スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←贄と従者 →紫の国主(1)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【贄と従者】へ
  • 【紫の国主(1)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「天空国の守護者」
天空国編

 ←贄と従者 →紫の国主(1)
足音も荒々しく、部屋の扉を壊す勢いで開ける。黒軍隊長の執務室には誰の影もなかった。
「信じられない」
カルアは部屋の中に誰もいないのを見て、つかつかと執務机に歩み寄って、両手のひら
で叩く。
乾いた大きな音が部屋の壁を震わせた。
扉が再び開く音がするが、カルアは振り向かずに肩で息をする。
「カルア……」
声からそれがルシードだとわかる。
「カルア」
咎める声音にカルアは再度机を右手で叩いた。
「うるさい。人間なんだ。相手は人間だ。信じられない」
怒鳴り散らしたいのを奥歯を噛みしめて耐えると唸るような声がでた。
「だが、隊長のプライベートだ。掟にも触れない。俺達が口を挟むことじゃない」
カルアはかっと血が頭に上って、振り返る。
「そんなことわかっている。だが、許せない。隊長が、タミル様が人間となんて考えたくない」
かなり前から確かに噂はあった。タミルがトレジャに通っていると。そして、つい2月ほど前から、セインの屋敷に人間の気配があるという噂も立ち始めていた。
そして、こちらは噂ではなくなっている。感応力の強いものなら、その気配は探れる。カルアも意識をそちらに向けて、探れば、確かに人間の気配が微かに感じられた。
「あくまで噂だろう。セイン様に会いに行っているかもしれないし」
苦笑しながらルシードは言葉を発した。だが、その顔を見れば、彼もそんなこと微塵も信じていないことがわかる。
「わかっているくせに。そういう気休めはやめてくれ」
セインの屋敷に休暇の度にタミルが訪れていることはいまや黒軍で知らないものはいない。それが人間のせいだという。セインが囲っている人間にタミルが傾倒しているという噂だ。
そして、天空国一の伊達男だと名高いレイラースまでもが、その人間を構っているという。
「だが、タミル様が万が一、人間と付き合っていたとして、何か問題があるのか?」
落ちついているルシードにカルアは苛々した気持ちを抱く。思い切り睨みつけると軽く肩を竦められて、ますます腹が立った。
「問題ありだろう。人間だぞ。タミル様も人間を守ることに疑問を持っている守護者の一人だ。嫌っていると言ってもいいくらいだったのに」
「カルア」
黙れと言外に匂わせたルシードの声にカルアは口を閉ざす。守護者はパラドースの人間を守るためにいる。個人的な感情がどうであれ、それは変わらない。こんな言葉が誰かの耳に入ればただでは済まない。
カルアは手のひらを握りこむ。わかっていた。だが、感情は納得しない。
人間なんていなくなってしまえばいい。天空国がパラドースを守る意義なんてとっくの昔に形骸化しているというのに。
ルシードが溜息をつく。
「カルア。一つ聞くが、相手が人間でなくて、天空国のものなら、お前は怒らなかったのか?」
タミルには長いこと相手がいない。付き合ったと周りのものが認識した相手がいたかどうかも疑わしい。
恋にも女にも興味がないのだと思っていた。
タミルには戦いと剣が似合う。
天空国の女性と熱愛していると聞かされても穏やかでいられたかカルアには自信がない。だが、それでもここまでの怒りは感じないだろう。
ひどく裏切られた気分だった。
「同士だと思っていたんだ。タミル様は俺の憧れだったから……」
「それはみんなそうだ。黒軍の隊員はみんなタミル様びいきだからな」
近寄ってきたルシードがカルアの肩に手を掛けた。
「俺たちの使命は天空国をパラドースを守ることだ。そのための守護者だし、黒軍もその一つだ。相手がクアールだというならいざしらず、人間なら問題ない。俺達が口を挟むことじゃない」
「わかっている。それでも、隊の士気にかかわる」
それは本当だった。隊員の中にも人間を低く見て、バカにしている者も嫌悪している者も多くいる。
「それでもだ。それを食い止めるのが俺たちの仕事だ。お前までがそんなでどうする」
「わかっている。でも、納得はできない」
ルシードの手を払って、カルアは下からルシードを睨みつけた。
ルシードは大きな溜息をついて、肩をすくめた。どうしようもないなと言われている気がした。
カルアは顔を俯ける。呆れるルシードの顔を見ていたくなかった。
どうしてこんなことに。タミルが人間に懸想する日が来るなんて。
「その人間がいなくなったら、タミル様は目を覚ますかな」
ぽつりとこぼした言葉がすっと胸に落ちて消えた。
「え?」
「なんでもない」
聞こえなかったらしいルシードの問いを無視して、カルアは口の端を上げた。
とてもいい考えの気がした。

「聞いたか?アズール」
本部を歩いていたフレミールは外の回廊で藍軍隊長アズールを見つけるなり挨拶もそっちのけでそちらに足を速めた。
「何を?」
ゆっくりと振り返ったアズールは、怪訝そうな顔をした。落ちついたアズールはどんな時も変わらない。
「噂だよ。噂」
真っ赤な髪を赤銅のバンドで止めたフレミールは、近寄ってアズールを見上げるとにやりと笑った。
「噂?」
「そう、噂。人間がいるんだってさ、セイン将軍の屋敷に」
フレミールの言葉にアズールは表情一つ変えない。だからどうしたと言わんばかりの態度にフレミールは微かに笑った。
「そこに、レイラースとタミルまで通っているらしいぜ。2隊長と将軍まで手玉に取る人間ってすごくないか」
どんな美人だろうな。と付け加えてもアズールは眉を少し寄せただけだ。この偉丈夫な男は何があっても驚いたりしない。あのクアールとの北の戦闘の時もどっしりと構えて、どれだけ心強かったかをフレミールは思い出した。
だが、平時はこの態度が面白くないから、不思議なものだ。驚かしたくて、きっと噂になんか疎いだろうと思って声を掛けたのに、アズールにはどうでもいいことのようだ。
「その噂、どこまで広がっているんだ?」
「さあね。だけど、うちの隊でもそこここで噂している奴らがいるから、知らない奴はいないんじゃないの」
フレミールの軽口にアズールは胸の前で腕を組んだ。どうみても面白がっているように見えないアズールにフレミールは笑みを消す。
「何?面白くない?タミルもだぜ?」
レイラースどころかあの堅物のタミルまでがとフレミールは楽しんでいたのに、アズールの態度に不安を覚える。
「相手は人間と言ったろう?おまえは何とも思っていないのか?」
「だから、何が?俺は楽しそうだと思ったけど、あんたは違うんだろう?」
アズールはゆっくりうなずいた。重々しい態度のアズールにフレミールはますます不安になる。
「おまえはいい奴だ。人間に対する偏見がないんだろう。だが、守護者全部がそうじゃない。人間を守ることに疑問を抱いている者も、嫌悪している者もいる。特に、黒軍と黄軍は顕著だ。今まで、隊長がそういう態度だったからな」
アズールの低く重厚な声を聞いてフレミールははっとする。確かにフレミールは人間に偏見はない。戦い以外はどうでもいいとさえいえる。自分の仕事は闘うことで、クアールを撃退することだ。天空国とか人間界とかそんなことは関係ない。戦って勝利する。それだけでいいのだ。だが、人間を毛嫌いしている守護者は多い。自分が命を掛けるほどの価値を見いだせないと思っている奴らも大勢いる。創国主が何を思ったか知らないが、大昔の契約に縛られるなんてバカバカしいと思っている。
「あんたは、アズール?」
ふと気になって、フレミールは尋ねた。見上げた先の瞳に視線を合わせる。アズールもまっすぐにフレミールを見た。
「俺の仕事は闘うことだ。それ以上でも以下でもない」
「あんたらしい。だが、それは俺も同じ」
アズールはふっと笑った。険しい顔が優しくなって、ただでさえ細い目がさらに細くなる。フレミールはアズールのこの顔が好きだった。普段は無表情の男が時折見せる柔らかい顔。
見惚れていたら、アズールが呟いた。
「厄介だな。何事もなければいいが」
フレミールはセインの屋敷の方を振り仰いだ。強い風が回廊を吹き抜けた。フレミールの赤い前髪が風に煽られる。
クアールとの戦いに大勝したというのに、国の内のごたごたはごめんだ。新たな火種を感じて、フレミールはそっと背を震わせた。
関連記事


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ 3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
総もくじ 3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
総もくじ 3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【贄と従者】へ
  • 【紫の国主(1)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【贄と従者】へ
  • 【紫の国主(1)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。