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「天空国の守護者」
天空国編

残された者たち

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足音荒くキリスエールの部屋に飛び込んできたのは、黒の軍装に身を包んだタミルだ。すでに先についていたらしい、セインとレイラースが厳しい顔で見つめている先へタミルは視線を送る。
「カルア」
タミルの後ろから部屋へと入ってきたタミルの副官、ルシードが部屋の真ん中に置かれた椅子に拘束されているカルアを見て叫ぶ。
タミルは厳しい視線をカルアに向けたきり唇を引き結ぶ。ここにくるまで全く信じられなかった。報告を受けていてすら、まさかと思っていたのだ。
「……ぐ……っ」
言葉を舌に乗せる前にのどが詰まる。
足音をたてて部屋を横切り、カルアの前まで歩み寄ると右手を下から払った。鈍い音がして、カルアの顔がよこに振れた。頬を殴った甲が痛む。
「隊長っ!」
ルシードの叫び声が聞こえたが、タミルは拳を握りしめたまま目の前の部下を睨みつける。
「やめるんだ。タミル。そいつにも権利がある。下手に侵害するとお前まで罰さなきゃならなくなる」
背後に置かれたソファに浅く腰かけるセインに諭されて、タミルは睨む眼差しにさらに力を込める。
「説明しろ。どうしてお前がここにいて、こんなことになっているのかを」
腹に力を込めて唸るように言葉を紡ぐ。そうしないと怒りで喚き散らしてしまいそうだった。
カルアは哀しそうにタミルを見上げる。そして、唇をぐっと閉じると首を横に振る。
「説明なら、僕からするよ。そいつは何もしゃべらない」
窓際の文机に軽く腰を預けたレイラースがぞっとするほど冷たい声を出した。タミルは後ろを振り返る。
「それで、納得したら、そいつを消してもいい許可をくれないか。タミル」
口元に笑みさえ浮かべて、レイラースはカルアを見た。色違いの瞳が濃さを増し、昏く光る。窓から差し込む光を背中から受けたレイラースはいつにもまして肌が白く見え、タミルはぞっとした。レイラースの怒りの深さを思い知る。
「キリスエールは?」
頭に血が上っていて、最初に問わなければいけないことすら忘れていたことにタミルは気づく。すでにセインとレイラースがここにいることに安心していたのかもしれない。カルアが拘束された椅子の奥に見えるベッドはきれいにメイキングされていて、誰か人のいる気配はない。
「いない」
「………なんだって」
そっけなく答えたセインをタミルはみた。
「どういうことだ」
全く話が見えない。タミルは大きく息を吐く。
「説明してやるからとりあえず座れ」
自分が座るソファの前を指さして、セインが大きく溜息をついた。いわれるがままタミルは踵を返すとセインの前に腰を下ろす。白銀の鎧が、がちゃりと音を立てた。
その背後にルシードがそっと立った。視線は痛ましげにカルアに注がれたままだ。
「大体は報告した通りだ。今日の午前中に非番のこいつが屋敷に押し掛けてきて、入り口で押し問答をくり返したうえ、無理に押し入った。帯剣したままだ」
頭が痛むのかセインはこめかみを指で揉みながら、説明を始めた。
「もちろん、警備が止めた。だが、仮にも黒軍の副官に手を上げるわけにもいかずに、説得を試みたものの失敗。ここまで侵入されたようだ」
それじゃあ、警備の意味が無いだろうと口を開きかけ、タミルは口をつぐんだ。そういう事態は想定されていないのだ。敵はクアールで、まさか他軍の副官ではない。
「……なんのために……ここへ」
訊かなくてもわかるだろうことを問わずにいられないのは、タミルが信じたくないからだ。セインは帯剣して押し入ったと言ったじゃないか。
「当然、狙いはキリスエールだな。僕が執務室にいることは知っていたはずだからね」
瞳をとっさにカルアに向ける。うなだれたまま身動きしないカルアは、こちらを見ようともしなかった。
「だが……なぜだ」
タミルの問いにセインは肩をすくめて見せた。
「それはおまえがきたら話すそうだ。そういって口をつぐんだきり」
「おまえならそんな面倒なことしなくてもさっさと情報をえられるだろうが」
一向に話が核心に触れずにタミルは苛々する。セインの感応力ならカルアが何を思うかなんて簡単にわかるだろう。
「相手は敵じゃないんだ。そう簡単にはいかない。言ったろう、権利があるんだって」
「そんなこといっている場合か、キリスエールはどこだ」
そう、本来それを訊きたくて、説明を求めたのだ。
あまりに落ちつきはらっているセインと冷たい怒りを湛えているレイラースを交互に見て、タミルは声を荒らげた。
「それもわからない。そこのがここに押し入った時にはこの部屋は誰もいなかったそうだ。警備のものが証言しているから確かだ」
「出かけてたのか?」
ほっと息を吐くタミルは、だが違和感を感じて、セインを見た。そうだったら、キリスエールの居場所を問うた自分にいないとはいわないだろう。
「いないって。まさか、また気配がないのか」
「そう。天空国も人間界もトレースしたけど、気配はなし。レイラースがキリスエールを隠した時に似ている。キリスエールは自力でこの屋敷を出られない。となれば誰かが連れ出したとしか思えない。ここから僕に察知されずに誰かを攫おうとするなら、できるのは誰だ?」
腕を組んでセインは答える。
「隊長クラスの誰かか……国主……?」
まさかなとタミルは思った。あの紫の国主は何を考えているかよくわからないが、あまり何かに関心があるとは思えない。除外していいと思ったのだが、その言葉にセインが苦虫をかみつぶしたような表情をした。
「まだ、答えは出ない。問い合わせをしているが、答えるとは思えない」
そうだろう。将軍宅から人間を攫っておいて、ここにいますと白状する奴もいない。
セインの指先が白く震えていることをタミルは感じた。そして、背後のレイラースの怒りの波動がさらに深まったのも。
キリスエールの安全は保障されないということだ。
タミルは立ち上がり、カルアの元へと足を向けるとカルアの喉元に腕を伸ばす。カルアの襟首を掴んで引きあげた。
「答えろ。誰と結託した。誰と画策してキリスエールを攫ったんだ。あれをどうするつもりだ。答えろっ」
喉を締められて、カルアがタミルを見た。その瞳が哀しげに揺れている。
「カルアっ。俺を裏切ってどうするつもりだ」
その言葉にカルアが首を横に振る。
「違うっ」
初めて、カルアは言葉を発した。喉が締められて苦しいのか、言葉はくぐもって聞こえた。タミルは投げるように手を離した。カルアの身体が椅子に沈む。大きく息を吸って、咳こんだ。だが、視線は逸らされなかった。
「裏切ってない」
まっすぐにタミルを見上げて、カルアは叫ぶ。
「人間なんですよ。隊長を傷つけた人間なんだ。分かっているんですか。何を血迷っているんです。人間なんてパラドースなんてどうでもいいと最初に言ったのはあなたでしょう。隊長」
タミルは驚きに目を瞠った。何を言い出すんだと思った。
「だから、目を覚まさせてあげようと思ったんですよ。あなたを惑わす人間を排除すれば、気づくでしょう。ご自分がどれだけバカげたことに入れ上げていたか」
狂信的な瞳。タミルをまっすぐに睨みつける瞳は複雑な感情で揺れていた。
「隊長は俺たちの隊長です。そうでしょう。誰かに心預けたりしない。ましてやそれが人間なんてありえない。騙されているんですよ。色香に迷っているだけです」
「カルア」
心配気に張り上げたルシードの声が聞こえる。
「なのに、目の前で誰かにかっ攫われた。あの扉を開けた時にはこの部屋は空だったんだから。それまでは気配がしていたのに。気配はあっという間に掻き消えて、扉を開けた時は痕跡もなかった」
言っていることは本当だろうとタミルは思った。キリスエールを見て色香に迷ったなどという言葉を吐くわけがないからだ。カルアがこの部屋の扉を開けた時には誰かが空間を跳んでキリスエールを連れ去った。
「殺すつもりだったのか」
「そう。消すつもりでした。でも代わりに誰かが消してくれた。あなたの目の届かないところへ連れて行ってくれた。目を覚まして下さい。人間なんてあんな下等で劣っている者を我々が守る必要もましてやあなたが気に掛ける必要もないんです」
「貴様」
必死にいい募るカルアに手を伸ばしたタミルの手を後ろから掴んで、身体で押すとルシードがアミルの前に立つ。平手でカルアの頬を張った。乾いた音が部屋に響いた。
「いい加減にしろ。目を覚ますのはお前のほうだ。守護者の存在意義を忘れたか。これ以上、タミル隊長に恥をかかせるなら、俺がお前を切る」
腰に下げた剣に手をかけたルシードの後ろから拍手が聞こえた。
「はい。そこまで」
不機嫌さを隠さない冷たい声でセインが告げる。ルシードとタミルが振り返った。
「言ったろう。そんな奴でも権利があるって。ここで切られたら困るんだ」
「セイン将軍……」
「それより、キリスエールの行方だ」
氷よりも温度の低い声でレイラースが囁き、顔を上げる。
「レイラース……」
怒りを孕んだ声音にタミルとセインがレイラースを見た。しんと沈黙が落ちる。ここまで、激したレイラースを見るのは初めてなのではないだろうか。
「時間をくれないか」
セインの静かな声が部屋を渡る。
「打てる手は全部打った。あとは、結果を待つだけだ」
レイラースは壁から身体を離した。そのまま部屋を横切る。
「レイラース」
呼びとめる声にも振り返りもせずに、レイラースは部屋を出て行った。
タミルは拳に力を込めた。守ると誓ったのに側にもいられず、キリスエールは行方不明。自身の力の無さに歯噛みしたいほどの悔しさをタミルは噛みしめた。
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