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「天空国の守護者」
天空国編

国主の館にて

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「キリスエール」
扉を開くなり飛び込んできた相手へ部屋でお茶の用意をしていたキリスエールは視線を投げた。
「いい子にしてた?」
側まで駆けよって、シスルはキリスエールを腕に抱き込む。
「シスル」
名を呼ぶが、キリスエールはまだ慣れない。国主を名前で呼んでもいいものだろうかという葛藤は、ここに来てすでに15の夜を数えてもいまだに拭えないのだ。
「寂しかった?」
問われることに答えられずに困っていると顎を掬われた。紫の瞳が日の光を受けて、きらきらと輝く。いつ見ても宝石のように綺麗な瞳だ。
その真ん中にキリスエールの琥珀色の瞳が映っている。目で答えを促され、キリスエールは首を横に振る。
「そこは嘘でも頷くところだよ」
優しい声音で囁くとぐっと腰を引かれた。シスルの整い過ぎた顔が近づき、瞳を閉じる間もなく、唇を重ねられる。
啄ばむように唇を食まれ、舌で輪郭を辿られた。シスルの舌はいつも熱い。側にいるとこうやって構い倒されて、キリスエールは振り回される一方だ。
だが、シスルは優しい。公務が終わると文字通り跳んで帰ってきて、キリスエールを離さない。
寂しいのはシスルの方だろうとキリスエールは思う。
この宮にも仕えている人はたくさんいるのに、シスルと対等に接する者は誰もいない。皆、深い畏敬の念を持って、シスルの顔を仰ぎもしないのだ。
じゃれるような口づけを繰り返し、さらに頬にも耳にも唇を落とすとシスルはキリスエールの瞳をのぞき込む。
「僕を待っていたんじゃないの?」
悪戯っぽい双眸でシスルはキリスエールを見つめる。キリスエールは今度は頷いた。
「お茶が冷めます」
その言葉にシスルがくすくすと笑い声を立てた。
「今日は、シスルが好きな花茶にしたんです。冷めないうちにお茶にしませんか」
「わかった」
シスルはキリスエールの頬に口づけを落として、身体を離した。公務が終わる時間を見計らって、お茶の用意をして待っていたのは本当だ。
キリスエールが思うよりも公務は忙しいだろうと思ってのことだ。シスルはそういうそぶりは見せないが、国を背負っているというのはどれだけの重荷なんだろう。
あんな小さな自領の領主ですら、やらなければならないことは山積みだったことを思い出す。
「キリスエール。これどうしたの?」
シスルの前には不格好な焼き菓子が置かれている。
出そうかどうしようか散々悩んだ品だ。
「甘いものがお好きだと聞いたので……」
説明を口にして、キリスエールは俯いた。厨房を借りて、焼き菓子の作り方を教わったのだ。その通りにしたのだが、お手本とは程遠く、不思議な形の菓子になってしまった。
「見かけはその……あれですが、味はよかったので」
しどろもどろに答えるとくすりとシスルが笑った。すっと腕を伸ばして、一つを指で摘むと口に放り込む。
「あ。おいしい」
もぐもぐと噛み砕きながら、シスルは幸せそうに微笑んだ。こういうとき、シスルは自分に正直だ。まるで子供のように。
「初めて作ったの?」
頷くと、シスルはもうひとつ手に菓子をとって、口に運んだ。
「すごいね。最初でこれなら、練習すればすぐうまくなるよ。焼き菓子も好きだけど、クリームたっぷりのケーキも好き」
まっすぐ見つめて微笑むシスルに作ってと要求されているんだと知り、キリスエールは視線を落す。
「また、厨房で教えてもらいます」
「うん。楽しみにしている」
にこにこと笑うシスルにお茶を差し出して、自分も席に着く。
「いい香り」
花茶を口に含んで、シスルはキリスエールを見てはまた微笑む。その様は天使そのものだ。満足気なシスルにほっとしながら、キリスエールもお茶を口に運ぶ。
「さてと。実は今日の公務はこれで終わりなんだ」
もうひとつお菓子を口に放り込んで、シスルが告げる。
「どうしようか?」
意味ありげに笑われて、キリスエールの微笑みが凍りついた。
シスルは気まぐれで、したいことしかしない。その割に公務はさぼらないが、そのほかの時間はやりたいように過ごす。
同じことを言われて、こんなお茶の時間からそれこそ朝が来るまでめちゃくちゃに抱かれたこともあるキリスエールにしてみれば、笑みがひきつるのも仕方が無いと言えよう。
「キリスエールはどうしたい?」
そんなことを訊かれても困るだけだ。このままお茶をしていたいが、そう告げても嬉しそうに笑って『だめ』と言われ、結局、シスルが望む答えを言うまで許してくれない。その答えは「シスルとずっと一緒にいたい」もしくは、「かわいがってください」だ。
だが、そんなことを言ったら、当然、このままベッドに引きずり込まれて声がかれるまで啼かされる。
答えに窮して、キリスエールは困ったようにシスルを見つめた。視線は逸らせない。シスルが最も嫌がることだから。
「キリスエールに触りたいけどね。でも、昨夜も無理させたし、なのに僕のためにお菓子を作ってくれたしね」
口端を上げて微笑まれて、昨夜も確かに散々、抱かれたことを思い出す。
「外に出ようか?」
「え?」
シスルの言葉にキリスエールは驚く。
「キリスエールのお友達の馬、なんだっけ?アル……」
「アルタイル」
「そう、その子も厩にいるから、たまには逢いたいでしょう?」
セインの屋敷に置いてきてしまったアルタイルをキリスエールはとても気にしていた。あんな状態でこちらに来てしまったから、逢いにも帰れず、キリスエールはかなり落ち込んでいたのだ。
驚きと嬉しさの混ざった顔をしたキリスエールに機嫌良く笑いながら、シスルは「ね?」と囁く。
「厩って」
「キリスエールが気にしていたからね。連れてきた」
ますます瞳を丸くしてキリスエールはシスルを見つめた。いとも簡単にいうが、セインの館はここからはかなりな距離だ。
連れて来られた最初のころに、国主の館の塔に上り、セインの館はあそこだと指さされた先に見えた屋敷はそれこそ屋根の先しか見えないようなところだった。
あとで説明してもいいとシスルはあの時確かに言ったのに、あのあとセイン達にどう伝えたのかも何が起きたのかもいまだにキリスエールは知らない。3人の誰かの名を出そうとすると、それだけでシスルの纏う雰囲気が冷えるから。
「もうお茶の時間だし、そう遠くへは行けないけど、屋敷の中ばかりだと息が詰まるでしょう?」
キリスエールはシスルが自分のことを考えてくれたことに気付いた。
「行きます」
嬉しそうににっこり笑って、答えたキリスエールに満足そうにシスルは頷いた。

ふたりで馬を駆って、屋敷から離れた森の中の小道へ分け入る。シスルも馬の扱いには長けていた。
「守護者はどなたも馬を扱えるんですか?」
「一応ね。僕は馬が好きだから、よく出かけるよ。一人でもね」
シスルが案内にたつ森の奥へと進んでいく。
森とはいっても木はまばらだった。木漏れ日が地面に落ちて模様をつくり、時折揺れる。
アルタイルも気持ちよさそうにゆっくりと先へと足を進めていた。
「アルタイル。元気そうでよかった」
首を撫でてやりながら、キリスエールはアルタイルに話しかける。だが、この馬が消えて、セインはどう思っているだろう。
ここにいるって、セイン様は知っているんだろうか。
ちらりと斜め前を行くシスルを見る。彼は心もち上をむいて、日の光と森の息吹を堪能しているようだ。
「シスル……」
名を呼ぶと、シスルが振り返った。
「なに?」
口元に微笑みを浮かべたシスルにキリスエールは質問をのんだ。
こんなに機嫌のいいシスルもめずらしい。公務のあとしばらくはシスルはひどく憂鬱そうにしていることが多い。外の空気が必要だったのはキリスエールだけではなかったのだろう。
「い、いいお天気ですね」
つい、訊きたかったことを胸の底に沈めて、違うことを口にした。
「そうだね」
風がシスルの髪をさらりと掬う。スミレ色の髪がさらさらと揺れた。
無言で森を行く。木漏れ日が躍る中、頭上からの小鳥の声を聞きながら、キリスエールは馬上で揺られた。
ざっと風が鳴って、いきなり森が切れた。
「わあ」
キリスエールが声を上げた。目の前に広がるのは一面の綿毛だ。見渡す限り白くほこほこした綿毛が風に揺れていた。
「すごい」
どこまでも続く白い大地。
「雪みたいでしょう」
シスルがキリスエールと馬を並べた。
「夏は黄色い花で埋まるんだ。秋の終わりに綿毛になる。ここは雪はほとんど降らないからね」
すとんと馬からキリスエールは降りた。アルタイルが鼻面をよせる。それを撫でてやりながら、キリスエールがしゃがみこんだ。
「ふわふわだ」
手で触って、キリスエールは頬を寄せる。
くすくすと頭上から笑い声が落ちた。
「かわいい。キリスエールは」
後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「かわいいっていうのはシスルのこと……」
「ちがうよ」
さらに腕に閉じ込められた。髪に口づけられる。背にシスルの体温を感じ、キリスエールは瞳を閉じた。すっかり慣れてしまったシスルの香りと身体の熱さ……。
このまま流されてしまって、ずっとシスルといたら楽だろうと思う。
「シスル」
「何?」
甘く囁いて、シスルはキリスエールの外耳を軽く噛んだ。
「俺……」
言いかけて、キリスエールは首を横に振った。口をつきそうになった言葉が霧散した。
「もっと先まで行きませんか?」
くすくす笑われて、キリスエールは俯いた。
「いいよ。そういうキリスエールが好きだ」
頬に唇を落して、シスルが立ちあがる。
「おいで」
手を差し出されて、その手に掴まって立ち上がった。笑む瞳を見つめて、キリスエールははやる鼓動を鎮めるために大きく息を吐いた。
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