果物の盛り合わせや、クッキーなどが綺麗に配されたお皿がテーブルに並べられた。
レイラースはその一つを手に取った。
「キリスエール、口開けて」
「い、いいです。自分で食べられます」
レイラースが何をするかに気付いて、キリスエールはそれをやんわり拒絶した。
「だめ。口開けて」
頬杖ついて、嬉しそうに笑うレイラースにキリスエールが逆らえるはずもなく、おずおずと開けた口にレイラースはクッキーをほうりこんだ。
「おいしい?」
キリスエールは頷く。だが、恥かしくて顔が上げられない。レイラースは上機嫌にブドウの房を取りあげた。
「次はこれね」
周囲の給仕達の視線が痛い。レイラースをお客に招くと決めたとき、彼女達は目に見えて浮足立ち、嬉しそうにおしゃべりをしていた。きっとレイラースを近くで見られる機会があまりないからだろう。それなのに、当のレイラースは、キリスエールしかこの部屋にいないように振る舞っている。
「レ、レイラース様。もう……自分でできますから……」
いたたまれなくて、キリスエールは顔を俯けた。
「いいから。口開けて」
だが、レイラースは聞いてくれない。怒っているのかもしれない。あの時、レイラースの手を離してしまったから。視線を合わせると、レイラースは感情の読めない瞳で、キリスエールを見返した。
「ほら」
促されて、そっとキリスエールは口を開く。レイラースはブドウを一粒取るとそれをキリスエールの開いた口に押し込んだ。
ブドウは汁気が多くて甘かった。
「手についちゃった。これも舐めて」
ブドウを口に入れたのに離れない指を唇に押し付けられて、キリスエールは瞳をぎゅっと閉じた。
恥かしい。周りの視線は痛いほどだ。守護者が人間を構うなんてと思っているに違いない。
「キリスエール」
名を呼ばれると逆らえずに、キリスエールは舌を差し出して、レイラースの指を舐めた。ブドウの味がした。
ますます、周りからの視線が冷たくなって、キリスエールは身を縮めた。
「恥かしいの?人が見ているから?」
囁かれて、キリスエールは頷きを返す。
「でも、僕は気にしない」
下から瞳を除きこまれて、キリスエールは色違いの瞳を見つめた。いつ見ても1対の宝石のようだ。
「ほら、ここにブドウの汁が残ってる」
言うなり、顎を指で掬われて、あっと思う間もなく唇を重ねられていた。呆然としていると舌が唇を割って入ってくる。ぐっと腰を攫われて、レイラースの膝に乗せられた。口づけが深くなる。熱い舌に口腔内をかき回されて、キリスエールの息が上がった。
「んっ……やっ……」
まさかと思うのに、角度を変えて、口づけられて、息ができない。
舌を追われて、絡みつく舌も熱い。
「レイ……んっ……」
息が苦しくて、口づけが甘くて、どうにかなりそうだ。この口づけに抗えたことなんて一度もないんだから。
ゆっくりと唇を離して、レイラースはキリスエールを見つめた。キリスエールも引きこまれるようにその赤と緑の瞳を見つめ返す。
「好きだよ。キリスエール」
胸元に頭を抱きこまれて、キリスエールは大きく息をついた。こんなに人がいるのに、キスされて……まさか……。
ここでやめないんじゃないかとキリスエールが青くなる。
「それは無理だね。さすがに。キリスエールのかわいいところを見られちゃうから」
耳元で囁かれて、考えていることを読まれたことに気づく。キリスエールはレイラースの胸に手を置くとぐっと押した。
「違うよ。顔に書いてあった。ここでこれ以上されたらどうしようってね」
キリスエールはレイラースを仰ぎ見る。
「しないよ。したいけどね」
哀しそうな顔だった。キリスエールの胸がつきんと痛む。レイラースを選んでいたら、こんなことにはならなかった。選べないから、どうにもできないから、レイラースにこんな顔をさせてしまう。
「ごめんなさい」
「謝らないで。愛している。このままお前を攫ってしまいたい」
ぎゅっと抱きしめられて、キリスエールは泣きたくなった。
こんなに思われているのに、大事にしてもらったのに、どうして……。
「しばらく抱きしめていていい?」
ぽつんとレイラースが訊く。キリスエールは頷いた。レイラースが大事だった。胸の鼓動が高まる。それでも、心が痛くて、哀しくてキリスエールはそっとレイラースの胸に頬を寄せた。


「どうだった?」
自室の椅子の上でぼんやりしていたキリスエールは、声に瞳を上げる。入り口を案内も乞わずに入ってくるセインの姿が見えた。
白い裾を引きずるような衣装の上に、色とりどりの袖なしのこちらも裾の長い上着を羽織り、腰をサッシュで締めた格好だ。異国の服のようで、キリスエールにとったらひどく珍しい。銀の髪を流しっぱなしにしていて、銀の流れがその衣装を彩って、溜息が出るほどきれいだった。
答えないで見惚れていたら、セインが怪訝そうな顔をする。
「どうした?」
視線が自分の上から離れないのを怪訝に思ったか、セインが自分を見下ろした。
「ああ。この恰好が珍しいのか」
笑って、セインはキリスエールに近づくと横に腰を下ろした。
「これはパラドースの南の方の装束で、身体を締めないから楽なんだ」
手を取られて、布に触れさせられてびっくりする。布地は絹だ。たぶん、あちらの領主の衣装なんだろう。
「国主への貢物に入ってたのを貰ったんだ。お前が気に入ったのならよかった」
セインは微笑む。だが、その微笑みが暗い気がして、キリスエールは首を傾げた。
「好きな服なのに、嫌い……なんですか?」
キリスエールの言葉にセインは痛いような困ったような表情を返した。
「困ったな。キリスエールに心を読まれるとは思わなかった」
「読んでません。そんな力はないし」
慌てて否定して俯いた。
「顔色を読むってそう言うことだよ」
言われて、キリスエールは顔を上げてセインを見た。驚きに目を瞠って、それから、大きく頷く。よく、セインやレイラースが、顔に書いてある。心は読んでないと言ったのはこういうことなのかとキリスエールは初めて合点がいった。
「じゃあ、いつも俺の心は読んでない?」
「読まない」
セインは髪を右手でかきあげた。長い銀髪が指の間をさらさらと通り抜ける。その間も紫の瞳がじっとキリスエールを見ていた。
「約束しただろう。キリスエールの考えていることはすぐにわかる。もしもわからなくても心をのぞき見たりしない。ちゃんと訊くよ」
じっと見つめる瞳が不安そうに瞬く。
「で、どうだった?レイラースと会ったんだろう?」
それこそ聞く必要なんてないだろうとキリスエールは思う。報告がいっているはずだ、給仕達から。
キリスエールは俯く。
「言いたくないのか」
溜息とともに告げられて、キリスエールは唇を噛む。
「知っていらっしゃるでしょう?報告を受けているはずです」
「そうだな。レイラースが来て、お前をずっと抱きしめていたっていう報告なら受けている」
キリスエールは顔を上げた。頬が赤いかもしれない。
「そうですね」
なにがそうかもわからない。何を言っていいかわからなかった。
「レイラースのところに帰りたい?」
それにも答えようがなかった。レイラースのところに戻っても、セインがレイラースになるだけだ。何も変わらない。キリスエールが心を決めるまでは誰のもとにいようとも何も変わらないのだ。
「それも答えたくないんだな」
哀しそうなそれでいて疲れたような声に、キリスエールはセインを見た。
「そんな顔をするな。お前を困らせたいわけじゃない。ただ、自分で決めたことなのに辛いだけだ。レイラースがその肌に触れて、抱き締めたと考えるだけで、身の内から昏い感情が湧きあがってくる」
おなじことをレイラースにも言われた。誰にも触れさせたくない。自分だけのものになって欲しいと。
「レイラースがお前を攫わなかっただけでも良しとするしかないんだろうな」
攫いたいと言われた。でも、それをしたらキリスエールを傷つけるからできないと。
レイラースもセインもこんなにも自分を想ってくれる。好きだと愛しいと言ってくれる。でも、自分はどちらかに決められない。
セインの細い指がキリスエールの頬を撫でた。ぴくんとキリスエールは身体を震わせる。
「タミルにも会うのか?」
その言葉にキリスエールは大きな瞳を更に見開いた。身体がこわばったように動かない。
レイラースの館で見たタミルはキリスエールのよく知る男だった。乱暴した時の彼が正気で無かったことはキリスエールが一番よく知っている。だから、タミルにされたことはもう許していると思う。だが、身体が拒否する。怖い。
かたかたと震えだしたキリスエールをセインの両腕が囲んで、引き寄せられた。
「悪かった。もう言わない」
震えるキリスエールを抱き締めてセインがごめんと呟く。
キリスエールは瞳を閉じた。背を撫でられ、頭をセインの胸に押し付けられて、自分は弱いとキリスエールは思う。
運命に流されて、戸惑って、こうやって助けてもらってばかりいる。もっと強くならなければいけない。
タミルとも笑って話せるようになるくらい。恨んでも憎んでもいないのだから。
そして、いつか自分の意思で……。
キリスエールはセインに身体を預けながら、心の底から強さを望んだ。
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