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「天空国の守護者」
天空国編

エピローグ(1)

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キリスエールは目の前の屋敷を見つめていた。どれだけそうしていたか自分でもよくわからない。ただ、何も変わらない懐かしい自分の生まれ育った屋敷を見ていた。
屋敷の回りの木々は柔らかな薄緑の葉を伸ばし、春の日差しがその若葉に降り注いで輝いている。1年前、ここを旅立った時と同じ光景。何年もそれこそ一生が終わるまで続くと信じていた日常。
だが、何もかもが変わってしまった。
「行かないのか」
微動だにせず、屋敷を見つめて立ちつくすキリスエールが心配になったのか、思わずといった感じに傍らに守るように立っていたタミルが声を掛けた。
ゆっくりと顔を巡らせ、キリスエールは声のする方を見た。タミルの黒い瞳をひたと捉えてから、キリスエールはゆっくりかぶりを振る。
もう、あの屋敷には戻れない。未練だとわかっていて、それでも旅立つ前にもう一度だけ家に帰りたいと願ったキリスエールの我儘をタミルもレイラースも叶えてくれた。
ここを旅立った時に覚えたような親と離れる心細さや不安とは違う感情が胸を突く。あの時はただただ両親と家が恋しくて、ここを離れるなんて嫌だと哀しいという思いだけがあった。だが、今は、自分は一人ではない。彼らに出会い、そして心惹かれている。
父にも母にも会いたいが、会えたとしても、もはや何を話していいかもわからず、守護者の所有物になった息子を見るのは親として辛いだろうと思う。それに、会えても自分はここには居られない。すぐに来る別れにただ哀しい思いをさせるだけだ。だから、こうやって生まれ育った屋敷を見ている。目に記憶に焼きつけて、これからも心だけでも帰って来られるように。
ここを出た1年前、自分は本当に何も知らない無知な子供だった。今でも、そんなには変わっていないが、彼らの自分に向けてくれる想いを知り、天空国を知った。
ここを出た時には1つだった印は今や3つある。
キリスエールはまた屋敷を向いて、それからゆっくりと頭を下げた。
「父上、母上、ごめんなさい」
声が震えた。
「だけど、ありがとう」
呟きは春の暖かな風がさらう。そっと肩に手がかかり、キリスエールは頭を上げた。赤と緑の瞳が自分を見下ろしていた。
「本当にいいの?」
レイラースの声にキリスエールは頷いた。もう、後ろは振り向かない、そう決めたんだと瞳に力を込めた。レイラースが一つ溜息をついて、それから小さく頷く。
自分を理解してくれる存在が傍らにあることに、キリスエールは胸の奥が温かくなるのを感じる。
こんどこそ流されるのではなく、自分で決めた旅立ちだ。だから、一抹の寂しさはあっても後悔はない。
「だけど、あなたがたは……」
言いかけた言葉はつと伸ばされて、唇に触れたレイラースの人指し指で遮られた。レイラースがゆっくりと首を横に振る。
「選んだのは僕らだ。キリスエールと共にいると決めたのも。何を捨ててもこの手におまえだけ残ればいい」
しかし、自分のために彼らにまで故郷を捨てさせてしまった。守護者の地位も名誉もだ。
「最初に家を捨てさせてしまったのは俺だった。そんなつもりはなかったとは言い訳でしかない。だが、これで同じだ」
だから、気にするなといつの間にか横に立ったタミルがキリスエールに笑いかけた。その笑顔が嬉しくて、二人の心が優しくて、キリスエールは微笑み返す。
タミルの瞳が僅かに見開かれた。
「だめだよ、キリスエール。そんな艶っぽい笑顔を振りまいたらね。タミルが驚いている」
伸びてきた手に顎をさらわれ、自分を見るようにと顔をレイラースの方に向かされるととんでもないことを囁かれた。
「相変わらず自覚なしか。困ったものだね」
耳元に唇を寄せて、会わないうちにやけにきれいに大人っぽくなったって言う意味なんだけどとレイラースは言葉を継いだ。
耳にレイラースの熱い吐息が触れて、ぞくりと肌が震えた。自分では髪が伸びたくらいしかわからないが、どこか違うんだろうかとキリスエールは困惑する。
「そういう顔をすると食べてしまいたいって言っている」
いうなり、レイラースはキリスエールの唇をかるく啄ばんだ。驚いて、キリスエールは大きく目を見開いた。
「レイラース」
咎めるようなタミルの声にレイラースは触れるだけのキスだけで身体を引く。ほっと息をついて、タミルを見れば、彼は眩しそうな顔でキリスエールを見ていた。
タミルからレイラースへ、そして再度タミルを見て、キリスエールは頷いた。
「行きましょう」
レイラースが微笑み、タミルは力強く頷いた。
「まずはどこへ?」
訊ねたレイラースを見つめて、キリスエールはすっと指を伸ばした。
「北へ」
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