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「天空国の守護者」
天空国編

行方を探すもの

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セインは拳を握りしめた。手の中で紙がくしゃりと音を立ててつぶれた。
「やっぱり」
呟きは風に攫われる。
1週間だ。キリスエールがいなくなって行方がつかめないまま7日が過ぎていた。あの日に投げた問いに対し、どの隊長からも『問い合わせの件、該当なし』との返事が即日届いてはいたが、その真偽を確かめるために7日がかかった。そして、どれも正しいとわかった今になって、その苦労をあざ笑うかのように、国主の印の押された書状が連絡事項と共に届けられた。
『たしかにその人間は国主の館で預かっている』との短い文面で。
セインはくしゃくしゃになった書状を床にたたきつけた。あの一瞬で、自分の館から誰にも見とがめられずにキリスエールを連れ去るだけの力があるのはシスルだけだと冷静になって考えればあたりまえのことが、今のいままで確信に変わらなかったのは、セインがそうは思いたくなかったからだ。
紫の国主にキリスエールが連れ去られたのなら、彼が無事でいる保障がこれっぽっちもない。
今、手の中にある書状にもキリスエールの安否に関しては何も触れられていない。また、問い合わせの書状を返すか直接シスルと会わなければ状況を説明する気はないということだ。
どうするか。
セインはめまぐるしく思考を動かす。国主がキリスエールをここから連れ出したのは予見があったのだろう。ということは、すでに黒軍副隊長の起こした失態はシスルの知るところだ。国が乱れるのを事前に防いだと説明されたら、キリスエールを連れ戻すことは難しい。
シスルがキリスエールに興味を持ったらやっかいだ。へたをしたら壊されているかもしれないと考えてセインは背を震わせた。
「国主……?」
呟きが聞こえて、はたとセインは声の方を振り返った。金色の髪が風に揺れるのが見える。
「……レイラース」
執務室の真ん中にはレイラースがいて、手には先ほどセインが床にたたきつけた書状をもっていた。まったく人が入ってきた気配に気づかなかった。
「来ているなら声くらいかけろ」
「べつに気配消してきたわけじゃない。それに扉から入ってきた」
扉を背に立つタミルにも気づいて、セインは舌打ちをする。
自分はこの情報にそれほど動転していたんだろうか。
「セイン?」
ふらりと顔を上げたレイラースは氷のような波動を纏ってセインを睨んだ。
「これいつの情報?」
瞳を眇めて睨まれ、セインは背が寒くなる。少しやつれた白い頬にレイラースがどれだけキリスエールを心配しているか思い知らされる。
「今さっきの定期便」
答えるとさらにきつい瞳で睨まれた。
「そう」
レイラースが踵を返そうとするのをセインは名を口にすることで呼びとめた。レイラースが億劫そうに振り返る。
「どうするつもりだ?」
レイラースの瞳を苛立ちがよぎる。
「これじゃあ、わからない。国主に訊く方がはやい」
「ばかな。面会に応じるとは限らない」
レイラースは口端を上げた。冷たい笑みだ。
「なにも正式な謁見を申し出る必要はない。国主は言ったよ。いつでも遊びにおいでってね」
そうだったとセインは奥歯を噛みしめた。レイラースにとってもタミルにとっても国主は尊敬こそすれ怖れる相手ではない。昔から知っている幼馴染みのお兄さんであることにかわりが無いのだ。自分だけがあの人が昔とは似ても似つかぬように変わってしまったことを知っている。シスルを思うと足が震える。あの拷問のような休暇が頭をよぎった。
「国主に会っても何も解決しない」
呟いたセインにレイラースは何も言わずに背を向ける。次いでタミルがそれを追う。
セインは一歩も動けなかった。
震える身体をセインは自分の腕で抱き締めた。

窓も扉も開け放たれた開放的な空間。
国主の私室は前に訪れた時と数分違わなかった。白いカーテンが風に揺れている。
「久しぶりだね。レイラース、タミル」
部屋に入ると笑顔の国主が2人を迎え入れた。
「お久しぶりです。なかなか来ること叶わずに申し訳ありません」
二人がそろって頭を下げた。今日は正式な招待でも謁見でもないから、2人とも正装の鎧姿ではなく、貴族の子息のような格好だ。レイラースは、白のドレスシャツにダークグレーのズボン、腰には黒のサッシュを巻いている。タミルはいつものように黒ずくめだ。
個人的に逢いたいと申し入れをした次の日に、国主は時間がとれるから、公務が終わった夕方にでもおいでと返信してきた。
「セインは?」
「彼は仕事中です。僕たちは非番だったので」
レイラースの答えに国主はふうんと呟いた。
促されるまま席にレイラースは着いた。その隣にタミルも座る。給仕がやってきて、3人の前にお茶とお菓子をならべて、退いた。
「あれから、どう?」
ここに来たのは凱戦後すぐだったから、その後の守護者の様子を訊かれているのだろう。
「平常ですよ。小競り合いもなくいたって平和です」
タミルが答えるのにレイラースは頷いた。意識は国主に向けながらも感応力で、国主の館一帯をサーチする。
ここはさすがに一国の主の館だけあって、いたるところによくわからない目くらましがほどこされていたりして力の及ばないところがあり、人一人の気配もなかなかつかめない。
「クアールもさすがにすぐには仕掛けて来れないよね」
目の前の国主はにこにこ笑って、お茶に口をつけている。
「それは予見……?」
「まさか。確定しない未来は見えないよ。今は特にいろんなことが揺らいでる。だから、そういうものは見えない」
横のタミルから強い憎しみと悔いような感情が放たれて消えた。国主にもはっきりとわかっただろう。だが、目の前の人は紫の瞳を面白そうに煌めかせて、タミルを見つめるだけだ。
レイラースはさらに力の及ぶ範囲を広くする。だが、キリスエールの気配は欠片も感じられない。
「で、そんなこと話に来たわけじゃないでしょ?個人的に訊きたいことがあるんじゃないの、レイラース」
耳で聞こえた声はそれだけだったが、視線を国主に合わせると『そんな力を使わなくても訊けば教えてあげるよ』とレイラースの頭に声が響いた。
「あ……」
さすがにこの人に感知されずに力をそれも感応力を使うのは無理だったかとレイラースは色違いの瞳を見開く。
隣のタミルが驚いたようにレイラースを見つめているのを感じながら、レイラースは開きかけた口のまま固まる。訊く必要なんて国主にはないことに気付いたから。
「どうしたの?」
国主の心配気な声で我に返る。
「いえ。もう、わかっていらっしゃるのにと思いまして」
口端を少し上げて笑む。冷たい空気が3人の間を渡る。
「そうだね。君たちがここに来た理由はわかっているかな。それにそれだけ強く思えば、僕でなくても聞こえるよ」
くすくすと国主が笑った。横でタミルが息を飲む。
「タミルもいまさらだ。障壁は僕にはなんの役にもたたないって知っているでしょう?」
「キリスエールはどこです?」
胸を押さえてから唇を一文字に結んでタミルは睨むように国主を見つめた。
「ああ、セインにあてた書状を見なかった?彼ならここにいるよ」
あっさりと国主は答えを口にする。タミルが奥歯をぎりりと噛みしめる音が聞こえた。
「睨まれるのは心外だな。僕はあの人間を助けただけだけど」
国主はやけに楽しそうだ。その様子に焦燥が湧いてきて、レイラースは苛々する。
「どういうことです?」
「そっちのほうが詳しいでしょう?予見(み)えたんだ。黒軍の兵士がセインの館で人間を襲うのをね。でも、クアールとの決戦も終わったばっかりだし、守護者の内輪もめは困るし」
だから助けたんだと国主は告げる。
「それには感謝しています。だが、連絡もなく1週間。キリスエールは私のものです」
冷たい雰囲気を纏わせたまま、レイラースが国主にまっすぐに告げる。横ではぎょっとした顔でタミルがレイラースを見た。
くすくすと国主が笑いだす。笑ったらさらにおかしくなったのだろう。国主はさらに口を開けて笑いだした。
「面白い事言うね。レイラース。僕があの子に会った時、彼は3つの印をもっていたけど」
国主は笑いを収めた。
「返して下さい。キリスエールは私がこの国に連れてきた。私を選ぶと言ったから」
「レイラースとは思えない発言だ。誰にも興味のない、ただ、蝶のようにきれいな花を渡り歩くだけだったのにね。そんなにあの子が大事?」
真剣な顔でレイラースが頷く。
「そう」
国主はすっと視線をタミルに向けた。
「タミルはどうするの?レイラースはこう言っているけど」
タミルは首を横に振った。
「あいつが無事なら、守られるならそれでいい」
「そうだよね。あの人間を襲ったのはタミルの部下だし。タミルが側にいるとややこしくなるものね」
国主の言葉にタミルは唇を引き結んだ。それは事実だ。だれも口にしなかっただけで。
沈黙が降りた。風の音だけが部屋を渡る。
「レイラースに引き渡しても同じだよ」
頬杖ついて国主はなんでもないように告げた。
2人が国主を見る。
「黒軍が先走っただけで、同じだって言っている。守護者の隊長クラスが人間を構うのを快く思っていないものがたくさんいるっていうこと。それも遊びならともかく、こんなレイラースを見たら、天空国中の姫の敵意を買うだろうしね」
「そんなこと……」
ないと反論しようとして、ありえないことではないと思った。そうでなくても自分が人間をよく思っていなかったことを知っている守護者は多い。キリスエールだけが別格なのだが、それを言ってもだれも信じないだろう。
「国内で争いが起きるのは困るんだ。だから、あの人間はここで預かる」
「国主」
二人が立ちあがって抗議するのを面倒くさそうに国主は片手で制した。
「それに、レイラース。気配は辿れた?キリスエールはこの屋敷にいたかい?」
話しながらも気配のトレースは止められなくて、レイラースは国主の館のいたるところを探していた。だが、それらしき気配はない。
「彼はこの屋敷にいるよ。僕は嘘はつかない。でも、君には探知できない。この意味するところはなんだろうね?」
ぎくり背を震わせてレイラースは国主を見た。スミレ色の髪が縁取る小さな白い顔は誰が見ても天使のようだと言うだろう。紫の宝石のような瞳が日に輝いている。
この容姿に警戒心を抱く者は少ない。キリスエールも例外ではないだろう。
「どういうことです?」
話の流れについて行けないのか、わかりたくないのか、タミルが瞳を険しくしてレイラースと国主を見つめる。
「察しが悪いね、タミル。僕はきみらより高位だってことさ」
国主がキリスエールに印を刻んで、国主がそう望めば、自分たちでは感知できなくなる。キリスエールが望めば、印は一つになって……。
「選んだんですか?」
「何を?」
「キリスエールがあなたを選んだんですか?」
レイラースの言葉に国主は意味ありげに微笑んだ。身体が震えた。喪失感が足元から上ってくる。国主が相手では力では全く敵わない。
「キリスエールが……」
タミルの呆然とした声が聞こえる。
「会わせてください。一度でいい。キリスエールに」
詰めよるレイラースに国主は紫の瞳をうるさげに眇めた。
「レイラース、座りなよ。君が熱くなることなんて、クアールとの闘いだけだと思ってたけど、案外普通の男だったんだね」
タミルならわかるけどねと国主はぶつくさと口の中で呟く。レイラースは黙って座った。気が動転していてどう対処していいかわからない。こんなこと初めてだ。最初から国主のペースで全てが進む。想定外の展開にレイラースは大きく息を吸って吐く。
「面白いね。こんなことあるんだね。レイラースが取り乱すなんてさ」
くすくすと笑っているが国主の目は笑っていなかった。
「結論だけ言うけど、キリスエールと会わせることはできない。たぶん、2度と。彼はここで保護する。それが一番、全てにとって良い。ここにいれば、他の守護者もこんなことは忘れる。タミルの副官が罰を受ける終わるころには全て元通りだ。決定事項だ。覆ることはないから。セインにもそう伝えて。何をしても無駄だよってね」
国主は言い終わると立ちあがった。
これでお開きの意味だ。
「国主」
二人が騒ぐのから顔を背け、国主は従者を呼ぶ。
「隊長達はお帰りだから、お見送りして」
その命令に護衛を兼ねた兵士が頭を下げる。
「国主。待ってください」
「話はまだ終わっていない」
口々に叫ぶレイラースとタミルは兵士によって廊下に押し出された。まさか、国主の護衛に抵抗するわけにもいかない。
「国主。話は終わっていません」
振り返りながら叫ぶと扉の向こうで国主が冷たく笑うのをレイラースは確かに見た。
扉はレイラースの叫びを遮るようにばたんと音を立てて閉じた。
「お引き取りを」
深々と兵士に頭を下げられて、レイラースは兵士を睨みつける。苛立ちは頂点に達している。キリスエールが無事なのかどうなのかすらはっきりせず、ただ、二度と会えないと言われて納得できるわけもない。
だが、ここで暴れても何も進展しないことくらいは血が上った頭でも理解できた。
キリスエールを取り戻さなければ。そのための対策を立てるべきだ。
踵を鳴らして、向きを変えるとレイラースは歩き出す。噛みしめた唇が切れるのすら気にならない。タミルが無言でつき従った。深く怒りを湛えている気配にレイラースは気づく。彼にしては珍しく、表面には出さずに深く憤っている。
「タミル」
声を掛けると視線が自分に向くのを感じた。
「キリスエールを取り戻す。手を貸せ」
タミルを見ずにそれだけ告げるとタミルがくっと喉を鳴らした。
「言われなくてもそのつもりだ」
タミルの言葉に頷いて、レイラースは前を睨みつけながら、足を早めた。
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