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「天空国の守護者」
天空国編

冬の終わりに

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『セインはどうする?』
自室のソファに身体を投げ出すように座って天井を見つめていたセインの脳裏をレイラースの言葉が巡った。もうずっと長いことセインは悩んでいる。
レイラースとタミルが国主に会いに行った時も自分は何もできなかった。一緒に行くことすら心が竦んでできなかった。シスルを思うと身体が震える。傷つけられてすでに癒えたはずの傷口がずくずく疼く気がした。
怖い。
なにものをも恐れずにいられるレイラースとタミルが羨ましかった。国主と面会してさえ、2人は彼の恐ろしさに気づかずにいるのだ。
それもシスルの興味がキリスエールの上にあるせいだ。彼があの2人をいたぶろうと思えば簡単なのだから。
『国主は2度とあの屋敷からキリスエールを出す気はないそうだ。セインにもそう伝えるように言われた。何をしても無駄だと』
レイラースの告げた言葉にセインは眩暈すら感じた。シスルがそう言ったからには無駄なのだ。何をしてもキリスエールには2度と会えない。
セインは自分がキリスエールにもう会えないと覚悟していることに気づき、苦笑を浮かべた。
『僕たちはキリスエールを取り戻す。何があってもね。セインはどうする?』
レイラースのセリフがセインの心に刺さっていた。彼らは国主を敵に回す気だ。力では絶対に敵わないと知っているくせに。
そんなのは不可能だと反論したセインに『不可能だろうがやる。キリスエールのいない世界に意味はないから』と言いきったレイラースの燃えるような双眸を思い出す。面倒くさいことが嫌いで、快楽だけに生きているように見えて、レイラースはその実、炎をその身に飼っている。その彼が深く熱い怒りを湛えていた。
キリスエールをそこまで……。
想いの深さにセインは驚きを隠せない。一時の熱病だと思っていた。だが、レイラースは本気だ。
僕は……?
キリスエールは愛おしい。失いたくもない。彼は僕の希望だ。
そのキリスエールがシスルになにをされているか考えるだけで身の毛がよだった。勢いよく身体を起こし、立ちあがる。
シスルに玩具にされたらキリスエールは壊れてしまう。そう思うと身体の奥底から怒りと喪失感が湧いてきていても立ってもいられない。
セインは部屋の中をぐるぐる歩き回った。
どうしていいかわからない。
こんなことは生まれて初めてだった。自分の動向を決められないとは。
歩き回る足を止め、セインは腕で自分の身体を抱き締めた。震える体に苦く笑う。シスルを思うと怖れと微かな思慕を感じる。
「キリスエール……」
呟いてセインは唇を一文字に結んだ。腹の底に力を込める。
ふとあの時、タミルは何も言わなかったとセインは思い返した。レイラースの後ろで壁に寄りかかって立っていた。同意するでも口を挟むでもなく、そこにいた。
『伝えたからね。セインがどうするかはセインの自由だ。願わくは僕たちの邪魔だけはしないでほしい。親友を敵に回すのはさすがに辛いから』
レイラースの言葉が耳に甦る。そう言い放ってレイラースは踵を返し、部屋を出て行った。タミルは一度だけ心配そうにセインを見つめ、遅れてレイラースに続いた。
記憶から意識を逸らすように、セインは一度、瞳を閉じた。
息苦しい。外の空気が吸いたいとセインは切実に思う。
ゆらりとセインの姿が揺らいだ。瞬きの瞬間にその姿は部屋からかき消えた。

自分の裏屋敷の庭に下りたセインは空を切る風切り音を耳にし、怪訝そうに眉をひそめた。よく見知った気配のある方へ足を踏み出す。
「タミル……」
建物を回りこむと、一つに括った長い黒髪が空を踊るのを見た。タミルだ。
セインの裏屋敷の裏庭でタミルは木刀を振っていた。キリスエールに稽古をつけていたのとまったく同じように、型をつけては剣を薙ぐ。上段に構えて振り下ろし、下からすくい上げて斜めにはらう。流れるような動きに目をとめると、一瞬、キリスエールの真剣な顔と楽しそうな笑い声が記憶の底から甦って、セインは胸に手を置いた。
切られたように胸が痛い。
ぐっと瞳を閉じた。無意識に唸ったのだろうか。タミルの気配が揺らいで、声がした。
「セイン。大丈夫か?」
目を開くと心配そうな顔のタミルが自分をのぞきこんでいた。
セインは頷き、はたと誰もタミルが来ていると告げにこなかったことに気づく。
「おまえ、ここで何をやっているんだ?」
咎めるようなセインの声にタミルはバツの悪そうな顔をし、それから苦く口端を上げた。
「非番なんだが、どうにも落ちつかないから、稽古」
視線をキリスエールが木刀を振っていた場所へと流し、タミルは苦しそうに瞬く。
そういえば、キリスエールがここにいた頃、タミルとレイラースが自分の屋敷に出入りしても気にしないように、二人の気配に結界が反応しないようにしてあった。
それを解除するのを忘れていた……。
「勝手に……悪い」
何も言わないセインが怒っていると思ったのか、タミルは謝罪を口にした。
セインはそれには首を横に振る。
タミルもまたキリスエールを思っているのがわかって、セインはタミルを見つめた。
「タミル……おまえも国主を……」
そこまで口にすると目の前に立つタミルの手が伸ばされて、セインの口を塞いだ。そして頷く。
「キリスエールを諦められない」
詰めた息を吐くようにタミルは告げた。
「おまえがどうしようと、セイン。俺たちは止まらない」
ひどく落ちついた声にセインは大きく目を瞠った。固い決意を感じるのに、タミルは至って冷静に見える。
タミルはそっとセインの口を塞いだ手を離した。
「怖くないのか?」
まっすぐ自分を見つめるタミルの黒い瞳を見ているうちに、セインはどうしていいかわからなくなりそう口走っていた。
「何を恐れている?」
タミルの言葉にセインは身体を震わせた。
どうしてわからない。シスルは危険だ。何があっても打ち砕けない。
タミルは一歩、セインに近づき、腕を伸ばした。包むようにそっと抱き締められる。そこまで弱って見えるんだろうか。タミルに心配されるほど。それでも、その腕の温度が、タミルの平静さが心地よくて、セインはじっとしていた。
冷たい風がセインの銀の髪を掬っては散らす。
「いまのところキリスエールは無事だ」
セインの怖れがキリスエールの心配にあるのだろうと思ったらしいタミルは、しばらくしてきっぱりと言い切った。
「どうしてわかる?」
あまりの自信にセインは声を尖らせた。感情がささくれだって、どうにも落ちつかない。
タミルの困ったような笑い声が耳元で響いた。少し身体を離して、タミルはどうしてわからないんだという顔でセインを見た。
「忘れたか?あいつは俺の主だ。その身を守ると誓約した。あいつの命に危険があって、あいつが叫べばどこにいても聞こえる」
そうだったとセインは思う。
だが、タミルの力の及ぶ範囲は命の危険だけだ。キリスエールの心までは守れない。
相手はシスルだ。創国主に匹敵する力の持ち主。だれも彼には勝てない。
「無理だ」
呻くように告げると身体を引き寄せられた。
「それでもだ」
勇気づけるようにタミルはセインを抱き締める。労わるような抱擁に、心が温かくなる。タミルはずっと友人だった。そして、今も。
「絶対という事柄は、存在しない……そうだろう、セイン?」
耳元で告げられた言葉にセインは大きく息を吐いた。戦いの度に、苦境に陥るたびにセインが友人たちに贈り続けたセリフだ。
キリスエールを取り戻す。できるならそうしたい。だが……。
セインは空を仰ぐ。雲ひとつない高い空が青く果てしなく続いている。瞳に蒼を映していると不可能はない気がしてくる。
そう、絶対はない。
希望か畏怖か。
セインは俯いてタミルの肩に額をつけた。
答えはいまだに出ない。だが、タミルの無言の優しさに今は甘えていたい気がした。


キリスエールは国主の館の廊下を歩いていた。
ここに来て、1月が経った。アルタイルと遠乗りに行ったあの日、シスルは『館の中ならどこへ行ってもいい。ただし、一番奥の館の奥の部屋だけはだめ。危ないから、近寄らないようにね』と言った。その言葉は違えられることはなく、キリスエールは図書館でも庭でも厩でも好きなところに出入りしている。
いまだにセイン達のことは訊けずにいる。
怖いんだよな。そういう話の流れになりそうになると、シスルの雰囲気が変わるから。
石造りの廊下を歩きながら、キリスエールは溜息をついた。
心配しているだろう3人のことを思うと胸が痛い。ここにいるってことと元気だってことくらいは伝えたい。
シスルは優しい。『キリスエールが好き』といいながら、一緒にいると常にまとわりついてくる。仕事の時以外は、キリスエールの側から離れようとしないくらいだ。いつもにこにこ笑っていて、『かわいい』と囁いてキリスエールを抱き締める。
だけど……。
キリスエールがセイン達の話をしようと心に決めるとシスルを纏う空気がすっと冷える。笑っている顔はそのままなのに、瞳の色が濃くなって、冷たい空気の壁があるように距離が遠くなるのだ。
あの人は心を読むから、俺が知りたがっていることも知っているはずなのに。
もしかして、心配なんてされていないのかもしれない。シスルはそれを知っていて、俺が傷つくと思って黙っているのかも。
勝手にいなくなってセインは怒っているだろう。レイラースもタミルも同じなのかもしれない。セインの館を出たのに自分を頼らず消えてしまったキリスエールのことなどもうどうでもいいのかも。
あれから1月だ。その間にセイン達がここへ来たという話は聞かない。国主と守護者はこの館ではなく、政治を取り仕切る宮殿で会うそうだから、そっちに来ていたらキリスエールにはわからない。
噂くらい聞いてもよさそうなのに。
この館の使用人たちとはずいぶん仲良くなったが、彼らからもそういう話は一切聞かない。
大体、この館に客人は滅多にこないと言っていたくらいだ。宮殿での話は知らないと菓子の作り方を教えてくれるシェフが言った。この館にはそういう俗世の噂はまわってこないんだよと笑った。
それに、俺はもめ事の種……だしな。
『あの3人はシンパが多くて、もめごとの種は困るんだ』
シスルがキリスエールに説明した言葉を思い出した。
『守護者の中には人間嫌いも多くてね』
シスルは寝物語にそんな話もした。契約なんて昔の話過ぎて誰も本気にしていないと。
『ここにいたら、シスルにも迷惑がかかるんじゃあ』
『一応、僕は国主だよ。やりたくもないことさせられているんだから、このくらいの我儘は誰も何も言わない。それに、僕を取りあおうなんて酔狂な奴もいないしね』
その時の会話を思い出して、キリスエールは足を止めた。
石造りの廊下には格子状に開いた窓が延々と連なっていて、格子の隙間から柔らかい日差しが廊下の床に差し込んでいる。
『でも、シスルは国主ですよね。後継ぎとかお妃さまとか』
言い募ったら人差指で唇を塞がれた。
『妃はいらない。興味もない。国主は世襲じゃないから、子供を作る必要もない。それに誰も僕に興味なんてないんだ』
キリスエールの瞳をのぞき込んでシスルは囁いた。紫の瞳が揺れていた。
『シスルはこんなに綺麗なのに』
つい口を出た言葉にシスルはキリスエールを抱き締めた。腕が震えていた。
『綺麗なのはキリスエールだよ。この話しはもうお終い。また、キリスエールが欲しくなっちゃった』
唇を唇で塞がれて、会話はここで終わった。
格子窓に阻まれて、縞々に見える青空へと視線を上げて、キリスエールはこの石造りの館が、牢獄の気さえした。国主の館はシスルにとったら、枷なのかもと。
寂しい人……。
キリスエールにもわかっていた。シスルへ感じているのは同情だろう。守護者の国では異端である自分と重ねているのだ。トレジャに送られてからずっと感じている孤独を共有できる人。だから、縋られた手を離せない。
このまま流されたら、同情が愛情に変わる日もくるんだろうか。
誰もが自分を好きだという。キリスエールもセインがレイラースがタミルが好きだ。だが、きっと意味が違う。
相手の全て欲しいと思うのが恋なら、俺はまだ恋を知らないんだろう。
だから、そのうち、シスルに対する思いが恋に変わる時が来るのかもしれない。
決めるのは自分なのか。それとも相手なのか。
「わからない」
ひとつ溜息のように呟いて、キリスエールは廊下の先へと足を進めた。

そうして、季節は巡る。
それぞれの想いを内包して。
表面上は穏やかで平和な冬が終わった。
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