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「天空国の守護者」
天空国編

紫の国主(3)

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微かに身じろいで、キリスエールは瞬いた。覚醒時の感覚にまだ、眠っていたいと思う。部屋の中は薄暗く、眠ってもおかしくない時間のように思えた。ベッドは柔らかく、掛布は温かくて、キリスエールをまどろみへと誘う。
ああ。でもそろそろセイン様が帰ってくる……。
起きなくちゃ。
キリスエールは眠りへの誘いを振り払うように瞳を開いた。寝がえりをうって、窓を見ると分厚いカーテン越しに夕日の残光がうかがえた。
まだ、夕方?
ゆっくりと身体を起こす。ベッドの回りを取り囲む何重にも取り囲んだ薄い布が見えた。その向こうに透けて見える部屋の様子にも見覚えはない。
ここどこだっけ?
思った瞬間に眠りに落ちる前のことを鮮明に思い出し、キリスエールは自分で自分の身体を抱き締めた。服は着ていた。柔らかい布の薄い寝巻のようなものを身につけている。身もきれいに清められているようだ。
あの人がしたのだろうか……?
そう思うものの、傍らに当の紫の国主はいない。抱くだけ抱いたら出て行ったのだろう。
キリスエールは大きな溜息を一つ吐いた。
男娼と変わりが無い。いやそれ以下かも。誰にでも身体を開いて、受け入れる。国主は快楽をくれると言ったが、その通りだった。最後は泣いていたかもしれない。あの人に縋りついて、あまりの官能と自分への嫌悪の狭間でおかしくなりそうだった。
再度溜息をつくとベッドの足もとの大きな扉が突然開いた。
「あっと。起きたんだね。間に合わなかったか」
ベッドに起き上がったキリスエールを見ると足を一瞬だけとめた国主は、そのままベッドへと歩み寄る。左手でベッドの回り覆う紗を払うと布がさっとベッドの足もと側へと畳まれる。
「よく眠っていたから、食事の手配をと思ったんだけど、もう少し待っていればよかったな」
何を言われているかわからず、驚いたように国主を見つめているとくすりと笑われる。
「キリスエールが起きる時に側にいたかったって意味」
きょとんと榛色の瞳を見開いて国主を見つめると、腕が伸びてきて顎を掬われる。
「おはよう。といってももう夕方だけど」
唇に冷たい唇の感触を感じて、キリスエールは頬を朱に染めた。
「あんなことまでしたのに、口づけだけでそんな顔されると困るな」
飄々(ひょうひょう)とそんなことを言われても困るのはこっちだとキリスエールは思う。
「痛いところはない?」
その言葉にはキリスエールは首を振る。
「そう。すごいな。途中から夢中になっちゃったから、かなり本気で抱いたんだけど、どこも壊れてない?」
確かに腰の奥がだるい気がするがそれだけだ。壊れるってどういう意味だろう。大体、目の前の人は自分を乱暴には扱わなかった。
「どこも悪くないと思いますけど」
自分を見下ろし、腕や足を軽く動かして、キリスエールは真面目に返答した。ベッドにどさっと座ると腕を伸ばし、国主はキリスエールを抱き締めた。
「ほんとに、すごい。創国主が人間を愛人にしたわけがわかった気がする。ああ、でも誰でもいいってわけじゃないのかな?うーん。まあいいか、それは今度試してみれば」
一人で勝手に納得しているような国主にキリスエールは何を返していいかわからない。この掴みどころのない人は、見た目は天使なのに、中身は子供のようだ。言葉にしている内容は物騒な気がするが。
「俺、帰らないと。心配するし……」
窓に目をやって、薄闇が落ちているのに気づく。セインが帰って来た時に自分が部屋にいないと心配するだろう。
「帰さないよ」
抱きしめた腕はそのままで国主の言葉は冷たく響いた。
「え?」
「言ったよね。あそこにいると館の主に迷惑がかかるって」
そうだった。なにか揉め事が起きそうな雰囲気に、セインに迷惑をかけてはとこの人の手をとったんだった。
「それに、おまえは壊れなかった。僕に縋ってよがって。すっごくかわいかったし」
抱き締める腕に力が入る。キリスエールは言葉の中身に顔が赤らんだ。
「そ、それは……」
「だから、帰す気はない。それに、あそこにいたらおまえの命はないよ。すでに、揉めているしね。知りたければ事の顛末は教えてあげるけど、あまり楽しい話じゃない。僕はこれでも一応、国主だし、守護者同士のもめ事は避けたいところなんだけど」
わかるかと。先ほどのからかいの言葉とはまるで正反対の深刻な内容にキリスエールは、瞳を見開く。腕を突っ張って、国主の腕から身体を離す。
「それって、セイン様に何かあったんですか。それとも、また、タミル様とセイン様が……」
口にしてからしまったとキリスエールは唇を噛んだ。
守護者同士の刃傷沙汰はご法度だとセインにきいたばかりだ。それをなかったことで済ませたのに、国主にばれたらまずいとキリスエールは顔を俯ける。
「ねえ、キリスエール。3つの印、僕が消してあげるって言ったらどうする?」
キリスエールの問いにも失言にも関係のないことを国主は口にした。驚いて顔を上げると濃紫の瞳が思いのほか真剣にキリスエールを見つめている。
「消せるんですか?」
「消せるよ。守護者の最高位は僕だから」
あっとキリスエールは前にレイラースのセリフを思い出す。
『印をつけようか。僕と同じか僕の方が高位ならできるよ、そいつとは2度と会えなくなるけど』
「そう。僕がおまえに印を刻めば、3人の印はあとかたもなく消える。ついでに僕は最高位だからね。人間にはわからないような印も刻めるよ。故郷に帰るのは無理でも人間界で暮らすことくらい造作なくなる」
微笑む国主からキリスエールは瞳を離せない。
「人間界に戻れる?贄じゃなくなるってこと?」
考えてもみなかった。このまま天空国で3人の守護者の贄として暮らすんだと思っていた。それも嫌ではなかったけど、人間界に帰れる。トレジャではなく、普通の街へ。
「キリスエールが望むなら、人間界に僕が逢いに行けばいいんだしね。すぐには無理だけど、いいよそれでも」
甘い誘惑につい肝心なことを見落とすところだったことに、キリスエールははっと気づく。
「印は残るんですね」
悪戯が見つかった子供の様な顔で、国主は頷く。
「あなたを選べばって意味ですよね?」
「やっぱり気がついちゃった?キリスエールはかわいいけど子供ではなかったんだったね」
面白そうに笑われて、キリスエールは国主を睨んだ。
「かわいくも子供でもないです」
「でもさ、あの3人を選ぶこともできなくて悩んでいたんだろう?僕にしとけばいいんだよ。そしたら悩まないし、人間の街に帰れる」
簡単なことのように言われ、ますますキリスエールは目の前の国主を見る目に力を込めた。
「なんでですか。どうして?」
「キリスエールのこと気に入ったから。僕が遊んでも壊れないなんて、すごいんだよ。それにすっごくかわいいし。しばらくは手離せそうにないけど、おまえが望むなら人間の街に家を用意する」
何がすごいんだか、まったく理解できないキリスエールは目の前で嬉しそうに笑う紫の守護者を睨み返す。
「睨んでも怖くないよ。おまえが側にいてくれたら、まだ、僕も保(も)つかもしれない。独りじゃないってわかったら……きっと……」
国主はあいかわらず口元に笑みを浮かべているが、その紫の瞳が曇った。抱き合った時に感じた縋られるような感覚に胸が痛む。
答えられない。キリスエールにも誰に自分の心があるかわからないし、さっき会ったばかりのこの人にそんなことを言われても頷けるわけもない。
「答えはいつでもいい。急ぐ気はない。それに、しばらくはどうしたってここにいてもらわないといけないしね」
紫の瞳でキリスエールの榛色(はしばみいろ)の瞳を覗き見て、国主はにっこり微笑んだ。
「そうだ。おまえの部屋も決めなきゃね。うーん。どうしようかな。一応さ、後宮とか名のつく建物もあるんだけどさ。あっ、だめか。あそこは壊れた人形でいっぱいなんだった。あんなところに置いておけないし……うーん……」
「国主様」
ブツブツとつぶやいて、なにやら思案を始めた国主をキリスエールは呼ぶ。しかし、考えに没頭しているらしく、返事はない。
「国主様」
「シスル」
再度呼びかけると、間髪いれずにそう言われた。
「え?」
「僕の名はシスルだ。そう呼んで」
一国の王を名前で呼べなどと言われても従えない。キリスエールは困ってしまう。
「でも……」
「だめ。名前で呼んで。呼ばないと返事しないし、問答無用で襲うよ」
あまりのセリフにキリスエールは絶句した。ありえない。この人は本当に守護者の長なんだろうか。
「キリスエール」
声にイラついた感じが窺えた。名前でなんて怖れ多くて、呼べない。だけど、この人は言ったことはするだろう。そういう気がする。
「シ……シスル……さま」
囁くような小さな声だった。いきなり腰を攫われ、お尻がベッドのシーツの上を滑って、あっと思った時には口づけられていた。舌がするりと口腔内に滑り込み、粘膜を嬲る。
「んっ……」
歯列を辿られ、舌の裏まで先をとがらせた舌で舐められて、キリスエールは身体を捩る。だが、与えられる口づけは甘くて激しくて、吐息さえも奪われて、身体に力が入らなくなる。
唐突に口づけを解かれて、まだ、唇が触れる位置でシスルはキリスエールを見つめた。
「シスルだ。他にはなにもいらない」
紫の瞳が怒りを湛えている。敬称をつけたから、口づけられたんだとキリスエールは瞳から目を離せずに思う。
「……シスル」
言ってと請う瞳にキリスエールは国主の名を口にする。紫の瞳が笑んだ。
「……あっ……」
思う間もなく、唇を重ねられて、キリスエールは瞳を見開いた。
ちゃんと呼んだのに。なのになぜ?
疑問符が頭を飛び交う中、ゆっくりとシスルの舌が、キリスエールの唇を辿り、歯列を割る。今度の口づけは優しい。舌でキリスエールの口の中をゆったりと辿って、舌を絡める。ふわふわとするような柔らかで優しい口づけに、キリスエールは瞳を閉じる。宥めるような撫でるような、口づけはキリスエールの身体を弛緩させる。
気づけば、シスルの腕に身体を預けていた。
「いまのはちゃんとできたご褒美」
頭上から甘く囁かれて、キリスエールは長嘆した。
この調子だと名前で呼んでも襲われるのは確実だ。
やっかいな相手に見込まれたとキリスエールはやっと自分の置かれた状況がのっぴきならないことに気付いた。だが、気づいてもどうにもならないことも事実だった。
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