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「天空国の守護者」
天空国編

紫の国主(1)

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ベッドの枕をぽんと叩いて、定位置に置いた。キリスエールは満足げに仕上がりを確認する。部屋の掃除もベッドメイキングも自分のことは自分でしたいとのキリスエールの申し出をセインは何も言わずに許した。
それだけじゃない。セインの屋敷の庭に出るのも自由になった。この屋敷の敷地からでなければ、好きにしていていいとセインは許可したのだ。
タミルと和解して、はや2か月。レイラースもタミルも休みの度に飽きもせず、ここに通ってくる。あれ以来、セインはキリスエールを閉じ込めるのをやめたらしい。そんなことをしても無駄だと思ったのかもしれない。
まるで、トレジャにいた時のような日々が続いていた。
タミルは剣の稽古を付けに来る。キリスエールには基本的に指一本触れない。剣を合わせ、技を教えるだけだ。キリスエールも顔を合わせるのは平気になったが、あまりに近くにタミルがくると心臓が跳ね上がる。怖いのか居心地が悪いのかよくわからない。ただ、鼓動が早くなって、いたたまれない気がする。だが、タミルの剣さばきは相変わらず見事で、見ているだけでも勉強になった。教え方も的確で、キリスエールは自分の剣の腕が上がった気さえした。
レイラースはキリスエールを遠乗りや散歩に誘った。遠出をすると『誰からも見えないから大丈夫』と囁いて木陰に誘われ、それはそれは大切に抱かれた。外でという行為に全く慣れずに、毎度拒むのだが、キリスエールを腕に抱くレイラースは幸せそうで、キリスエールは結局、強くは言えずに、レイラースの好きにさせていた。
セインも変わらない。ふらりと夜にやってきて、いろいろな話をし、キリスエールの寝台で眠る。セインの体温を感じて眠ることがキリスエールにとって、当たり前になってしまっていた。
だが、3人が一緒に来ることはない。示し合せたようにみな、単体でやってくる。
そして――だれも自分を選べと言わなくなった。
何が変わったわけでもない。だが、キリスエールの望みは叶った形になっている。
トレジャにいたときのように、3人の守護者の訪れを待つ日々。他の守護者の影におびえなくていいのもキリスエールにはありがたい。
今日はだれの訪れも予定されていなかった。
部屋を片付けたら、アルタイルと出かけようかとキリスエールは考える。
今日の様に誰の訪れもない一人の時は大抵好きに過ごしていた。本を読んだり、アルタイルと森の奥の滝を見に出かけたり、ひとりで剣の練習に励んだり。
薬草の栽培もここでまた始めたいとキリスエールは思っていた。だが、いくら天空国が暖かいといっても冬の間に畑をおこすのは無理だ。春を待つつもりだった。
片づけた部屋をざっと見渡して、キリスエールは満足げに微笑む。あまり散らかっておらず、思ったより早めに片づけは終わった。
着替えのために、奥の部屋へ行こうと足を向けた。その足を唐突に止める。5歩ほど先の空間が闇色に染まった。
「何?」
黒い渦がぐにゃりと歪み、まるでゴムを伸ばすように真ん中を白い手が押し広げ、ほっそりとした人影が現れた。
キリスエールと瞳があうとにっこりと微笑まれる。キリスエールは目の前の光景に身体が動かない。
「ほんとにいた」
天使のようなとは彼のためにある言葉だろうとキリスエールは目の前に現れた人を見て思った。肩までのスミレ色の髪、濃紫の瞳、肌は白く滑らかだ。小さい顔もその中のパーツも完璧な配置をもっていた。
「まあ、気配はあったからね。いるのはわかっていたけど。ふうん。セインの中にあったのと同じ光だ」
「あ……あの……」
目の前に現れて、キリスエールを上から下までじっくりと眺める相手にキリスエールは困ったように、声をかける。
「レイラースとタミルまで夢中だって聞いたから、どんなかと思ったけど。確かに人間にしては珍しい。でも、それだけっぽいけどな」
さっくりとキリスエールの言葉は無視された。困ったようにキリスエールは瞬く。知らない守護者だ。本当だったら、逃げなければいけないのに、キリスエールの思考にそんな言葉は浮かばない。それくらい目の前の人物は、危険性も感じなければ、ひょうひょうとして掴みどころがなかった。
「あなた……だれ?」
名を問うだけで精一杯だ。
「さあね」
口端を意地悪げに上げて、微笑まれる。そんな顔でも恐怖は感じない。うっとりするくらい無垢できれいだ。
「おっと。時間がない。お前の質問にも後でゆっくり答えてあげるから、僕と一緒においで」
紫の守護者は優雅に右手を差し出した。あまりに優雅な仕草にその手をとって跪いてしまいそうになるのをキリスエールはぐっと堪える。
「一緒にって……」
半歩後ろに下がりながら、キリスエールは問う。紫の守護者はぐっとキリスエールに近づいて、その榛色(はしばみいろ)の瞳を覗き込んだ。濃紫の瞳がキリスエールの瞳に映る。
きれいな宝石の様な瞳だとキリスエールは一瞬、見惚れた。キリスエールを構う3人もタイプが違うがみなきれいな顔立ちをしているが、目の前の紫の守護者も溜息が出るくらいきれいだとキリスエールは感心した。
「うーん。褒めてくれるのは嬉しいけど、そんな場合じゃないんだよね。もう時間がない。この手を取らないと5刻後には君の命はないよ」
物騒な内容のわりに緊迫感のない声にキリスエールは意味を掴めずに、呆然とする。
「お、お待ちくださいっ」
「そちらは、主の私館です」
突然、部屋の外の廊下が慌ただしくなり、廊下を乱暴に踏む靴音が聞こえてきた。キリスエールは扉の方を振り返る。
「おやめ下さいっ」
それを押しとどめる警備の人の叫ぶ声もした。
「ほら、どうする?君に何かあるとこの館の主が困ったことになると思うけど」
声を掛けられて、目の前に立つ紫の守護者へと視線を戻す。何事もなかったかのように紫の守護者はそこに優雅に佇んでいた。
廊下はさらに物音が慌ただしく響く。あといくばくもなく、あの扉が開かれるだろう。
そうしたら……セインに迷惑がかかる?
そんなことにはさせられない。彼らを困らせるのはキリスエールの本意ではない。
何度か扉と紫の守護者の間で視線を彷徨わせていたキリスエールに、左手を闇色の渦に絡めたまま、紫の守護者が右手を差し出す。
廊下を来る足音に金属の擦れる音が混ざる。鎧の音かそれとも、剣帯が揺れてたてる音か。
キリスエールは今度こそためらいもなく、その右手を取った。ぐっと腕を引かれ、紫の守護者と闇色の渦に身を躍らせる。くらりと目が回り、自室の景色が消えるとともに、扉が乱暴に開く音を確かに聞いた気がした。


ぱちぱちと何度も瞳を瞬いた。豪華な天使の図柄の書かれた天井が視界に入る。見慣れない風景に、ゆっくり身体を起こすと頭がくらりと揺れる。慌てて額を右手で押さえた。
ぱさりと膝に落ちた冷たいものにキリスエールは瞑っていた瞳を開けた。濡らした手巾が膝に落ちている。みれば、ソファに寝かされているようだった。
ゆっくり頭を上げて、部屋を見渡すがまったく見覚えがない。大きなテーブルと椅子が奥の暖炉の脇にしつらえてあり、自分が身体を横たえていたソファはそれとは反対の壁際に並んでいるようだ。扉が2つ。ソファのすぐわきと暖炉と直角な壁に見えた。
テーブルは窓にも面していて、大きな窓でカーテンが揺れている。
キリスエールはソファから足を下ろした。紫の守護者はどこへ行ったんだろう。広い部屋を見渡しても人影は見えない。
だが、自分をここに寝かせ、濡れた手巾を額に置いてくれたのは、彼だろう。外だろうか。
足に力を込めてゆっくりと立ちあがるとまだふらつく身体をなんとか運んで、窓まで移動する。窓の外はバルコニーになっていて、緑の庭がはるか向こうまで広がっているのが見えた。上層階らしく、庭には下りられない。
バルコニーにも庭にも人影はなかった。
「どこへ行ったんだろう?」
自分のいるところもわからずに、キリスエールは不安を覚える。あの時は、セインに迷惑がかかるという彼の言葉をあっさり信じてついてきてしまったが、急に姿を消したら、セインが心配する。どうみてもここはセインの屋敷ではないから。
かちゃっと軽い音がして、キリスエールは音の方を振り返った。ソファの脇の扉が開き、白い裾を引きずるような衣装の上に、青地に金糸の縫いとりのある袖なしのこちらも裾の長い上着を羽織り、腰をサッシュで締めた格好の紫の守護者が現れる。どこかで見たことにある衣装だとキリスエールは記憶を辿る。
「ああ。目が覚めたんだね。空間移動に免疫がないとは知らなかった」
つかつかとキリスエールの側に寄り、上から見下ろされた。
「あ。あの……」
「名前は?」
何かを言う前に名を尋ねられた。確かにまだ挨拶もしていなかった。なんだかわからないままここへ連れて来られただけで。
「キリスエール……です」
「ふうん。うわさ通りだ。3人の玩具なんだ」
何を言われたかわからずにキリスエールはきょとんと相手の紫の瞳を見返した。
「印が3つも付いている」
驚いた瞳で相手をキリスエールは見た。彼と自分の距離は、2歩ほど離れている。印を見られたわけでもないのに、3つの印をどうやって感知したんだろう。
「なんで……」
「わかるよ。視えるからね。驚かなくていいし、怯える必要もない」
「あなたは……誰?」
「聞いていない?セインから。紫の意味を」
首を横に振りかけて、キリスエールは唐突に思い出した。紫の守護者の衣装がセインが着ていたパラドースの南の地方の衣装とそっくりなことを。
はっとしたキリスエールはその場であわてて膝をついて頭を垂れた。
あの時セインは告げたはずだ。『国主への貢物をもらった』って。
「国主……様……」
深々と頭を下げて、キリスエールは呟いた。
「そう。あたり。僕は天空国の国主だ。でも、かしこまらなくていい。招いたのは僕だしね。どうせ、ここにいてもらうことになるし」
国主の言葉にキリスエールは顔を上げる。
「どういう意味です。ここにいることになるって」
驚いたキリスエールに満足したのか、国主は微笑んだ。
「言ったろう。あそこにいると死ぬことになるって。おまえのことが国で噂になっているんだよね。お前を玩具にしている3人はシンパが多くて、もめごとの種は困るんだ」
困ると言いながら、国主は面白そうに笑っている。口調もどうでもよさそうで、楽しそうだ。
「もめごと?」
「自覚がないんだ?なんで一人にしない?人間なのに、守護者の隊長を手玉にとるんだからやるよね」
キリスエールは息を飲んだ。
「人間にしたら変わっているとは思うよ。だけど何がそんなによかったのかな。セインは」
2歩の距離を一気に詰めて、国主はキリスエールの顎を指で掬った。そのまま立つように促される。命じられるがままキリスエールは立ちあがった。
「試してみようか?」
紫の瞳がぐっと近づいて、キリスエールは身体を固くした。
紫の瞳にのぞきこまれる。吸い込まれそうにきれいな瞳は面白そうに瞬いていた。
さあ、どうすると瞳が問う。
「た……試すって……」
足が下がるのを腰に手をまわされて止められた。さらに顔を近づけてくる国主の瞳が視界いっぱいになった。
見つめ返す以外できずに、キリスエールは息をつめて国主を困惑の瞳で見つめ返した。
「ふうん。何も変わらない。僕の力がきかないのかな」
不思議そうに尋ねられてもキリスエールに答えがあるはずもない。
「じゃあ。これならどうかな」
呟きが聞こえたと同時に唇を唇でふさがれた。腰にまわされた手に力が入り、身体が密着して、口付けが深くなる。
「……んっ……」
苦しくて鼻から息を抜くと甘い声が出た。国主はキリスエールの舌を舌で追い、舌先でなめる。
悪戯されているようなキスだった。熱はなにも感じない。ただ、キリスエールの反応を窺うだけだ。喉の奥のほうまで舌を差し込まれて、苦しくてキリスエールは目に生理的な涙を浮かべた。裏顎をなでられ、歯列をたどられる。
さすがに息が上がって、背筋がぞくぞくと疼いた。嬲られるような口づけにだんだん頭の芯がしびれてくる。
長い口づけを国主はゆっくりと解く。あふれた唾液が口の端からつっと伝う。
キリスエールは大きく吐息をはくと強張っていた身体の力を抜いた。
「何も感じない?」
国主は軽く首をかしげて、キリスエールを見た。
頬が熱い。たぶん赤いだろう。感じたかと訊かれれば、感じたと答えるだろうとキリスエールは思った。
「人間だからかな」
ふふふと国主は笑った。興味なんてさしてなかっただろうに、急に面白そうなおもちゃを見つけた顔になった国主をキリスエールは困ったように見つめた。
「壊しちゃうかもしれないけど、面白そうだ」
相変わらず、キリスエールにはよくわからない言葉をつぶやいて、国主はキリスエールを抱えあげた。
「こ、国主様……」
おろおろと声をあげたキリスエールの言葉はまた無視される。肩に荷物のように抱えあげて、さっき国主が出てきた扉に向かって歩き出した。
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